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*第1話
「まどか、おそーい」
「お?可愛いリボン」
「相変わらずまどかのママはカッコいいなあ。美人だしバリキャリだし」
「うやましい悩みだねえ」
「ほーう?まどかもヒトミみたいなモテモテな美少女に変身したいと。そこでまずはリボンからイメチェンですかな?」
「さては、ママからモテる秘訣を教わったな?けしからーん!そんなハレンチな子はー…こうだぁっ!」
「可愛いやつめ!でも男子にモテようなんて許さんぞー!まどかは私の嫁になるのだー!」
「ダメだったか…」
「そっちを後回しかよ!」
「うお、すげー美人!」
「ねえ、まどか。あの子知り合い?何かさっき思いっきりガン飛ばされてなかった?」
「お?」
「ええ!?何それ?文武両道で才色兼備かと思いきや実はサイコな電波さん。くー!どこまでキャラ立てすりゃあ気が済むんだ?あの転校生は!?萌えか?そこが萌えなのかあ!?」
「何それ?非常識なところで心当たりがあると?」
「あははは。すげー、まどかまでキャラが立ち始めたよ」
「あー、もう決まりだ。それ前世の因果だわ。あんた達、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわ」
「それ出来過ぎてない?どんな偶然よ?」
「今日はピアノ?日本舞踊?」
「あーあ、小市民に生まれて良かったわ」
「あ、まどか、帰りにCD屋に寄ってもいい?」
「へへ。まあね」
「じゃあね」
「ん?」
「まどか、こっち!」
「何よあいつ。今度はコスプレで通り魔かよ!つーか何それ、ぬいぐるみじゃないよね?生き物?」
「あれ?非常口は?どこよここ」
「あーもう、どうなってんのさ!」
「冗談だよね?私、悪い夢でも見てるんだよね?ねえ、まどか!」
「あ、あれ!」
「も、戻った!」
「ふう」
「何で、私たちの名前を?」

*第2話
「うわ…」
「んー、めちゃうまっすよ」
「うんうん、何でも聞いてくれたまえ」
「契約って?」
「え、ホント?」
「金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか?」
「魔女って何なの?魔法少女とは違うの?」
「そんなヤバイ奴がいるのに、どうして誰も気付かないの?」
「んー、悩むなぁ」
「おはよ…うわっ」
「やっぱそいつ、私達にしか見えないんだ」
「ああ、いや、何でもないから!いこ、いこ!」
「ええ?私達、もう既にそんなマジカルな力が?」
「何か変な感じ」
「いや、そりゃねーわ。さすがに」
「バッグ忘れてるよー!」
「どーゆー意味だよ、それは」
「つーかさ、あんた、のこのこ学校までついて来ちゃって良かったの?」
「言ったでしょ?昨日のあいつ、このクラスの転校生だって」
「あんた命狙われてるんじゃないの?」
「なら良いんだけど…」
「げ、噂をすれば影」
「あの転校生も、えっとその…魔法少女なの?マミさんと同じ」
「でもそれなら、魔女をやっつける正義の味方なんだよね?それがなんで急にまどかを襲ったりしたわけ?」
「何で?同じ敵と戦っているなら仲間は多い方がいいんじゃないの?」
「つまりアイツは、キュウべえがまどかに声掛けるって最初から目星を付けてて、それで朝からあんなに絡んできたわけ?」
「気にすんなまどか。アイツが何かちょっかい出してきたら、私がぶっ飛ばしてやるからさ。マミさんだってついてるんだし」
「ともかくってゆーな」
「ねえ、まどか。願い事、何か考えた?」
「私も全然。何だかなぁ。いっくらでも思いつくと思ったんだけどなぁ」
「欲しい物もやりたい事もいっぱいあるけどさ、命懸けって所で、やっぱ引っ掛かっちゃうよね。そうまでする程のもんじゃねーよなーって」
「まあきっと、私達がバカなんだよ」
「そう、幸せバカ。別に珍しくなんかないはずだよ?命と引き換えにしてでも、叶えたい望みって。そう言うの抱えている人は、世の中に大勢いるんじゃないのかな」
「だから、それが見付からない私達って、その程度の不幸しか知らないって事じゃん。恵まれ過ぎてバカになっちゃってるんだよ」
「何で…私達なのかな?不公平だと思わない?こーゆーチャンス、本当に欲しいと思っている人は他にいるはずなのにね」
「昨日の続きかよ」
「あんたにとやかく言われる筋合いはないわよ!」
「仁美、ゴメン。今日は私らちょっと野暮用があって」
「いや、だから違うって、それ」
「準備になってるかどうか分からないけど…持って来ました!何もないよりはマシかと思って」
「まどかは何か、持って来た?」
「うーわー」
「こりゃあ参った。あんたには負けるわ」
「意外と地味ですね」
「光、全然変わらないっすね」
「うん、やっぱりマミさんは正義の味方だ!それに引き換えあの転校生…ホントにムカつくなぁ!」
「ねえ、マミさん。魔女の居そうな場所、せめて目星ぐらいは付けられないの?」
「あ、マミさんあれ!」
「うわ、うわー」
「はい!」
「来るな、来るなー!」
「な、何てことねーって!」
「う…グロい」
「た、卵」
「そう言えば…」
「あ、キレイになった」
「あいつ…」
「くー!やっぱり感じ悪いやつ!」
「一件落着、って感じかな」

