涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「小さな、親切」で検索した結果

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  • 小さな、親切
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  • 長編・古泉一樹
    ...童 古泉一樹の私情 小さな、親切 Kiss&Kiss 魔法少女フェアリーユキ 刹那主義 赤ク染マル こいずみくん一斉大売り尽くし そらをとぶこいずみくん 『僕』の覚醒 届かぬ想い 古泉一樹の災難 桃色空間奮闘日記 僕は誰だろう 僕と森さんと時々2ch 夏の少女 教科書文通 うそつきの本音 闇に降る雨 笑顔は癖のような感じですよ 一夏の恋 あらしのよるに 恋愛相談 遊園地と花火 それぞれの愛のかたち 古泉一樹の消失 ゲ泉記 スノーホワイト・レクイエム 私の選んだ人(古森)リスト 2月14日の出来事 3月14日の出来事 古泉一樹の約束 買い物日和 killing me セイブザ・クイーン 違う!恐くない!(古泉×長門) 古泉一樹の休日 紫の髪の女の子  古泉一樹の告白 キャンバス 一つの野心、一つの決意 一本の樹 夢見ぬ蛙は終末に鳴く Desire where it doesn ...
  • 小さな罪人
     夜中の12時。わたしはハサミを持って部屋を出た。どこに行くのって?  わたしのお兄ちゃん、キョンくんの部屋に行くの。  今日は、キョンくんの部屋にはハルにゃんが泊まりに来てる。あたしの敵、ハルにゃん。  キョンくんはわたしだけの物なのに……絶対に譲らないもん。  こっそりとドアをほんの少し開けて、中を覗くと……えぇっ!? 「んっ……キョン、ちょっと痛い……」 「あ、悪い。……ゆっくり動くぞ、ハルヒ」 「んっ、あっ……気持ちいい……」  危ない……声が出ちゃいそうだった……。何やってるかは子どものわたしでもわかる。  キョンくんが隠してるエッチな本とかに載ってるようなことを二人でしてる。  最低だよ、キョンくん。ハルにゃんも。隣りの部屋にわたしがいるのに……。  ほんとは、二人が寝てから行こうと思ったけど……決めた。邪魔しちゃうもん。  だって、キョンくんを取られたくないから。  わたしは...
  • 小さな初恋
    わたしの初恋の相手はお兄ちゃん。 わたしの大好きな大好きなお兄ちゃん、キョンくん。 ねぼすけで、ぶっきらぼうで、全然家に居てくれなくて、一人言が多い。 だけど、優しくてかっこいいの。わたしの事をいつも気遣ってくれて、イタズラしても許してくれるキョンくんが大好き。 でも、わたしは小学6年生の妹でキョンくんは高校2年生のお兄ちゃん。 だからわたしの初恋が実ることなんてないの。キョンくんと一緒にいれる時間が一番長いのがわたしだから良いんだけど……。 最近はずっとハルにゃんと一緒に居るからわたしはシャミとお留守番ばっかり。 わたしだけの特権が一つなくなっちゃった。 学校から帰って来るのも遅いし、土曜日は探索、日曜日はハルにゃんと一緒に居る。 わたしだってたまにはキョンくんに甘えたいよぉ……。   「朝だよ!起きてよ、キョンくん!!」 これはわたしの毎朝の日課で、唯一のこったわたしの特権。 「朝ごは...
  • 長門有希の報告Report.26
    Report.26 長門有希の報告  観測結果に対する所見を述べる。まず、以下に挿話を示す。    未来からの監視員、朝比奈みくる。  彼女には大変世話になった。多大な迷惑も掛けた。何かお礼をしたいと思った。どうすれば良いか、様々な検討を行う。  その時、わたしの記憶領域に、彼女がお茶を淹れる姿が映し出された。それは、いつもの風景。SOS団の日常。そして、それに見合う、あるものが『連想』された。  わたしは答えを見付けた。わたしはすぐに行動を開始した。  数日後。放課後の部室で、わたしはみくるに、部活後少し残ってほしい旨を書いた栞をそっと渡した。わたしが本を閉じると、それを合図に活動が終了した。着替えるみくるを残して、他の皆は帰途についた。  皆が退室した後、みくるは言った。 「長門さん……『アレ』ですか?」  わたしは首を横に振った。 「ちがう。」  そして彼女の瞳を見つめて...
  • 長門有希の消失 第三章
     第三章   朝の光に照らしつけられる前に、わたしは起きあがった。時計は四時を差している。一般人の朝には早すぎる時間だ。普通ならもう一度布団をかぶるところだろう。  けれどわたしは、二度寝をしようと思ったり、ましてやおとといのように散歩に出かけようと思ったりすることはなかった。  それよりもやっておくべき作業が残っていた。  さっきの彼女との会話。そこで、わたしは自分が所詮『わたし』に似せてつくられた人形に過ぎないかもしれないという恐ろしい幻想を抱いてしまった。わたしの存在は彼女に頼らずしては成り立たないかもしれない。わたしは今からそれを証明しに行くのだ。怖い物見たさという感情なのかもしれない。  リビングは薄暗かった。曖昧な光がどこかから射している。わたしは部屋の電気をつけて窓を開け、灰色の街の様子を眺めた後パソコンに歩み寄った。もう古くなったノートパソコン。買ったのはいつだったか...
  • 教科書文通3
    「できれば、〝彼〟や涼宮ハルヒ、朝比奈みくるには黙っていて欲しい。」  長門さんに教科書を貸した後の英語の授業の最中、僕はいつかの様に僕の教科書を抱きかかえた長門さんの台詞を何べんも反芻していた。 最初は、長門さんの教科書は一体どこへ行ってしまったのか、本当に盗まれてしまったのだろうか、では、一体だれが? などと、一通り考えてはいたのだが、思考は確実に先ほどの会話へ流されていく。 「涼宮ハルヒや〝彼〟は私に対して、少し過保護すぎると思われる面がある。 盗難されたと決まったわけではない、騒ぎを大きくしたくない。 第一、涼宮ハルヒが何かしらの怒りを覚えると、それはすなわち……あなたの苦労に繋がる。 それはいや。 朝比奈みくるは隠し事に向いていない。 それが彼女のいいところ。」  喋り方は相変わらず淡々としていたがその内容は、SOS団のメンバーのことをよく見て考えて、 なおかつ、自分が周り...
