涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「キミがキミで居られるように 設定1」で検索した結果

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  • 佐々木「憂鬱だ」キョン「佐々木でも憂鬱になることがあるんだな」 
    「――中学出身、佐々木です。不束者ですが、どうかよろしくお願いします」    振り返ると、そこに佐々木がいた。    中学からの付き合いだから別に振り返ってまで自己紹介を聞かなければいけないほど俺と佐々木の仲は浅いものではなかったのだが、  なんとなくここで振り返っておいたほうがいいような感じがした。    佐々木はゆっくりと、柔らかい皮肉に包まれた微笑を浮かべたままでクラスを見回し、最後に目の前の席に座る俺に視線を合わせた。   「どうかしたのかい、キョン? 不思議そうな顔で僕を見て。ここに僕がいることに何か不都合でも?」   「いや、そんなものはない」    佐々木はくくくと笑った。俺はなんだか恥ずかしくなって前を向いた。    ちなみに、佐々木のこの一言によって直前の俺の自己紹介でクラス全員の脳内メモリに新規作成されたはずの俺の本名は完全に『キョン』で上書きされてしまったらしいことを...
  • 感情と距離は反比例する?
     春は出会いの季節とは誰かが言ったかも知れないし、実際に学校生活に置いても社会人生活に置いても、 初々しい新入生や新入社員とかやってくるから、それは歯の浮いたテンプレート的な挨拶ではなく、事実として捉えるべきだろう。 さらに、このぽかぽか陽気で寒すぎず暑すぎないという一年の中に置いても最高の陽気に恵まれているタイミングが、 それを好意的な意味合いとして捉えることを促進している。  もっとも俺が春の訪れに出会ったのは、初顔ではなく懐かしい姿だったわけだが。出会いではなく再会だな。  だが、出会いがいろいろな波紋を呼び起こしてしまうのもまた事実だ。まあSOS団がらみでいろいろ、というのもあるが、 一番うっとうしいのは同じクラスの男女間の清い清くないを含めた上で、非常に興味津々の青春真っ盛りにある男どもである。  特に、入学式以来いそいそと新入生の品定めにいそしみ、目星のついた女子生徒片っ端から...
  • 間違いだらけの文化祭 Scene6
     佐々木の吐息が俺の思考を酷くかき乱す。  ほんの少し近づくだけで唇が触れ合うだろう。  それを望む自分と、止めようとする自分が繰り返して争いを続ける。  本当は争うまでもないんだ。一時の感情で佐々木との関係を壊したくない。  だが彼女を欲しいと思った気持ちが止まらない。  葛藤で熱暴走を起こした頭に佐々木の姿が浮かんでは消えた。 『キョン』  目を閉じていたって鮮明に思い出せる。声だって、リアルに響く。  この半年に限って言えば一番時間を共有した相手だ。 『なあ、キョン。知ってるかい』  得意げに笑うあいつが、 『キミが遅刻した分だけ僕の時間は無為に過ぎてしまったのだが』  不機嫌に説教を始めるあいつが、 『呆れるほど鈍感だなキミは』  どこか困ったように俺を見上げるあいつが、次々に俺の脳内を侵食する。  この顔が強張ってしまったら俺は――    ダンッと鳴った音が俺の思考を中断させた。...
  • 下衆谷口のなくころに ~尻隠し編~
    谷口「頭の中には夢いっぱい。おならのにおいが部屋いっぱい」   谷口「どうも。”何周しても花嫁はフローラ”谷口です」   谷口「本日は近所のレンタルビデオ店からお届けしております」 国木田「お届けするのはいいけど、堂々と山積みでAVを持ってこないでよ」 谷口「おやおや、レンタルビデオ店アルバイターの国木田くん。お客さんに向かってそんな言い方はないんじゃないかな? かな?」 国木田「宜しくない行為をするお客さんをたしなめるのも、店員の仕事だよ」 谷口「たは! これは手厳しい! 申し訳ない。実に申し訳ない。反省いたしました」 国木田「分かってくれればいいから。土下座はやめてよ。ものすごい当てつけがましいよ」 谷口「いやはやどうも」   谷口「それじゃあ、和やかな空気になったところで。手早く商品を袋につつんでくれたまえ」 国木田「ぜんぜん反省してないよね、キミ」 谷口「バカになっちゃうわよ!?...
  • 間違いだらけの文化祭 Scene3
     演劇ロミオとジュリエットの準備は全体的に見れば順調に進んだ。  一番セリフが多いやつはさっさと覚えたし、全員の衣装は出来上がり、宣伝のポスターも校内中に貼られた。  ポスターは画用紙に開催時刻とクラス名を書いた適当なものだ。  わざわざポスターなんて貼らなくても強制的に体育館に集められることになっている。  サボることもできるが点呼時にいないと欠席扱いになってしまう。  だいたいは大人しく体育館で出し物を見るか、居眠りをするのが通例だ。  そんなわけで、クラスの準備は整って来ていた。一部を除いて。    体育館で衣装を着ての練習が始まった15分後、いきなり中断が入った。 「キョンくん、まだセリフ覚えてないの!?」  眼鏡をかけた女子が金切り声で非難を口にした。  文化祭実行委員の彼女は自分のことのように眉を吊り上げている。  受験生だってのに余裕のあることだ。そういや学年10位以内だった...
  • 長門有希の憂鬱Ⅰ三章
    長門有希の憂鬱Ⅰ 三 章 俺はひどい頭痛と轟音とともに目が覚めた。 自分がどこにいるのかしばらく分からず、起き上がったところで天井に頭をぶつけた。 あれ、こんなところに天井があったかな。 そうだった。俺は泊まるところがなくてホームレスに段ボール箱を借りたんだった。 頭上では電車がひっきりなしに行き来している。 俺はそろそろと箱の外に出た。寒い。震え上がってまた中に戻った。 段ボール箱の中、意外に保温性があるんだな。手放せないわけだ。 俺はジャンパーを着込み、身をすくめてやっと外に出た。 一晩の宿は冷蔵庫の箱だった。それを見てまた寒気がした。 時計を見ると七時だった。おっさんたちはまだ寝息を立てているようだ。 俺はサンちゃんの家に、その玄関らしきところからありがとうと書いたメモに千円札を挟んで差し込んだ。 もしかしたら明日も世話になるかもしれない、などと不安と期待の入り混じった気...
