いつものようにいつもの朝がやってきた。ある家庭では朝食にトーストを焼き、
ある家庭では亭主が新聞を読む。そしてまた、ある家庭では一家団欒でテレビの
ニュースを見ていた。そのニュースはこう報道されていた。
「…(続いてのニュースです。昨夜未明、ホライサンシティに発生した高層ビル爆破
テロ事件の主犯と思われる人物が逮捕されました。事件発生時の映像です。)…」
ニュースキャスターが最初にそう語り、事件発生時の映像に切り替わる。画質がお粗末で
個人で撮影したと思われる。赤と灰色と黒の入り混じった煙が高さ13階まであると思われる
高層ビルから発生し、そのコンマ数秒後に擬音語に出来ない爆音が鳴り響く。そして今度は
「きゃぁぁああぁ!」
「何!?何だこの音は!?一体、何処で何が起きた!?」
「あっちだ!あっちのビルの方だ!……間違いない、テロだ!!!」
まさか自分の街で、自分の目前であるはずはないと思っていた事が発生し、あわてふためく
通行人。並行して逃げ回る人を押しのけて逃げ回る人。自分の命を守るため、事件の第三者は
互いに人を蹴落としあっていた。映像に夢中になった頃にニュースキャスターのアナウンス
が入った。
「…(続いて、事件後の映像です。)…」
事件後の映像に切り替わる。インタビュアーがカメラ目線で挨拶をし、事件に立ち会った人
に次々と取材始めた。小太りの40代くらいの中年男、流行的な女性、様々な人が回答した。
「またテロか。全く、困ったものだよ。で、犯人はどのクレイジー、ゴンゾ、馬鹿なんだ?」
「今日は彼氏とデートだったのよ!待ち時間にも間に合わずに通行止めって信じられない!」
「すぐ近くにいたから揺れるんだ。見てくれ、ハンバーガーのケチャップが台無しだよ」
怒り口調な者、皮肉のきいた口調な者、涙目な者、多くの人がカメラに向かって発散した。
再び画面がニュースキャスターのいるスタジオに切り替わる。
「…(この事件での死傷者は19名です。内、死者3名、意識不明の重体者が2名、重傷者が8名、
軽傷者が6名です。今回の事件の犯人は34歳、住所不定、無職の男性、マック・ロス容疑者。
本日、13時より警察による事情徴収が予定されています。では、続いてのニュースです)…」
約10分に及んだこのニュースが終わった頃には家族全員朝食を終え、仕事や学業などで家を
出発した。
ある家庭では亭主が新聞を読む。そしてまた、ある家庭では一家団欒でテレビの
ニュースを見ていた。そのニュースはこう報道されていた。
「…(続いてのニュースです。昨夜未明、ホライサンシティに発生した高層ビル爆破
テロ事件の主犯と思われる人物が逮捕されました。事件発生時の映像です。)…」
ニュースキャスターが最初にそう語り、事件発生時の映像に切り替わる。画質がお粗末で
個人で撮影したと思われる。赤と灰色と黒の入り混じった煙が高さ13階まであると思われる
高層ビルから発生し、そのコンマ数秒後に擬音語に出来ない爆音が鳴り響く。そして今度は
「きゃぁぁああぁ!」
「何!?何だこの音は!?一体、何処で何が起きた!?」
「あっちだ!あっちのビルの方だ!……間違いない、テロだ!!!」
まさか自分の街で、自分の目前であるはずはないと思っていた事が発生し、あわてふためく
通行人。並行して逃げ回る人を押しのけて逃げ回る人。自分の命を守るため、事件の第三者は
互いに人を蹴落としあっていた。映像に夢中になった頃にニュースキャスターのアナウンス
が入った。
「…(続いて、事件後の映像です。)…」
事件後の映像に切り替わる。インタビュアーがカメラ目線で挨拶をし、事件に立ち会った人
に次々と取材始めた。小太りの40代くらいの中年男、流行的な女性、様々な人が回答した。
「またテロか。全く、困ったものだよ。で、犯人はどのクレイジー、ゴンゾ、馬鹿なんだ?」
「今日は彼氏とデートだったのよ!待ち時間にも間に合わずに通行止めって信じられない!」
「すぐ近くにいたから揺れるんだ。見てくれ、ハンバーガーのケチャップが台無しだよ」
怒り口調な者、皮肉のきいた口調な者、涙目な者、多くの人がカメラに向かって発散した。
再び画面がニュースキャスターのいるスタジオに切り替わる。
「…(この事件での死傷者は19名です。内、死者3名、意識不明の重体者が2名、重傷者が8名、
軽傷者が6名です。今回の事件の犯人は34歳、住所不定、無職の男性、マック・ロス容疑者。
