涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「叶わぬ恋と知りながら」で検索した結果

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  • 叶わぬ恋と知りながら
    「いま、お茶淹れますねっ!」 俺が部室に入ると、聞こえてくる声。SOS団唯一の2年生で、俺が淡い恋心を抱く先輩、朝比奈みくるさんの声だ。 学校で一番かわいいと言っても良い。男にも、女にも愛されるかわいらしい顔と性格の持ち主である。 そんな人間がメイド服でお茶を淹れてくれる、見とれてしまっても仕方ないだろう? 「ど、どうしたんですか?わたしの顔、な、何かついてます?」 顔をペタペタとする動作もかわいらしい。 「大丈夫ですよ。ちょっと、俺がボーッとしてただけです」 俺はそう言うと、朝比奈さんが淹れてくれたお茶に口をつけた。…いつも通り、とても美味い。 そういえば、今週の土曜。つまり明日の探索はいろいろあって中止である。 俺はそれを思い出すと、ハルヒに見えない位置で紙とペンを取り出し、スラスラとペンを走らせた。 《部活終わったら、少し話しましょう?着替えたら残っててください》 お茶のおかわりを頼...
  • 長編・朝比奈みくる
    ...いで 壊れたパズル 叶わぬ恋と知りながら 本当の気持ち 3人娘のそんな放課後 うそなき みかんとりんご 蜃気楼 予防接種 朝比奈みくる一年生 ずっとあなたに…… みくるの告白 二人三脚手作りケーキ 二人だけの時間 朝比奈みくるのクーデター 笑顔の向く先 神様に祈るあの人との日常 二人きりと匂うは紅茶 未来からのエージェント 未来恋物語~一時の温もり~ お幸せに 未来のお姫様 pure heart 朝比奈みくるの未来 たのしいお買い物  マタ逢ウ日マデ 朝比奈みくるの一人身万歳! 朝比奈みくるの仲裁(らき☆すたパロ要素あり) 涼宮サスペンス劇場~メイドさんは見た~ 朝比奈みくる時空を超えた戦い お姉さんなのです。 朝比奈みくるの総当り戦! 朝比奈みくるのドッキリ大作戦! 朝比奈みくるのレズレズ大作戦! 未来からのメッセージ 未来へのメッセージ 書き初め 運命と選択 『未来を紡ぐ絆』の歌...
  • 缶コーヒー、ふたつ6-7
    「暇潰し」という言葉を思い付くと、部室に足が向いてしまう・・・ 居心地の良さや仲間とのコミュニケーションを求めるというよりは、ある種の習慣的なものに背中を押されている気がする最近の僕だ。 そして今日も、暇潰しの為に部室を訪れる。 無論、特に用事があるわけでも無く。 -こんにちは。 「あら、古泉くん!」 ふむ・・・部室には朝比奈さんしか居ない様だ・・・と、すると長門さんは隣で涼宮さんとキョン君は出掛けたか? とりあえずは、会話を続けるとしよう。 -今日は、だれも居ないんですね? 「ええ、長門さんは隣に居ます。キョン君と涼宮さんは・・・買い出しに行きましたよ?」 -買い出し・・・ですか? 「ええ。部室に蓄えておいた食糧が底をついた、とかで・・・」 なるほど。 そう言えば、ここ最近で何回かキョン君と涼宮さんが、部室でカップ麺を食べて居るのを見た気がしたな。 ところで、僕は最近少し...
  • 雪解けの想い
     『わたし』は今、高校三年間通い慣れた通学路を一人で登っている。  『わたし』の内面はあの頃の延長線上に存在すると言えるけれども、今の『わたし』の外見は、あの頃とは違う。  これは『わたし』がこの世界にもう一度存在するために必要な、訓練の時間。  『わたし』が『わたし』の外見を持ってこの世界に再構成されるには、もう少しだけ、時間がかかる。  そう『わたし』は一度、この世界から消滅している。  同一個体としての連続性を保つ限界が来てしまったから、それは、仕方の無いことだった。  不可避の運命を受け入れることしか出来なかったわたしは、最後の最後に、自分の心に降り積もった感情の全てを凝縮し、たった一言だけ、彼に、想いを伝えることが出来た。  それは前へは続かない、未来を築かない、誰かを縛ることさえ許されない、そのとき限りの、愛の言葉。  そう、なるはずだった。  運命は、変えられないはずだった...
  • I don't choose, but decide. chapter05
    ハルヒの弾んだ声がいつかの朝倉のナイフみたいに胸に突き刺さったような感覚を覚える。ヤバイ。 「待て、追うなハルヒ!いいから家に来るんだ全速力で!」 携帯に向かって叫んだ俺の声は裏返っていた。意味もなく部屋をうろうろと歩き回る。 「っ!ちょっと何そんなに慌ててるのよ…別に追うつもりはないわよ」 さっきから俺を安堵させたりヒヤリとさせたり心臓に悪いヤツだ。ともかく家に来てもらわないと困る。それから古泉や長門に相談して… 「たまたまあんたの家の方に向かってるから尾行してるように見えるだけであって…」 「回り道して来い!」 コイツ、わざとやってるのか? ハルヒのいたずらっぽい小声が、安堵側に傾いていたシーソーをガタンと恐慌側に変える。今健康診断を受けたら確実に不整脈だろうね。 ともかくもうこっちから行くしかない。…例えこれが藤原による心理的揺さぶりだろうと(いかにもそんな悪趣味な事をしそうなヤツ...
  • 長門有希の雨しずく
    長門有希の雨雫 夢を見ていた。 夢、そんなものみないはずなのに、見ていた。 なぜだろうか?なんでそんなことがありえるのだろうか? まず、今のが夢というものなのだろうか、みたことがないので彼女は、 理解することはできるはずがなかった。加えて、内容も理解することができなかった。 いや、理解したくもなかったのだ。あまりにも、突飛すぎていたし、 何よりも凄惨なものだった。 が、しかしこの夢はすぐに消えてしまった。   学校はいつものように、文芸部の部室、兼SOS団の部室に入り、 パイプ椅子にすわって本を読む。それを繰り返していく毎日。 その毎日にいつも彼からの話かけられることがあった。 自分の正体を知りながらも、やさしく声をかけてくる彼。 「今日は何の本をよんでいるんだ?」 「………SF」 「そうか。」 「読む?」 「いや、その量は読める気がしない。」 「……そう」 なぜだろう?もうすこしだけ話し...