  • 幻惑小説 第三頁
      ◇◇◇◇◇    小説内での十二月二日が休みだったから、わたしはなんとなく予測出来ていた。午前七時五十五分、涼宮ハルヒからの連絡。  やはり今日の不思議探索は中止になった。理由はメンバーのみんなが疲労しているから。でもこれで、今日一日は読書に集中出来る。   ********************************************************************************************************************************    彼女は今日、彼を駅前に誘った。他の誰にも内緒で。  理由は何でも良かった。この行動は彼女がただ、彼と二人っきりで会いたいと思ってしたこと。   ***************************************************************...
  • 涼宮ハルヒの抹消 プロローグ
     結局のところどうなんだ。  世界は静まったのか。春にあった佐々木の件が本当に最後なのか。  そんなもんは解らん。古泉にだって解らんのだから、スナネズミ並の思索能力しかない俺ごときに解るわけがない。  ないのだが。    世界が静かすぎるのか?   俺の胸には妙な焦燥がある。晴天の霹靂なんて恐ろしい言葉を思いついちまったが、まさか今の静かな状態が台風の目から見える青空のようなつかの間のものではないだろうな。そうであってはならん。せっかくSOS団内外にごろごろしてた問題が一段落したってのに、それは実は暴風域の中心に入っただけですよなんてのは俺が断るぜ。    特に長門には絶対休養が必要なんだ。  俺が気を遣っていることは遣っているが、そんな程度のことが長門のような宇宙存在の気休めになってくれるとは思いがたい。できることなら、一日でもいいからあいつをハルヒの監視任務から逃れられるような快適な...
  • キョン子の憂鬱 (TS)
    「只今より第一回SOS団2時間耐久鬼ごっこを開始するっ!」 「はあっ?」 放課後の文芸部室。SOS団団長のハルヒコの奴がまたくだらん事を言いはじめた。 「よしっ!みんなジャンケンしようっ!鬼はキョンだけどなっ」 じゃあ一体なんの為のジャンケンだというんだ。そして私はジャンケンもしないし鬼もやらん。 というかまずそのゲームに参加拒否の意思を表明するね。 「じゃっ、早速ルール説明に入るっ!鬼はくちびるを奪われたら負け!以上っ!」 人の話をまったく聞いてな……って、 「ちょっと待て。言ってる意味がわからん。説明しろハルヒコ」 ハルヒコはニンマリと、 「だから、さっき説明したろ?お前が逃げて、俺達が捕まえる。そしてくちびるを奪う」 「いや全部まるっきり分かりかねるが、そしてに続く言葉の意味がとくに分からん」 ガタン、ガタン、ガタン。 「お……おいっ?どうしたお前等?」 何故か長門ゆうきと朝比奈先輩...
  • 「雪合戦」「ヤンデレ」
      1「雪合戦」  「……ねえ、雪合戦したくない?」 みんなで歩く映画館からの帰り道、セミのエンドレスコーラスが鳴り止まない夕方の街を歩いている最中にハルヒの口からそんな世迷言が飛び出した。 最初に思ったのは聞き間違いって線だ。 いくらこいつが本物のアホだとしても、今が夏で俺達が半袖姿で汗をかきながら歩いているという現実が見えてないとは思えない、というか思いたくない。 今、何て言った。 半ば呆れ気味に聞き返した俺に、「だーかーら、雪合戦よ!」 夕暮れ時の赤い光を顔に受け、目を輝かせて断言するハルヒを見た時――俺はただ、溜息をつくしかなった。 ……そうか、今年の夏は特に暑いもんな。 気の毒そうな目で見る俺の視線を受けて、「ナイスアイデアでしょ? こーんなに暑いんだもの、そろそろ涼しい遊びもしないと体に毒じゃない」 何故かハルヒはご機嫌だ。 おい古泉、いつもより少し多めにハルヒがご乱心だ。何か...
  • 涼宮ハルヒの団結 第七章
     午前中。休み時間とは名ばかりの、次の授業への移行時間かつ執行猶予時間の際。  俺は……古泉は登校しているのだろうか、長門はどうしているだろうかなどを自分の席に着いたまま黙考していた。 「どうしたんだい? あまり元気がないみたいだけど。なにか悩みでもあるの?」  国木田はこちらへと近づきつつ俺に問いかけ、俺は背後にハルヒが居ないことを確認すると、 「……悩みが多すぎるのが悩みだな。正直まいってるよ」 「ふうん。てかさ、涼宮さんも何だか元気がないみたいだね。ひょっとしてケンカした?」  普通は聞きにくいようなことを飄々と聞いてきた。国木田よ、俺とハルヒはケンカするほど仲が良いわけじゃ……。  いや、あるのか。いつも俺がボッコボコにされてるが。国木田はなおも飄々と、 「聞きにくいって? もしかして、キョンと涼宮さんのケンカは犬も食わない感じになってるの? それなら、僕がそれを聞いちゃったのは野...
  • SOS団プレゼンツ 第一回 涼宮ハルヒ争奪戦 ―最終試練(後編)―
    「最終試験官のハードルはものすごっっく高かったみたいだよ!なんと副団長の古泉君ですら敵わなかったからね!残すところ、挑戦者はあとひとーり!最終試練を、試験官を見事乗り越え、ハルにゃんを見事手に入れることができるのか!最大の見せ場だよ!月9で例えたら、好きだった幼馴染みに対してアプローチをする先生を阻止し、自分がプロポーズすべく大勝負をかける場面に匹敵するよ!」 どんだけ~!…いや失敬! 鶴屋さんは最後の勝負ということで、色々と盛り上げる内容を語っていた。そう。残り一人。これでようやく終わる。 こいつを倒せばハルヒを狙う輩を殲滅できる。俺の仕事が全うできるんだ。 ――残りの一人の人物は、俺の知った顔だった。名前は知らないがな。 最初は教室の外で、二度目は部室の前で、ハルヒを自分の彼女にすべく、俺に戦線布告をしてきたあの北高生だった。 「――やはりあなたと戦うことになりましたね。僕には...
