涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「教科書文通5」で検索した結果

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  • 教科書文通5
    「なぁ、古泉? お前、まさかとは思うけど、恋をしたことがないなんていわないよな?」  5時間目の科学の時間、僕は今度は先ほどの山田くんの台詞を反芻していた。 最近まともに授業受けてないんじゃないか? と、少し不安になったりもするが、 まぁ、教科書と参考書を交互ににらめっこすればどうにかなるだろう。 今までだって、神人退治をしながらこのクラスで何とかやっていけたんだ。 涼宮さんの精神がある程度安定している今なら多少の無理もきくだろう。 そんなときに限って、〝彼〟が墓穴を掘るんだとか、そんなことは敢えて考えないでおこう。  恋……か。 そういや、まったくと言っていいほど経験のない分野だ。 そりゃ、僕だって幼少時代や小学生時代に誰それちゃんのことが好き! とかいう麻疹みたいな物は経験したことがあるが、あくまでそれは、likeの延長線だろう。 loveに直結する、愛してる、恋してるの段階での『...
  • 教科書文通
    教科書系列は、古長SS教科書文通を中心とした同作者の関連作品になります。 SS内に捏造設定(古と橘が幼馴染等)や、オリジナルキャラの登場があります。 苦手な方は、ご注意下さい。 4年前~分裂時 「とある超能力者の動機」      9~10月  『お客様は宇宙人』『超能力者を訪ねて』                『教科書文通1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(前/後)』                「お姉さんなのです(ハ/キ/長/古)」『待たせたな』         10月末   『Please wait for someday in the rain.』                 『水族館へ出発!』『水族館へ到着!』『水族館のその後に』            11~12月 『お待たせしました』「愛にあるのは真心、恋にあるのは下心」 以下、後日談            ...
  • 教科書文通10前編
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ        僕と長門さんとを繋いでいた教科書文通の終焉は以外にもあっさり訪れた。  長門さんのクラスの今週最後の日本史授業の前の短い休み時間。  いつもの通り、9組に教科書を借りに訪れた長門さんの口から飛び出した言葉は僕を驚かせるのには充分だった。 「来週の初めに、新しい教科書が届くことになった。 あなたに教科書を借りるのはおそらくこれが最後。」  解かっていたことだった。 もともと、長門さんは教科書がある程度探しても見つからない場合は新しいものを買うと一番最初に仰っていたし、教科書が届くのに1、2週間かかると言っても、長門さんの教科書が無くなってもう既に1ヶ月近くが経過している。 そもそも、このような秘め事の類は長くは続かないのが大概の話の流れである。 なのに、僕はこの長門さんのとの2人きりの秘め事が永久に続けばいいなどと、妄想に近いこ...
  • 教科書文通6
     くしくも山田くんが言ったとおり、僕らの教科書でのやり取りはまるで文通のように続いた。 大抵は僕から何の気ない話題をふり、長門さんがそれに短く答える。 極稀に彼女から授業内容から派生したような話題提供が会ったりもするが、基本的な流れは変わらない。 週休二日制で五日ある授業のうち、互いに四回ずつある日本史Bのたびに僕たちは教科書を行き来させ、互いにメッセージを残す。 それは殆ど毎日の光景で、まさしくそれは文通そのものだった。  この長門さんとのやり取りは、朝比奈さんにも、涼宮さんにも〝彼〟にも知られていない。 僕と長門さんの秘密。 ただ単なる言葉の羅列の交換だと言うのに、こんなに毎日期待してこんなにもそれが秘密のやりとりであることに執着している僕はさぞや滑稽だろう。 笑いたければ笑うがいい。 僕は嬉しいのだ。 能力が目覚めてからこんなにも学校生活が楽しいと思ったことはない。  勿論、僕が...
  • 教科書文通7
    「クリームあんみつ。」  甘味屋の店員がしずと運んできたガラスの器の中にきらめく小豆の赤と、白玉とアイスクリームの白、彩の抹茶の緑にフルーツの暖色。  長門さんの視線が、先ほどまでべらべらとあんみつの歴史なんぞを長引かせていた僕からこの食べられる宝石箱に移ったのは言うまでもない。 彼女の瞳がガラスの中のあんみつ同様、キラキラとしている。 あんみつを発明した二代目森半次郎に感謝だ。   彼はあんみつを特許申請せず、どの甘味屋でもその味を提供できるようにしたというが、 僕は彼ほど欲のない人間ではないので、あんみつに輝く長門さんの瞳を見る権利に特許を申請したい。 「はい。 これが、クリームあんみつです。   これは抹茶と白玉も乗っているので、宇治白玉クリームあんみつですね。  どうぞ、お召し上がり下さい。」 「お召し上がり、下さいとは不可解。 結局上がるの? 下がるの?」  そこで揚げ...
  • 教科書文通8
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「おはよう。 待たせた?」 「おはようございます。 いいえ、今来たところですよ。」  デートと言えばこの台詞! と言う代名詞的な台詞を自分の口が吐く日など、一生ないと思っていた。  いやいや、これはデートではなく、「良好な関係」の友人との美術鑑賞会である。  浮き足立ってはいけない。 下心しかない期待など、もっての他である。 もっての他なのだけれど。  僕と長門さんが待ち合わせをしたのは、いつもの場所、いつもの時間。 しかし、いつもの違うのは2人きりだということ。 そのいつもとの違いが、これは普段とは違う異質な集まりであることを強調し、僕の心臓を休ませてはくれなかった。  待てど暮らせど、涼宮さんも朝比奈さんも、〝彼〟も来ない。  いつも制服しか着用しない長門さんの、白い白いレースやフリルが上品に飾るシンプルなワンピース姿が...
  • 教科書文通2
     「日本史の教科書が、なくなった?! 長門さんのがですか?」  僕の素っ頓狂な声がコンクリート地が見え隠れする廊下に響く。 ああ、いけない。 今まで築き上げたイメージが。 涼宮さんや彼が聞いてなきゃいいんだけど……。 「そう。 あなたに教科書を借りた翌日、もう忘れないように鞄に入れて登校し、ロッカーに入れた。 しかし、今より5分56秒前に廊下に固定してある生徒用ロッカーから日本史の教科書を取り出そうとしたら、教科書がなかった。 昨日、13時16分46秒に世界史の教科書を取り出した際には確かにあったにも拘らず。」  相合傘事件が勃発した日の翌日。 長門さんは、再び9組の教室に現れた。 またよりにもよって廊下側の席の山田くんに僕を呼ばせて。 ああ、背中に刺さるニヤニヤとした視線。 昨日あれから散々からかわれたっけ……。 皆、口では羨ましいだの何だの言ってたけど、本当は慌てふためく僕を見て...