  • 『二人だけのクリスマス・イヴ』
    「そういえばそろそろクリスマスね」 カレンダーを見ながら涼宮さんが言う。 「最近、親父が妹の為におもちゃ屋を巡ってるぞ。」 「へぇー妹ちゃんサンタ信じてるのね。」 「もう小五なのにな。」 「いいじゃない。夢があって」 クリスマスか…。サンタさんか…。信じてた頃が懐かしいな。 私はキョンくんと涼宮さんの会話を聞きながら思った。 「私は小四まで信じてたわ。アンタは?」 「小三くらいまで信じてたな」 私もそれぐらいまでサンタさんは居ると思ってたっけ。 「有希は?いつまで信じてた?」 「貴方と同じくらいまで」 本から目を離さないまま長門さんが答えた。…それって嘘ですよね? ふーん、と言いながら涼宮さんは私のほうを見て私に言った。 「みくるちゃんは?」 「私は小四の時まで信じてました」 その言葉にキョンくんは『未来にもそういう風習はあるのか』みたいな顔をした。 「そんなもんよねー。古泉君は?」 「僕...
  • しっと団の野望 ~聖夜の復活~ 後編
    さて、そんなこんなでセントラルタワーに到着しました。 相変わらずカップルがいっぱいです。右を見ても左を見てもイチャイチャイチャイチャ……   「うわぁ、見事にカップルばかりですねぇ、『トゥモロー』。」 「そうですね。みんな死ねばいいのに。」 「し、死ぬって……」 「僕も同意見だよ『トゥモロー』。  もし僕にデ○ノートと死神の目があったなら、目につく人の名前をかたっぱしから書いてしまいたい衝動にかられている。  自分でもよく自制していると思うよ。」 「み、みなさん発想が恐ろしすぎます!!」   でもセントラルタワーと言ってもとても広いですし人も多いです。どうやってあの二人を探しましょうか……   「それには心配いらないよ。」 「どうしてですか?『ソクラテス』。」 「僕には今のキョンの場所が手に取るようにわかる。反応しているからさ……僕の中の「キョンレーダー」が!」   キョ……キョンレーダー...
  • SOS団のメタボ4
    「世界がピザになってしまったことに気づいたのは、涼宮さんと縁のあった私だけでした」  深夜の街路。俺と古泉の前に突如現れたキングスライム……もとい、朝比奈さん (大) はため息まじりにそう呟いた。 「私は涼宮さんの情報改竄に、耐性というか免疫というか、そういうものがあったんだと思います。ある瞬間を境に世界が、この時間軸から見て未来の世界がデブの惑星へと変容してしまったことに私は気づきました」  明日この世の終わりが訪れると悟ってしまったかのような口調で朝比奈さん (大) は肩を落とした。ひどく落胆した様子なのに、顔面の肉が厚すぎてどんな表情をしているかが目視確認できない。  俺と古泉は驚愕のあまり言葉を失ってわなないていた。最悪の場合、世界はピザになってしまうと予想していたが、よもやこれほどとは……。果たして目の前の未来人の女性と思われる肉の塊は、無事日常生活を送っていけているのだろうか...
  • ハリネズミな僕たち
    SOS団部室。   授業が終わり放課後になると、約束があるわけでもなく誰ともなく所属団員は集まってくる集いの場。 今日もそれは違えず、団長を含む四人は全員出席していた。 涼宮ハルヒ。キョン。古泉一樹。長門有希。 去年までなら唯一年上の先輩だった朝比奈みくるも居たはずなのだが、学校を卒業してしまった為に、部室には顔を見せなくなっている。 無論、SOS団に一度入部させられたからには卒業如きでは簡単に解放されず、土日に開催される不思議探索には行動を共にしているのだが。少なくとも彼女達が卒業してSOS団が解散するまでは、付き合うことは規定事項だろう。 「ちょっとキョン、次の探索日なんだけどみくるちゃんにコレを着させてみない?」 「お前は朝比奈さんに一生物のトラウマをこれ以上刻み付ける気か? 却下だ馬鹿者」 「なによっ――!! 団長の意見に反対する気?」 仲良く肩を並べながらパソコンの画面を覗き見...
  • 余ったピース・足りない欠片2
    【余ったピース】   キョンは昨日、なにかいいことでもあったのか、こころもち顔が上むいている 「キョン!」 「なんだ」 「あたし、今日 用事があるから SOS団の活動は中止 みんなに伝えておいてね」 「ああ わかった 昼休みにでも伝えとくよ」   まあ、いつものキョンね、昨日顔が暗かったのは、岡部になにかいわれたんでしょ、 あいかわらず試験にでるぞ、みたいな、はっぱをかけられながら、授業が進む、 今日は時間が少し遅くない? 浮かれてるのか、あたし   別に古泉君とはデートって訳じゃない、別に誰かに後ろめたいことがある わけじゃない、そう、有希をちょっとだけ、出し抜いてやろうと準備しているだけ なんだこの言い訳みたいなものは 前の席のキョンは、さすがに昨日絞られたみたいで、まじめに授業を聞いているみたい、 同じ授業にでていて、なんでこいつは、成績よくないんだろう、これも不思議ね   最後の...
  • 涼宮ハルヒの日記
    いつもの放課後のSOS団の活動中の事だ。 日頃のフラストレーション溜まっていたのだろうか? 自分でも理解不能なイライラの全てを我等が団長涼宮ハルヒにぶつけていた。 俺が冷静さを取り戻した時にはもう部室にハルヒの姿は無く、背後に3つの憤怒のオーラを感じた。 俺は恐る恐るそのオーラがする方へ振り向いた。 その瞬間、いきなり長門が広辞苑の角で俺の頭を殴った。 なにしやがる!?と言おうとしたら今度は朝比奈さんがお茶入りの湯飲みを投げつけてきた。 それから逃げようとしたら古泉が俺の前に立ちはだかり俺の胸倉を掴んでこう言った。 「何やってるんですか!?今回の事はどう見てもあなたに全ての非がありますよ!今度こんな事したら閉鎖空間に置き去りにしますからね!!」 見事なジェット○トリームアタックだな。 いや、そうじゃない・・・ 「何やってるのかだと!?それは俺自身が一番知りたいさ!!」 そう言って古泉の手を...