  • ハルヒと朝倉が…
       注意! この作品には「オリジナルキャラクター」 「キャラ設定が崩壊」 「他作品ネタ」が盛り込まれています。 オリキャラとかダメって方は見なかったことにしてスルーしてください。   そんなの気にならない方はどうぞ     キョン視点   いつもの帰り道、SOS団のメンバー全員で歩く姿は普通の高校生だ。 まぁ、神様とか宇宙人とか未来人とか超能力者なんだけどな。 珍しく長門もハルヒや朝比奈さんの会話に入っている。 ずいぶん人間らしくなったなぁ、とか成長する娘を見る父親のように見ていると 「あ!忘れ物した!」 いきなり大声で叫んだハルヒ、コイツが忘れ物するなんて珍しい。 「ちょっと教室に取りに戻るから、みんなは先に帰って」 一言そう言い残してハルヒは走って来た道を戻っていってしまった。 走るハルヒの後姿を見た後、振り返ると朝比奈さんと長門、古泉が俺を見つめていた。な、なんだ? 「追いかけない...
  • 涼宮ハルヒの誰時
    はじめに ・文字サイズ小でうまく表示されると思います ・設定は消失の後くらい ・佐々木さんとか詳しく知らないので名前も出てきません ・異常に長文なので暇な人だけ読んで欲しいです ・投下時は涼宮ハルヒの告白というタイトルで投下しましたが、すでに使われていたので変えています ・誰時ってのは黄昏の旧漢字……らしいです 多分 では、のんびりとどうぞ  学校行事に書き込まれていたテスト週間も無駄な努力と時間の経過によって無事終了し、晴れ晴れとした寂しさだけが残った週末。  テスト期間にあった祝日をむりやり土日に繋げてできた取って作った様な連休に、テストの結果に期待しようも無い俺は心の安息を求めていた。  この不自然な形の休日に教師といえども人間であり、生徒同様たまにはまともな休みが欲しかったなんていう裏事情には気づかない振りをするのが 日本人らしくて好ましいね。  しかし、テストが帰ってきて...
  • かわいい一日お茶だし係
    ある日の放課後のSOS団もとい文芸部室― すやすやと眠るキョン するとキョンをつっつき起こそうとする長門 「…起きて」 クークー… キョンに起きる気配はない。 「…起きないとキスする」 彼女は彼の耳元にそっと囁く。 ガバッ! チュッ♪ 「~~~?!な~が~と~!!お前!俺ちゃんと起きただろ?なんでするんだよ!」 俺は顔を真っ赤にして叫ぶ。 「…したかったから」 そんなあっさりと言うな! けど俺だけが分かる程度に頬が少し赤いぞ。 「~~!長門…ホント頼むからさぁ、その癖は治してくれよ…」 長門は二人きりの時は何故か俺に事あるごとにキスを迫ってくるのだ。 長門ってキス魔だったんだなぁと今では半ば諦めの境地に入ってしまっている。 いつからこんな事になっていたかは思い出せないが、たぶん以前の自分がこの長門と会っていたら間違いなくまた世界が改変されてしまったのかと必死に栞を探し回っていることだろう...
  • すき焼き別ルート
    (この作品は長編・涼宮ハルヒのすき焼きの設定を元に他の作者さんが書いた別作品です) それにしても缶ビール3口で酔いつぶれてしまうとは さすが朝比奈さんと言った所か 長門は顔色一つに変えずに飲みまくっているし、こいつは食事と言い胃袋はどうなってるんだ? ちょっと覗いてみたい気もするが、、、いや やっぱりやめておこう いくら人間になったとはいえ仮にも元宇宙人である。 知的好奇心は尊重すべきものとしてもさすがに元宇宙人という肩書きを持つ一乙女の体内なぞを 覗く方がどうかしている。 誰だってそう思うだろう? それにしたって古泉にしろハルヒにしろなんでSOS団は揃いも揃って酒豪ばかりなんだ? 俺の目の保養薬である朝比奈さんはすぅすぅと寝息を立てて安眠してしまっているし ハルヒは終始顔色を変えないで飲み続ける長門にあれやこれやの質問攻めをしているし 古泉に至っては二人を今や雑誌モデルとなっ...
  • 間違いだらけの文化祭 Scene5
     文化祭の午後の部、俺たちの演劇が始まった。  出番がない間にも台本を読み返して忙しい。  佐々木がいれば皮肉のひとつやふたつも飛んで来たかもしれないが、反対側の控え室だ。  体育館のステージは両脇がぶち抜きで控え室と繋がっている。  かなり段差があるから、控え室から舞台となるステージはほとんど見えない。  ステージは佐々木の身長より少し低いぐらいだな。階段がなければ女子は上るのも一苦労のはずだ。 「キョンくん、出番。テラスに出て」 「ああ。堂々と教卓に立てばいいんだな」  文化祭実行委員は渋い顔をした。 「テ・ラ・ス・で・す!」  無闇に強調してくる。痛いところを突かれた自覚はあるらしい。    我がクラスの大道具係はやる気がなかったようで、舞台セットはかなり貧相だ。  廃棄前の教卓を重ねて接着剤やら木材やらで補強した物体がテラスというのだからお粗末にも程がある。  見栄えのためか、白い...
  • 涼宮ハルヒの猛暑
    身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている 俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ 多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い 大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー 「よお、キョン………」 今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな 谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる 俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ 「大変そうだねぇ?キョン」 くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か 「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」 知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報...
  • 長門有希の報告Report.25
    Report.25 長門有希の憂鬱 その14 ~喜緑江美里の革命~  わたしの詰問を受ける間も何一つ表情を変えなかった喜緑江美里は、やがて静かに口を開いた。 「ねえ、長門さん。わたし達が『望み』を持つことは、許されない行為だと思いますか?」  江美里の様子がおかしい。 「人間のように、誰かと一緒にいたいと思うことは、異常動作ですか?」  声が震えている。 「無くしてしまったものを取り戻したいと思うことは、ありえないことですか?」  目が潤みだした。 「そのためになら、どんなことでもしてやろうと思うことは、おかしいことですか?」  やがて…… 「泣いているの。」 「ええ、そうです。泣いています。」  彼女はいつもの微笑を顔に貼り付けたまま泣いている。 「わたしが泣くことは、いけないことですか?」  彼女の目からは大粒の涙が零れている。 「ただ観測と事後処理だけしていれば良いのですか?」  ...