本日、13時より警察による事情徴収が予定されています。では、続いてのニュースです)…」
約10分に及んだこのニュースが終わった頃には家族全員朝食を終え、仕事や学業などで家を
出発した。
「よし、今日は目標リフティング1200回だ!」
今日の登校風景。グレンがパックのミルクを飲みながらサッカーボールをドリブルしている。
「お前なぁ……勉強とかしろよ。成績悪いと退学とかするぅぅぅぅぞ?」
煉滋がちょっと声優っぽく舌を巻きながら言う。実は最近、この芸を学校で披露している。
「保体の単位は取ってるし、クラブとかで先生に気に入られてるから大丈夫だろ」
「まぁ…アレだ。お前は良いよな、お気楽で。ついでに言うと…喉乾いた。それ一口くれよ」
そういいながら開封済みのグレンのパックミルクを煉滋が受け取る。ゴクゴクと飲んだ。
「ぷはー…やっぱ体調管理の必要な者同士ミルクは必須だね!元気出るね!」
「お…お前……俺のミルク全部飲みやがったな…!……トホホ…いいもんいいもん」
なけなしの小遣いで買ったミルクを全部飲まれたグレンが半泣きを演じた。
今日の登校風景。グレンがパックのミルクを飲みながらサッカーボールをドリブルしている。
「お前なぁ……勉強とかしろよ。成績悪いと退学とかするぅぅぅぅぞ?」
煉滋がちょっと声優っぽく舌を巻きながら言う。実は最近、この芸を学校で披露している。
「保体の単位は取ってるし、クラブとかで先生に気に入られてるから大丈夫だろ」
「まぁ…アレだ。お前は良いよな、お気楽で。ついでに言うと…喉乾いた。それ一口くれよ」
そういいながら開封済みのグレンのパックミルクを煉滋が受け取る。ゴクゴクと飲んだ。
「ぷはー…やっぱ体調管理の必要な者同士ミルクは必須だね!元気出るね!」
「お…お前……俺のミルク全部飲みやがったな…!……トホホ…いいもんいいもん」
なけなしの小遣いで買ったミルクを全部飲まれたグレンが半泣きを演じた。
「ねぇねぇ!今日のニュース見た!?」
「見た見た!ホライサンシティでビルが爆発したアレでしょ?」
「いや、ってゆーかそれよりも…そう、ハンバーガーのあの人!」
「うっ…ぷぷ…確かに…。アレには笑った…。」
ここは頃奈たちの学年とは別の学年のクラス。この時代、テロに関心を示す学生は多かった。
「見た見た!ホライサンシティでビルが爆発したアレでしょ?」
「いや、ってゆーかそれよりも…そう、ハンバーガーのあの人!」
「うっ…ぷぷ…確かに…。アレには笑った…。」
ここは頃奈たちの学年とは別の学年のクラス。この時代、テロに関心を示す学生は多かった。
一方、こちらは頃奈たちの1学年。そのクラス7組。このクラスではテロ事件以上に別の話題が
教室を賑わしていた。
「お前誰だ?このクラスの奴じゃねぇよな?場合によっては…」
体格の良い普通科の男子が見知らぬ男子に絡む。
「君には関係ないだろ?…(さて、娘さんは何処のクラスにいるのか…)…」
見知らぬ男子が返す。すると、体格の良い男子が見知らぬ男子の胸倉を掴む。
「何のつもりだ?やめておけよ…怪我をするぜ?」
「お前は誰だ…名前は何だ…何処から来た…なぜここにいる!?」
体格の良い男子は方法こそは間違っているが、クラスの平和と秩序を重んじているからこそ
の行動である。見知らぬ奴がいたら問い詰めるのは当然だろう。少々行き過ぎた感じでも
あるが。次の瞬間、体格の良い男子の視界は教室の天井だった。
「な…!」
「俺の名はディラン・クロス…このクラスに転校してきた」
ディランと名乗る男子は、女子生徒を中心に注目を集めた。次第に生徒が教室に登校
してくる。グレンと煉滋もやってきた。
「あっれー…今日は頃奈来てないのかぁ……」
その言葉にディランは目を丸くする。
「遅刻じゃないか?アイツ寝坊癖あるからねー」
「なぁグレン、それにしても今日はやけに女子のテンション高くないか?」
「むぅ…確かにね…。どうしたんだいキミ達、テロ事件がどうかしたのかい?」
グレンが女子生徒の集団に話しかける。一部、避難的な態度を示すものがいた。
教室を賑わしていた。
「お前誰だ?このクラスの奴じゃねぇよな?場合によっては…」
体格の良い普通科の男子が見知らぬ男子に絡む。
「君には関係ないだろ?…(さて、娘さんは何処のクラスにいるのか…)…」
見知らぬ男子が返す。すると、体格の良い男子が見知らぬ男子の胸倉を掴む。
「何のつもりだ?やめておけよ…怪我をするぜ?」