  • 永遠を誓うまで(本編)
    今日はあたしの高校の卒業式だ。 どこまでも青く晴れ渡る空の下、あたしはいつもと同じように高校へと向かって歩いている。 高校生活も今日で終わりかと思うと、少し寂しい気もするが、かといって高校での学生生活が充実していたかというとそうでもない。 毎週毎週が同じことの繰り返し、単調で退屈な日々を苦痛に思ったことは何度もあった。よく言えば無難な学生生活だったが、何の刺激もない毎日にいいかげんうんざりしていたのを、昨日のことのように思い出す。 せめて大学生活ぐらいは、充実した日々を送りたい。そう切に願いつつも、大学生活といえども、それほどたいした事があるわけではないだろうと、冷めた目で見ている自分がいるのも事実だ。 まあ、大学生になったからといって、そうそう刺激的なことが毎日あるわけはないだろう。 あたしはいつからこんなに自分の人生を達観して見つめるようになったのだろうか。小さい頃、あたしが中学生...
  • SOS団の無職7
    前回のあらすじ  キョンは己の弱さに打ち勝ち、ついに実家へ帰る決意をかためました。これも長門と妹のおかげです。  家にこもって悶々と悩んでいても見出せなかったある種の答えが、キョンには見えたような気がしました。気のせいかもしれませんが。  キョンが家に帰ってからしばらくの間は、いつもと何の変化もない平和な時が続くのでした。     ~~~~~     「わっ!」  俺は思わず声をあげ、一口で頬張ったギョウザを吐き出した。 「わっ! わっ! わっ!」  ばたばたと洗面所の前まで走って行き、汗ばんだ手で蛇口をひねるとコップを使うのももどかしく、蛇口に口をつけてガブガブと水を口にふくんだ。  口端から唾液をもらいながらうがいをし、ベッと口をゆすいだ水を吐き出す。冷たい水道水と一緒に、細かくちぎれたギョウザの具が洗面所の底へ消えていく。 「どうしよう! どうしよう!」  うがいをしても口の...
  • 長門有希の報告Extra.5
    Extra.5 涼宮ハルヒの戦後  わたしは喜緑江美里から、涼宮ハルヒと朝比奈みくるが戦闘を開始したという連絡を受けると、『彼』と古泉一樹を先に帰した。 「今日の活動は無くなったと言われた。」 「そうか。ほな、先に帰るわ。また明日な。」 【そうか。じゃあ、先に帰るぞ。また明日な。】 「ほんなら、お先に帰らしてもらいますよって。」 【それじゃあ、お先に失礼いたします。】  そう言うと、二人は帰途につく。それからしばらくして、 『終わりましたよ。』  江美里から連絡が入った。 『部室の中は凄まじい有様ですね。二人もぼろぼろです。』 『余り大規模な情報改変は推奨できない。』 『分かってますよ。致命的な損傷や損壊だけ修復して、後はそのままにします。』  しばし間。 『二人を保健室に連れて行きます。あなたはどうしますか? 長門さん。』 『わたしも保健室に向かう。』  わたしは、保健室に向かった。扉...
  • SOS団の旅行
    バンッ! ハルヒ「旅行へ行くわよ!!」 ハルヒ・・・・・・ なぜこんな暑い日に旅行する気になるのだろう。 大体少しはドアの開け方を改めてほしいものだな ・・・・とこいつどこに行く気だ・・? 古泉、朝比奈さん長門は質問を一切しないので 仕方なく俺がする・・・ まぁ毎回の事か キョン「どこへ行く気だ?」 ハルヒ「まだ決まってないわ。だから今ここでミーティングするんでしょ」 朝比奈さんにホワイトボードの前に立つように命じると ハルヒ「じゃあみんなの行きたい所聞かせて頂戴!まずは古泉君から!」 古泉「僕は皆さんが行きたい所でいいですよ。愉快な旅を祈ります」 なにが愉快な旅だ ニヤケ面のお前がいると毎回面倒だ ハルヒ「う~ん、じゃあ有希は?」 長門「・・・・・・どこでもいい」 まぁ長門はこんな事しか言わないのはお約束だ ハルヒ「・・・あら、そう?じゃあみくるちゃんは?」 朝...
  • テキサスシュール勃起物語
     むっかしーむかしー古泉はー 古泉「おや、女の子がいじめられていますね」  彼の名前は古泉一樹。しがないサラリーマンエスパーだ。  そんな彼は晴れやかな天気の今日、獲物を求めて海岸を歩いていた。  日本海が似合う渋い男を物色していたのである。  しかし見つけたのは、数名のガキにいじめられている女の子だった。  無視しよう。  ていうか、ガキの男の子の方を攫ってしまおう、フヒヒ!  そう考えた古泉でしたが、やはり女の子を助けてあげることにしました。  たまには人助けもいいでしょう。  最近大根で色々と懲りていた彼は、なけなしの善意を振り絞ったのです。 古泉「おい、ガキ。やめないと俺のバルカン砲が火を噴くぞ」  アナルをガキに向けてドスの聞いた声をだします。  バルカンの弾はウンコです。  これを食らえば、スカトローンな人以外はひとたまりもありません。 ガキ「わぁー! ほんまもんの変...
  • 余ったピース・足りない欠片3
    【余ったピース】   昨晩あんなに月が綺麗にでていたのに、今日は朝からどんよりした曇り空、天気予報では 午後から雨になるそうだ。   あいつにどんな顔して会えばいいだろう 昨日のことどう切り出そうと思っているうちにあいつがやってきた   「ハルヒ 今日の部活なんだけどな」   なに、ひょっとして怒ってるの   「妹の奴が昨日から風邪ひいちまってな、家にいてやりたいんだ、申し訳ないけど欠席って ことでいいかな」   「妹ちゃん、風邪なの、放課後とはいわずに、こんなことに居ないで、傍にいてあげれば いいじゃないの」   「こんなことってのもないだろ、授業まで休んで看病するほどじゃなし、午前中は親もいる、 こっちまで休むんじゃ、あいつもかえって気をつかうそうだ」   なにいってんの、兄妹そろってへそ曲がりね、素直にいてあげればいいのに   「あ、そうだ、昨日鶴屋さんに会ってな、今年のクリパ宜しく...
  • スノーホワイト・レクイエム4
      かたかた、かた。 単調なタイプの音。ブラインドタッチが出来るほど、慣れているわけでもなかった。手慰みに始めて、今はほんの少しだけ上達した。旧式のデスクトップパソコンだからそれほど機能があるわけでもない。インターネットにも繋がっていない、開いて使えるのはペイントソフトやワードソフトや、それくらいのものだ。 わたしは人気のない部室で、文章を打っている。何の気なしに初めて、それから誰もいないときに、密かに少しずつ打つようになった。単語が並ぶ、接続詞がつながる、変換キーを押す。途切れ途切れに書き始めた、拙いなりの物語。誰も知らない、わたしだけの作品。完成の目処も立ってはいないし、ほとんど勢いで始めたものだから起承転結もぐちゃぐちゃで、とても人に見せられたものじゃない。それでも。  ――着想は、とても単純。  以前、改めて読み直してみたグリム童話に、子供だましと思っていてもいつのまにか引...