  • 一夏の恋5
    「じゃあ今日は」 歯痒さを捻じ込んで圧したような、――外見は平素と変わらぬ声が喫茶店の一角に響く。 「これで終了。明日は予備日に空けておいたけど、そのまま休みにしちゃっていいわ。また明後日、部室で会いましょう」 涼宮さんが宣言し、彼が苦虫を噛み潰したと表現するに相応しい皺を眉間に刻み、朝比奈さんは俯き、長門さんは唇を結んだまま。 八月三十日、午後。 僕はウインナーコーヒーの熱が冷めるのを、カップに押し当てた指の腹でじっと、数えていた。彼女が席を立ち、無言の聴衆に関せず客席をすり抜け、自動ドアを潜って店員の「ありがとうございました!」という掛け声を浴びながら去ってしまうまで、そうしていた。 多分、皆が分かっていたのだろう。涼宮さんの遣り残したことは果たされておらず、三十一日を過ごしても、その次に訪れるのは九月一日ではないだろうということを。心なしか空気は重く、場はやるせない諦観に満ちていた...
  • SOS団の無職
       先日、妹が地方公務員試験に合格した。高校卒業以来1年間、必死に勉強してきたんだ。努力の成果が実ってよかったなと大いに祝福してやりたい。兄としても、非常に鼻が高い。  しかしそのおかげで、俺の現状がより肩身の狭いものになったのもまた、否めない事実なのだ。妹に先を越された兄。その重みが十字架となって俺の双肩にのしかかる。  そもそも俺は年の離れた妹に対して、並々ならぬ威厳を持って接してきた。妹がおいたをした時も、冷静に実父のような対応をしてきたものだ。  その俺の兄としての立場が、一気に瓦解した。3日前、妹が満面の笑みで合格通知の入った封筒を俺の部屋に持って駆け込んできた瞬間から、だ。  俺の考え過ぎだろうか。妹が俺を呼ぶ時のイントネーションが、いつもの「キョンく↑ん↓」ではなく、目上の者が下の者を諭すような「キョンく↓ん↑」だったような気がする。  とにかく。その時以来、ガラス...
  • 古畑任三郎 VS SOS団 プロローグ
    ※ 始めに いくつかの設定を話に都合よく変えたりしています。 特に長門有希の情報操作などの反則技は、 推理ものとして破綻してしまうため一切登場しません。 いくぶん不自然な点があるかと思いますが、ご了承ください。 古畑「え~……あなたは超能力者の存在を信じていますか?    イエスと答えた方、未来人、宇宙人はどうでしょう?    全てを信じておられる方はなかなかいないでしょう。    しかし、実はいるのです。しかも同じ場所に集まって……」     古 畑 任 三 郎 VS S O S 団   放課後の生徒会室。 そこに居たのは生徒会長と、華麗な未来人、朝比奈みくるの二人だけであった。 会長「それで、答えは決まったかね?」 みくる「………。」 会長「クク、とはいえ君に選択肢は無かったね。私は君の重大な秘密を握っているのだから。    そう、君が未来から来た人間だということをね。    もし...
  • 森園生の電子手紙 3
    放課後。帰り前のショートホームルームが終わると同時に僕は走って昇降口に向かった。   学校終了 即帰宅 夕食 お見舞い   がここ最近の僕の毎日の過ごし方だ。森さんの入院している病院は、僕の家からだと少し距離があり急がないと森さんに会える時間が減ってしまうのだ。 学校終了後すぐにお見舞いに行ければ良いが、家は家族揃って晩御飯を食べるのが決まりなので、なかなか思い通りにはならない。   因みに森さんが事故に遭った日、朝帰りを怒られそうになったが、一緒に来てくれた古泉君と新川さんがフォローしてくれた。古泉が森さんの弟で新川さんが父親って言う無理な設定だったけど…… まぁ、そのお陰で問題無くお見舞いに行けるんだし…2人には本当にどんなに感謝しても足りないと思う。   一度ちゃんと古泉君にお礼を言おうとしたが、いつもの微笑でお気にせずとだけ言われてしまった。何か今更だけど古泉君も不思議な人だよね...
  • 脇役サミット
    【1】サミット開幕   皆さん。初めての方は初めまして。初めてでない方はこんにちは。まあなんだ、初めての方が居られるとしたら原作をきちんと読め、といいたいところだけど、いまひとつ存在感のない僕がそんなことを言うと自意識過剰かそれとも負け組の僻み、皮肉か。それはさておいて。 あどけないベビーフェイスと闇より黒い腹、心でお馴染みの名脇役、国木田です。 フルネームは禁則事項なんだ。どうしても気になったら谷川流か京アニか、とにかく君の納得の行くまで調べてみたらいいんじゃないかな?どうせ答えは出ないけどね、ブツブツ…   今回は特別に僕の発案で『涼宮ハルヒの憂鬱・脇役サミット』略して脇役サミットを開催させていただこうと思う。全然略せていないような気がする、という意見は申し訳ないがスルーしよう。 僕を筆頭に、多くの脇役がこの物語で不遇の扱いを受けている。心象描写も台詞も登場シーンも少ないが故...
  • 秘密の音色
     今日も、音楽が聞こえる。  何の意味が有るかは知らない、何のジャンルかも分からない、音の羅列。  意味が有るの無いのかさえ分からないその羅列が、僕を呼び寄せる。  灰色の世界に、音が降り注ぐ。  それは、閉じられた世界にだけ存在することを許された、秘密の音色。  ****  夏休みも明け、さあ新学期だとそれなりに新鮮な気持ちで登校したその日、ハルヒはいきなり 「今日から文化祭に向けてバンドの練習よ!」  と言って、軽音楽部から楽器を調達し、放送部から放送室を奪い、俺達SOS団は楽器の練習をする羽目になった。  本当、いきなりだよな。  まあ、練習自体は去年も一応やっているし、バンド活動に打ち込んでいるおかげで他の面倒なことに巻き込まれる無くて済むって言うんなら、それはそれで悪くない。  去年の時みたいにおかしなものが発生する可能性が無いわけでもないが、とりあえず、起きる前からそん...
