あるSS書きの個人的七つ道具の使い方ータロット篇 - ハルヒと親父 @ wiki

グレマスの行為項モデル

　『民話の形態論(The Morphology of the Folk Tale)』という著作で、プロップは１００の妖精の話を、約３０の‘機能’で解釈した。ここでいう「機能」は、物語の登場人物が行う行動の基本単位である。
　プロップは民話（物語）の登場人物を「彼等が何ものであるか？」ではなく「彼等が何をするか（どんな役割／はたらきを果たすか）」について分類し、つぎの７つの役割を挙げた。

• 悪者
• 提供者
• 支援者
• 探される人(the sought for person)（と彼女の父親）
• 送り出す人
• ヒーロー
• 偽ヒーロー

　そして物語の中で、これら役割が物語の中でどのような‘機能’を果たすかについて次のように説明する（これは物語の筋でもある）。

1	初期状態	ヒーローの家族のメンバーが紹介される。
2	失踪	家族の一人が家庭から失踪する。
3	制止	制止がヒーローに対して出される。
4	違反	制止が破られる。
5	偵察	悪役が偵察を企てる。
6	伝達	悪役はかれの犠牲者に関する情報を受け取る。
7	わるだくみ	悪役は犠牲者をだまそうと企む。
8	共犯	犠牲者はごまかしに屈服し、はからずも彼の敵を助けてしまう。
9	悪事	悪者は家族のメンバーを害するかまたは傷つけてしまう。
10	欠乏	家族の一人からあるものがなくなるかをか、またはあるものを欲しがる。
11	調停	災難が知られる。ヒーローが派遣される。
12	対応行動	捜索者は、対応行動に同意することを決定する。
13	旅立ち	ヒーローは出発する。
14	提供者の第1の機能	ヒーローは試され、魔法の力をもつ代理人を、提供者または支援者から授かる。
15	ヒーローの反応	ヒーローは、未来の提供者の行為に反応する。
16	魔法の力をもつ代理人の受け取り	ヒーローは魔法の力をもつ代理人を使用できるようになる。
17	空間的な移動	ヒーローは捜索の妨害に会う。
18	闘争	ヒーローと悪者は直接の戦いに加わる。
19	汚名をきせる	ヒーローは汚名を着せられる。
20	勝利	悪者は打ち負かされる。
21	一掃	最初の災難や喪失は、一掃される。
22	帰還	ヒーローが帰還する。
23	追跡	ヒーローは追跡される。
24	救助	追跡からのヒーローの救助。
25	認識されないこと	ヒーローは認められないで、家族のもとへまたは他の国に到着する。
26	無体な要求	偽のヒーローが無体な要求を出す。
27	難しい職務	難しい職務がヒーローに与えられる。
28	解決	その仕事は解決される。
29	認知	ヒーローは認知される。
30	発覚	偽のヒーローまたは悪者が発覚する。
31	変容	ヒーローは、新しい外観が与えられる。
32	処罰	悪者は罰せられる。
33	結婚	ヒーローは結婚し、王位につく。

　グレマスは、プロップの七つの役割を、３つの軸によって整理した。すなわち（１）履行の軸：仕事と闘争。（２）契約の軸：契約の成立と破棄（３）流離の軸：出発と到着。グレマスは、物語の主題、そこでの行為と役割の型をまとめて‘行為項(actants)’と呼び、３つの軸がこれら行為項の底辺にある、と主張している。
　ぶっちゃけていうと、物語の行為項は３つの軸に対応する３×２＝６つあることになる。すなわち

• 主体／対象（プロップのいうヒーローと探される人）
• 送り手／受け手（プロップの派遣する人とヒーロー）
• 支援者／敵対者（プロップの支援者と提供者の融合、および敵対者と偽のヒーロー）　

　グレマスは、いわゆる英雄（ヒーロー）は主体（探す者）であり、受け手であると主張している。たとえば、ある物語の英雄は、連れ去られた姫を「探す者」であり、探索の成功の褒美として、姫と結婚する（受け手）というように、英雄（ヒーロー）は２つの役割を果たすのである。