  • 凉宮ハルヒの休日@コーヒーふたつ
    ━━━━最近、冷え込みが厳しくなって来たせいだろうか、起きぬけの布団の中の温もりが愛しくてしょうがない。 目覚めてからの数分間の至福の一時・・・ そして日曜日の朝の今、俺はこの愛しき温もりを存分に堪能するのだ。 忙しい平日の朝には叶わない、細やかな贅沢。 しかし、この至福の一時には日曜と言えども、僅ながら制限が課せられている。 ほら、その『制限』が廊下をパタパタと走りながらそろそろ来る頃だ・・・ 朝のアニメを目当てに、無駄に早起きな『制限』がっ! ・・・「キョン君~おきろぉ~っ!」━━━━━━ 【凉宮ハルヒの休日@コーヒーふたつ】 俺は、毛布の裾を強く握りしめ、来たるべき妹の猛攻に備えた。 (だいたい「一緒にマイメロ観ようよ~」とか言いながら布団をひっ剥がすか、布団越しに俺の上に乗って飛び跳ねるんだよな・・・) ここで持ち堪えれば、昼までぬくぬくと布団の中で過ごせる。 俺は体制を...
  • 【朝比奈みくるの妊娠】
    朝比奈みくるの妊娠 私、朝比奈みくるといいます。西暦2XXX年、涼宮新暦XXX年の地球連邦政府内務省直属機関、 惑星公安委員会時空管理事務局の諜報員です。 涼宮新暦っていうのは今から…あっ今って言うのは私と涼宮さん達がいる時間平面のことで、そこから3年前、 つまり涼宮さんがこの宇宙を創造したとされる年を0年にした暦のことです。 ここで私は涼宮さんについて色々調べるように言われたんですが、私ったらドジばっかり。 そういう訳だからこの時間平面上の権限が小さくて禁則事項も多いんです。 この時間平面上の人達との接触は最大限控えないといけないの。私も頑張って早く権限を拡大しなくちゃ。 同時間平面上に派遣された他の先輩諜報員さん達みたいになるんだぁ!辛くても頑張れます! だってこの時間平面上には… 「キョン君…」 キョン君の写真にキスをしておやすみをすると明日も頑張れるんです。でも… ―――私が彼...
  • 涼宮ハルヒの抹消 プロローグ
     結局のところどうなんだ。  世界は静まったのか。春にあった佐々木の件が本当に最後なのか。  そんなもんは解らん。古泉にだって解らんのだから、スナネズミ並の思索能力しかない俺ごときに解るわけがない。  ないのだが。    世界が静かすぎるのか?   俺の胸には妙な焦燥がある。晴天の霹靂なんて恐ろしい言葉を思いついちまったが、まさか今の静かな状態が台風の目から見える青空のようなつかの間のものではないだろうな。そうであってはならん。せっかくSOS団内外にごろごろしてた問題が一段落したってのに、それは実は暴風域の中心に入っただけですよなんてのは俺が断るぜ。    特に長門には絶対休養が必要なんだ。  俺が気を遣っていることは遣っているが、そんな程度のことが長門のような宇宙存在の気休めになってくれるとは思いがたい。できることなら、一日でもいいからあいつをハルヒの監視任務から逃れられるような快適な...
  • 凉宮ハルヒの編物@コーヒーふたつ
    …━━━━もうすぐクリスマスがやってくる…。 …街中が恋とプレゼントの話題で騒がしい。 ところで…「手編みのマフラーとかセーターとか…貰うと結構困るよね…」なんて言う輩を希に見掛ける昨今…… 実を言うと俺は、そういったプレゼントに僅かながらも、密かに憧れを抱いていたりするのだった━━━━━… 【凉宮ハルヒの編物@コーヒーふたつ】 吐息も凍る様な、寒空の朝… 俺は、相も変わらずいつもの公園でハルヒを待っていた。 つい先程まで、自転車を走らせる事により体温を気温と反比例させる事が出来ていた俺だが、公園に辿り着いてから暫くの間に指先は痺れる様な寒さを感じ始めていた。 (まったく…こんな日に限って待たせる…) 大体…ハルヒの奴はいつもそうだ。 来て欲しい時に来なくて、来て欲しくない時に限って現れる… 「まったく…俺に何か恨みでもあるのか…」 「ん?何か言ったかしら?」 「…………へ?…...
  • 桃色空間奮闘記 ~ドラゴンクォーター~
    本日は日曜日。 時刻は午後12時30分。 僕の粋で鯔背な作戦により、なんとか世界崩壊は免れたものの その後再び発生した桃色空間の中で、僕たちは再び絶体絶命の危機に瀕していた。 森さんの得体の知れない号令パワーでモチベーションが上がっている我々超能力集団は 前回と同じく浮かれ暴れまわれる桃色神人ちゃんを次々と倒していった。 今回はわりと早く済みそうだな… と、口には出さないものの僕も仲間も全員そう考えていたその時 ヤツは現れた。   『ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』   まるでヒスを起こしたエヴァンゲリオンのような激しい雄叫び。 他のと比べ一段と巨大なその神人ちゃんは、出現するやいなや 突然激しいダンスを踊り始め、倒しにかかる僕の仲間たちを次々と弾き飛ばしていった。 「ちぃっ、コイツ、手強いわね…!」 森さんが悪態をつく。 もう既にほとんどの仲間が戦闘不能に陥...
  • 涼宮ハルヒの分身 プロローグ
      プロローグ   秋。 季語で言うならば7、8、9月に属するその季節も、時代の進行というか価値観の違いというかで、俺の中では9、10、11月が秋だと認識されている。しかしどういうわけか、今年は秋があったのかどうかを疑うような気温で、これもまたお偉い団長様が何かしでかす予兆ではないかと疑ったが、奴の精神専門である古泉曰く 「彼女の精神状態はとても良いままですよ。閉鎖空間も今のところ、大規模で発生しておりませんし」 らしい。しかし、ハルヒは温厚平和な日常が嫌いなはた迷惑な奴だ。いつ何をしでかすか分からん。秋といえば読書、芸術、食欲。映画が芸術に入るのなら、まだ2つも不安要素が残っている。これは何か来るぞ、と俺はノストラダムスの予言が今更になって頭上に降り注いでくるかもしれないと言った心持ちで待機していた。 つまり俺は、涼宮ハルヒという人物に出会ってから、確実に用心深い人間へと成長して...