  • 寝苦しさ
     綺麗な場所を見つけたから、今日は気持ちがいい。  場所は言わない。秘密だから。 都会の雨は気まぐれで、なにか洗い流すように降ったり、なにかを閉ざすように降ったり、などなど。 、、昼に。小雨なんかを通して見る街は異国のようで、まさに今そうなのだが、スキップしたくなるようなあれだ。 傘の柄が冷たいままで、たまに襟足なんかに当たって、いやだ。 その上。どこに引っかかるのか。髪の毛が一本抜け、また抜け。この傘は不良品ですか?この骨には粘着剤でも着いているのか? 折り畳み傘は小さいから仕方が無い。畳んで丸めて叩いて縛って手に持ってみたら、何も隠すことはないらしかった空が、きらきらと輝いていた。 春だから、雨が当たっても風邪はひかないのだ。 ビルと雲の間に太陽が燃えている。  そう。気持ちがいい日は散歩したくなるものだ。  さっきは諸事情で市役所...
  • 長門有希の消失 プロローグ
     プロローグ      空から白いものが落ちてきた。たくさんの、小さな、不安定な、水の結晶。それらは地表に落ちて消えゆく。  時空に溢れている奇蹟の一つだった。この世界には奇蹟がありふれている。私はずっと立ち止まっていた。時間の経過は意味をなさなくなっていた。  綿を連ねるような奇蹟は後から後から降り続く。  これを私の名前としよう。  そう思い、思ったことで私は幽霊でなくなった。    ここまで書いたところでキーボードを叩く手を止めた。小刻みに震える手のひらを頬にあてたら、じんわりとした冷たさが浸みていった。大きく息を吸い込むと透き通った空気が鼻腔を刺激する。冬はすぐ目の前にあった。  部屋の大きな窓から見渡す街には、薄く灰色の靄がかかっている。ドラマか何かの演出みたいに、嘘のように街を覆い尽くす靄。その靄は、やがてかすかな光を飲み込み、またその光に照らされて、街全体を無数のきらめき...
  • あるカップルの優劣
    「あ~あ~!わかったよ!俺が行ってくるよ!まったくお前はいつでも勝手だな!」 俺はそう言うと自分の部屋を出た。 俺はハルヒと付き合っている。だが、ケンカばかりだ。 今も飲み物をどっちが買いに行くかという些細な事でケンカになった。 実際、かなり怒ったが……ほんとは、ケンカなんてしたくない。いつもハルヒと触れ合って、優しく笑い合いたいだけなのに素直になれないんだよな。 「……いけね、財布忘れちまった」 俺は溜息と同時に呟いた。 また、ハルヒにどやされるな。今回は『あんたはいつも抜けてんのよ!マヌケ!』かな。 俺はゆっくりと一歩ずつ階段を登った。 ドアの前、防音のなってない扉の向こうからちょっとした泣き声が聞こえてきた。 「ぐすっ……、なんで……上手くいかないんだろうね、シャミセン」 ハルヒはシャミセンに向かって話しかけているようだ。 しばらくの間、ドアの外で様子を窺うことにした。   「あたし...
  • ポケットの中
    『ポケットの中』 困った。 宿題が、数学の問題がわからない。 週明けの授業では確実に当たる上に、小テストも実施するとか言ってやがったし、あの数学教師の野郎……。 昨日のうちに国木田にいろいろと聞いておけばよかったが、今日は家族とどこかに出かけるといっていたから教えてもらうこともできないし、谷口は俺と同じレベルのはずだからアテにはできん。 ハルヒに頼ると、宿題や勉強のことなどそっちのけで大騒ぎを始めるに決まっている。朝比奈さんは一学年上ではあるが、文系科目ならまだしも、数学は触れてはならない禁則事項の一つみたいだし、古泉に聞けば普通に教えてくれるだろうがなんとなく癪だ。ふん。 そう、こういうときはとてつもなく頼りになる上に安全・安心・人畜無害なスーパーアンドロイドの宇宙人にお願いするのが一番だ。ポイントを絞って、とい うか、必要最小限の言葉の範囲で教えてくれるので、俺としても覚えると...
  • 「秋雨」「春雨」
     吹き抜ける風も寒くなってきた11月、俺は親の命を受けて映画の時に――勝手に――使ったあの神社へ向かって歩いていた。   素人目には過疎にしか見えないあの神社は、親曰く地元では地味に人気らしくこうして年の瀬まで一月以上前でもなければ絵馬を 描いてもらえないんだとさ。絵馬なんて物は別に妹の落書きを置いといたとしても差ほどご利益に差があるとは思えないが、 ここで無駄口でも叩こうものなら年末に向けた家の掃除に駆り出される事は目に見えている。  さて、無駄な事を考えているうちにようやく神社が坂の上の方に見えてきたようだ。  なんでこんな高い場所に神社なんて作ろうとおもったのかね? まったく。  道は舗装された歩道から石段へと変わり数分後、ようやく辿り着いた神社はやっぱり過疎だった。絵馬が人気なんてのは内の 親の妄想なのではなかろうか。もしくはそうあって欲しいという希望とかさ。  社務所の中からでて...
  • ミヨキチの暴走~ミヨキチend
    「今の俺には三人を選ぶことは出来ない。でも俺はミヨキチが好きだ」 俺の言葉にハルヒも佐々木も信じられないという顔をしている。当たり前だろ?相手は小学生だぜ? ミヨキチは俯いていてどんな表情をしているかわからない。 「キョン、君は本気で言っているのかい?」佐々木が真剣な顔で聞いてきた。 ああ、本気だ。「あんた…正気?」スマン、ハルヒに佐々木。俺はいたって正気だ。 「いいかい?キョン…」「アンタね!下手すれば…」二人して俺に説教してくる。 二人とも落ち着け!俺はまだ全部言い切ってない! 「「へ?」」間抜けな顔をするハルヒと佐々木。ミヨキチも顔を上げてこっちを見ている。 「いいか?口を挟まずに、まずは俺の話を聞け。確かに、俺は高校生でミヨキチは小学生だ。付き合うわけには行かない」 ハルヒと佐々木はうんうんと頷く。ミヨキチは不安そうに俺の話を真剣に聞いている。 「だから、ミヨキチには、ミヨキ...