「お前は誰だ…名前は何だ…何処から来た…なぜここにいる!?」
体格の良い男子は方法こそは間違っているが、クラスの平和と秩序を重んじているからこそ
の行動である。見知らぬ奴がいたら問い詰めるのは当然だろう。少々行き過ぎた感じでも
あるが。次の瞬間、体格の良い男子の視界は教室の天井だった。
「な…!」
「俺の名はディラン・クロス…このクラスに転校してきた」
ディランと名乗る男子は、女子生徒を中心に注目を集めた。次第に生徒が教室に登校
してくる。グレンと煉滋もやってきた。
「あっれー…今日は頃奈来てないのかぁ……」
その言葉にディランは目を丸くする。
「遅刻じゃないか?アイツ寝坊癖あるからねー」
「なぁグレン、それにしても今日はやけに女子のテンション高くないか?」
「むぅ…確かにね…。どうしたんだいキミ達、テロ事件がどうかしたのかい?」
グレンが女子生徒の集団に話しかける。一部、避難的な態度を示すものがいた。
「何?もしかしてバカベル知らないの?」
「バカベルはやめろよ!俺はグレン・ベルクンだ!君でもなく…くんでもなく…クン!」
「どれも一緒でしょ?それにバカにバカって言って何が悪いの?」
「いや、だから…ホラ、学園の憲章で人を人として大切に接するっていうのがあって…」
「うるさいわねぇ…男のくせに理屈っぽいよ?それでもスポーツマン?」
「あー…ハイハイ分かったよ…めんどくせぇな…ったく。んで、話しを戻そうか?」
口喧嘩終了。やはりこの年頃の男は同年代の女に口先で勝とうとするのが無理がある。
「いや、それがねぇ…転校生のディランクンが格好良くて可愛くて強いの!」
愛と妄想と理想のメロメロモード発動する女子生徒。それも本人の前で。
「……………ハァ?」
女って分からない。遊び優先で生きてきている者なら誰もが感じたことはあるだろう。
グレンも例外ではなかった。そんな時、ご本人から声がかかった。
「……君、宗谷様の連れだな?」
唖然とするクラス一同。ディランが指差したのはグレンだった。
「…へ?…俺?…ってか様?ってか何で知ってるん?…あーもー…いいや、めんどくせぇ!
宗谷って…頃奈?宗谷頃奈のこと?」
グレンが前後左右を確認し、自分を指差した。ディランが頷いた。
「…そうだ」
「あー…ゴホンゴホン、お客様?グレンも言ったけどお前さ、頃奈とどういう関係なのさ?」
駅員さん風味の鼻声で煉滋が言う。
「…(ねぇ…やっぱりそうだよ。楠川の奴、頃奈ちゃんと付き合ってるんだよ!)…」
「…(宗谷さんいっつもアイツの事見てるし…アイツも意識してるっぽいし!)…」
一部の女子が小声で例の噂について話していた。それに気づいたディランは言った。
「君たちの宗谷様に対する無礼は許せないが…まぁいい、教えてやろう。俺と宗…」
教室のドアが開く音が聞こえた。誰かが登校してきたのだろう。サイドで結んだ黒髪。
大きな丸眼鏡。間違いなく宗谷頃奈だった。
「…あのー、皆さん揃ってどうしたんですか?」
「…おお…貴女様は…宗谷様!…まさか同じクラスだったとは…お会いできて光栄です!」
何かを崇拝するように頭を下げ、頃奈の右手を取り、その可憐な甲に接吻した。
「…あ……あの……いきなり…なん…なんですか……?」
頃奈にとっては手の甲とはいえ、初めてで、それもみんなの前で異性に接吻されたので赤面
していた。
「あ…の…ね…!?君、何したか分かってる?分かってないよね?ここでそういう事するの
やめてもらえないかな?ここはみんなの教室だよ?」
煉滋がちょっと不機嫌そうに言う。ディランが返す。
「別に普通だろ?もしかしてそういうのも、した事がなくて?」
そう言いつつも、実は今回が初めてだったりするディラン。
「それに、みんなが黙認してる中、なぜ君だけが不服するのか?」
ディランが付け足す。これには煉滋も焦る。
「う…!みんなが認めても俺が認めなければそれは認められないのだ!」
「ほぉう…つまり宗谷様の事がお好きで?」
「な…なんでそうなる!それに…俺だってキスしたことくらいあるぞ!」
大きな嘘。そして、心の奥底で頃奈を意識していることを必死に捏造する煉滋。
「宗谷様とキスしたのか…聞き捨てならないな…?」
「だから!なんで!!そうなる!!!違う!違うぞ!!!」
その言葉を聞いて、冷や汗をかく頃奈。自分は彼に愛されていないという不安がよぎった。
「じゃあ、宗谷様とキスしてごらんよ?俺の前で!彼女の前で!!この大衆の前で!!!