  • 長門有希の憂鬱III 恋するウィルス
    恋するウィルス      わたしがコンピュータ研究会に入部したときの、数日間のログ。公開する。   0600時: 宇宙歴40068.26.11。起床。ログ記録開始。顔を洗う。朝食の準備。味噌汁を調理。昆布のダシ。豆腐の賞味期限が六時間前に経過。情報統合思念体に挨拶。返事は数バイト。わたしの上司は愛想が悪い。主流派はこれだから。   0645時: 顔面、頭部の手入れ。最近枝毛が目立つ。毛髪洗剤の変更を検討。あの人の好きなコロンを0.5cc噴霧。   0700時: 自宅を出る。隣の住人に挨拶するが、伝わらなかった模様。   0730時: 学校に到着。部室へ。無人。ハインラインの夏への扉を開く。175ページ。   0800時: 教室へ行く。途中で古泉一樹に会った。顔の角度を九度下げる。   0820時: 担任現る。顔色が優れない。配偶者とまた揉めたようだ。   (中略)   1205時: 文芸...
  • 長門有希の報告Report.15
    Report.15 長門有希の憂鬱 その4 ~過激派端末の強襲~  部室での会話の後、なし崩しに涼宮ハルヒと朝倉涼子は、一緒に帰ることになった。 「何であんたと一緒に帰らなあかんのよ……」 【何であんたと一緒に帰らなきゃならないのよ……】 「まあまあ。たまにはええやん。」 【まあまあ。たまには良いじゃない。】  ふてくされたようなハルヒと対照的に、涼子は上機嫌に見えた。  涼子は、見かけ上、喜怒哀楽がはっきり現れるように設定されている。その点では長門有希と対照的。しかしその内実は、あくまで基礎的な人間の観測データに基づき計算された、『恐らくこのようなものだろう』というモデルを基に構築されたものに過ぎなかった。過ぎなかったが。  二度の『死亡』と『復活』を経て、今や涼子は人間に存在する『感情』に限りなく近いものを獲得した。その『感情』が、涼子を上機嫌な表情にさせていた。涼子の誘導は成功し...
  • 嘘から出た松茸
    ※このお話は『渋皮やさしく剥いたなら』の後日談です※  女心と秋の空、とはよく言ったもので。妙に暑いなと思ってたら急に肌寒くなったり、はたまたジメジメとした小雨が長く続いたりもする、そんな季節の頃。  要するに秋の半ばだな。空を覆うように広がるいわし雲の下を、俺はハルヒ宅に向かって自転車を走らせていた。別に呼び付けられた訳でもなけりゃ、大した用事でもない。単なる気まぐれと言うか、たまにはちょっとしたプレゼントでもあいつにくれてやろうかと思ってね。お、見えてきた。  ハルヒの部屋の窓の端で、白いレースのカーテンが揺れている。日曜の昼下がりだし、もしかしたら家族で出掛けてるかも、なんて可能性も考えていたが、どうやら都合よく部屋に居るみたいだな。よしよし。  路傍に自転車を停めた俺は、そよ風にふわふわ揺れるカーテンを見上げながら、ピッと携帯のコールボタンを押した。 「あによ、キョン。何...
  • 涼宮ハルヒの誰時 朝倉ルート
    文字サイズ小でうまく表示されると思います   涼宮ハルヒの誰時   「ご、ごめんね?」  手を振り払ったのは俺なのに、何故か慌てて謝ったのは朝倉の方だった。 「こんな大変な時なのに、変な事言ってごめんなさい」  そう言って立ち上がった朝倉は、そのまま逃げるように隣の部屋へいってしまった。  見間違いでなければ、朝倉の顔は真っ赤だった様な気がするんだが……まあ気のせいだろう。なんだか一気に疲れた気がする、というよりも疲れてるのに 無理やり動いてただけなんだろうな、実際。このままここに居たら、本当に泊めてもらう事になりかねん。  朝倉。  呼びかけてみるが返事はない、だがそんなに広い部屋でもないんだから聞こえていないって事はないはずだ。  今日は帰る、また話を聞かせてくれ。  俺はしばらく待ったが朝倉からの返事はなかった。  なんなんだろうな? これは。  でもまあ朝倉は聞いているんだろうな...
  • ある秋の日のこと
    SOS団史を紐解く中で、空白になっている期間がある。 それは俺たちが一年だった頃の9月と10月だ。 後になって知った小さなエピソードだが、どこにも記せそうにないのでこの場に書いておこうと思う。   9月のある日、あの終わらない夏休みをようやく終わらせ、俺は部室で朝比奈茶を優雅に味わっていた。 部室には全員が揃っていて、すなわち現在パソコンに注意の全てを傾けている団長の涼宮ハルヒ。 メイド服を着るためにこの世に生を受けたかのごとき妖精、朝比奈みくるさん。 一瞬見ただけでは等身大の置き物にしか見えない読書ドール、長門有希。 微笑みしか表情を知らないようなハンサム野郎、古泉一樹である。   9月になったとはいえ風は一向に冷たくならず、夏の熱気だけが絶賛継続中だった。 夏は嫌いじゃないが、こういつまでもだらだら続かれるとさすがにバテそうになる。 俺の周りの4人は全員が暑さを気にしていないような顔を...
  • 長門有希の消失 第四章
    第四章    学校を休もうと思っていた。  あの文章を読んで、わたしが独立した存在ではないと悟ってしまったとき、本当に立ち上がれなかった。茫然自失としていた。どんなことを思い、考えたのかも記憶にない。ただ気がつくと窓の外の空が明るくなっていて、わたしの部屋もかすかながら太陽に照らされていたのだった。パソコンはカーソルを物語の最後の文字で点滅させたまま、何十分も前と同じ状態の画面を表示していた。  涙は止まっていた。枯れてしまったのかもしれない。頬を伝った部分には少しだけ違和感があった。  でも確かに、涙に浄化作用はあったらしい。カタルシス。わたしは黙って泣いているうちに、いったい何が哀しいのか解らなくなってしまったのだ。一人暮らししていることなのか、あの物語が『わたし』のものだったことなのか、わたしは存在的に独立した人間ではなかったということなのか、あるいはその全部か。  悲しさも涙...
  • 渡橋ヤスミの下準備
       渡橋ヤスミを名乗る人物が組織の根城である宇宙ステーションの中に忽然と現れたことは、ちょっとした騒ぎを巻き起こした。  時間航行技術を操るこの組織は、当然のことながら、時空転移で侵入されないように防御措置を施していたからだ。それがあっさり破られたことは、組織のほとんどの人間にとってショックな出来事だった。      組織の代表である長門有希の命令で、ヤスミは長門有希の部屋に案内された。案内役は、朝比奈みくる(大)が引き受けた。 「朝比奈先輩は、おっきくなりましたね、おっぱいが。未来にはおっぱいを大きくする技術とかあるんですか?」  ヤスミは無邪気にそんな質問を放った。 「特にそんな技術はないです……」  朝比奈みくるは顔を赤らめながらそう答えた。  長門有希の部屋に到達した。  内部から操作で自動的にドアが開いた。 「お久しぶりです! 長門先輩!」 「久しぶり」  長門有希は、全く動...