  • コーヒーシリーズ
    [涼宮ハルヒ編]    朝起きるとハルヒが台所でコーヒーを煎れていた。おはよう、と朝の常套句を口にしながら俺はベッドから起き上がってハルヒの隣に並ぶ。 「あら別にまだ寝てていいのよ。今日は日曜だしね。コーヒーなら今持ってくし」    未だ寝ぼけ眼の俺は薄い意識の中で確かに俺が特にやれることはないと判断し、そうか悪いな、と言ってまたベッドに座る。    まもなくかちゃかちゃと静かな金属音を響かせながら両手にコーヒーを持ってきたハルヒは俺の横に座り片方のコーヒーを俺に差し出す。    コーヒーを飲むと体が内側から暖かくなっていく気がする。毎朝の習慣になってしまったこの短い二人のお茶会がなくては俺の朝は始まらないと言っても過言では無いと思う。 「新しい一日の始まりね」    ハルヒは穏やかに言ってカップに口をつけた。 「そうだな。新しい一日の始まりだ」    俺は穏やかに言ってカップに口をつ...
  • 魔法の言葉~would you marry me?~
    「僕がこの時間平面で行ったことは無駄に終わったが、一つだけ言えることがある。……キミと過ごした時間は、無意味じゃない」 「限られた条件下でなくとも、キミには私の傍にいてもらいたい―――そう思っているのは、こちらだけだろうか? ああ、人はそれを確かめるために……自分の気持ちを伝えようとするのだな」 「もしこれが叶わぬ想いだとしても、僕にはそれを捨てることなど出来ないのですよ。願いは届かないかもしれない――そう思ってしまえば、人は星に願うことを止めてしまいますから」 ―――藤原くん。会長。……古泉くん。 「わたしは、人を好きになるという感情を知りませんでした。でもそれは人も同じで、みんな誰かから愛情を教えて貰うのですね。あなたは……わたしにそれを教えてくれました」 「人間はさあ、よく『愛とは求めるものでなく、惜しみなく与えるものだ』って言うけど、わたしには無理。だってあなたにあ...
  • もしも、キョンが……
      ~もしもキョンが……~   これは、キョンが変貌するお話 いわゆる電波的なベクトルにいってるかも 嫌な人は、読まないようにしてください 生粋の電波小説より、少し、幾分か、そこはかとなく、マシな仕様のはず でも、電波が嫌なら読まないほうがいいでしょう、キャラも少し壊れるかも   また、これは短編連作 作者の気分とインスピレーションによって続きが   世界は偶然に支配され 物語は偶然で紡がれる   そんなお話 まゆに皺を作りながら 読んではなりません ぼけーっとしながら、読むのがベスト   第壱号作「長門とちぇんじ」     第弐号作「みくるとちぇんじ」     第参号作「古泉とちぇんじ」     第肆号作「ハルヒとちぇんじⅰ」         「ハルヒとちぇんじⅱ」  
  • スノウマーチ
     それは、とても残酷な告白だった。  けれどもそれは、どうしようもない事実でも有った。  事実を告げ頭を下げた既に卒業してしまった上級生に対して、僕等はそれ以上何かを言うことが出来なかった。  帰り道、暫くの間僕等は無言だった。  突きつけられた重い現実は、僕等にはどうすることも出来ない。  僕等に、そんな力は無い。 「ねえ、古泉くん」  沈黙を破ったのは、涼宮さんの方だった。 「何ですか?」 「古泉くんは、どうしたい?」 「どう、と言われましても……」 「どうにも出来ないって思ってるの?」 「……そうかも知れません」 「それって、悔しくない?」 「悔しいですよ。……でも、悔しいと思う以上のことは、出来ないでしょう」 「それは、そうだけど……。そうね、じゃあ、こうしましょう!」  涼宮さんが、ぱっと笑顔になる。  何か面白いことを思いついたときと同じ、満開の花のような笑顔。  今は、そこ...
  • 古泉一樹の代理
    彼が消えた。   なぜかと言われれば原因は明確で、彼に酌量すべき点もあるのですが、彼女の能力を知る者としては少々軽率な行動の果てに彼は文字通り痕跡すら残さずに完全に消失してしまった次第でして、なぜ僕がこうして彼の代わりを務めているのかと言われましても、いないのだから仕方がないとしか。  さて、事の発端は我らがSOS団による初の映像作品の撮影現場でのことです。 涼宮超監督の指揮の下、撮影に勤しんでいた我々ですが、涼宮さんの演技指導が徐々にヒートアップし、主演女優である朝比奈さんもメキシコ産の火が付く水によって熱を帯び、とうとう濡れ場の撮影を行うと言ったところで彼がストップをかけました。 「古泉くん、いいからキスしなさい。もちろんマウストゥマウスで!」 「やめろ、古泉」 はい、もちろんですとも。僕には荷が重すぎますので。 「なによ、邪魔しないでよ!これか...
  • Desire where it doesn't disappear (古泉視点)
       灰色に包まれた世界の中心で、僕は漸く一息をつくことができた。  激しい動作に軋みを上げていた強張った身体から、ゆっくりと緊迫感が抜けていき、空白を埋めるように安堵感が染み渡っていく。 「これで今日は通算して七回目ですか。やれやれ、彼と涼宮さんには困ったものですね」    時間は深夜を過ぎ去り、朝方近くになりつつある。そろそろ眩しく輝く朝日を拝める瞬間に立ち会えるだろう。  神人退治。閉鎖空間。願望実現能力。神たる少女である涼宮ハルヒ。そして神たる少女に選ばれた、鍵なる少年。  この状況に関する単語の羅列を浮かべては流していく。  意味があっての行為ではなく、ほとんど睡眠を取れなかった頭が寝惚けて無意識に思考を垂れ流しているだけである。 「流石に眠いですね……。久方振りでしたので油断していましたか。僕も精進が足りませんね」    霞が掛かったようにぼやける頭を目覚めさせるために頭を...