違うならキスくらい出来るはずだぞ?」
ディランの一言で教室が熱気と歓声でいっぱいになった。
「ムッカつく野郎だ!ああ、分かったよ!やってやるよ!」
「煉滋!煉滋!煉滋!煉滋!」
ディランが手を叩き、煉滋コールをする。教室の生徒も、それに続いて煉滋コールをした。
「やめろっ!!!!!!!」
その大声で教室は一気に静まり返った。その大声の主はグレンだった。
「お…お前らな…第三者は自分に被害がないからってエンターテイメントにして…!
この場合の最大の被害者は煉滋でもディランでもなく、頃奈なんだぞ!本人は恥ずかしいん
だぞ!怖いんだぞ!人の心と身体をゲーム感覚で弄ぶな!」
グレンの必死の叫びがただ、教室に鳴り響いていた。
「ゴメン…悪かったよ…!」
煉滋が頃奈とディランとみんなに謝る。頃奈はグレンに耳元で囁いた。
「ありがと」
それを見て、煉滋とディランだけが良い顔をしなかった。
「お前は?」
グレンがディランを指差す。
「お前も謝れよ?」
グレンの言葉にディランは頭を下げて謝った。
「教室のみなさん、そこの…楠川さん、そして宗谷様、転校初日ながらの無礼を深くお詫び
申し上げます」
「あ…ああ」
煉滋はきょとんとしていた。
「自己紹介がまだだったな。俺は楠川煉滋、よろしく。」
「こちらこそ、ディラン・クロスだ、今後ともよろしく。」
二人は右手と右手で握手を交わした。その同時にチャイムが鳴った。
「バカベルはやめろよ!俺はグレン・ベルクンだ!君でもなく…くんでもなく…クン!」
「どれも一緒でしょ?それにバカにバカって言って何が悪いの?」
「いや、だから…ホラ、学園の憲章で人を人として大切に接するっていうのがあって…」
「うるさいわねぇ…男のくせに理屈っぽいよ?それでもスポーツマン?」
「あー…ハイハイ分かったよ…めんどくせぇな…ったく。んで、話しを戻そうか?」
口喧嘩終了。やはりこの年頃の男は同年代の女に口先で勝とうとするのが無理がある。
「いや、それがねぇ…転校生のディランクンが格好良くて可愛くて強いの!」
愛と妄想と理想のメロメロモード発動する女子生徒。それも本人の前で。
「……………ハァ?」
女って分からない。遊び優先で生きてきている者なら誰もが感じたことはあるだろう。
グレンも例外ではなかった。そんな時、ご本人から声がかかった。
「……君、宗谷様の連れだな?」
唖然とするクラス一同。ディランが指差したのはグレンだった。
「…へ?…俺?…ってか様?ってか何で知ってるん?…あーもー…いいや、めんどくせぇ!