  • カッターの刃と鮮血の呪い
     ちり取りとホウキを手に、サッサッと手早く生徒会室の床を掃除するわたしの隣で。 「ふむ、なかなか見事な仕上がりだな。キミは将来、美容師にでもなったらいいんじゃないか?」  片手に手鏡をかざし、片手であご先の辺りをなぜ回しながらそんな戯言を吐く人物に、わたしは冷ややかな視線を向けました。 「何をとぼけた事を仰っているんです? 生徒会長ともあろう方が、日常的な身だしなみもおろそかなまま登校したりするものだから、わたしはこうして余計な手間に煩わされているのですよ?」 「いや、すまん。週末の内に行き付けの床屋へ足を運ぶつもりだったんだがな。天気がぐずついていたせいで出掛けそびれたまま、ついうっかり」  そういう事です。月曜の朝に見かけた会長が、横着にも口元やあご周りの手入れを怠ったままだったので、全校朝礼が始まるまでの時間にわたしは彼を生徒会室に引っ張り込み、その不精ヒゲを全て剃り落とし...
  • 結婚後の橘キョン お出かけ~帰路にて~
    「ふぅ…」 久しぶりの休日は京子と『お出かけ』だったわけだが… 『お出かけ~帰路にて~』 現在俺は車を運転しており、京子は助手席で絶賛睡眠中だ。 …そう言えば昨夜は遅くまで今日の準備していたもんな。そのおかげか弁当はかなり美味かった。 普段、会社で食べる愛妻弁当も捨て難い。だが雲一つ無い青空の下、澄みきった空気の中、2人で食べる弁当もなかなかオツなものだ。 ギッ 前の車が止まっているので減速、停車、ハンドブレーキをかける。 今日は遠出をしたんだが…まさか帰りに渋滞に遭うとは思いもしなかった。 「んっ…」 ブレーキの衝撃が感じられたのだろうか… 京子は助手席の座席を倒し、窓側を向いて夢の中にいるのだが寝返りで俺の方を向く格好へとなった。 栗色のツインテール、閉じられた瞼から伸びる長い睫、可愛くツンととんがった鼻先、小さく結われた唇に傷一つない肌を…俺は見つめていた。 「やっぱり綺麗...
  • 結婚しよう 吉村美代子の結婚生活
     真備しい日差しが窓の隙間から差し込んでいる。  どうやら朝が来てしまったらしい――ってのはわかるんだが、半覚醒状態の体は動き出そうとしてくれない。  ……眠い……あ~もうこのまま寝てしまおうか?  僅かに開きかけていた瞼を閉じ、再び眠りの中へとしていると……柔らかな感触が俺の額に触れて、俺の意識は 現実へと急浮上するのだった。  目を開いた俺を迎えてくれたのは眩しい光と、 「えへへ……お兄さん、起きてください」  真っ赤な顔で俺を見ているみよきちの顔だった。  ……なんていうか最高の起床だな、これは。  おはよう、みよきち。 「おはようございます」  なあ、そろそろお兄さんって呼び方はやめないか? 夫婦なんだし。 「で、でも。そのまだ少し恥ずかしくって……」  そんなに赤くならなくても……可愛いなぁ。   自分の幸福に酔いつつも、俺は再び眠りの中へと…… 「あ、あの! もうそろそろ起きな...
  • スノウマーチ
     それは、とても残酷な告白だった。  けれどもそれは、どうしようもない事実でも有った。  事実を告げ頭を下げた既に卒業してしまった上級生に対して、僕等はそれ以上何かを言うことが出来なかった。  帰り道、暫くの間僕等は無言だった。  突きつけられた重い現実は、僕等にはどうすることも出来ない。  僕等に、そんな力は無い。 「ねえ、古泉くん」  沈黙を破ったのは、涼宮さんの方だった。 「何ですか?」 「古泉くんは、どうしたい?」 「どう、と言われましても……」 「どうにも出来ないって思ってるの?」 「……そうかも知れません」 「それって、悔しくない?」 「悔しいですよ。……でも、悔しいと思う以上のことは、出来ないでしょう」 「それは、そうだけど……。そうね、じゃあ、こうしましょう!」  涼宮さんが、ぱっと笑顔になる。  何か面白いことを思いついたときと同じ、満開の花のような笑顔。  今は、そこ...
  • 余ったピース・足りない欠片4
    【余ったピース】   二度寝をした朝は、へんに体がだるい、ちゃんとベッドに入って寝るんだった。 時計を確認、時間は大丈夫   威勢良く顔を洗い、夜中の考えを整理する まあ、こんなところかな、今は周をあんまりゴタゴタさせたくない   簡単な朝食をとる 部屋の中に一人え居ると余計なことを考えてしまう なかり早いけど、でかけよう、   随分早く、待ち合わ場所に到着する、さすがにまだ誰もきていない。 街路樹もだいぶ色づいてきたようだ、まだ落ち葉の季節には少し早い   昨晩だした答えをかみ締める どうやって話をきりだそうか 「涼宮さん?」   ふと声を掛けられる、2人連れ大学生か、ラフな感じの着こなし、音楽をやっているのか、 一人はギターもう一人はベースを担いでいる   「文化祭行ったよ、今年のステージもよかったよ、涼宮さん」 あたしのキョトンとした顔に笑いをかみ締めるように2人は続ける   「EN...
  • コーヒーシリーズ
    [涼宮ハルヒ編]    朝起きるとハルヒが台所でコーヒーを煎れていた。おはよう、と朝の常套句を口にしながら俺はベッドから起き上がってハルヒの隣に並ぶ。 「あら別にまだ寝てていいのよ。今日は日曜だしね。コーヒーなら今持ってくし」    未だ寝ぼけ眼の俺は薄い意識の中で確かに俺が特にやれることはないと判断し、そうか悪いな、と言ってまたベッドに座る。    まもなくかちゃかちゃと静かな金属音を響かせながら両手にコーヒーを持ってきたハルヒは俺の横に座り片方のコーヒーを俺に差し出す。    コーヒーを飲むと体が内側から暖かくなっていく気がする。毎朝の習慣になってしまったこの短い二人のお茶会がなくては俺の朝は始まらないと言っても過言では無いと思う。 「新しい一日の始まりね」    ハルヒは穏やかに言ってカップに口をつけた。 「そうだな。新しい一日の始まりだ」    俺は穏やかに言ってカップに口をつ...
