夏祭り(なつまつり)は粕谷紀子の漫画作品。少女コミック1975年39号掲載。読み切り連作シリーズの第1作目。
神社のお祭りの日、町の人々は雨が降るのではないかと心配している。
さち子は小学校から帰宅すると、そわそわしながら母の帰宅を待つ。やがて母が帰宅すると真っ先に
「おかあちゃま、ユカタ!」
しかし、毎年買うわけにはいかないと言われ、さらに姉・ひろ子(中学生)もお下がりを譲ってくれないと言う。さち子は友だちとみんなで浴衣を着ていく約束をしたと、ぐずる。やがて雨が降り始め、さち子は外へ飛び出す。友だちも来ない、と母は止めるが
「くるわいっ。おかあちゃまなんて死んじゃえっ」
と泣きわめく。さち子は、玄関にしゃがみ込んで拗ねて泣き続ける。夕飯に呼びに来た姉にも耳を貸さず、睨みつける有様。やがてさち子は寝入ってしまい、母はそっと布団へ運ぶ。だが寝室の隣では、母と姉が浴衣を縫い直していた……
翌日、さち子は空腹感とともに目覚める。学校では、クラスメートに祭りに誘われるが、浴衣がないさち子は行くか迷っていた。帰路の母を見かけ、あわてて隠れるさち子。昨日、ひどい暴言を吐いたことから、母と顔を合わせたくないのだ。一方の母はさち子の存在に気づく。
母と顔を合わせないよう、こっそりと帰宅したさち子。姉はさち子がお祭りに行かないと言ったことに驚く。
拗ねて部屋で机に向かうさち子。母は、ひろ子に浴衣を渡すよう頼み、ひろ子はさち子に浴衣を見せ、着せてやる。さち子は顔を真っ赤にして、行かないと言い張るものの、最後は嬉しそうに出かけていった。
友だちと落ち合い、祭りへ出かけていく少女たち。だが、たった一人洋服だった少女は、途中で悲しそうに帰ってしまう。
「へんな子」「きっとゆかた持ってないのよ」と感想を漏らす少女たちに、さち子は「やめなよっ」と大声を出す。
「そんなこと言わなくてもいいじゃない。いつも何着てたって、洋服でお祭りに行ったっていいじゃない」
不思議に思う友人たち。
「でもさ、サッコもゆかた着てるじゃない」
と指摘され、さち子はショックを受け、その場から走り出す。自分も浴衣を着ているが、あんな風に言われるのはわたしのはずだった、あの子も浴衣が欲しかっただろうに。さち子はゆかたなんかいらないとまで思ってしまう。
やけに早く帰宅し、さっさと洋服に着替えてしまったさち子。母は、あとでひろ子と一緒にお祭りに行くから、とさち子にふたたび浴衣を着て祭りに行こうと誘う。
さち子は自分の我がままと母の優しさに気が付き、いつまでも自分のそばにいてほしいと願う。
(終わり)