宗谷って…頃奈?宗谷頃奈のこと?」
グレンが前後左右を確認し、自分を指差した。ディランが頷いた。
「…そうだ」
「あー…ゴホンゴホン、お客様?グレンも言ったけどお前さ、頃奈とどういう関係なのさ?」
駅員さん風味の鼻声で煉滋が言う。
「…(ねぇ…やっぱりそうだよ。楠川の奴、頃奈ちゃんと付き合ってるんだよ!)…」
「…(宗谷さんいっつもアイツの事見てるし…アイツも意識してるっぽいし!)…」
一部の女子が小声で例の噂について話していた。それに気づいたディランは言った。
「君たちの宗谷様に対する無礼は許せないが…まぁいい、教えてやろう。俺と宗…」
教室のドアが開く音が聞こえた。誰かが登校してきたのだろう。サイドで結んだ黒髪。
大きな丸眼鏡。間違いなく宗谷頃奈だった。
「…あのー、皆さん揃ってどうしたんですか?」
「…おお…貴女様は…宗谷様!…まさか同じクラスだったとは…お会いできて光栄です!」
何かを崇拝するように頭を下げ、頃奈の右手を取り、その可憐な甲に接吻した。
「…あ……あの……いきなり…なん…なんですか……?」
頃奈にとっては手の甲とはいえ、初めてで、それもみんなの前で異性に接吻されたので赤面
していた。
「あ…の…ね…!?君、何したか分かってる?分かってないよね?ここでそういう事するの
やめてもらえないかな?ここはみんなの教室だよ?」
煉滋がちょっと不機嫌そうに言う。ディランが返す。
「別に普通だろ?もしかしてそういうのも、した事がなくて?」
そう言いつつも、実は今回が初めてだったりするディラン。
「それに、みんなが黙認してる中、なぜ君だけが不服するのか?」
ディランが付け足す。これには煉滋も焦る。
「う…!みんなが認めても俺が認めなければそれは認められないのだ!」
「ほぉう…つまり宗谷様の事がお好きで?」
「な…なんでそうなる!それに…俺だってキスしたことくらいあるぞ!」
大きな嘘。そして、心の奥底で頃奈を意識していることを必死に捏造する煉滋。
「宗谷様とキスしたのか…聞き捨てならないな…?」
「だから!なんで!!そうなる!!!違う!違うぞ!!!」
その言葉を聞いて、冷や汗をかく頃奈。自分は彼に愛されていないという不安がよぎった。
「じゃあ、宗谷様とキスしてごらんよ?俺の前で!彼女の前で!!この大衆の前で!!!
違うならキスくらい出来るはずだぞ?」
ディランの一言で教室が熱気と歓声でいっぱいになった。
「ムッカつく野郎だ!ああ、分かったよ!やってやるよ!」
「煉滋!煉滋!煉滋!煉滋!」
ディランが手を叩き、煉滋コールをする。教室の生徒も、それに続いて煉滋コールをした。
「やめろっ!!!!!!!」
その大声で教室は一気に静まり返った。その大声の主はグレンだった。
「お…お前らな…第三者は自分に被害がないからってエンターテイメントにして…!
この場合の最大の被害者は煉滋でもディランでもなく、頃奈なんだぞ!本人は恥ずかしいん
だぞ!怖いんだぞ!人の心と身体をゲーム感覚で弄ぶな!」
グレンの必死の叫びがただ、教室に鳴り響いていた。
「ゴメン…悪かったよ…!」
煉滋が頃奈とディランとみんなに謝る。頃奈はグレンに耳元で囁いた。
「ありがと」
それを見て、煉滋とディランだけが良い顔をしなかった。
「お前は?」
グレンがディランを指差す。
「お前も謝れよ?」
グレンの言葉にディランは頭を下げて謝った。
「教室のみなさん、そこの…楠川さん、そして宗谷様、転校初日ながらの無礼を深くお詫び
申し上げます」
「あ…ああ」
煉滋はきょとんとしていた。
「自己紹介がまだだったな。俺は楠川煉滋、よろしく。」
「こちらこそ、ディラン・クロスだ、今後ともよろしく。」
二人は右手と右手で握手を交わした。その同時にチャイムが鳴った。
「えー、突然だが、今日は転校生の紹介をしよう。入りたまえ。」
担任のクラーク・クラーク先生が教卓の前で言う。教室から入ってくるのは案の定、ディラン
だった。
「ディラン・クロスです。よろしく。」
ディランは名前を名乗る。しかしクラス全員は少し前に知っているが。
「ディラン君はイギリスの通信制ハイスクールより転入してきた。みんな仲良くしてやって
くれ。では、空いている席は…っと。おお、楠川の隣が空いているな。」
ディランは煉滋の隣の席に着いて小声で挨拶をする。