  • 教科書文通1
         長門さんが、9組に教科書を借りに来てから二日たった。 今日の1時間目はあれから初めての日本史である。 僕の机の上には、一昨日の放課後、部室で長門さんに返していただいたそのままの日本史の教科書が。 やっぱり、長門さんは僕の落書きを見てしまったのだろうか。  僕がした落書き。 それは、戦国時代末期の歴史が記されたページの隅にいつも使っているシャープペンで長門有希、情報統合思念体、TFEI端末と書いたものを同じシャープペンで塗りつぶして消したものの斜め下に、〝長門さん〟と、書き残してしまったもの。 ああ、勘違いを招きそうだ。 激しく勘違いを招きそうだ。 長門さんが気を悪くしないといいのだけれど……。  あの落書きは、元はと言えば、歴史オタクで時代小説オタクの日本史教師のせいだ。 いや、全てを先生のするつもりはないのだけれど……。 しかし、トリガーになったのは、確実にあの日本史...
  • 教科書文通10後編
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ        効果音をつけるなら、まさしくしとしとと言うほどの雨が、文芸部部室の窓ガラスを伝っていく。 文芸部部室には、今現在、1人チェスボードに向う僕と沈黙を保ったまま活字の海に身を投じる長門さんしか居ない。 それは、ある一つの事件をきっかけに発生した、奇跡の様な機会。 彼女が待てといった雨の日に彼女と2人きり。  いつもの様に例え試験を明後日に控えようが槍が降ろうが参加を余儀なくされるSOS団の活動。 しかし、流石に受験の迫った3年生の朝比奈さんを試験前に拘束することは涼宮さんにも出来ないらしく、「試験が終わったら、絶対戻ってくるのよ!!」とまるで今生の別れの様に半泣きになりながら、朝比奈さんの長期(実際は1週間)のSOS団活動休止を許した。 朝比奈さんが居ないSOS団アジトは、なんと言うか、何かが違っていた。 強いて言うなら、お姉さんがお...
  • 教科書文通9
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ        「あほう。」  いや、いきなりそれはないんじゃないですか、山田くん。  いきなり電話をかけてきた上に、散々根掘り葉掘り人の休日に探りを入れといてそれはないでしょう。 あほうってそんな。  なんでだろう。 バカって言われるよりダメージが大きいような気がする。   前に僕が住んでた町ではあまり使わなかったからなぁ。 あほうって。  しかも電話越しで相手の声がくぐもって聞こえる上に表情が見えないから余計に心に来る。 「あほんだら、かす。 へたれ。 古泉、さすがにそれはないぞ。」 「一体何がないって言うんですか。 っていうか、何でいきなり僕が責められないといけないんです?」  僕のもっともな問いに電話口からはぁぁと言う無駄に大きい演技がかった溜息が聞こえる。  僕は、からかわれているのだろうか、それとも呆れられているのだろうか。 前...
  • 教科書文通4
     「じゃー、この間の続きからいくぞー。 159ペーシ開けー。」  長門さんが去り際に囁いたページが、今日の授業の始まりのページとは一体、なんと言うことか。 策略か? 計算ずくか? まぁ、どちらにしてもいずれは開かなければならないページである。  いったい、何が書いてあるのか。 思考が悪い方向にしか進まない。 希望的観測が取れないと言うよりも、悪い方向へ事態、もしくは状況が進んでしまうのを恐れているのだろう。 人は、追い詰められると悪い方向にばかり考えがいってしまうものだ。 嫌われたらどうしよう。 失望されたらどうしよう。 怒ってしまったかな。 自分に自覚がない分に怖い。  もしかしたら、愛の告白が……! なんて期待できるほど、僕は楽天家じゃない。 正直、谷口くんが羨ましい。 僕もあれくらい、能天気に生きられたらなぁ。 何でもかんでもプラス思考に取れる人間になりたい。  いつ...
  • 教科書文通3
    「できれば、〝彼〟や涼宮ハルヒ、朝比奈みくるには黙っていて欲しい。」  長門さんに教科書を貸した後の英語の授業の最中、僕はいつかの様に僕の教科書を抱きかかえた長門さんの台詞を何べんも反芻していた。 最初は、長門さんの教科書は一体どこへ行ってしまったのか、本当に盗まれてしまったのだろうか、では、一体だれが? などと、一通り考えてはいたのだが、思考は確実に先ほどの会話へ流されていく。 「涼宮ハルヒや〝彼〟は私に対して、少し過保護すぎると思われる面がある。 盗難されたと決まったわけではない、騒ぎを大きくしたくない。 第一、涼宮ハルヒが何かしらの怒りを覚えると、それはすなわち……あなたの苦労に繋がる。 それはいや。 朝比奈みくるは隠し事に向いていない。 それが彼女のいいところ。」  喋り方は相変わらず淡々としていたがその内容は、SOS団のメンバーのことをよく見て考えて、 なおかつ、自分が周り...
