涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「雛見沢・SOS ~其の壱~」で検索した結果

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  • 一夏の恋
    白い手だった。 額に触れる、熱を冷ます繊細なてのひら。意識がぶつ切れに再生される中に、ちらついて見えた。暑さに魘されぬようにか、 そっと守るようにその手は添えられていた。柔らかな感触だった。茹だるような暑さの中に齎された束の間の癒し。 蝉の鳴き声が、遠くに聞こえる。 闇に落ちていた意識をふつりと浮上させ、重い瞼をどうにか開くと、綺麗な氷膜のような眼がこちらを見おろしていた。沈黙を守る、無機質な表情。常と変容のないまっさらな琥珀。 なのに―― そのとき心に極自然に浮かびあがった「綺麗だ」という感慨に、心拍が弾んだ。木陰、ベンチの上。どうやら馴染みの公園の一角。状況をあらかた把握すると、更に惑ってしまう。こうなるに至った経緯を思い出せないことも問題だが、何より、自分の頭が彼女の膝を枕にしていることに。 「……長門さん、その」 「あなたは浴衣買の出しに向かう途中に意識を失った」 訊ねること...
  • 一夏の恋3
    長いようで短い夜は瞬く間に明け、余り眠れないまま、連続SOS団活動予定日。 涼宮さんが持ち込んだレジ打ちのバイトに精を出し、稼ぎ分を支給されての帰り道のことだ。 熱気盛んな商店街を潜り抜け、洒落た店舗が並ぶ小路に差し掛かって、前方を進んでいた涼宮さんの脚が止まった。新装開店したばかりらしく花輪が味気ない舗道を彩っているの其の店は、張り出されたチラシの説明を要約するところ、全品一店もののハンドメイド商品がウリのようだ。ショーウインドウに飾られたショールを気に入ったらしい涼宮さんが寄り道を宣言し、ついでだからと店内に押し込んだ朝比奈さんの着せ替えを試着室にて始めた。とっかえひっかえ持ち込まれる小物は散乱し、篭にはフリルがついたものやレース地の服が大量に積みあがった。 邪推するならば、それは涼宮さんなりの気遣いだったのではないかと僕は思う。八月の異変を元に戻すことが叶わなければ未来に帰れない事...
  • スノーホワイト・レクイエム
    毒の林檎に齧りついて、白雪姫は死んでしまいました。 火で炙られた鉄の靴を履いて、お妃様は死んでしまいました。 白雪姫を、殺したのはだあれ。 お妃様を、殺したのは、だあれ? ---------------- 湿り風が、一足早く秋特有の空気を帯び始めていた。文化祭の準備にかかりきりの慌しく廊下を駆ける生徒達も、制服は長袖に衣替えを終えている。 古泉一樹は、廊下を渡る最中に窓を見越した。瞼すら刺し貫くような夏場の光が、季節の移り変わりに伴い、陰り始めていることを思い知る。斜陽が濃く、彩度を落としながらも伸びやかに秋空を表していた。些か、フライング気味の季節交代だ。もしかしたら今年度の冬は、例年以上の強烈な寒波に見舞われる、といった想定外のこともあるのかもしれない。 雪は、降るだろうか。 単語と名に結び付けてふと思い浮かんだ横顔は、静けさの内に書物に黙々と視線を落とす、無機質な少...
  • スノースマイル・バースデイ3
    泣き喚いて森に掴み掛かるように、その言葉を即座に現実のものとして当て嵌め、喪失への激情を露にすることのできた者はいなかった。――彼等は放心していた。長門有希までもが、そうだった。 「私は皆様に、謝罪しなければなりません」 森の声はあくまで起伏のない、義務を読み上げる事務員のような代物だったが、其処にどんな感情が眠っているのか、少年には読み取ることができなかった。泣き腫らした痕跡でもあれば、分かり易く彼女の悲しみを察せられたのかもしれない。けれど、保護対象としてきた彼等の前でそんな醜態を晒すような愚を犯す森園生ではなく、また彼女が機関のプロフェッショナルであることを彼らはよく知っていた。 「昨夜のことです。機関内部で、大規模なクーデターが発生しました」 「クー、デター……?」 みくるの鸚鵡返しに、森は肯定を返す。 「我等も長い時をかける間に、一枚岩ではなくなっていました。派閥が絡み合っ...
  • スノースマイル・バースデイ1
    闇。一面の。 ひたりと沈ませた脚の先に、蜿蜒と伸びる道。振り返るも同じだった。進む先も、同じ。 永劫に終わらないのかもしれないと、思いながらわたしは行く果てを目指している。 上がり下がり、曲折し、歪曲し、相乗する。記憶が霞むほど永い旅路だった。 やがて小さな一室に辿り着いたとき、わたしは途方もない刻を経ていた。混迷に導かれた様に、意識が覚束なくなっている。四角に切り取られた暗黒が入室を促して、ぽっかりと口を開けていた。 かつり。 踏み込んだ先に、目に入ったものはそう多くなかった。室そのものは、全体的に薄暗く判然としない。 中央に据え置かれた黒塗りの光沢ある棺桶、腰掛けた男。其処に在ったのはそれがすべてだった。 長い足を交差させ、腕を組んでいたその男は、此方に気付き笑ったようだった。 「こんにちは」 「――こんにちは」 「お待ちしていました」 手を広げ、歓迎の合図を示し、楽しげな男。けれ...