「よろしく。さっきは悪かったね。」
煉滋が返す。
「あ…ああ、よろしくな。全然気にしてないよ…(なんだ、結構良い奴じゃん)…」
担任のクラーク・クラーク先生が教卓の前で言う。教室から入ってくるのは案の定、ディラン
だった。
「ディラン・クロスです。よろしく。」
ディランは名前を名乗る。しかしクラス全員は少し前に知っているが。
「ディラン君はイギリスの通信制ハイスクールより転入してきた。みんな仲良くしてやって
くれ。では、空いている席は…っと。おお、楠川の隣が空いているな。」
ディランは煉滋の隣の席に着いて小声で挨拶をする。
「よろしく。さっきは悪かったね。」
煉滋が返す。
「あ…ああ、よろしくな。全然気にしてないよ…(なんだ、結構良い奴じゃん)…」
昼の休憩時間。
「へぇ…お前もMSパイロット科なのか。」
煉滋が言う。
「実は、父上が軍人だからね。俺も跡を継ごうかなって。」
「奇遇だな、俺も軍人志望なんだ。お前とは仲良くできそうなので話してやるよ。実はな、
俺さ、1年くらい前に家族でアメリカへ行った時にこないだのホライサンシティみたいな
事件が起きて、その時に家族が全員死んじゃってね…」
煉滋が皮肉そうに言う。その言葉がディランの記憶を呼び覚ました。
「そうか…辛かったね。それで笑ってられるって凄いよ…(…俺が指揮したテロだ…!)…」
当時の事件の犯人はボリス・クライド。かつてのディランの仲間である。
「そうでもないさ…心の中では今でも泣いてるよ。まぁ、同時に夢を掴んだ。テロや紛争を
無くすために軍人になるんだ!それが俺の掴んだ夢だ!」
それを遠くから見ている頃奈。
「…(煉滋…良かったね…打ち明けられる仲間が出来て…)…」
ディランが言う。
「よし、お近づきの証として俺も腹を割るよ。俺の父上は火星軍なんだ。で、宗谷様の父上も
火星軍。俺の父上より宗谷様の父上の方が階級も高い。だから俺は宗谷様と呼ぶんだ。宗谷様
の父上から頼まれて、宗谷様を守らなければいけないんだ」
煉滋を傷つけないように上手くはぐらかすディラン。
「そうか…そんな関係だったのか…誤解して悪かった。じゃあ、こうしよう!頃奈は俺と
グレンとお前で守ろう!そのために午後からMSに乗って模擬戦!模擬戦!」
「…うん!…(やめてくれ…俺と仲良くしないでくれ…!)…)」
地球軍に反逆すべく地球に工作員として送り込まれたディラン。その存在は任務を達成する
ための人間兵器でしかなかった。兵器に心は必要ない。そんなディランに人の心が芽生えよ
うとしていた。
「へぇ…お前もMSパイロット科なのか。」
煉滋が言う。
「実は、父上が軍人だからね。俺も跡を継ごうかなって。」
「奇遇だな、俺も軍人志望なんだ。お前とは仲良くできそうなので話してやるよ。実はな、
俺さ、1年くらい前に家族でアメリカへ行った時にこないだのホライサンシティみたいな
事件が起きて、その時に家族が全員死んじゃってね…」
煉滋が皮肉そうに言う。その言葉がディランの記憶を呼び覚ました。
「そうか…辛かったね。それで笑ってられるって凄いよ…(…俺が指揮したテロだ…!)…」
当時の事件の犯人はボリス・クライド。かつてのディランの仲間である。
「そうでもないさ…心の中では今でも泣いてるよ。まぁ、同時に夢を掴んだ。テロや紛争を
無くすために軍人になるんだ!それが俺の掴んだ夢だ!」
それを遠くから見ている頃奈。
「…(煉滋…良かったね…打ち明けられる仲間が出来て…)…」
ディランが言う。
「よし、お近づきの証として俺も腹を割るよ。俺の父上は火星軍なんだ。で、宗谷様の父上も
火星軍。俺の父上より宗谷様の父上の方が階級も高い。だから俺は宗谷様と呼ぶんだ。宗谷様
の父上から頼まれて、宗谷様を守らなければいけないんだ」
煉滋を傷つけないように上手くはぐらかすディラン。
「そうか…そんな関係だったのか…誤解して悪かった。じゃあ、こうしよう!頃奈は俺と
グレンとお前で守ろう!そのために午後からMSに乗って模擬戦!模擬戦!」
「…うん!…(やめてくれ…俺と仲良くしないでくれ…!)…)」
地球軍に反逆すべく地球に工作員として送り込まれたディラン。その存在は任務を達成する
ための人間兵器でしかなかった。兵器に心は必要ない。そんなディランに人の心が芽生えよ
うとしていた。