  • お姉さんなのです。
    みくるちゃんは、みんなのお姉さん。 と言うお話。   ハルヒ編 キョン編 長門編(このお話は「教科書文通8」へ微妙に繋がっています) 古泉編(このお話は「教科書文通10後編(最終話)」の翌日の設定になっています)    お姉さんシリーズ・待たせたシリーズ・教科書文通シリーズなどは繋がったお話で、時系列は以下の様になります。  お姉さん(ハ)→お客様は宇宙人→超能力者を訪ねて→待たせたな。→お姉さん(キ)→教科書1~7→お姉さん(長)→教科書8~10→お姉さん(古)→お待たせしました。  
  • 長編・古泉一樹
    古泉一樹無題1 ウィザード オブ サムデイ ウィザード オブ レニーデイ 古泉一樹 EP.0 古泉一樹 EP.0.5 墓地にて 晴れのち快晴 ある日の出来事 古泉一樹の結婚 頼れる副団長 絶望の世界 古泉一樹の独白 古泉崩壊 本音 GUN SURVIVAR 古泉一樹の青春 会心の一手 落し物、拾い物 変わらない チェンジ・マイ・ヒーロー 自分の居場所 古泉くんと鶴屋さん さよなら 内緒の最初 涼宮暗殺指令 雪の日 古泉一樹の出会い 不眠症候群 花嫁修行危機一髪 閉鎖空間記 キミがキミで居られるように 世界の反対側 選択肢の無い世界で スノウマーチ 月光 一樹ちゃん☆スマイル 女古泉 ちゃん の憂鬱 四月の雪 キャッチボールwith古泉球 一樹くんに女神の祝福を! 温泉と札幌 前髪に揺れる四ツ葉ふたつ 雪解けの想い もりのこいずみくん 戦士達の休日 【K.B.F.】 秘密の音色 若葉の...
  • 教科書文通後日談【ヴァレンタインディ編】
    このお話は、教科書文通の設定や紆余曲折を引き継いだ後日談になります。 オリキャラ(山田)や古長が苦手な方はご注意願いいたします。 ――――――――――――――――――――――――――――― 「……古泉、俺正直この言葉大嫌いなんだけど、今日ばっかりは言いたくなったわ。ごめん、言わせて。」  挨拶より先にこう切り出した山田くんが妙に生ぬるい笑みを湛えながら発した次の言葉に、僕は持っていた小さな箱を落とした。 「しね。」  中に甘い菓子類が入っていると見えるピンク色のリボンがかわいらしい箱は、僕の机の上にいつの間にか積まれたものの一つであり、 少なくとも僕が登校してきた時には似たような箱や袋が5つほどあった。おそらく、中身も皆同じようなものだろう。そういう季節だ。 「ちょ、なんですか。おはようより先にしねってなんですか。」 「そうだな。死ねは言いすぎた。やっぱこの言葉嫌いだ。うん、言い...
  • 超能力者を訪ねて
    お客様は宇宙人の続き 関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ        いつもは持ち帰らずにロッカーに保存している日本史の教科書を持ち帰り、なぜかしら迂闊にも世界史のそれと間違えて登校し、 教科は違えど同一の教科書を使用しているであろう〝彼〟や涼宮ハルヒがいる隣のクラスではなく、 教室2つ分の距離を隔てた先にある9組に足を運んだのは、この星の有機生命体が言うところの〝なんとなく〟である。  なぜ、〝彼〟や涼宮ハルヒではなく、古泉一樹を選んだのか。  そもそも、何故、日本史の教科書を持ち帰ろうと思い立ったのか。  それを説明する術を、私は持ち合わせていない。 古泉一樹が手渡してくれた教科書が高い価値を持っているように感じ、自分が属するクラスの教室まで抱きかかえるように持ち帰った理由も、上手く言語化できない。  それだけではない。 1組から9組まであるとはいえ、一般的な公立高校の廊...
  • お客様は宇宙人
    超能力者を訪ねてへ続きます 関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ        何故か小、中、高校における学校生活において、他クラスへの侵入というのは憚られ、 他クラスの人間に用がある場合は廊下側の人間に目的の人物を廊下まで呼んでもらうというのが暗黙のルールである。 そこには、おそらくクラス間の見えない縄張り意識のようなものがあり、 そこを侵略しないと言う言外の言及が含まれているのだろう。 そして、その暗黙のルールを順守した者は、客として丁重に迎えられるのである。 これは、とある僕への客人の訪問が招いたちょっとした事件とも言えない事件のお話。  「おーい! 古泉。 客だぞー! ……女の!」  三時間目と四時間目の間の休み時間。 廊下側に居たクラスメートの呼びかけに視線を移すと同時に、 問題の呼びかけの後半部分が、嫌に鋭く、また何かしらのいやらしさを孕んで教室内に響いた。 ニヤニヤ...
  • Please wait for some day in the rain.
    教科書文通の後日談になります。 ----------------------------------- 「長門さん。 その件で、お話があります。 聞いて、くださいますか。」  あの日の、あの雨の日の古泉一樹の台詞が頭から離れない。 他のことを考えていても、気がつくとあの台詞が耳に響く。 彼が隣にいない今でも、その声はわたしの鼓膜を打っている、様に感じる。 これは何? 幻聴? エラー? 「長門さん、 僕はずっとあなたが僕の教科書にお書きになった「良好な関係」について、ずっと考えていました。」  真っ直ぐな瞳だった。 元々古泉一樹は人の目を見て話すタイプの人間ではあったが、 最近は誤解を防ぐためか、はたまた他の理由からか、あまり目をあわそうとはしていなかった。    が、あの日は違った。 あの雨の日。 古泉一樹とより「良好な関係」を築きたいとあのまじないを決行した日。 まっすぐ、まっすぐ...
  • お姉さんなんです。 キョン編
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「あの、朝比奈さん。 ちょっといいですか?」  コンコンッとすこし乱暴なノックに返した返事のすぐあとに文芸部部室に入ってきたキョンくんは、第一声をこう切り出しました。 その表情はいつもより真剣で、 一体あたしに何の用だろう……? だめ! キョンくんには涼宮さんが……!! なんて妄想が頭をかすったのは、禁則事項です。  ……あたしだって未来人である以前に女の子なんです、ちょっとの妄想くらいいいでしょう?  ああ、お話がそれてしまいました。 キョンくんのお話でしたね。  キョンくんは先ほど同様、いつになく真剣な表情のまま私の目をじっと見て、搾り出すようにこう言い出したのです。 「朝比奈さん。 こんな事を聞くのは反則かもしれません。  でも、なんと言うか、朝比奈さんしか相談できそうになくて……。   ハルヒに聞くのは本末転倒で...