  • スノースマイル・バースデイ8
    ―――ひとひら春の日に舞い降りる、それは、雪のように。 奇蹟はありふれて此の世に降り立つ。 綺麗に晴れた水色の空が、世界に被さる様に続いている。吹き寄せる優しい風には、寒さを抜け切れない冷たさをも和らげる、柔和な春の光が溢れている。 見知らぬ僻地、見知らぬ定刻。 向き合う少女と少女が、出遭った。一人はまだ彼女自身の名を獲得する以前、一人は幽霊を自称していた為に、名を明かしはしなかったのだけれど。 「どこへでも行くことはできます。あなたの行きたい場所はどこですか?」 天使と見紛う、清純で愛らしい笑顔を、幽霊の少女は表情を作る機能のない少女に与えた。少女は生み出されて間もなくであり、人との直接的な接触は初めてのことだった。無機物の如く、彫像のように立ち尽くす彼女を諭すように幽霊の少女は告げる。何もかもを終えて遣り切った事に対する誇らしげな瞳が、長らく共闘し触れ合い、歩んで来た者に対し...
  • スノースマイル・バースデイ 最終話
    高低入乱れた音が、一つの歌を丹念に唄いあげる。 ハッピーバースデイトューユー、ポピュラーでシンプルながら、想い響き合う、長門に捧げられた祝詞の歌。 文芸部室は閉め切られ、暗がりにぼんやりと浮かぶのは不安定だが暖かい蝋燭の火だ。 曲が終わったらそれを区切りにケーキの上の蝋燭の火を吹き消すように言われていた長門有希は、いつもの面子が円陣となり見守る中、微弱な吐息を送り込んだ。カラフルな四本の柱に揺れていた小さな火がふっと消えると、控えていたクラッカーが出番とばかりに大きく弾け、花火のような色とりどりの紙吹雪を撒き散らした。 頃合を見計らってタイミング良く押された電灯のスイッチに部室の様相は明るく早変わりし、光浴びた全員の表情が露になる。 例外なく、皆、零れんばかりの笑顔が輝いていた。彼等の大きな大きな、深呼吸の後の大合唱。 「「―――誕生日おめでとうっ!」」 高らかな歓待の声が響き、室内...
  • スノースマイル・バースデイ7
    朝倉涼子が輪郭線を完全に喪い、跡形も残さず消滅する。 長門の与えた彼女へのラストワードが、消え失せ乖離してゆく彼女の鼓膜にまで届いたかどうか、確かめる術は最早ない。己の力で滅した元同胞に対し長門が覚えた感情は、単純な勝利への喜びに満ちて終われるものではなかった。 他に選びようがなかったとはいえ、後味の悪さは付随する。葬った彼女に対し、寂寞と羨望を抱いていたかつての己を長門は思った。 言うなれば彼女は模範だったのだ。 後退して行く未来を憂いて、思念体の意向に反した行動を取った。ヒューマノイドインターフェースとしては欠落しているようでいて、其の実どの情報端末より活き活きと「人間」の感情を、それは主に負に傾いたものではあったけれども、自前のものとして持ち合わせていた。朝倉当人は、その事実を自覚しきらぬままに。 朝倉によって改変されていた空間情報は、スノードーム内に組まれていたプログラムによ...
  • スノーホワイト・レクイエム最終話
    気まぐれに打ち始めた物語は佳境に入った。そこで、指が止まる。プロットなんてない、展開も決めていない。無心でただ、場面場面を繋ぐように文を補足していけば、どうしたって、ラストに近付くにつれ進捗は下がっていった。とにかく先へ進める為にキーを押そうとしても、指は思う様に軽快に動いてはくれない。至って当然の話だ。だってわたしは白雪姫がどうなるのかをまだ、決めかねている。毒林檎を食べて伏せてしまった哀れな白雪姫が、王子様に出遭えず仕舞いで、どんな結末を迎えるのか。 「愛しいひと」にも巡り合えぬままに、生涯を閉じようとする、薄幸の少女。 ――ハッピーエンドに、してあげたいのに。 「長門さんどうしたの?こんな時間まで居残りなんて、珍しいわね」 「あ……」 部室の扉を開けて、堂々と踏み込んできたのは、朝倉涼子――朝倉さん。セミロングの綺麗な髪。優等生らしく背筋の伸びた、頼れる女性を思わせる温和な微笑...
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