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涼宮ハルヒの経営Ⅱヘイスティングス会戦

最終更新:

hiroki2008

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ヘイスティングス会戦


再構成前は円卓会議がなかった 修正前の文章



 二階の大広間には騎士さんたち、それから隊長たちが揃っていて大聖堂の司教様が出陣の前の祝福の儀式をやっている。
「朝比奈さん、ほんとに戦争がはじまったんですか」
「そうみたいなのよ」
「いったいなんでまた戦争なんか仕掛けてきたんでしょう。軍の維持費も馬鹿にならん額だろうに、フィリップはそんなに土地が欲しいんですかね」
この時代の軍隊の経費など特別知っているわけではないんだが、俺が鼻を鳴らしていると伯爵が割って入った。
「それがだな修道士殿、どうも個人的な恨みが含まれているようなのだ」
「子供のころにいじめたりしたんですか」
伯爵は苦笑しつつ、
「それはないが、フィリップの要求はレディ・アングレームなのだ」
「それってレディ・ミクルのことじゃないですか。身柄を引き渡せと?」
なんだか分からんが朝比奈さんが絡んでいると知って俺も燃えてきたゾ。
「フィリップの家臣ユーグ十世がずいぶん前にレディ・アングレームと婚約していたことがあって、私との結婚は無効だと主張しているのだ」
「そうなんですかマイレディ?」
「さ、さあ。そんな約束をした覚えはないんだけど」
朝比奈さんは首をかしげている。
「婚約していたというより婚約権を買っていたのだな。つまりアングレーム伯領も彼のものになるはずだったのが、本人が知らない間に契約破棄されて頭に来ているらしい。フィリップがそこにつけこんだ」
なんとまあ、朝比奈さんに元彼がいたとは。ということはつまり、元彼と今彼の壮絶なる戦いの火蓋が今切って落とされようと、
「こらキョン、アホなこと妄想してないでさっさと荷造りしなさい」
なんか俺の思考を読んでいたらしいハルヒはまだ鎧姿のままだ。
「荷造りって、疎開でもするのか」
「そうよ。みくるちゃんとヘンリーを安全な場所にかくまうの。だからあたしが護衛するわけよ」
「慌てすぎじゃないか」
「修道士殿、先に海戦という流れになるので今すぐというわけではないが、もしもということもあるのでな」
「そういうことですか。まさか一組の結婚がイングランド対フランスの戦争を招くとは」
「まあ、先方の言い分ではリチャード陛下が勝手に伯領を与えたということになっていてな。それもあながち間違っていないのがこっちの弱いところだ」
朝比奈さんがキングリチャードから爵位をもらうとき、フランスの貴族には金をやって黙らせればいいと言われていたがこのことだったのか。あの王様のことだ、根回しするの忘れてたんだきっと。
「マイロード、僭越かもしれませんが、アングレーム伯領を差し出すだけじゃ済まないんですか?」
「それがまあ、リチャード陛下が不用意にも報復をやってしまってな」
「報復って?」
「先日の暗殺者の件だ。今度は陛下がフィリップの暗殺を企ててな」
分かりやすすぎる展開だ。
「で、失敗したんでしょう?」
「こちらの手配の者が向こうの将軍を刺してしまった」
「あっちゃー。なまじ成功してしまったわけか」
「こっちも建前で刺客を送っただけで本気ではなかったのだが。引くに引けないとはこのことだな」
まあ戦争ってそうやって起きるんでしょうねえ。



 会議というのはたぶん絶対守秘の作戦会議だろう。二階の大広間のドアが閉じられると、その前に立っている番兵が俺と長門に軽く会釈をした。たぶん出陣前に祈祷を頼まれるだろう、と思った俺は礼拝堂に戻ろうとしたが背後で突然、
「コラ二等兵! その汚い手を離しなさい!」
さっきの黄色いリボンの新兵が会議からつまみ出されてきた。なんだあ、またなにかはじまったのか。
「す、涼宮さん、ここは士官しか入れない会議なんですよ」
冷や汗を垂らしながら古泉がハルヒをなだめている。
「だったらなんでみくるちゃんはOKなのよ、一緒に出陣でもするっての!?」
「いえ、彼女は奥さんですから……」
まあ、伯爵夫人には武将の士気を上げるという重要な役割があるからな。
「みくるちゃん、ふんぞり返ってないであたしも作戦に参加させなさい」
片方だけ開いたドアの奥に向かって大声を張り上げているハルヒである。こういうときは逆らわないほうがいい。
 とうとう伯爵が出てきて、
「あー、ミス・スズミヤ、ここでの話は血の誓いを行った者しか聞いてはならんのだ。秘密が漏れると勝敗にかかわる」
「それなら、ングググこれでどうよ! イタタタ……」
ハルヒは剣の刃を握りしめ、刃に沿って垂れる赤い血を、涙目になりながら見せつけた。血の誓いって宣誓をするだけで別に血液を提供する必要はないんだが、どこのファンタジーだそれはイタリアンマフィアか。だが伯爵はわりと真顔で、人差し指でその血に触れて自分の頬に撫で付け、
「いいだろう。入りたまえ」
伯爵は三人に向かって入れと手招きした。え、俺と長門もですか。ハルヒは自分だけ痛い目に合ったからか、この参加権は貸しにしとくからね、と恩の押し売りをするような視線で俺達を見た。そんなものはお前のストッパー役の権利で相殺したいわ。
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