  • 教科書と嫉妬
    「うげっ!」 朝一番からキョンのマヌケな声が聞こえてきた。いったいなんなのよ……。 「は、ハルヒ……。今日は何曜日だ?」 今日は水曜日だ。何を当たり前のことを聞いてるんだろうか、このバカキョンは。 「水曜よ。それがどうかしたの?」 「最悪だ……木曜の時間割持ってきちまった。水曜と被ってるのは体育だけしかねぇ……」 救いようのないバカだ。こんなのがSOS団の一員だと思うと頭が痛くなる。……ま、居てもらわなきゃ困る存在ではあるんだけどね。 キョンはしばらく頭を抱えて悩んでいた後、二、三歩隣りに向かって歩いた。 「なぁ、佐伯。今日一日だけ一緒に教科書見せてくれ。時間割間違えたんだ」 あたしの斜め前の席、キョンのま隣りの席にいる佐伯さん。その人にキョンは教科書を見せてもらうよう頼んでいた。……何でまずあたしに相談しないのよ。 「あははっ!キョンくんって意外に抜けてるんだね。いいよ、あたしが机動かし...
  • おねえさんなのです。 ハルヒ編
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「ちょっと、みくるちゃん聞いてよ!! キョンったら……!!」  ばぁん! と言うすごい音を立てて涼宮さんが文芸部部室入ってきたのは、あたしがいつものメイド服に着替えようと北高指定のセーラー服のすそにクロスした手をかけた時でした。扉を開けたのがキョンくんや古泉君でなくて良かった。 まぁ、紳士なお2人は入室する際には必ずノックをしてくださるのであまり心配していないのですが。   いえ、そんなことより涼宮さんです。入ったときの口調からしてきっと眉間に皺を寄せ、あの大きな目をキッと鋭くさせているのだろうと思っていたのですが、そうではないのです。あたしの前で、ご自分より身長の低いあたしを体を屈めてまで上目遣いで見上げる彼女の瞳は涙で潤み、桃色の唇がふるふると凍えるように震えていて、女のあたしでも思わず可愛い!と抱きしめてしまいそうなのです...
  • お姉さんなのです。 古泉編
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「朝比奈さん……。」  こ、これは一体どういうことでしょう? 放課後の2人きりの部室。 目の前には真剣な顔をしてわたしの目をじっと見つめる古泉くん。 そんな顔も出来るんですねぇ。 はっきり言ってしまえばいつもの笑顔よりその真剣なお顔の方が好みです。 カッコいいです。 ああ! でも、ごめんなさい。 わたしは所詮未来人。 この時間平面の人との恋愛は出来ないんです。 それにあなたには長門さんが……! ハッ! これは、修羅場!? 三角関係!? 長→古→みくる!?  そんな! 高校生なのにそんなドロドロとした恋愛は……燃えるじゃないですかッ! 結ばれてはならぬ2人の恋路! 一途な文学少女と綺麗なお姉さんと真面目な好青年! まるでメロドラマ……!  なんて、妄想したところで悲しくなるだけです。 解かってます、解かってますとも。 一人身万歳!...
  • 待たせたな。
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「………。」  言っておくがこの三点リーダ3連発の主は長門ではない。 ……ハルヒだ。  何も言わず、ジトっとした目で俺を見るハルヒは唇をいつものあのアヒルのくちばしのようにしている。 悪かった。 悪かったって。 ……いや、マジでごめんなさい。 3時間の遅刻はないよな、うん。 俺だってそんなことされたらキレるね。 いや、本当一体どう謝ればいいのやら……。 こういう時、古泉なら都合のいい言い訳がぽんぽん思いつくんだろうな。 「今、何時かしら?」  やっと口を開いたSOS団団長兼俺の彼女さんは、妙にひんやりとした口調で小首を傾げた。 いつものカチューシャがゆっくりと品よく揺れる。 それがハルヒの白い首にかかるかかからないかでそのコントラストがううん、色っぽいね。 そのパステルカラーのワンピースも似合ってる。 うん、解かってる。 そんな...
  • お待たせしました。
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ       「……はぁ。」  今、この人思いっきり解かりやすい溜め息つきましたよ。 隠す気ゼロですか、そうですか。 普段、感情を表に表さないくせにこんなときだけやたらこれ見よがしですね。 どうしたって言うんですか。 いや、なんでご機嫌を損ねているかは僕が一番解かっているんですけど……と、言うより僕のせいですよね。 解かってます。 解かってはいるんですが……、言い訳くらいさせてください。 閉鎖空間が原因じゃ、どうしようもないでしょう? 「確かにあなたがわたしとの約束を反故にした理由は閉鎖空間。 その発生は仕方のないこと。 しかし、約束は約束。」  はい。 その通りでごさいます。 まことに仰るとおりで。 いや、でも、しかし、反故って言い方はちょっと……。 確かに約束の時間には遅れてしまいましたが、ちゃんと約束どおりの場所に来たじゃないですか。 ...
  • おねえさんなんです。 長門編
    関連:お姉さんシリーズ、教科書文通シリーズ        穏やかな午後の昼下がり。 いつもよりほんの少し早く授業が終わってルンルン気分で向った文芸部部室。  今日は新しいお茶っ葉を用意してきたのです!  黙っていつもどおりに出したとして、一体誰が最初に気がつくのだろうかと考えただけでワクワクします。  勢いよく飲んですぐ真っ先に感想をくれる涼宮さんでしょうか?  対照的にゆっくりと味わって飲んでくれるキョンくんでしょうか?  知識が豊富な古泉くんならじっくり吟味した後に銘柄まで当ててくれるかもしれません。 ああ、でもやっぱり一番最初に気がつくのは……    そこまで考えてから、目の前の文芸部部室と言う名のSOS団本部へと繋がるドアノブに手をかけます。 すると――   「朝比奈みくる。 待っていた。 相談がある。 聞いてもらいたい。」  部室のドアをあけると、長門さんが、あの長門さんが、...