  • 二月の雪
    俺は目を覚ます。 妹のノルマンディー上陸のような荒々しさはなく、緩やかな目覚めだった。 その小さな手は俺の肩を遠慮がちに揺らしていた。 「……あ、あの」 か細い声が聞こえる。 「……あ、あの」 その聞きなれた声は俺を覚醒するのには十分だった。 「な、長門!?」 上半身をがばっと起こし、長門らしき人物の顔を凝視する。 ギザギザな髪型に、吸い込まれそうな瞳の上を覆う眼鏡。 ――長門だ、確実に。 でも、どうしてここに? というか、眼鏡をかけている? ぐちゃぐちゃになった思考をなんとかまとめてみる。 寝起きドッキリか? いや違うな、長門がそんなことをするはずがない。 ……眼鏡? もしかして、あっちの世界の長門か? 「……どうしたん……ですか?」 長門は首を傾げて不思議そうに俺を見つめる。 いや、それは俺が訊きたいんだが。 「いや、どうして長門がここにいるのかと思って」 「え、どうしてって」 「それ...
  • スノースマイル・バースデイ8
    ―――ひとひら春の日に舞い降りる、それは、雪のように。 奇蹟はありふれて此の世に降り立つ。 綺麗に晴れた水色の空が、世界に被さる様に続いている。吹き寄せる優しい風には、寒さを抜け切れない冷たさをも和らげる、柔和な春の光が溢れている。 見知らぬ僻地、見知らぬ定刻。 向き合う少女と少女が、出遭った。一人はまだ彼女自身の名を獲得する以前、一人は幽霊を自称していた為に、名を明かしはしなかったのだけれど。 「どこへでも行くことはできます。あなたの行きたい場所はどこですか?」 天使と見紛う、清純で愛らしい笑顔を、幽霊の少女は表情を作る機能のない少女に与えた。少女は生み出されて間もなくであり、人との直接的な接触は初めてのことだった。無機物の如く、彫像のように立ち尽くす彼女を諭すように幽霊の少女は告げる。何もかもを終えて遣り切った事に対する誇らしげな瞳が、長らく共闘し触れ合い、歩んで来た者に対し...
  • 長門有希の憂鬱III 恋するウィルス
    恋するウィルス      わたしがコンピュータ研究会に入部したときの、数日間のログ。公開する。   0600時: 宇宙歴40068.26.11。起床。ログ記録開始。顔を洗う。朝食の準備。味噌汁を調理。昆布のダシ。豆腐の賞味期限が六時間前に経過。情報統合思念体に挨拶。返事は数バイト。わたしの上司は愛想が悪い。主流派はこれだから。   0645時: 顔面、頭部の手入れ。最近枝毛が目立つ。毛髪洗剤の変更を検討。あの人の好きなコロンを0.5cc噴霧。   0700時: 自宅を出る。隣の住人に挨拶するが、伝わらなかった模様。   0730時: 学校に到着。部室へ。無人。ハインラインの夏への扉を開く。175ページ。   0800時: 教室へ行く。途中で古泉一樹に会った。顔の角度を九度下げる。   0820時: 担任現る。顔色が優れない。配偶者とまた揉めたようだ。   (中略)   1205時: 文芸...
  • バカップル日記―いじわるキョン×有希―
    「悪い! 待ったか?」  俺達のデートは毎回、この言葉から始まる。俺はいつも長門を待たせて遅刻するのさ。  気持ちはわかるだろ? わからないか? なら教えてやろう。 「……いい」  こうやってな、少しふてくされたような表情をするだろ。俺にしかわからないくらいだけどな。 「ほんとに反省してるからな。だから、今日はまず図書館に連れて行ってやる」 「ほんと? ……うれしい」  そして、次はよろこんだ表情を見せただろ? また、俺にしかわからないくらい小さな変化だけどな。  こんな小さな表情の変化をたくさん見たいから、わざと遅刻したりするのさ。わかったか?  いつも、俺は長門の少し前を歩くんだ。それも早足でな。そうするとこいつは俺の袖を摘んでくる。  小さな手で、弱っちい力でな。でもこんな関係がうれしいんだよ。  普段は無表情で何を考えているかもわからないような宇宙人が、俺と一緒に居たいと思ってつい...
  • 有希見酒
    「部屋に来て欲しい」 別れ際長門が俺だけに聞こえるように小さく言ってきた。 ハルヒたちと別れ、一旦家に帰るふりをして、そそくさと長門の家に向かう。 「お、雪か」 帰るまでは持ちそうだったのだが、降り出してしまったようだ。 傘を持っていないので、足早に長門のマンションの軒下に飛び込んだ。 インターホンを押すとすぐに反応がある。 「入って」言うまでもない。寒いし。 「お~、寒い寒い」 雪が降り出してから急に冷え込んだようだ。 年中置きっぱなしのコタツが、これほどまでにありがたいと思わなかった。 長門は風の子元気の子なのか、寒さなんて気にしないで台所に向かう。 宇宙人製ヒューマノイドインターフェイスは寒さを感じないのか。羨ましい。 「そうではない。むしろ寒がり」 お盆にコップを載せて持ってきた長門は、お盆をコタツの上に置くとそそくさともぐりこむ。 持ってきたのはお茶ではない。透明な液体の入ったコ...
  • Am I father ? 第五章後半
    一通り全ての乗り物を制覇した俺たち。太陽は西に傾き、一日の終わりが近づいてきた。 今その足は遊園地の締め、観覧車に並んでいる。 涼子はというと、隣でアイスを食っている。四本目だ。なんて勿体無い出費だろう。 と言いつつも、涼子に買う時に自分も一緒に買っているのだから人のことは言えない。 もちろん長門も食っている。こいつが食わないはずがなかろう。 ちなみに、野口さんがアイスだけで三枚消えてしまった、なんていうのは秘密である。 涼子がそのアイスを食い終わった頃にちょうど順番が回ってきた。いわゆるベストタイミングってやつだ。 係員の案内にしたがってゴンドラに乗り込む。 席は俺と涼子が向かい合う形で座り、涼子の隣に長門が座っている。 二人を思う存分眺めることができるのはいいが、少し寂しかったりもする。 娘と妻に煙たがられる父親とはいつもこんな孤独を感じているのだろうか。 もしそうなのだとしたら、それ...