タロット（大アルカナ）

　大アルカナ（だいアルカナ、major arcana）とは、タロットの一組78枚のうち、22枚を構成する、寓意画が描かれたカードを指す。

番号	タイトル	描写されているもの	意味	占星術上の意味
0	愚者（道化師）	派手な衣装を着ている青年が、足に噛み付く犬にも気付かず、楽しげにステップで道を進んでいる	夢想・愚行・極端熱狂	風（天王星）
1	魔術師	祭壇を前にした若い男。その左手で杖を掲げ、右手で様々なもの（聖杯、棍棒、剣、円盤）が乗る祭壇を指している	意志・手腕・外交	水星
2	女教皇（女司祭長）	膝の上に大きく開かれた本を載せた若い女が王座に座っている。彼女の後ろには対照的な柱が左右にある	秘密・神秘・英知	月
3	女帝	威厳のある成熟した女性が野外の豪華な背景の中で冠とガウンをつけ腰掛けている。左手にはトウモロコシの穂を、右手には果実が溢れ出る黄金の豊穣の角を持ち、足元には鷲の紋章のついた盾がある。	実り・行動・月日の長さ・未知なるもの	金星
4	皇帝	髭を生やし豪華な衣装を着た屈強な男が、鷲の紋章のついた王座に座している。衣装の下には鋼鉄の鎧を着て、頭には重い鉄の冠をかぶっている。	統治・堅固さ・防御・同盟	白羊宮
5	教皇（法王、司祭長）	祭服を着た威厳ある人物が謁見の間の王座に座っている。右手は祝福のサインを示し、左手には三重の十字架を持っている。二人の僧侶が彼に謁見を許されている。	信条・社会性・恵みと有徳	金牛宮
6	恋人達（恋愛、恋人）	男女（しばしば男一人、女二人）が草の上に立っている。その上の雲の中にはエロス（キューピット）か天使がいる。	魅力・愛美	双児宮
7	戦車（征服者）	若い英雄が奇妙な双頭の動物によって引かれる戦車の上に立っている。	援軍・摂理・勝利・復讐	巨蟹宮
8(11)	力（剛毅）	落ち着いて自信に満ちた若い女性が、どうもうなライオンのあごを優しく、だがしっかりと力強くつかんでいる。	力・勇気・寛大・名誉	獅子宮
9	隠者	年老いた男が暗い道を進んでいる。右手にもったランタンがその行く先を照らしている。左手は、ランタンを風から守っている。フードをついた服を着ているが、頭には何もかぶっていない。	深慮・忠告を受ける・崩壊	処女宮
10	運命の輪（運命、運命の車）	奇妙な輪の周囲には４種類の動物がいる。輪の下にはしばしば猿が、輪の上方にはしばしば竜が。そして上に向かう輪の右側には犬が、下に向かう輪の左側には赤い見知らぬ動物がそれぞれぶらさがっている。	幸運・転機・向上	木星
11(8)	正義（裁判の女神）	威厳のある女性が椅子に座っている。右手には諸刃の剣を高く掲げ、左手には天秤ばかりが下がっている。	平等・正しさ・行政・正当な判決	天秤宮
12	吊された男（吊るし人、死刑囚、刑死者）	若い男が木の絞首台から左足首を吊るされ、宙に逆さに浮いている。しかし、その表情は苦悩という訳でもなく、超然とした落ち着きを見せている。	英知・慎重・試練・直観	水（海王星）
13	死神※無記名の場合アリ	大きな釜を持った人の骸骨のようなものが、黒い土を耕しているように見える。しかし彼の作物は農作物ではなく人間の身体であり、人の体の一部が彼の足下に散らばっている。	停止・損失・死と再生	天蝎宮
14	節制	天使か女性が片足を陸におき、もう片方の足を流れる水の中に浸している。彼女は右手に黄金の聖杯をもち、そこから左手の銀の聖杯へと、液体が注がれている。	調整・中庸・倹約・管理	人馬宮
15	悪魔	大柄な男が意思の台座であぐらをかいている。頭からは角が生え、重い女性のような胸をしている。左手は膝の上に、右手は大地を指さしている。足下には男女つがいの人に似た、しかし人ではない生物がいる。彼らの首には輪がかかっているがそれはゆるく、逃げ出せない訳ではない。	暴力・激烈・前もって定められ動かせぬもの・黒魔術	磨羯宮
16	塔（神の家）	高い塔が稲妻に打たれている。塔の先端は一撃で破壊され、炎が塔の内部を襲っており、窓からも燃え上がっている。人が破壊された塔から真っ逆さまに落ちていく。	悲嘆・災難・不名誉・転落	火星
17	星	美しい裸の少女が池のほとりにいる。彼女は右手で透明な液体を池に注ぎ、左手で同じ液体を土の上に注いでいる。背景には８つの輝く星の群れがあり、そのうち一つは大きく７つの頂点を持っている。	希望と明るい見通し・瞑想・霊感・放棄	宝瓶宮
18	月	暗く神秘的な池からザリガニが乾いた土の上に上がろうとしている。池からは道が、はるか地平線へ向かって伸びている。道の脇には二匹の犬もしくは犬と狼がいて、道を守っている。	隠れた敵・幻想・欺瞞・失敗	双魚宮
19	太陽	二人の子供が庭の真ん中に裸でいる。しばしば彼らは妖精の輪の中で踊っている。大きな太陽が背景に浮かび、あらゆる方向に光線を放っている。	物質的な幸福・幸運な結婚・満足	太陽
20	審判（永劫）	天使が雲の中から現れ時を告げるラッパを吹いている。その下には、男、女、子供の３人が、立ち上がろうとしている。	復活・位置の変化・更新・結果	火（冥王星）
21	世界（宇宙）	ヴェールだけを身につけた美しい者が中央にいる。その周りを上下を飾り帯で縛られた花輪が囲っている。その四隅には、天使、鷲、ライオン、雄牛が見える。	完成・約束された成功・旅	土星

物語をタロット×グレマスモデルに変換してみる

たとえばスター・ウォーズ（1977年；エピソード4/新たなる希望）だとこんな感じになる。

（あらすじ）
　田舎のあんちゃん（主人公：愚者：ルーク・スカイウォーカー）が、ベン・ケノービと名のる老人（送り手；隠者：オビ・ワン）によって使命をあたえられ、密輸船長（援助者；戦車：ハン・ソロたち）の協力を得て、敵（敵対者：死：ダース・ベイダー）の攻撃に犠牲を出すも、反乱軍の象徴である姫（対象／目標：星：レーア姫）を見事助け出し、反乱軍（受け手：世界）は勝利をおさめる。

よくあるソード＆ドラゴンものは、こんな感じ。

　国王（送り手：皇帝）は、出奔した／連れ去られた若い姫（対象／目標：女教皇）を救い出すことのできる勇者（主人公：戦車）を求める沙汰を出す。勇者には、アーサー王伝説のマーリンのごとき魔術師が道連れとなり助言と助力を与えられる。敵はドラゴンなり人外の者であるが、勇者は最終的にはそれを退け、見事姫を連れ帰る。別れを告げる勇者に対して姫は・・・

▲ページのトップへ

---