  • 涼宮ハルヒの教科書
    「涼宮ハルヒの鬱憤」の続編です。 狼が牙を研がせる襖から 蕾み開いた蓮の花。 散っては散っては夢の中。 暴れる時の移ろいは もはや誰にも止められぬ―――   先週までのハロウィン調査(正確にはパーティー)も当たり前の事だが、 特に成果もなく一旦中止となり、俺は期末テストに向けて部室で 鬼教官・ハルヒの超スパルタ教育を受けている。 「ハルヒ。お前、その竹刀どこから持ってきたんだ?」 「つべこべ言わずに覚える!」 鼻先に突きつけられた竹刀に怯みながら俺はようやく ハルヒの鋭い剣筋を教科書で受け止める反射神経を身に付けたようだ。 今日は日本史。 俺の最も苦手な教科の一つだ。 「日本史は覚えようと思っても頭に入ってこないんだよな。 教科書の文字が漢字ばっかりで…。 大体、試験範囲は幕末、明治維新だけって言ったってこの時代の奴ら、 色んな面倒事を起こし過ぎだ。」 「覚えられないのはあんたに気合い...
  • 涼宮ハルヒの大騒動シリーズ
    涼宮ハルヒの鬱憤 涼宮ハルヒの教科書 涼宮ハルヒの歓喜~サンタが街にやって来た~ 凉宮ハルヒの明日 涼宮ハルヒの嫉妬
  • 水族館へ出発!
     教科書文通の続編・Please wait for someday in the rainの続きになります。 ―――――――――――――――――――――  正直言って寝れなかった。あの雨の日以来、僕の心臓はおかしい。あの雨の日、僕が長門さんに胸の内を伝えた日だ。 あの日以来、僕は長門さんの目を見ることが出来なかった。彼女は僕の告白に頷いただけで明確な答えはまだだ。 拒否されたらどうしよう。そんなことばかりが頭をよぎり、必要以上の彼女との接触を避けていた。 だが、いつまでもそうしているわけにも行かない。僕は悩んでいた。  そんな時、僕の目に飛び込んできたのが、同県の海水浴場で有名な町の海沿いにある海浜水族園のポスターだった。 そのポスターを見て、まっさきに浮かんだのが氷像のスナメリを見上げる長門さんの横顔であったことは説明するまでもない。 彼女は、もしやするとイルカが好きなのかもしれない...
  • 桃色空間奮闘記番外編 ~遠い記憶のミラージュ~
      戦慄の前編から約2ヶ月ぶりの後編、もう覚えてない人もいるだろう。 前回、所属する機関内に裏切り者がいることを森さんから聞かされた僕。あ、僕古泉です。 なんだかんだで森さんが僕ん家に泊まりこむことになり、なんだかんだで協力して犯人を捜すハメに。 事情聴取、現場検証、プロファイリングなどを行いなんだかんだで犯人が僕達の仲間、 多丸(裕)さんであることをつきとめる。 裏切り者である多丸(裕)さんをなんだかんだでとっちめ、見事事件を解決した森さんと僕。 これで森さんとの共同生活もお終いだ!と歓喜したのも束の間、実はまだ裏切り者が存在するらしく どうやら僕の苦労はまだまだ続くようだやれやれ。 的な感じで意気揚々と後編に続く!と書き込んだのだがこれがまた後から読み直すととんでもない駄作で、 「さすがにこれは自重した方がよさそうだ。」とリアルで思いしばらく投下せずに読み手に回っていたのだが、 そろそ...
  • 長編・涼宮ハルヒ
    涼宮ハルヒ無題1 涼宮ハルヒ無題3 涼宮ハルヒの停学 涼宮ハルヒの改竄 涼宮ハルヒの入学 涼宮ハルヒの異変 涼宮ハルヒの悲調 花嫁消失 ハルヒの想い 世界の終わりに 涼宮ハルヒの赤面 ‐ 涼宮ハルヒの羨望 ‐ ハルヒの実験 涼宮ハルヒの秘密 プリンとケーキ 星に願いを 涼宮ハルヒの猛暑 涼宮ハルヒの結婚前夜 涼宮ハルヒの泥酔 長すぎる10分間 涼宮ハルヒの願望 涼宮ハルヒの憂鬱キョンとハルヒの絆 10月8日、曇りのち雨 閃光のハルヒ 涼宮ハルヒの預かり物 涼宮ハルヒのデート騒ぎ? それは誤解で勘違い 何よりも宝物 超能力 涼宮ハルヒの計算  涼宮ハルヒの嫉妬 ミニチュアハルヒ ベル 3点セット 涼宮ハルヒのネコ にわか雨の訪問者 ハルヒの寝言 涼宮ハルヒの独善(シュール・BadEnd?) 涼宮ハルヒの情熱  涼宮ハルヒの出産 あの日からの願い Amemorywithouttheend 涼宮...
  • 星色パノラマ 中編
    目次 …暗い。 …視線を変えると月が見える。 どこか遠くでブランコの音が聞こえる。 …あれは… 誰か乗っているのか? ……… …黄色いカチューシャ… …ハルヒ? …またこの夢か。 目覚ましをかけて自主的に起きろと親に指示された翌日。 結果からいうと無理だった。 10分前に鳴ったらしい目覚まし時計と鬼の形相で睨んでくるお袋を交互に見ながら俺はついさっきまで見ていた夢のことを考えてみる。 …あのブランコに乗っていたのはハルヒなのか? …もしそうだとしても何になる?この状況を打破する鍵になるのか? 昨日の長門とのやりとりを思い出すが接点が見つからない。 「ちょっと!目覚ましが鳴ったのに起きないってどういうことなの!?」 あぁ…お袋がブチ切れた… とりあえず謝って反省の色を見せておく。 下手に反論しても自分に100パーセント非があるので...
  • キョンの面影
    「国木田、現国の教科書貸してくれないかしら」 何の予告も無く教室に入ってきた彼女は、休み時間中ぼーっとしていた僕に、そう言って微笑みかけた。 「え? ああ、いいよ」 一瞬だけその微笑みに見とれた後、机の中から貸してくれと言われた教科書を取り出して彼女に手渡す。 「うん、ありがとう」 どこかで見たことのあるしぐさでお礼を言った後、彼女は足早に教室から去っていった。そんな彼女を見て、僕の胸にやるせない感情がこみ上げてくる。 「涼宮の奴、最近綺麗になったと思わないか。昔は眼中に無かったが、いまのアイツとならつきあってもいいと思えてくるぜ」 涼宮さんが教室から出て行く後姿を眺めていた谷口が、彼女の姿が見えなくなった後、僕に言っているのかそれとも独り言なのか分からない様子でつぶやいた。 「綺麗になった」 「大人になった」 「落ち着いた」 それが、かつての涼宮さんを知っていた者の、最近の彼女に対する感...