  • 古泉一樹の出会い
    「そう思わない?古泉君!」 「まったくその通りかと」 そう返した僕に彼は不満そうに話し掛けてきた 「お前は自分の意志が無いのか。何でもかんでもハルヒの言う事聞きやがって」 「僕は自分の意志で涼宮さんに同意していますよ?」 「俺には例の空間を発生させない為に無理矢理同意してるようにしか見えん」 涼宮さんに聞かれたら不味い話題のせいか彼は小声になる。 涼宮さんは朝比奈さんと喋り始めた・・・というか苛め始めたから 小声で話していれば彼女には聞こえないだろう。 「そんなことないですよ。 それに彼女が考えることは面白いことばかりじゃないですか?」 「あいつの考えてることは人に迷惑かけることだけだろ。」 「ちょっとみくるちゃん暴れないの!!」 いきなり涼宮さんが叫ぶ。 彼はそれを合図かのように椅子から立ち上がると涼宮さんを止めにはいった。 確かに涼宮さんの機嫌をとるために彼女の意見に賛成することはある...
  • Happiness! 後編
    十二月二十四日(金曜日)   今日はいつもより寒い感じの中に目がさめた。だが起きたのは十時。当たり前だが、妹が起こしに来るわけもなく、自然に目がさめたのも充分寝たからなのだろう。 本来ならば今日は終業式。妹もちょうど俺が出ていく頃には帰って来るであろう。   昨日は今頃に集合だったのだが、今日は違ったのでこんな時間まで眠ることができた。   昨日、あの後ハルヒを連れてゲーセンに行き、連れて行った俺の方が疲れる事態になり、その後ハルヒを家まで送っていき、なんともハードな一日を終えたのだった。   ハルヒの家に到着し、別れ際に、 『明日は午後からでいいわ。そうね…明日午後二時に今日と同じように集合!遅れたら、死刑なんだから!』 と、指で銃をつくってバンっと撃って見せた。何をそんなガキみたいな…まぁ可愛らしいくもあるが…   それなのでまだ時間はある。とりあえずのんびり準備しながら、昼食の準...
  • ねこ保守~吾輩はねこである~
      まだ名前のない私。誰の為でもなく、ただ生きている。 それはなんだかとても楽であり、けれど悲しくもある。 しとしと。 雨が落ちる音。 ふやけたダンボールの居心地は、酷く悪い。 けれど此所――いわゆるコンビニエンスストアの側から離れる事で起こり得る、宿や空腹に対する愁いが私を引き止める。 ――――まぁ、どうにかなるだろう。 そんな程度の悩み。 ほとほと。 毛から水が垂れる音。 「……ねこ」 小柄な女の子が、ぽつりと零す。 ……やば、見つかった。 この雨の中を逃げる気力はないのだけれど、どうするべきだろうか。 先日受けた小さな手足からの様々な暴行を思いだしながら、私は相手を観察する。 澄んだ目をした少女だった。 後ろに背の高い少年を従えて、こちらを見据えていて。 なんだかひどく蠱惑的な手で、傘とビニール袋を握っている。 雨の似合う少女だった。 今が冬ならば、降...
  • 恋は盲目 第三章
    第三章 ふと、我に返るとあたしは保健室のベッドの上にいた。一瞬、自分の置かれている状況が理解できなかった。 しばらくすると、混乱した頭から断片的に記憶がよみがえってくる。 閉鎖空間から戻った後、屋上で泣き叫んでいたあたしを見回りに来た教師が見つけ、保健室まで連れて来たのだ。 授業中にもかかわらず、屋上にいたあたしを咎めもせずに保健室に連れてきたことから、 そのときのあたしの様子が、とても尋常ではなかっただろうことは、容易に想像できた。 時計を確認すると、もう授業はすべて終了しており、普段であれば部室で過ごしている時間だった。 あたしはベッドから起き上がるとよろよろとした足取りで部室に向かった。 「もう大丈夫なの、涼宮さん。もう少し休んでいったほうがいいんじゃない」 あたしの様子を見て心配したのか保険の先生が声をかけてくれた。あたしはその呼びかけに返事をせずに保健室を後にした。 部室に行く...
  • I don't choose, but decide. chapter08
    目が醒めてネットカフェのシャワールームで汗を流していると家に帰らないでこうして外泊しているという罪悪感が感じる必要もないのに湧いてくる。 罪悪感というか、ちょっとしたホームシックといったところか。いやホームシックならまだいい、電話なりなんなりで家族や友人と接触できるからな。 俺は今、それらとは絶対に会ってはいけない状況に置かれている。 避けられていたり、遠く離れていたりするんじゃない。自ら会わないように接触を避けなければならんのだ。会おうとすれば会えるのに、会おうとしてはいけない。それが苦しい。 やれやれ、世界改変騒動の時といいどこかで俺に『仲間の大切さ』を思い知らせる為のトラブルをセッティングしてる奴がいるんじゃないか? ……なんてな。自嘲的な笑いが漏れ出る。 二つの意味の自嘲だ。一つは悔しくも俺にとってSOS団をはじめとする仲間達が十日も会わないだけでくじけそうになる程の存在だと認...
  • 古泉一樹の消失
    ―――・・・。 「こんにちは!・・・ふうん、あなたが転校生の、」 また、この夢だ。 僕の記憶にある姿よりも随分と髪の短い、そして何故か北高校のセーラー服を着た彼女が、僕を上から下まで舐め回すように見つめている。 「うん、謎ね。長身のイケメンってところも謎の加点要因だわ!あ、ごめんごめん!自己紹介が遅れたわね!あたし、涼宮ハルヒ!あなたは?」 「古泉一樹です。よろしくお願いします。」 「古泉君ね!よし、行きましょう!」 「えっ、どこへですか?」 「我らがSOS団の活動場所となっている文芸部室へよ!特別に案内してあげるわ!」 そう言って、彼女は僕の手を取る。夢であるはずなのに、この手のぬくもりだけは妙にリアルだ。 「はて、SOS団とは?」 「細かい説明はあとあと!」 強引に僕の腕を引っ張ってずんずんと突き進む。そして、首だけをこちらに向けた彼女が、100万ワットの輝きを持った笑顔を僕に見せる...
  • 缶コーヒー、ふたつ8・前編
    ━━━━沈みかけた夕日が、一日の終わりを告げている。 それにもかかからず僕は、まるで今から一日が始まるかの様に心を踊らせながら、駐車場へと向かっていた。 真冬の夜の訪れを告げる冷たい風が、時たま足早に歩く僕の頬を撫でるが、今はそれさえも心地よい。 そして歩きながら少しだけ、彼女の笑顔を思い出して胸が熱くなるのを感じる。 おそらく…この想いは、何度目かの…━━━━━━━━ 【コーヒーふたつ8・前編】  駐車場へ着いた僕は車に乗り込むと、制服の上着とともに『北高の古泉君』である自分を脱ぎ捨てて、後部座席に用意してあった上着に着替えた。 そして、キーを回してエンジンを始動させながら、ステレオにMDを差し込む。 静かに音楽が始まり、イルミネーションに「JUST A TWO OF US」と表示されたのを確かめると、僕はゆっくりとアクセルを踏み込んだ。 ふと、ハンドルを回しながらどうしようもな...