  • 嫉み
    私は朝比奈みくるを憎んでいたのだろう。彼を独占していた朝比奈みくるを。 朝比奈みくるがいる限り彼は私を見てはくれない。 だから朝比奈みくるが未来に帰るとわかったときは仲間として。 悲しい とゆう感情より 嬉しい とゆう感情のほうが強かった。 「ありがとう」 朝比奈みくるを見送る場でのこの言葉は本心。 ――彼から離れてくれてありがとう。あとは私が 別れ際に抱き合いキスをする二人を見て黒い感情がうかんできたがそれも今日が最後。 最後になるはずだった。     朝比奈みくるが未来に帰還してから彼はまるで性格が変わったかのように塞ぎ込み、ついには学校にも来なくなった。 しかし涼宮ハルヒは彼が学校を、SOS団を欠席することを許さない。 無理矢理家へと押し掛けることとなった。 涼宮ハルヒ、古泉一樹と順に彼に励ましの言葉をかけていく。 「悲しいのはわかるわ。でもね、いつまでもそんなんでみくるちゃんが...
  • クリスマスプレゼント
    今日は12月24日、いわゆるクリスマスイヴだ。 今年は諸事情により、SOS団のパーティーは26日になるらしい。 そして、何故か俺の家にはハルヒが来ているわけだ。 「かわいい妹ちゃんのためにプレゼント持ってきたげたのよ。悪い?」 いや、悪くはない。むしろ助かる。……だが、それだけが目的じゃないんだろ? 「よくわかってるじゃない。明日、期待してるわよ?どうしても欲しい物があるの。それを当てて、あたしにくれたらお返しは期待していいわよ」 ハルヒの期待出来るお返しか……少し真面目に考えてプレゼントしてみるかな。 「……今日も明日も一人だから、暇潰しに来たのよ。ほんとは……ね」 唐突にうちに来た理由みたいなものを語り出した。 「なんで一人なんだ?」 俺は、なんとなく聞かないといけないような気がして尋ねてみた。 「……ママ達は二人とも仕事の関係のパーティーなの。ほんとは今だって家で留守番してなきゃいけ...
  • 初めてはあなたに
     仰向けになった視線の先には、俺には不似合いであろう小さな花柄が散りばめられた天井、そして3つの白熱灯を広げたシンプルなシャンデリアがぶら下がっている。  ハルヒが選んだのだ。  この部屋がいいと。    いま俺の隣で寝息をたてているそいつの頭と枕の間には俺の左腕があり、その左腕はそろそろ肘から先が痺れ始めている。  正直なところもう引っこ抜かせてほしいのだが、あまりにもその寝顔が穏やかなもので、変に動かして起こしてしまうのも可哀想というかもったいないというか、つまりはその葛藤の中にいま俺はいるわけだ。  二人が並ぶには広すぎるように思えるダブルベッドの薄いシーツの中、俺とハルヒは一縷の衣類も身に付けてはいない。  もはやトレードマークといっても異論ないであろうハルヒの黄色いカチューシャも、事を始めて直後、俺の手で枕元の棚に置いておいた。  左手の甲に、ほんの少しだけ、柔らかな...
  • 機械知性体たちの即興曲 第五日目/昼
    機械知性体たちの即興曲 メニュー http //www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5972.html   □第五日目/昼 ハルヒ       「…………」 谷口          「なんかものすげぇ機嫌悪そうだな、涼宮のやつ」 国木田      「キョンが休みだからじゃない? 珍しいよね」 谷口          「よくは知らないが、あいつの面倒見れるのは人数限られてるんだから、休まれると困るぜ」 国木田      「……比較的そういうのができそうな人がもうひとりいるけど、その人も休みだよね」 谷口          「隣の長門も休みだとかいってたな」 国木田      「インフルエンザでもはやってるのかな。聞いたことないけど」 谷口          「……キョンのやつがなぁ」 ハルヒ       (まさか、あのアホキョンまで休みとはね) ハルヒ  ...
  • 家族旅行 第三話
    飛行機に乗り込んで、シートに腰を落ち着けた。足も伸ばす余裕あるし、座り心地もいい。 狭苦しいシートを想像してたけど、これなら快適ね。 あたしは窓際の席で、親父は通路側。母さんは親父とあたしの間に座った。 親父はまた文庫本を読み始めている。母さんは機内誌に目を通しはじめた。あたしも本でも読もうかな。 有希ほどじゃないけど、あたしも本は結構読むほうだし。 おなじみの救命設備のアナウンスが流れて、スチュワーデスが実演やったりしているのを横目で見ながら、読書タイムの始まり。 なんか滑走路が混んでるとかで、しばらく離陸見合わせって、なんとかならないのかしらね。滑走路増設すればいいじゃない? そういう問題じゃないのかしら。 いよいよ順番が来たみたいで、飛行機が走り始めた。途中でシートに押し付けられるまで加速して、ふわりと空に浮いた。 窓際から外を眺めると、どんどん飛行場が小さくなっていく。そして航空写...
  • 家族の絆
    悪くない家族計画の続きです。 まだか……。ちくしょう。 なにも出来ない自分の無力さに苛立ち、腹が立ってくる。 くそっ、ハルヒはあんなにも苦しんでいるってのに……なにか出来ることはないのか……。   有「おとうさん。」   キ「…っと、すまん、なんだ?有希。」   有「…落ち着いて」   そこで、今、自分が意味もなくウロウロと歩き回っていることに気が付いた。 さっきまでそこの長椅子に座っていたばずだったがいつのまにか立って歩き回っていたらしい。 そんな自分の行動にも気が付かないほどおれは落ち着きを無くしていた。   今、おれと有希は病院にいる。そして目の前にある扉の向こうにいるハルヒのことを案じているわけだが、 別になにか大きな怪我をしたとか病気なわけではない。扉には分娩室と書いてある。 そう、おれと有希はハルヒとおれの子供が産まれてくるのを今か今かと待ちわびているわけだ。 ふぅっ…。ひ...