  • 水族館へ到着!
    これは、教科書文通、水族館へ出発!の続編になります。  あの品のよさそうなおばあさんは、僕らが降りる駅の5駅前の繁華街で下車された。 僕らと同じくらいの年のお孫さんとデパートで催される展示会に行かれるらしい。 おばあちゃんか。もう随分長いこと会ってないな、今度電話でもしてみよう。僕のこと忘れてないといいけど。  大きな町を抜けて、電車は海沿いを進む。海沿いと言っても住宅街を縫っていくので、あまり海は見えない。 目的地を過ぎれば海が綺麗に見えるのだけれど……。それは今すべきことではない。下車駅で僕達は、あまり来慣れない風景にぱちくりしながら電車を降りた。 駅から海面きらめく大海原が見え隠れしている。夏に、お誘いすればよかった。し、下心は無い。 「この駅からですと、目的地まで暫く歩くか、電車を乗り換えないといけないのですが、如何でしょう? ここらでまず休みませんか?」  開園時間まで...
  • 水族館のその後に
    こちらは、教科書系列、水族館シリーズの続編になります。 ――――――――――――――――――― 「……。」 「…………。」  沈黙や静寂と言った言葉が脳裏を全力疾走していきます。なぜなら、僕と長門さんの間に漂うのはまさしくその二つだったのですから。 「………。」 「…………………。」  この沈黙が恋い慕う2人に言葉は要らないというものなら、悲観することはないのですが、生憎と総ではないのが事実です。つい、先ほど男女としてのお付き合いを決めた僕達は、「恋人同士」たる者が何を如何様に話せばいいのか解らないで、ただ、ただ、ひたすらに2人の間に漂う沈黙に臥しているだけなのだから。  一体、どんな話をすればいいのか、全く何も浮かんできません。もちろん、このデートが始まるまでにより合わせの知識をかき集め、話題に事欠かないよう努力に勤めました。しかし、そんなものはついさっき2匹のイルカに、弾...
  • こなたとキョンの試験勉強
    こなた「ねぇ?」 キョン「なんだ?」 こなた「このスレおもしろいからさ、次スレになっても見てていいかな?」 キョン「見ても良いけど、明後日は中間試験だぞ。勉強しなくていいのか?」 こなた「う゛…」 キョン「…それに、今日は開校記念日で休みだったってのに、一日中vipはないと思うぜ」 こなた「ぐふっ……」 キョン「まあ、試験勉強ぐらいは付き合ってやってもいいかな…」 こなた「…ありがとう」 図書館にて。 キョン「どうだ、少しは勉強はかどってるか?」 こなた「んー全然、それより、プリンスレが面白くて…」 キョン「おい、携帯をしまえ、ここは図書館だ。」 こなた「えー、外出中も良作をリアルタイムで支援したいのに…」 キョン「中間試験は明日からだ。少しぐらい自重しろ」 こなた「あっもうこんな時間。帰らなきゃ、ってなんでキミもついてくるかな?」 キョン「…まだ一時間程しか経ってないわけだが」 こなた...
  • 10歳児
    「弟か妹ほしいな~」 突然何か言い出した あまりにも唐突過ぎたので返す言葉が無い というかこいつは一人っ子なのか?どうなんだ? 「あんたって妹居るわよね。 可愛いと思うこととか、妹がいてよかったと思うこととかある?」 これといって困ることも無ければ嫌なことも無い。 どちらかというと頼ってくれている気もするので、いてよかった気もするが もう少し、静かでおとなしい妹だったら良かったのにな。 そして兄のことを変なあだ名で呼ばないでほしい。 いたらいたでいないほうが良いとか、上のほうが良かったとか言い出すもんだぞ。 なんなら妹レンタルするが? 「やめとく。あんたの妹は元気すぎるのよね、 それに本当にあんたの妹かっていうくらいに素直でいい子だし。」 前もこんなこといわれたが、これは喜ぶところなのか? いい子とは言われてるが、俺の妹なのにっていうのはどういったことか。 じゃあどんなのがいいんだ? 「そ...
  • 涼宮ハルヒの別れ
    今日も寒い日だった。   いつものようにハイキングコースを登ってると これもいつものように谷口が声をかけてきた。 「よっ!キョン!おはよう!」 こんな糞寒いのに元気な奴だ。 その元気を8割くらい分けて欲しいもんだね。   教室につくと俺は即座に自分の席に座る。 窓側の日差しが入ってくる、冬が苦手な俺にとってはまさに特等席だ。 ちなみに一番後ろの席だ。   ハルヒはもう俺の後ろにはいない。   今は2月下旬、暦の上では春なのだが、まだまだ寒い日が続いていた。 ちなみに俺は今、高校2年生だ。 俺と谷口は、なんとかギリギリ2年生に進級することが出来た。 1年の頃はSOS団なる意味不明な団体活動に精を出してたから 勉強をする気力をすべてそっちに持っていかれていたが、今年は進級について悩むことは無さそうだ。   なぜならSOS団はもう活動をしていないからである。   自分の席で太陽の日差しを浴びて、...
  • 涼宮ハルヒの改竄 version H
    あたしは中学に入学して他の奴らとは違う「特別」な人間になってやると改めて決心した。 「特別」な人間になる為に他の奴らが絶対やらない様な事を片っ端からやった。 そんな事をしている内に学校内でも特に浮いてる存在になっていた。 周りの奴らがあたしの事をどう思おうが噂しようがそんなのはまったく気にしなかった。 そんなあたしがイジメのターゲットになるのに時間は掛からなかった・・・   涼宮ハルヒの改竄 version H   まず上履きを隠された。 でも、そんな幼稚な遊びに付き合う気がなかったあたしは全く気にもしなかった。 そんな事を気にしてたら「特別」な人間になんて永久になれないと思ったからだ。   どうやら、それが気に入らなかったみたいで翌日にはあたしの机に幼稚な中傷が彫刻されていた。 まったく、ノートが取り辛いったらありゃしないわね。 バカとかブスとか死ねとかってもうちょっとなんかなか...