  • お姉ちゃん
    冬の寒い日。 わたしは自宅の近くの公園で一人、本を読んでいた。たまに、こうして外で本を読む。寒いけど空気が気持ちよく、気分を入れ替えることができるから。 「あっれー!?そこにいるのは有希っこかい?」 「あ……鶴屋さん」 長い髪の綺麗な女性が立っていた。鶴屋さん、とても明るくてかわいい性格をしていて、少し憧れてしまう。 「なにしてるんだい?こんなに寒い中で読書かい?相変わらずの本の虫っぷりだねぇ!!」 ゆったりとした空気の寒い冬に、ほんのりとあたたかい陽が射したような感じ。鶴屋さんと喋ると世界に明るい色がつくような感覚を覚える。 「一緒に読む?」 わたしは尋ねた。たぶん返ってくる返事はNO。だけど聞いておくのが人間の礼儀。 「いやいや!あたしは遠慮しとくっさ!それより有希っこ、一緒にご飯食べにいかないかい?あたしが奢るからさ!」 わたしは少し考えた。確かに昼食はまだ食べていない。でも、わたし...
  • 宙の恋人
    仰ごう、あまつひかりを。 詠おう、叶うならば織姫と彦星の架け橋を願うための歌を。 「……小さい頃は、星の洪水に、飲み込まれてしまうのが夢で……」 熱に浮かされたような声が、輝きのなかに落ちてくる。息を溜め込み、言葉を捜しながら、浴衣姿の古泉一樹は綿菓子のような笑顔を浮かべた。 縁側からは、何の障壁もなく夜空が見通せる。 恒星が、黒いシートにばら撒かれた白い砂のように無数に散在し、光を放っている。天の川と、人が呼称する夜天の星屑。 冷酒の瓶はいつの間にか空になっていて、古泉は酒気を帯びた吐息を漏らし、団子を無心に頬張る長門に半ば寄り掛かりながら、つらつらと語り掛ける。幾らか気を緩ませ、夢でも仰ぐような調子で。 「七夕の日に、ミルキーウェイを素足で渡り、銀河を眺望し、天体を間近で思う存分に観察して……宇宙人と握手するんです。そんな夢を昔、よく見ていました。僕は愛らしい宇宙人に、『ごき...
  • キョンの暴走
    俺は自分の立場を冷静になって考えてみた。 俺はSOS団なる学校側も公に認めてくれない奇妙なサークルに所属している。 その活動たるや全く利益もやりがいもなく、ただ時間と体力の無駄を持て余している。 メンバーは俺と古泉の男二人にハルヒ、朝比奈さん、長門の女子三人。 この女子三人が平均よりは上の美女揃いであり、俺は特にこの女子達に嫌われるということもなく、 上手く付き合っている。むしろこの三人は俺に対して少なからず好意を持っていることは 鈍感な俺でも読み取れる。とくにハルヒと長門はガチだ。今までの奇妙な事件の中でこの二人の 俺に対する気持ちは本物だ。 俺はこんなおいしい状況にいて何故今まで気づかなかったんだ。ちくしょう。 この女子どもといくらでもヤリ放題じゃないか!!!! 女って生き物はエロい男を軽蔑したような目で見るが、その実、男の数倍はエロい生き物なんだぜ? 昨今の少女漫画のエロ化で、そ...
  • 古畑任三郎 VS SOS団 捜査編(後編)
    SIDE キョン   事件から二日後の朝、俺は妹という目覚ましで爽やかとは言えない目覚しで起きて、 いつも通りのハイキングコースを昇っていた。 いつもならここらへんで谷口に声をかけられるな……と考えていたが、 今日はまったく別の人物から声をかけられた。   古畑「んふふふ……キョンさん、おはようございます~。」 キョン「古畑さん……!」   そう、昨日俺達の部室にやってきた、あの怪しげな刑事だった。   キョン「で、何の用ですか?」 古畑「用?いーえー違いますよ、たまたま見つけたんで声をかけさせて頂いただけでして……」   それにしては待ち伏せしてたようにしか思えない。 完全に俺にターゲットを絞っていたんじゃないか?と思うほどだ。   古畑「えー昨日尋ねさせて頂きましたが、なかなかよい部活ですねー。    普段はどのようなことを?」 キョン「活動らしい活動なんてしてないですよ。てきとーに暇...
  • キョンの告白
    皆「王様だーれだっ!」 ハルヒ「あたしよー!じゃあ1番の人、後ろ向いて振り返りながら大好きって言ってー!!」   おぃおぃ待てよ!1番ってまさか・・・ まさかではない。俺の持ってるものには間違いなく1番の文字が。   朝比奈「一番だーれ?」   俺は恐る恐るモノを持ち上げる。 キョン「あ・・・・・俺なんだが・・・」   その瞬間、空気が凍りついた。   しばらくして、古泉はやれやれ、といった様子で肩をすくめるとなぜか部屋から出て行く。 朝比奈さんも赤い顔をして妹を連れて部屋を出て行く。 長門はいつもどおりの表情で部屋を出て行く。   部屋には俺とハルヒだけ。   「なあ・・・ホントに言うのか?」   しばらくして固まっていたハルヒがようやく落ち着いたらしく、答える。   「え…あ…あぁ…た、ただのゲームなんだからねっ!!・・・は、はやく言いなさいよ!!」   やれやれ。本当はもっと後になっ...
  • 涼宮ハルヒの遡及Ⅵ
    涼宮ハルヒの遡及Ⅵ     「ちょっとキョン! 何がどうなったのよ!?」 「んなこと俺が知るか! と言うかこの状況を何とかしないと冷静に考えられるわけないだろ!」  などと大声で叫び合う俺たちの周囲は、巨大なバッタの大群に囲まれてしまっていて逃げ道もねえ!  しかし、こいつらの俺たちの見る目は食料としてではない。まあそれは当然だな。バッタは草食だ。肉には興味がないはずだ。  もっとも、だからと言って俺たちのことを見逃してくれるような気は毛頭無さそうで、明らかにその複眼は敵意で満ちている。 「どうやって切り抜けるのよ……?」 「俺も教えてほしいくらいだ……」  くそ……古泉たちはどこに行っちまいやがったんだ……?  妙な緊張感が場を支配する。ただし、少しでも動きを見せようものなら、あっという間にその沈黙は破られ、これだけの巨体でしかもバッタの習性が失われていないとするならば、間違いなくその脚...