  • 江美里と初デート
    「以上で、今回の会議を終了する。各自解散してくれたまえ。」 長かった会議が終わり、各委員会の委員長たちがぞろぞろと生徒会室を出ていく。全員が出ていったのを確認して、俺は制服の内ポケットから煙草を取り出し、火をつける。 ここは職員室の隣だが、一度も教師どもにバレたことはない。 「会長、お疲れ様です。あ、また煙草ですか?もう、毎回言いますけど、喫煙者は各種ガンの発生率が非喫煙者の何倍も」 「それは分かっているが、これが一度吸うとどうしてもやめられんのだ。そうだ、江美里、お前の情報操作能力とやらでニコチン依存を無くしたりは出来んのか?」 「出来なくはないですけど…。それじゃ会長のためにならないじゃないですか。」 「はは、それもそうだ。俺も肺ガンは嫌だしな。禁煙でもしてみるか。」 「やっと分かってくれましたか。三日坊主にならないように頑張って下さいね。」 「その点は心配無用だ。俺はやると言ったこ...
  • Desire where it doesn't disappear (長門視点)
       この作品は Desire where it doesn t disappear (古泉視点)を長門視点から綴った物語になりますのでご注意ください。 では↓から本編開始です。               地球時間に換算して、午後五時三十七分二十六秒時点で閉鎖空間の発生を観測。昨日の始まりから今に至るまで通算で四十五回目の観測である。  原因は放課後に始まるSOS団での活動の際による、涼宮ハルヒと彼による口論によるところだと判断する。  いつものように涼宮ハルヒが朝比奈みくるをオモチャのように苛めているところを、彼が溜息を付きながらも間に入ったのだが、涼宮ハルヒはそれが気に入らなかったのか、彼に矛先を変え噛み付き始めたのだ。噛み付かれた彼も初めは子供をあやす様に諭していたのだが、涼宮ハルヒの一言――その際の会話ログを呼び出す。   『あんたはみくるちゃんにデレデレしすぎなのよ、こ...
  • 涼宮ハルヒの団結 第九章
     そして時間遡行。亀的TPDDの内部には、後部にやたらでかいグラウンド整地用のローラーみたいなものが取り付けられており、みゆきが稼動させている間中、それに対応するように幾何学的な模様が描き出されていた。これが技術革新によって、あの小さい金属棒へと変貌するんだろう。  とまあ、これ以外に時間遡行中に特筆すべきものはなかった。そして俺たちが着いた先は……。 「……同じ公園、か?」  多分、さっきまで居た公園と一緒なのは間違いない。ただ、備え付けの設備が若干綺麗だったり、後でペンキの塗り替えでもしたのだろうかという感じで俺の知っているものとは色違いな遊具がある。それに……、 「フフ。ちゃんと時間が止まってるみたいですね」  なんで時間を止めなければならないのかも疑問だが、それは瑣末な問題でしかない。朝比奈さん(大)に聞けばわかるかも知れんが、俺は実行あるのみだ。よって聞かない。 「…...
  • 朝比奈みくるのクーデター その4
     ぼちぼち日が赤く変わりつつあるころ、俺たちは海上をボートで漂っていた。燃料を節約するため、 現在はエンジンを停止して敵が俺たちの前に現れるのを今かと待ちかまえていた。  俺たちへを屈服させるためなら、無関係な人間への無差別攻撃もいとわないあの腐れ野郎どもは、 今のところ俺たちを追ってきてはいなかった。今頃、さらに無差別攻撃を悪化させているんじゃないかと不安になるが、 「機関の別働隊の情報によれば、こちらが海上に出て以降無差別攻撃などは一切発生していないもようですな。 戦闘自体はほぼ終息したと考えるべきでしょう」  新川さんからの言葉に俺はほっと胸をなで下ろした。だが、安心もできない。陸からいなくなったと言うことは、 こっちに向かってきている可能性大という事になるんだからな。 「あと、武装集団の十数人が警察などに身柄を押さえられましたが、すべて自決したと言うことです。 そこまでする以上、我...
  • 悩みの種~悩みの種の潰えぬ世界~
    <悩みの種の潰えぬ世界> 私は病院に着いた。もう行くのも慣れたものだ。 腫れた目…みんなにバレないかしら?大分引いたものの、まだ腫れが残っていた。 キョンの病室に着くと、もうすでにみんなは揃っていた。 「涼宮さんが最後とは…ある意味、キョンくんも嬉しがっているかもしれませんよ?」 古泉くんが悪戯そうに言った。 「この人、今までずっと最後で奢り続けてましたからねえ…涼宮さんより早く来ることは願望だったようですし。ほら、僅差で涼宮さんが先だったときあるでしょう?あの時彼、かなり悔しがっていましたから。」 そうしてキョンを見ると、心なしか笑っているようにも見えた。 起きたら私が奢るわよ…負けちゃったしね! 私達は準備にかかった。宴会の準備や部屋の飾り付け…だけど今回の飾り付けはいつもと違った。 キョンが外が見れないため、その気分だけでもと、病室の中を真っ暗にするようにした。黒い紙...
  • 朝倉涼子のおでん
    (株)情報統合思念体をクビになった私は、しばらくフリーターをしながら無気力に暮らしていた。 思えば私は子どもの頃からTFEIのエージェントに憧れて、ずっとTFEIになることだけを考えて頑張ってきたんだった。 だからTFEIの地位を失った喪失感は大きかった。なにを目標に生きれば良いかの分からないし、そもそもなにをすればいいのかさえ分からない。 実家の父母は、私が失業したことを知らない。知らせられるわけがない。 両親は私の夢を応援してくれていたし、私がTFEIになって上京したした時も、諸手をあげて喜んでくれたんだもの。 言えるわけないよ。 だから私は、(株)情報統合思念体でまだ働いているということになっている。 けど働いていかなければ、生計をたてることができない。バイトはしてるけど、正直バイトで暮らしていけるほど都会は甘くない。 だから私は昼間のコンビニのバイトに加え、夜おでんの屋台を開くこ...