*第3話
「…はあ(深呼吸)」
「はい、これ」
「そんな、運がいいだけだよ。きっと」
「う。い、いいのかな?」
「えー…」
「いやー、やっぱマミさんってカッコイイねえ!」
「いえーす!」
「何か、ここんとこずっとハズレだよね」
「んー…まどかは?」
「ねえ、マミさん。願い事って自分の為の事柄でなきゃダメなのかな?例えば、例えばの話なんだけどさ、私なんかより余程困っている人が居て、その人の為に願い事をするのは…」
「た、例え話だって言ってるじゃんか!」
「その言い方は…ちょっと酷いと思う」
「…そうだね。私の考えが甘かった。ゴメン」
「はあ…よう、お待たせ」
「何か今日は都合悪いみたいでさ。わざわざ来てやったのに、失礼しちゃうわよね」
「ん?どうしたの?」
「またあの迷路が?」
「まどか、マミさんの携帯、聞いてる?」
「まずったなぁ。まどか、先行ってマミさんを呼んで来て。あたしはこいつを見張ってる」
「あの迷路が出来上がったら、こいつの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?」
「放っておけないよ。こんな場所で」
「ありがとう。キュウべえ」
「そりゃあ、まあ、当然でしょ」
「いざとなったら頼むかも。でも今はやめとく。私にとっても大事な事だから。出来る事なら、いい加減なキモチで決めたくない」
「平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう」
「間に合ったぁ」
「やったぁ!」
「返してよ。返せよ。それは…それは…マミさんのものだ!返せって言ってるだろ!マミさんに!」

*第4話
「え、ええ…」
「あ、そうでしたか…。どうも」
(何で恭介なのよ。私の指なんていくら動いてたって何の役にも立たないのに)
(何で私じゃなくて、恭介なの?もしも私の願い事で恭介の体が治ったとして、それを恭介はどう思うの?ありがとうって言われてそれだけ?それとも?それ以上のことを言って欲しいの?)
「あたしって…嫌な子だ」
(思えばその時の私は、まだ何も分かっていなかった。奇跡を望む意味も、その代償も)
「でもってー、ユウカったらさー、それだけ言ってもまだ気付かないのよ。『え、何?また私変な事言ったー?』とか半べそになっちゃってー。こっちはもう笑い堪えるのに必死でさー!」
(ゴメン、今はやめよう。また後で)
「そう、そうだよねー。どうかと思うよねー」
「知らないんだよ、誰も。魔女の事、マミさんの事、あたし達は知ってて、他のみんなは何も知らない。それってもう、違う世界で違うものを見て暮らしているようなもんじゃない」
「とっくの昔に変わっちゃってたんだ。もっと早くに気付くべきだったんだよ、私達」
「まどかはさ、今でもまだ魔法少女になりたいって思ってる?」
「…そうだよね。うん、仕方ないよ」
「マミさん、本当に優しい人だったんだ。戦う為にどういう覚悟がいるのか、私達に思い知らせる為に…あの人は…」
「ねえキュウべえ、この町、どうなっちゃうのかな?マミさんの代わりに、これから誰がみんなを魔女から守ってくれるんだろう」
「でもそれってグリーフシードだけが目当てな奴なんでしょ?あの転校生みたいに」
「じゃあ…」
「何を聴いてるの?」
「ああ、ドビュッシー?素敵な曲だよね」
「あ、あたしってほら、こんなだからさ、クラシックなんて聴く柄じゃないだろってみんなが思うみたいでさ。たまに曲名とか言い当てたら、すごい驚かれるんだよね。意外すぎて尊敬されたりしてさ。恭介が教えてくれたから、でなきゃ私、こういう音楽ちゃんと聴こうと思うきっかけなんて、多分一生なかったと思うし」
「なーに?」
「え?」
「だって恭介、音楽好きだから…」
「大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか…」
「あるよ」
「奇跡も、魔法も、あるんだよ」
「これでとどめだぁ!!」
「いやーゴメンゴメン。危機一髪ってとこだったね」
「ん?あー、んーまあ何、心境の変化って言うのかな?」
「ん?あ、大丈夫だって!初めてにしちゃあ、上手くやったでしょ?私」
「ふん、遅かったじゃない。転校生」

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