  • 涼宮ハルヒの自覚 「転」
      「あたしも、混ぜてよ。」   昼休み、部室で緊急会合を開いていた俺達の前に、ハルヒが現れた。 ハルヒの顔にいつもの無邪気な笑みは無く、静かに不敵な笑みを浮かべている。 おいおいハルヒ、それはどちらかというと古泉の笑い方だ。お前にそんな笑いは似合わねぇよ。 「いっつもそうやって、あたしを除け者にして面白いことしてたってワケね。」 「なんで朝比奈さんの未来を消した。」 「だって、未来があったらみくるちゃんいつか帰っちゃうじゃない。」   ハルヒはしれっと言ってのけた。そうだ、ハルヒは俺以外の三人の正体についても理解している。 朝比奈さんはいつか未来に帰ってしまうってことも。 でもだからってこれは……ねぇよ。   「涼宮さん、お願いします!未来を返してください!」 「ダーメよ。みくるちゃんは大事なSOS団のマスコットなんだから!未来に帰るなんて許さないわよ!  でもみくるちゃんの未来人設定っ...
  • 長門有希の報告Report.8
    Report.08 長門有希の操作  今日、すること。この流れなら言える。以前試みて、できなかったこと。  ネット上の、彼女に関する個人情報を消去する。  やはり彼女が日常生活を取り戻すためには、この過程は必要となる。情報統合思念体としても、涼宮ハルヒが世間に妙な注目を浴びて、余計なストレスを受けることは好ましくないと大勢は判断している。対処が難しくなるから。  そしてもちろん、わたしという個体も、彼女が日常を取り戻すことを……強く、願っている。  実現のために必要なことは……彼女、涼宮ハルヒの同意。  どのように話を持って行くか。考える。昨日、わたしは彼女と一緒に帰宅するために、彼女に変装……男装をさせた。  そう。彼女は、そのままでは誰かと一緒に歩くことも叶わない。そして何より、彼女の仲間……SOS団に近付くことさえできない。団長であるというのに。このままで良いのか、彼女に問い掛け...
  • 失って気づく幸せ(前編)
    俺はいま、SOS団ご用達の、いつもの喫茶店にいる。 だが、いつものように長門や朝比奈さん、古泉、そしてハルヒの姿はここには無い。 目の前のテーブルには、冷めてしまったコーヒーと、向かいで彼女が飲んでいた冷めたアールグレイティーが残されていた。 つい数日前までは、いつものようにSOS団のメンバーがここに集まり、ハルヒ団長の号令の下に不思議探索を行っていた。 それが今では遠い過去の出来事のように思える。 窓越しに外を眺めると、光陽園学院の女子生徒や北高の学生が、卒業証書の入った筒を手に、帰宅の途についている。 その光景が、俺に今日が自分の卒業式であることを思い出させる。 窓の外の景色から目を逸らし、手前にあるテーブルの上に視線を移すと、テーブルの上には銀色の安っぽい指輪がひとつ無造作に置かれていた。 この指輪は、俺がハルヒの誕生日に贈った最初の、そしておそらく、最後のプレゼントだ。 俺は指輪を...
  • 涼宮ハルヒのOCG(ハルヒ×遊戯王5D`SOCG)
    涼宮ハルヒのOCGⅠ いつもの通り、SOS団は平凡な日常を送っていた。ハルヒはパソコンの前でマウスをせわしなく動かしながら何事かやっていて、長門は黙々と読書、朝比奈さんは最近買ってきた茶の葉についての本を読んでいる。というか朝比奈さん、そんなに一生懸命お茶について勉強しなくてもいいですよ。 ちなみに俺と古泉はいつもの通りゲーム・・・といっても最近はカードゲームだ。小学生の時に流行った○戯王ってやつでな、オセロやチェスにもいい加減飽きたのでここ2週間ぐらいはこれをやってるというわけだ。 「では、手札から緊急テレポートを発動します。デッキからクレボンスを特殊召喚して、フィールドの星3モンスターとシンクロ、マジカルアンドロイドを特殊召喚します。」 おっと、そうはさせるか。特殊召喚時に奈落の落とし穴を発動するぞ。何かチェーンはあるか、古泉。 「残念ながらあ...
  • やさしい嘘(前編)
    「みくるちゃんって嘘が下手よね」 ハニカミながら涼宮ハルヒが朝比奈みくるに発したその一言が、今でもわたしの記憶の中枢部に留まり、事あるごとにその時の情景が思い浮かぶ。まるで、ある種のエラーのように。 それは、普段わたし達のいる文芸部室での何気無い日常のひとコマにしか過ぎず、このときの涼宮ハルヒと朝比奈みくるのやりとりに重大な意味があるわけではない。 だが、この日起こったことは、涼宮ハルヒにとって、そして彼にとって重大な運命の分岐点であったことは間違いないだろう。 このふたりのやりとりのちょうど一時間後、彼が文芸部室にやって来て、涼宮ハルヒではなく、佐々木という自分の幼馴染みを恋人として選んだことを涼宮ハルヒに告げたのだ。 彼の告白を聞いた時の涼宮ハルヒの落胆振りは周囲にいた誰の目にも明らかであった。しばらくの間、誰一人彼女に言葉をかけることもできず、重苦しい空気が辺りを包み、ただ時計の...
  • ミヨキチの暴走
    さて、今俺は危機的状況に立っている。なぜか俺の部屋いて笑いながらも怒気のオーラを出すハルヒと佐々木。 そして仰向けになっている俺の上に跨っている顔が赤いミヨキチ。 何故こうなったかというのは今から説明しよう。始まりはミヨキチからの電話だった。 土曜日の夜、いつもの不思議探索から帰ってきた俺は晩飯までの時間をマッタリと過ごしていると、妹から 「キョン君、電話だよ~」と呼ばれた。誰からだ?「ミヨキチ、キョン君に用事だって」 ミヨキチから?俺は妹から受話器を受け取り、通話ボタンを押した。 「こんばんわ、お兄さん。いま大丈夫ですか?」大丈夫だよ、俺に何か用かい? 「…ハイ、あの、えっと…」 俺の問いかけに対し、何か言い難そうにしていた。それが数秒続いた後に 「あの、相談したいことが…あるんです」 ミヨキチの言葉に俺は疑問に思った。俺に相談?何で?頭の中に無駄に?マークを作り出す俺をよそに、ミヨキチ...
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