  • オーディナリ ホリデー
    俺が心のどこかで憧れていた非日常。   年末の一件で俺はそれをついに受け入れてしまい、 雪山でその覚悟を試され、年明けにこの世界を確かなものにして、 ようやくもって新学期を向かえようとしていた。   市内初詣ツアーはハルヒ号令のもと開催され、 映画撮影の時に大いに迷惑をかけた神社をはじめとして、 おそらく今年のギネス記録に手が届くだろう程にお参りしまくって終了した。   その間のSOS団3人娘の振り袖姿は、俺の脳内写真館に1スペースを作って 後世まで保管しておくだけの価値があったのだが…。   そんな一連の忙殺的スケジュール敢行によって、もはや俺はくたくたであった。 旅行の荷物もようやく片付け終わったところであり、 残り少ない冬休みは家でのんびりしたいものだと思っていると、   「キョンくん電話ー」妹である。そろそろノックを覚えてくれ。 雪山から帰ってきてこっち、この小学5年生11才は疲れ...
  • 本名不詳な彼ら in 甘味処  その7
    「あら、お待たせしてしまいました?」 「いいや、我々もちょうど今し方、こちらに着いた所だ」  昼に俺と長門が、会長と喜緑さんにバッタリ出くわした路上で。今度は俺と会長が、図書館から戻ってきた長門と喜緑さんに出くわしたのは、それからしばらく後の事だった。  ちなみに伊達メガネを掛けた会長は何喰わぬ顔で受け答えているが、俺たちがここまで来るのに競歩並みのスピードでの慌ただしい行軍だったのは、一応秘密にしておこう。喜緑さんたちにはとうにお見通しかもしれないけれども。 「で、用件の方は済んだのかね?」 「ええ、長門さんのおかげでつつがなく」  それでも健気に横暴会長のペルソナを演じようとする先輩の質問に。喜緑さんは微笑みながら、脇に下げた小さなポシェットを撫ぜてみせた。 「ならば私からも礼を言っておこう。長門くん、キミの働きに感謝する」 「………いい」  遠目からでは視認できないほどの...
  • 簡単でおいしい!おかずレシピ「キョンの夕食」 1食目
    文字サイズ小だと上手く表示されると思います     「おいキョン。お前、酒なんか飲んでんのかよ?」  その声は、俺がコンビニで立ち読みをしている時に聞こえてきた。  振り向くまでもない、顔を上げてみると雑誌棚の奥にあるガラスには見慣れた谷口と国木田の顔が写っている。  面倒なので読みかけの雑誌に目を戻しながら、俺は適当に返答しておいた。  人聞きの悪いことを言うな、第一なんでそう思ったんだ。 「だってお前。その本に酒にあう男の簡単料理って書いてあるじゃねーか」  谷口が言うように、俺が見ている雑誌には焼くだけ煮るだけといった独身男性でも手が出せそうな簡単なレシピが、 画像付きでいくつも掲載されている。しかし、実際にそれなりの味に作ろうと思ったらこのレシピと解説じゃ無理だと 思うんだがな。  料理の本が見たかったんだよ、今日は家に俺しかいないんだ。 「それで料理の本を読んでるって事は、自炊...
  • 時限爆弾
         悪意? そんな物欠片も無かったさ。本当だぜ? 嘘発見機だろうが心電図だろうが、それ で事態が収束するってんなら好きなだけ検査してもらって一向に構わない。  だがここで、例えどれだけの数の専門家が集まって俺の潔白を科学的に立証してくれようと もそれには何の意味もないだろう。  ああ、話が横道にそれてる上に訳が分からなくなってるな……。  それもそのはずで、俺はこの危機的状況に打開策を見つけられないまま、ただ頭を抱えてる ってのが現状だ。  いったいどうすればいいんだよ……なあ?  ――それは、ほんの些細な勘違いから始まったんだ。     「時限爆弾」      昼休み、俺はたまには静かに弁当でも食べようと思い部室へとやってきていた。  当り前の様にそこには長門がいて、俺は置物の様に動かない宇宙人を眺めながら弁当を胃に 詰め込んでい……あれ?  ふと見ると、椅子に座っている長門の膝の...
  • 教科書文通7
    「クリームあんみつ。」  甘味屋の店員がしずと運んできたガラスの器の中にきらめく小豆の赤と、白玉とアイスクリームの白、彩の抹茶の緑にフルーツの暖色。  長門さんの視線が、先ほどまでべらべらとあんみつの歴史なんぞを長引かせていた僕からこの食べられる宝石箱に移ったのは言うまでもない。 彼女の瞳がガラスの中のあんみつ同様、キラキラとしている。 あんみつを発明した二代目森半次郎に感謝だ。   彼はあんみつを特許申請せず、どの甘味屋でもその味を提供できるようにしたというが、 僕は彼ほど欲のない人間ではないので、あんみつに輝く長門さんの瞳を見る権利に特許を申請したい。 「はい。 これが、クリームあんみつです。   これは抹茶と白玉も乗っているので、宇治白玉クリームあんみつですね。  どうぞ、お召し上がり下さい。」 「お召し上がり、下さいとは不可解。 結局上がるの? 下がるの?」  そこで揚げ...
  • 水族館へ到着!
    これは、教科書文通、水族館へ出発!の続編になります。  あの品のよさそうなおばあさんは、僕らが降りる駅の5駅前の繁華街で下車された。 僕らと同じくらいの年のお孫さんとデパートで催される展示会に行かれるらしい。 おばあちゃんか。もう随分長いこと会ってないな、今度電話でもしてみよう。僕のこと忘れてないといいけど。  大きな町を抜けて、電車は海沿いを進む。海沿いと言っても住宅街を縫っていくので、あまり海は見えない。 目的地を過ぎれば海が綺麗に見えるのだけれど……。それは今すべきことではない。下車駅で僕達は、あまり来慣れない風景にぱちくりしながら電車を降りた。 駅から海面きらめく大海原が見え隠れしている。夏に、お誘いすればよかった。し、下心は無い。 「この駅からですと、目的地まで暫く歩くか、電車を乗り換えないといけないのですが、如何でしょう? ここらでまず休みませんか?」  開園時間まで...
  • 教科書文通8
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「おはよう。 待たせた?」 「おはようございます。 いいえ、今来たところですよ。」  デートと言えばこの台詞! と言う代名詞的な台詞を自分の口が吐く日など、一生ないと思っていた。  いやいや、これはデートではなく、「良好な関係」の友人との美術鑑賞会である。  浮き足立ってはいけない。 下心しかない期待など、もっての他である。 もっての他なのだけれど。  僕と長門さんが待ち合わせをしたのは、いつもの場所、いつもの時間。 しかし、いつもの違うのは2人きりだということ。 そのいつもとの違いが、これは普段とは違う異質な集まりであることを強調し、僕の心臓を休ませてはくれなかった。  待てど暮らせど、涼宮さんも朝比奈さんも、〝彼〟も来ない。  いつも制服しか着用しない長門さんの、白い白いレースやフリルが上品に飾るシンプルなワンピース姿が...