  • 魔法少女フェアリーユキ・後編
    「ふっふっふっふ。ユキ。今日こそこの町内はわが手中に落ちるのだ」  ひゃっひゃっひゃと笑いながら、悪役の彼女は一歩、また一歩と歩みを進める。 「わたしは、負けない」  ユキがキッと表情を引きしめて、にじり寄る長髪の魔女に対峙した。 「はいっ! カット!」  ポンポンと、監督がメガホンを叩いて合図をする。 「有希! とってもいい演技だったわ! これは本当に、文化祭でのみくるちゃんの立場も危ういわねぇ」  半目で流し目を送る監督に、去年はカメラを向けられる側だった朝比奈さんがわずかに震えた。 「えっ。えぇぇ~っ」  朝比奈さんはしょんぼりしてうつむいた。……あれ。残念なのかな。あれだけやりづらそ うに戦うウェイトレスをしていたのに。 「鶴屋さんも急に呼んじゃってごめんねっ! 去年に引き続き素晴らしい助演女優っぷりよ!」  親指を立てる涼宮さんに、黒服魔女姿の先輩。鶴屋さんは、 「いやいやっ!...
  • DistorteD-Answers 第一周期
     これは、実際には起こらなかった出来事、でも本当にあった出来事。  今のみんなは知らない出来事、でも、みんなが見た出来事。  壊れてゆく世界で、人々がもがいた記憶。  第1周期 施し  自転車で走行中、下り坂ではスピードが出がちになる。ペダルを漕ぐ労力が不要になるし、風があたって心地よい。  もし、その先に交差点があったらどんなことが起こる可能性があるかはみんな分かるだろう。更に、そこがブロック塀などで先が見えないようになっている場合はなおさらだ。  ふと通過しようとした瞬間に、車が見える。イメージしただけでもぞっとするね。  その時のスピードにもよるだろうけども、「あっ」と思ったとこでブレーキすら間に合わないようなこともあろう。  眼前に迫ってくる車が見えた次の瞬間には、既に病院に搬送されていて、ちょうど顔の傷の縫合をしている真っ最中だった。  ……という上記の一行は知人の...
  • 涼宮ハルヒの嫉妬 
    涼宮ハルヒの明日の続編です。 「……と言う小説を執筆する予定。許可を」 って、おぉい!!!ちょっと待ってくれ、長門!! なんで俺が死ななきゃならんのか、きちんと詳しく事細かに説明してくれ!! 「…物語の展開上の必然。 あなたが死んでくれた方が読者の共感を呼び易く、好都合」 俺が死んでくれた方が好都合ってドサクサに紛れて 結構、酷い事を言っちゃってますよ、長門さん…。 「…そう」 『…そう』じゃねぇ!!しかも、なんで皆の名前は若干、変わってるのに 俺だけ『キョン』のまんまなんだよ…ハルヒはハルヒで… 「ちょっとこれ、何なのよ!?有希!! 別にキョンがどうなろうとそこは構わないとして…」 いやいやいや、ハルヒ!どうでもよくはないだろ?そこは!! 「なんで私とキョンなんかがこんなちょ、ちょっと… 微妙な、変な感じの関係になっちゃってんのよ!?」 「…大丈夫。問題は無い。皆、認知しているから」...
  • その他短編60
    朝倉 「ふふふ・・・じゃぁ、死んで」 キョン 「ふ・・・一つ一つのプログラムが甘い!!」 朝倉 「ぶげはっ!!あごがはずれた」 キョン 「ふ・・・今のうちだ!!!死ね!!!!!1(朝倉からナイフを奪う」 朝倉 「ごばぁ!!」 キョン 「その眼球ひっこぶいて血まみれにして殺してやる!!!!!」 長門 「・・・」 長門 「・・・(怖くて立ちすくんでいる。」   ハルヒ「遅刻したものは死刑よ!わかってるキョン!」 キョン「あぁ、わかってるさ。」 古泉 「すみませぇん遅刻してしまいました!」 キョン 「お前死刑な。お前の腹を切り開いて内臓をみんなでいただくとしよう。」 古泉 「それだけは・・・グサッ」 キョン 「アヒャヒャヒャヒャ・・・内臓パーティーの始まりだぜwwwwwwwwww」 長門 「・・・」 長門 「・・・(怖くておしっこ漏らした」     谷口「WAWAWA忘れ物ガララ...
  • SOS団のメタボ3
    「そもそも格闘技はウェートが大きいほど有利なものが多いわけだから、体重を減らすというより増やすことを目的としているわけよね。私たちの目的とは逆行しているんだから、格闘技を取り入れたってダイエットになるわけなかったのよ」  などと屁理屈としか思えない言い訳をしながら、前とあまり変わらない体型で涼宮ハルヒは病院から還ってきた。  格闘技っていうか、ダイエットにプロレスを取り入れようという方がどうかしているのだ。そしてアマレスのリングで筋肉バスターを使う方がどうかしているのだ。どうせ筋肉バスターを使いたいのなら、NOAHにでも入団するべきだ。  本気でダイエットのために運動をしようと思うのなら、それ相応の体操などを試みるべきだったのな。ブートキャンプとか。 「はあ? 相変わらず馬鹿なこと言ってるわね。もう1年もSOS団の雑用やってるんでしょ。ちょっとは団内の空気というか、常識を学びなさいよ」...
  • おいしいご飯
    ※『宇宙人じゃない長門』の設定です   「何つくる?」 朝倉が問う。 「焼き魚でいいんじゃねえか」 谷口が素っ気なく答える。 「安っぽい。最低。もっとマシなの考えなさいよ」 ハルヒが反論。 「だって魚使わなきゃならねえんだろ?焼き魚以外なにがあるんだよ」 谷口も反論。 「例えば…鯛のポワレとか」 「はァ?そんなイタリア料理みたいなのつくれるかよ」 「フランス料理よ!」 ハルヒの威嚇に谷口は肩を竦め、俺の方を向く。 …しゃーない。 「いいだろ。調理実習なんだし。高校生らしいのでいこうぜ」 俺が谷口をフォローする。 そんなこんなで、かれこれ15分。一向に意見がまとまらない。 何をそんなに議論しているのかというと…。って、もう答え出てるな。 調理実習である。 4人1班で飯をつくる。テーマは『バランスのとれた魚料理・夕食編』だそうだ。 で、俺たちの班は俺、ハルヒ、谷口、朝倉…となった。 くじ引きで...