  • 俺が涼宮ハルヒシリーズを知らなかった頃に、見た目だけで予測していた内容
    中だるみの時期とは、俺にとっては限定されるものではないと思っていた。…いや、今でもそう思う。地元でも有名な進学校へと去年の春に入学し、順風満帆な人生を謳歌しているんだと自惚れていたんだ。俺みたいな天才は、ほんの少しだけ努力すればいい…そう思っていたんだ。そして勉強を抜かるんだ結果見事にダブってしまい、身の程を知った俺は都外の高校へと転校した。 「お兄ちゃん、起きてよお兄ちゅぁん」 今日から正式に、一つ下の連中と付き合うことになったわけだが…どうにも気が進まない。県内偏差値35、東北で一番問題の不良高校だ。くっそう…なんで俺が まぁいい今日から俺は変わるんだ。眉をそり、髪も染めた。こんな田舎街の奴等が俺に敵うわけがないんだ…。 (あぁ~♪ 君はサンシャイン 僕のマイマイハニー) 変にイカれたようなラブソングが曲がり角の向こうから聞こえてくる。音源からし...
  • 古泉一樹の災難 救ver.
    キョンくんのクラスにつくと、ちょうど彼が教室をでてきた。 彼が僕に気付いてジャージを受け取り、すまんな、と言って少し笑った。 次の日、キョンくんが教室にきた。 よりによって、僕が暴力を受けているときに。 暴力をあたえていた人たちの動きがとまる。どうにかして取り繕うと口がぱくぱくと動いていた。 彼はずんずんと目の前までくると、僕の腕を引っ張り無理やり教室から屋上へと向かった。 「…なんだよ、あれ。おまえ、なんで……」 屋上につくと、彼が戸惑いながら僕に問いかける。 どうにかして誤魔化そうと、彼に心配をさせてはいけないと思った。 「……げ、劇の…練習です」 苦しい言い訳だった。言い訳にもならない、抵抗の一言だった。 いじめられていると、自分で認め、彼に泣きつくなんてできない。 機関では僕は笑顔で何でもこなす、エリートだった。だから、これぐらいのことはなんとか我慢できる。 とにかく彼に...
  • 有希、無音、教室にて。
    冬休みも明けて、数週間が経った。 実力テストという忌ま忌ましい魔物から命からがら逃れた俺は、久々に平凡なる毎日を送っていた。 今日という日も、その例外に漏れずこれといった事件や異変などは起こらなかった。 空はすっかり夕時にさしかかっていて、少し積もった雪が茜色に染まっている。 あの急な坂道をここから上りきったら、赤い屋根が目印の我が家に到着するであろう。 ほとんど淀みない動作で靴箱から靴を取り出す俺の足元に、一通の手紙が落ちてきた。 「  今日の放課後 1年5組教室にて待つ                     長門有希  」 特徴のない、機械的な文字でそれは書かれていた。 ……おかしい。いつもの長門なら、まずこんなことはしないだろう。 4月のあの日のように、あいつは本に挟んだ栞を使うはずだからだ。 といって、ほかに誰がこの手紙を書いたのかと問われると、とんと考え付かない。 以前朝倉...
  • おかえり、ただいま。
    雨が世界に降り注いだ 傘はどこかへ置いてきてしまった 学校だろうか 家だろうか そんな事は、もうどうでもよかった   振り返る、誰も居ない。 前を見る、誰も居ない。 いつか来た図書館の中を探してみても、居なかった。       「い か  とが  んのよ に  ひが   に」 と そんな風に考えていた   いつか? ずーっと昔? それとも、昨日のこと? 忘れたことさえ、忘れていた。 ただ、その。いつかの幸せな日々が ただただ、懐かしく思えた。     ◇◇◇◇◇◇       ハルヒの力が消え 古泉は事後処理に追われ、朝比奈さんは未来へと帰った。 俺は一般人であるが故に一般人的な普通の生活へと戻りつつあった。 ハルヒは相変わらずで、能力が消えても、ハルヒはハルヒ、元気なのは変わりが無い。 朝比奈さんは丁度卒業と同時に遠くへ行ってしまったという事になったし、古泉は受験勉強で忙し...
  • あらしのよるに
    暴風のせいでがたがたと不規則に鳴るサッシに目を向ける。カーテンを閉める前に確認した限り、帰宅した夕方にくらべてずいぶん風も雨も強くなっていた。 台風が近づいているせいで天気が不安定になっているらしい。 こういう日には、閉鎖空間には発生して欲しくないと特別強く思ってしまう。 暴風雨の吹き荒れる夜と、あの空間の中の色はとてもよく似ているから尚更。 ああ、でも最近はずいぶん閉鎖空間の発生頻度も規模もおさまってきている。 良い傾向だ。 軽く頭を振って思考を切り替え、数学の予習をしようと教科書とノートをひらいた時、時計がわりに手元においてあった携帯電話が着信を伝えた。 短いメロディが五秒間だけ流れて止まる。メールだ。 閉鎖空間の発生は感知されていないし、そもそも機関からの連絡は電話で来るのが常だったし確実なはず。 涼宮さんがまたなにか思いつきでもしたのだろうか。それとも、彼がなにか悩み事でも相談しよ...
  • I don't choose, but decide. chapter04
    火曜以来、俺とハルヒはお互いに連絡すら取れずにいた。別に疎遠になったわけじゃないぜ。 あんな事をした直後だ、向こうも何となくどう接すればいいのか分からないのだろう。少なくとも俺はそうだ。 ホントにどう接すりゃいいんだ?邪推かもしれんがこっちから連絡すると体だけの関係だと思われそうだ等と考えてしまう。 そんなわけで今日まで五日間、口も聞いてなければメールもしていない。どうしたものかね。 「どう思う、シャミセン」 尋ねてみても元化け猫は喉を鳴らすだけだった。 …まぁ考えていても仕方ない。一週間もたてばどちらからともなく会う事になるさ。そのくらいの信頼関係は築けたはずだ。 それよりせっかくの日曜だ、久しぶりに睡眠欲を存分に満たすとしよう…。その方がいい…ふぁあ… 妹も出かけているし、よく眠れそうだ…。 -もしこの時の俺に声をかけるならこうだね。 『お前はどうしようもないバカだ、惰眠を貪るの...