  • 遠距離恋愛 第一章 家庭の事情
    第一章 家庭の事情   ことの始まりは一昨日の事だ。 期末試験明け初めての土曜日。 恒例の不思議探索が恙なく終わり(俺の財布のダメージは大きかったが)団長サマの「今日はこれで解散!」 の号令で各自家路についた。もうあと少しで春休みだが、あの団長サマの言によると、SOS団は年中無休で活動予定らしい。ま、少しくらいは俺にもぼーっとシャミセンや妹と戯れるような普通の休みがほしいねえ、などと自転車を漕ぐ俺は、これから起こるだろう真珠湾攻撃を予測できなかったオアフ島守備隊隊長の心境に近かったのかもしれない。   家に着くと珍しく親父がいた。 いつもは日曜日にしか家にいない仕事の虫だから、土曜日のこの時間に家にいるのは、滅多にないことなのでちょっと驚いた。   「ちょっといいか?」 リビングから顔を出した親父は、食卓の椅子に座るように目線で合図する。 その向かいには神妙な顔をしたお袋まで鎮座している...
  • きょんむす第一弾 それが誰かの望んだ味で
    もくじ     「…はぁ」   電車に揺られた体を休め、ため息をひとつ吐く。 こんな長い旅路はきっと初めてで、あのお袋の息子でいる限りはまたこんなこと が起こるんだろうかと思うと…   「…はぁ」   …自然にもうひとつため息がでるのも不思議じゃないわけで。   初めての学校。初めての町。初めての空気。 これまた初めての駅を出て、俺は少し立ち止まってみる。   …何?状況がわからない? 奇遇だな。俺にもよくわかって無かったところだ。 ま、適当におさらいでもしてみますかね。   ◇◆◇◆◇   「あんたは此処の高校ね。それ以外認めないから」 「お、おいハルヒ。そうすると、こいつは県外に行っちまうことになるぞ?」   高校受験を半年後に控えたある日。志望校について親父と話し合っていると、い きなりお袋がとある学校のパンフレットを持ってきた。 何でもお袋と親父が一緒だった高校であり…   「...
  • ながとぅーみー 第二話「ちょこっとミスだー」
    翌日。俺は物々しい視線を感じていた。何か体験したことのない異様な視線。 何、この視線は。しかも女子から集中的に浴びているような気がする。 どうしたんだ。いったい、何が起きたんだ。 まさか、また何か世界が改変でもされたのか。 だが、ハルヒはいつもどおりの定位置に座って窓の外を見ている。 「よっ、ハルヒ!」 「おはよう、キョン」 じわりと視線が突然強化された。なんだか、嫉妬みたいな思念を感じる。 んー。いったい何事なんだろう。解らない。 そんな日の放課後。その片鱗は突然起きた。 「あの・・・キョンくん。ちょっといいですか?」 「ん?・・・阪中さんか」 俺は、阪中に呼ばれ誰も居ない階段の踊り場に来た。 「えっと・・・あの・・・好きです!付き合ってください!」 「そ・・・って、今、何て言った?」 「だ、だから・・・好きです!」 ・・・。頬をつねってみる。うん、痛いようだ。現実なのか、これ。 頭を...
  • 恋文 前章
            前章 土曜日の昼下がり、親子でも兄弟でもない若い男女が二人きりで行動を共にすることは、世間一般の認識では「デート」という代物に該当する……なんてことが、脳裏を一瞬かすめたが、深く考えないようにして、俺と美代子──ミヨキチは電車に揺られつつ駅前の公園から移動していた。この子とどこかに行くなら映画館だな、との判断での移動だ。そもそも地元で二人一緒に並んで歩くのはリスクが高すぎる。いろんな意味で。そんなリスク回避として映画という選択はなかなかナイスな判断だ、自画自賛しておこう。 電車の中では、あまり言葉を交わさなかった。前にミヨキチが見たがっていた映画に行ったときと勝手が違うから、それは仕方がない。幾分緊張している彼女は流れる外の風景に目を向けており、俺はその横顔を漫然と眺めていた。 あまり凝視するのは失礼な気もするが、それでもつい、目が向いてしまう。確かにこの一年で...
  • 来襲
    もういくつ寝ると春休みと浮かれていたのだが、恐ろしいイベントが予定されていることを、俺は今日に至るまで忘れていた。 何故この時期に行われるのか理解したがたいのだが、来年度は高2でもあるから、そういう意味では適しているのだろうか。 「ほんと、なんでこの時期にーって感じよね」 小さなテーブルを挟んだ向こう側ではハルヒが大口あけて、ドーナツを食べている。 小腹が空いたという理由で訪れたドーナツ屋で、かれこれ1時間近く二人で話している。 何が行われるかと言えば、三者面談。しかも俺達はそろって明日に予定されている。 「ハルヒは別段問題ないだろう。学業優秀だしな」 素行にはいささか問題あるように思うのだが、それを覆すだけの成績をキープしているからな。心配する理由などないはずだ。 「そっちはいいのよ。何言われる筋合いないし」 「なにが困るというんだ」 「親父が来たらどーしようってこと」 「『それにしても...
  • スノースマイル・バースデイ5
    わたしには行く充てがなかった。 わたしには名がなかった。 名のないわたしは虚無であり、其処に在ることも認められない異端だった。 ――名前がないから幽霊なのだと、少女は告げた。微笑んだ少女はわたしを知っているようだ。銀河系に分布する闇の様にくっきりとした黒い瞳が瞬いて、星屑の発光の様に極小の瞳孔が同意を求めわたしに迫った。 「あなたも同じでしょう」 そうかもしれない。わたしは確かに幽霊だった。幽霊と会話する幽霊は、わたししかいなかった。 「どこへでも行くことはできます。あなたの行きたい場所はどこですか?」 義務。役割。意味。存在の証明。第一に掲げねばならぬもの。持っていた筈の答えを、少女が明かす。わたしに彼女が翳してみせる。 風が温かく、日差しは柔らかだった。わたしは微睡みに落ち掛けていた眼を覚まされた。美しい水色の空に、銀色の光を少女は与えてくれたのだ。 「××××へ行こうと思って...