  • 私の選んだ人 3 1/2~4話
    私の選んだ人 幕間劇 31/2 僕の名前は処刑人。 僕の両手にはずっしり重い両刃の斧が握られている。 目の前に断頭台がある。 とても大きく、黒く、禍々しい。 皆はその断頭台を指して「名無し」と呼んでいる。 「名無し」の下には、僕の一番大切な人が立っている。 僕が視線を向けたから、彼女はそこに立たされた。 僕は逃げ出せないよう「名無し」に命綱という名のロープで繋がれていて、そのロープは更にギロチンの刃へと繋がっている。 処刑台の下を見ると、僕の仲間が居る。 皆は「名無し」を指差し楽しげに笑い合い、僕に手招きしているが、背後に迫る重大な危機に気が付いていない。 僕は助けに行こうとするが、「名無し」に繋がれた僕の命綱は短すぎて、届かない。 仲間の半分には手が届き、残った半分の内1人は安全。でももう1人に手が届かない。 僕は握り締めた両刃の斧と命綱を見比べる。 これでこのロープを切...
  • 涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(前編)
    「で、最初は誰から接触すればいいわけ?」  ハルヒは机の上に座ったまま、俺に言う。  さて、誰からにしたものか。本来であれば、俺の世界と全く同じようにしたいところだが、このハルヒはそれを却下したし、 そもそもこいつが力を自覚している時点で、どうやってもおなじようにはならんおかげで、正直それで大丈夫なのかという 不安があるのも事実だ。  だが、ここでふと思いつく。  とにかく、3人に接触して平穏かつ良好な関係が築けると証明してやればいい。それだけなら、何も3人同時に 一緒である必要はないはずだ。その後、ハルヒに納得させた上でもう一度最初から――今度は3人同時に接触して、 SOS団を結成すればいい。  そう考えると、まず一番接触しやすい奴から選ぶべきだな。宇宙人は、あのハルヒの情報統合思念体に対する警戒心から考えて、 一番最後にすべきだろう。未来人ははっきり言って知らないことも多いことを考える...
  • 名無しさんの反乱
     名も無い私に与えられた任務は、第三惑星から発信される情報の観測、及びその惑星を標的とする他の意識集合体への警戒だった。  人間が観測し得ない距離からの第三惑星の監視を続けて三年(第三惑星における時間換算)が経過した。  以前は第三惑星での観測任務をしていたが、ある時にこの惑星への位相を命じられた。訂正、この星は惑星の定義から外された為、現在は矮惑星に分類されている。  この星には恒星の恩恵も届かず地表は凍りついている。太陽など只の点でしかない。この岩石のみの世界を殺風景と表現せずにいられようものか。    第三惑星と相対的に見ると公転周期が極端に長いこの矮惑星上から、軌道の反対側の事柄について対処するのは困難を極めた。だから外部からの侵入を容易く許してしまったこともある。  幾度となく侵入阻止失敗を報告したにも関わらず、統合思念体は私をここに留まるよう命じた。そこまでする理由が理解出来...
  • 反転世界の運命恋歌(Ver.キョン)Ⅱ
     反転世界の運命恋歌Ⅱ  そう言えば、俺と古泉一姫がペアを組んだのが午後の部だってことを言ってなかったな。  そうだな。俺がこの世界に来てから今日の午前の部までのことを少し話そうか。  結構、不思議な気分に包まれたからな。それと涼宮ハルヒコが妙なことを聞いてきたことを紹介するのもいいだろう。  …… …… ……  …… ……  ……  唐突だがまず、この状況を表現するにはぴったりの言葉はこれだ。  俺は眼前の光景に絶句した。  まあ、これは仕方がないことなんだ。誰だって俺の立場になれば絶対に言葉を失くす。断言してもいいぞ。  目が覚めたら、見知った部屋で、どこか既視感を感じようが俺にも馴染みの北高のブレザーを着ていようが見知らぬ奴が目の前に現れたんだ。しかも自室に居たはずが全然違う場所に居れば間違いなく愕然とする。 「貴方は別世界で情報連結を解除され、この世界で再構築され...
  • 朝比奈みくるのクーデター その5
     0歳。あたしが生まれた。憶えているわけもない。  3歳になったとき。まだ子供だったというのにその日のははっきりと覚えている。突然家を訪ねてきた男によって 両親が射殺された。どうやら反体制派との活動に関与していたためと思われる。ただ親によって身を隠されていたあたしは 難を逃れることができた。  5歳のころ。政府直属の施設に放り込まれたあたしはいじめによる暴力を受け続ける日々だった。  8歳になってから少し後。愚かな国の元首は隣国に攻め込んだ。ところがあっさり撃退されて、逆侵攻を受けた。 その時に施設が空爆され混乱状態に陥いる中、あたしはそこから逃げ出した。  11歳になって。浮浪児としての暮らしに耐え続けていたとき、あたしのいた街が反政府勢力によって制圧された。 戦闘に巻き込まれて多数の仲間が死んでしまった。でも、反政府勢力から与えられた炊き出しのスープはとても美味しかった。 数年ぶりの暖...
  • Different World's Inhabitants YUKI~カヨウビ(その一)~
      三日目[カヨウビ]   2人の長門が入れ替わって3日目。残された期間は今日を含めてあと3日だ。 まあ、あまり心配はしていない、いやしないようにしている。 じゃないと、今みたいにのんびり登校ルートを歩いちゃいねぇよ。   今日は昨日のように寝不足ではないおかげか昨日よりスイスイ上っていける。 俺も結構、体力ついたかな?   「よぉ、キョン。」   待て。俺はお前が誰だか、確認せずとも分かるぞ。 このアホ声は・・・谷口だろ?   「はん、何バカなことやってんだ。それに、声にアホもくそもあるかっつうの。」   いや、分からんぞ。声だけでも人のイメージはかなり決まってくるからな。   「何?つまり、俺は声だけでアホと言われてるってことか?」   いや、お前の場合は声だけでなく、顔、性格、評判、全てを総合的に配慮した結果・・・   「分かった。もういい。そのことについては触れないこと...
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