  • >>DEAR. 2
    「少し、お時間よろしいですか?」 顔の前で指を組んだ古泉が言った。くそっ。何だかコイツの笑顔のニヤケと困ったが2割増しに見えやがる。 「いいけど、ここじゃハルヒがそのうち来るぞ」 そう言うと古泉は急に思案顔を作った。珍しい、それはいつもの『本当は困ってないんですよ』スマイルでは無く、本当に困っている様であった。 「では、食堂の自販機で」……あそこにはいい思い出が無いのだが。 かつて古泉が実は超能力者なんです宣言をしたここで、あの時と同じ様にコーヒーを飲んでいる。 あの時よりはこいつを信用しているつもりだが、それでも男二人で飲むコーヒーはうまくない。 こら、そこのカップル。いちゃつくんじゃありません。 古泉はというと、ずっと眉根を寄せて手をつけていないコーヒーを見つめていた。 何だか俺から切り出す気にもなれず飲みきったコーヒーの紙コップを手持ちぶたさに折り曲げたりしてみる。 よく分からない...
  • a long wrong way 四章
    新しい学校、新しいクラス。 「――と言うわけで、今日転校してきた涼宮さんだ。 それじゃ、自己紹介を」 クラスメイトの期待に満ちた目。   あたしは北高での入学式の時の自己紹介を繰り返す。 クラスの空気が固まった。 これで不愛想にしてればあたしの見掛け目当ての男はよってこない。 それに、あたしの内心を見てくれるやつは『二人』だけでいい。 「……そ、それじゃ、涼宮はあそこの席だ」 先生の声で我にかえり、考えごとをやめる。 とっても不愉快な考えね。キョンはもうあたしには関係ない奴なのに。   あたしが席に着くと周りの人達が心持ちひいた。 だけど一人こっちを見ている。 雰囲気で分かる。何か危ない奴だってことは。 …………   授業が始まる。 「教科書開いて。それと、涼宮は隣りの人に見せてもらえ。 それじゃ、始めるぞ……」 授業のレベルは北高とそう変わりはしないわね。楽勝よ。   一日目はあっさりと...
  • 崩壊
    俺とハルヒが付き合うことになったときハルヒから世界を改変できる力が消えた。 あのときはその場の勢いでいろいろと恥ずかしいことを言ってしまったな。 今でも告白したときのことを思い出すと顔から火がでそうになほど恥ずかしくなる。 ハルヒは俺の告白にいつもの100万Wの笑顔で応えてくれた。 それから過ごした時間は幸せだった。ハルヒにつれられて遊園地に行ったり、水族館に行ったり……。 あれだけ奇怪な行動をしていたのにデートコースは一般のそれと同じ。 昔、古泉が言っていた通りやっぱり根底は普通の女の子なんだよな。 もちろんハルヒはSOS団の活動の手を抜くこともなかった。 むしろ付き合い始めてSOS団に影響はないことを示すためか、いっそう活動の突飛さは増したほどだ。 そんなこんなで時間が過ぎ一ヵ月後に変化は訪れた。   付き合って一ヵ月が過ぎたある日。その日、部室に朝比奈さんが来なかった。 朝比奈さんが...
  • 冬風のマーチ 第一章
     2月も下旬から3月にさしかかろうとしていた。 いつもはやる気のなさそうに飛ばされていた枯れ葉も、冷えた風が嫌で有給をとったのだろうか。 舞う葉すらなくなったと思えるくらいの強い風が、この辺り一帯を寒さで包んでいる。 俺は暖かい季節を待ち遠しく思えながらも、まだ続くと思われるこの寒さに非常に深いため息を漏らしていた。 まあ、俺がため息を漏らしていたのは、勿論そんなセンチメンタルな理由だけじゃない。そんなに繊細でもないと我ながら思っているさ。 そう、その理由の一つが目の前で繰り広げられている光景だ。当然、いつものことである。 「あんたも参加すんのよ、いいわね!」 毎度お馴染み涼宮ハルヒが教室で会話をしていた。 というかこの怒鳴り声は会話と呼ぶに値するのであろうか。俺ならば恐喝と答えるだろう。そのマシンガントークはまさに弾の尽きることなど知らぬが如しだ。 だがしかし、いつもと違う点がある。それ...
  • 長門有希とお酒
    それは冬も寒さが増してきてもうすぐ冬休みだ、と期待している俺に立ちはだかる期末試験の壁を越えようとしているとき出来事だ。   俺は放課後にSOS団の部室で勉強をしている。分からないところがあっても万能な仲間たちに教えてもらえるし、天使に入れてもらったお茶を飲みながら勉強することができる。 その上勉強の邪魔になる物はほとんど無く、また集中していなかったり他の事をしているとハルヒが激怒してくるため俺は仕方無しにも集中し、それが良い結果をもたらす事が分かっているためだ。 強制労働のように勉強させられている。しかし頭には凄い入ってくる。少し寒いのが難点だがこの勉強場所は最高だと思っている。もっとも試験期間以外は勉強はしたくないが。   期末試験はすでに始まっていて、残すところあと3日、7科目という状況で本日も3教科の試験を受けて残すところあと4教科となった放課後、いつも通り文芸室で俺は勉強...
  • I don't choose, but decide. chapter01
     涼宮ハルヒの能力が失われた。 -それに至るプロセスを詳細に具体的に語るのは俺の精神衛生上大変よろしくないので割愛させてもらう。 一文で言うならば、あいつと俺の関係性がどうでもいいクラスメート →団長と雑用 →次の段階へと変化していく過程でそうなったというわけだ。 たいてい(今だから言えるのだが)こういう関係性になる為の最後の行動というのは単なる確認行為であるわけで、 表見的な関係の呼称が変わるのみで実際の状況はそう変わりはしない。 つまり相変わらず俺はハルヒに振り回される役回りなのだ。 強いていえば振り回し方が理解しやすくなったのが一番の変化かもしれんな。 ともかく、もしかしたらさっきから俺が「確認行為」だの「表見的」だのという妙な言葉を使ったことから分かるヤツもいるかもしれんが、 ここに到達するまでは北高を卒業し、奇跡的に俺がある大学の法学部に入学するまでの時間を要した。 当然と言...
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