  • キョンの閉鎖空間
     「閉鎖空間が発生しました。」 問題が起きた時にかかってくる古泉からの電話。いつも通りの前置きだ。 だが、今回はちょっと違う。 「涼宮さんに変わったところはありませんでしたか」とか「涼宮さんと何あったんですか?」とかそういう言葉は続かなかった。 続いた言葉はこうだ。 「多分、涼宮さんの閉鎖空間ではありません」 はい、ナンダッテーとか言わない。現実ではそういうのを言わない。 「ハルヒ以外にも閉鎖空間が作れちゃうとは、仕事が増えて大変だな」と軽く皮肉り軽く同情する。これでいい。 「僕の仮説では、多分、あなたの閉鎖空間です」 ここで言わざるを得なかった。ナンダッテー!?     さて、回想を始めようか。時間はちょいと戻って今朝。登校時のことだ。 この暑いのに朝っぱらからウザいくらい爽やかスマイルな古泉とバッタリ会った。 会ってすぐに掛けられた言葉は確かこうだ。 「あれ?体調不良ですか?」 はい...
  • スノースマイル・バースデイ 最終話
    高低入乱れた音が、一つの歌を丹念に唄いあげる。 ハッピーバースデイトューユー、ポピュラーでシンプルながら、想い響き合う、長門に捧げられた祝詞の歌。 文芸部室は閉め切られ、暗がりにぼんやりと浮かぶのは不安定だが暖かい蝋燭の火だ。 曲が終わったらそれを区切りにケーキの上の蝋燭の火を吹き消すように言われていた長門有希は、いつもの面子が円陣となり見守る中、微弱な吐息を送り込んだ。カラフルな四本の柱に揺れていた小さな火がふっと消えると、控えていたクラッカーが出番とばかりに大きく弾け、花火のような色とりどりの紙吹雪を撒き散らした。 頃合を見計らってタイミング良く押された電灯のスイッチに部室の様相は明るく早変わりし、光浴びた全員の表情が露になる。 例外なく、皆、零れんばかりの笑顔が輝いていた。彼等の大きな大きな、深呼吸の後の大合唱。 「「―――誕生日おめでとうっ!」」 高らかな歓待の声が響き、室内...
  • 長門有希の報告Report.2
    Report.02 涼宮ハルヒの認識(前編) 「何(なん)やの? せっかく我らSOS団が犯人とっ捕まえたろ思(おも)てんのに。」 【何(なん)なの? せっかく我らSOS団が犯人をとっ捕まえてやろうと思ってるのに。】 「ええ加減にして! 私はあんたらに頼んだ覚えない! 勝手に押しかけてあれこれいらんことするわ、偉そうに根掘り葉掘り嫌な事を聞いてくるわ……あんたら一体何様やの!? そんなに人の不幸が嬉しいんか!? 最っ低や!!」 【いい加減にして! 私はあんたらに頼んだ覚えないわ! 勝手に押しかけてあれこれ余計なことするわ、偉そうに根掘り葉掘り嫌な事を聞いてくるわ……あんたら一体何様のつもり!? そんなに人の不幸が嬉しいわけ!? 最っ低!!】 「せっかく我らSOS団が特別にタダで事件を解決したろ言(ゆ)うてんのに! もうええわ、全然このありがたみが分かってへん人に、親切にしてやる必要もな...
  • プリンのスレタイ
       以前ここにあった目次は移動しました  お題+他 目次   文字サイズ小でうまく表示されると思います    「プリンスレのスレタイをテーマに1レスSS」   ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」  俺がリビングに置かれたPCで何気なく映画情報を調べていた時、その声は聞こえてきた。  振り向いて見れば、冷蔵庫の扉を開けたままハルヒはこっちを見て睨んでいる。そうか、このプリンは俺が夕飯の買い物 ついでに買ってきた物なのだが、いつの間にかハルヒの物になっていたんだな。ポルナレフもびっくりだ。  まだ食べ終わってない。それと、冷蔵庫は早く閉めた方がいい。 「あ~もう半分以上ないじゃない?」  駆け寄ってきたハルヒは俺の手にある容器を見て本気で悲しそうな顔をしている、そんなにプリンが好きだったのか。  俺は使っていたスプーンでハルヒの口なら入るであろう分量をすくうと、その...
  • SOS団麻雀大会
    メンバー  キョン・ハルヒ・長門・古泉 (みくるは見てるだけ)   「さあ!麻雀大会を始めるわよ!!!準備はいい!?みんな!?」 麻雀大会か…俺は結構好きなんだよな、麻雀。 いざというときには、「技」を使えばいいしな。 「それでは始めましょう。親は涼宮さんです。」 ~9順目~ 「ロン!多分6000点くらい!」 「涼宮さん、それ、親ッパネですよ。18000点です」 「やったね!これでビリの人はジュースおごりだからね!!!」 やばいな…絶対負けられない。少なくとも麻雀でハルヒには負けたくないぞ。 …パタン 「…32000点」 「おやおや、長門さんは役満ですか。すごいですね。」 やばい…このままではビリになってしまう。 ハルヒどころか長門や古泉にも負けてしまうではないか。よし。   オーラス この時点での順位 1位・ハルヒ 2位・長門 3位・古泉 4位・キョン   やばい…このままではこのオーラ...
  • 君の太陽
       『君の太陽』           一面の白が僕を包んでいた。 起伏のない平面の世界。果ては見えず空さえも白いここでは地平線は存在しない。 降り積もる雪はこの世界の音を全て吸い込んで、ただ自分の呼吸だけが聞こえる。 自分と、この雪の他に何も見えない。存在を感じさせるものもない。 ただ雪が降り続ける世界。   だが僕には、確信があった。   ここは彼女の世界だ。何故という疑問もない。ただ、わかるのだ。 僕がそう理解したのが、自分の超能力者としての力によるものではないこともわかった。 ぴたりとはまったのだ。 この世界を形作るものが、僕の中にある、ピースが欠けたそこに、すとんと。まるではじめからそこにあったかのように。 そして僕は理解した。 彼女の願いと、絶望を。           予兆がなかったといえば嘘になる。 涼宮さんの能力の減衰が明らかになった2年の冬、そのきっかけとなった彼の告...
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