『幻影(前)』

リゾナントブルーAnother Vers(ry 暫定保管庫内検索 / 「『幻影(前)』」で検索した結果

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  • 『幻影(前)』
    違和感。 一言で済ませると、たった三文字で終わる。 しかし、それだけでは終われない。何故なら今は、戦闘の最中なのだから。 「凄いですね。私のテリトリーに入って平気で居られる人、はじめて見ましたよ。さすがは『鞘師』の継承者、 といったところでしょうか」 目の前の、里保よりやや年下に見える少女が言う。 テリトリー、の発音がやけに流暢だ。 里保の肩が大きく上下する。息が、乱れる。 例の「違和感」は、彼女の精神のみならず肉体にまで影響を及ぼしていた。 「『鞘師』のもの、か。その言い回し、どういう意味かな」 「意味もなにも。私は貴方が『鞘師』である以上、倒さなくてはいけない。do you understand ?」 ドゥーユーアンダースタンドと来たか。 まるで英語の授業に出ているようだ、と思いつつ。 この状況を何とか打破しなければ。でなければ。...
  • 『幻影(後)』
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  • メンバー別・CP別分類
    第44話以降に投下された作品を分類。それ以前の作品についてはまとめサイト、まとめサイト、まとめサイト Ver.2をお探しあれ。 MM。 高橋愛 新垣里沙 亀井絵里 道重さゆみ 田中れいな 久住小春 光井愛佳 ジュンジュン リンリン 譜久村聖 鞘師里保 鈴木香音 生田衣梨奈 石田亜佑美 愛ガキ 愛絵里 愛さゆ 愛れな 愛ジュン 愛リン ガキカメ ガキれな えりこは えりみつ えりリン さゆえり さゆこは さゆみつ さゆリン こはリン みつジュン ジュンリン 6期 6期‐8期 7期 - 8期 8期 - 9期 9期 『社会見学』 番外編 OG キッズ&エッグ イラスト&画像 動画 ゲーム 保全 MM。 『“未来”への反逆者たち ―序―』 『“未来”への反逆者たち ―氷と炎―』 『“未来”への反逆者たち ―チカラとココロ(1)―』 『“未来”への反逆者たち ―チカラとココロ...
  • スレ別分類(第48話~第61話)
    スレ別分類(第62話~)へ 第61話(2011/10/25(火) 20 49~2011/11/09(水) 19 55)321レスまで 第60話 (2011/09/14(水) 01 32~2011/10/25(火) 21 03) 第59話(2011/08/14(日) 13 43~2011/9/14(水)06 06) 第58話(2011/07/20(水) 23 24~2011/08/14(日) 10 09)655レスまで 第57話(2011/06/12(日) 22 02~2011/07/19(火) 12 53)806レスまで 第56話(2011/05/03(火) 18 59~2011/06/12(日) 22 22) 第55話(2011/03/30(水) 19 34~2011/05/03(火) 19 48) 第54話(2011/02/25(金) 18 24~2011/03/13(日) 08 13...
  • スレ別分類(第73話~第100話)
    ...56.45 0  『幻影(前)』 2014/11/13(木) 21 16 16.58 0  『狂気の紫』 2014/11/15(土) 02 33 24.64 0  『Vanish!Ⅲ ~password is 0~』(6) 2014/11/16(日) 10 39 00.61 0  『幻影(後)』 2014/11/18(火) 01 13 13.17 0 『リゾナントブルー劇場版「狼よ、故郷を目指せ」』 2014/11/19(水) 18 18 57.02 0  『リゾナンター爻(シャオ)』 20話 2014/11/19(水) 20 35 45.24 0  『リゾナントブルー劇場版「朱音姫の小さな大冒険」』 2014/11/20(木) 05 48 40.56 0  ■ マスクオブホース -田中れいな- ■ 2014/11/20(木) 17 29 17.48 0  『焔虎』...
  • Dive into the " FUTURE"予告編
    『Dive into the“FUTURE”』の予告動画を作らせて頂きました。 あの名作に恐れ多くもリゾナントさせて頂きました。 よかったら見てやってくださいませ。 『Dive into the“FUTURE”』の作者様、ありがとうございました。 Dive into the“FUTURE”(前)→
  • 『闇を抱く聖母』(前)
    光。闇。そしてまた光。 常夜灯で照らされたアスファルトを縫うように、十の影が駆け抜ける。 赤と黒に彩られた、異能の少女たち。 目指すは噎せ返るような闇の奥、白塗りの無骨な建造物。組織の研究所の一つだ。 だが、そうやすやすとは突破させてくれないようで。 彼女たちの行く手を漆黒の魔獣が阻む。 熊ほどの巨大な体躯に、特製のプロテクターを装着された「戦獣」。 その数、4、5頭ほど。陸自の一小隊に匹敵する戦力だ。 「ちっ、相変わらずこんなもの使って!」 「可哀想だけど…殲滅するよ」 生命を弄ぶ非道に憤る亜佑美。 その気持ちを汲みつつも、リーダーのさゆみが決断する。 彼女の言葉が合図となり、二つの人影が前方に飛び出した。 白のジャケットが基本デザインではあるが、肩から襟に取り付けられている赤い長布。 それが、踊るように撓り、そして鋭く魔獣の体を切り...
  • 管理者用備忘録
    ... 【関連作品】 『幻影(前)』 鞘師の感覚を悉く狂わせる野中の能力。 チェルの超短編 最初から別物と割り切って異なるパターンで書かれた野中美希の能力 (103)77 ■ サイコサイコ -石田亜佑美X石川梨華- ■ 2015/03/01(日) 06 07 11.80 0  【シリーズ物】【バトル】【石田亜佑美】【鞘師里保】【石川梨華】 新垣や道重が留守のリゾナントが襲撃された。 その犯人は石川梨華。 里沙が語っていた最強の念動力者だ。 以前里沙が言っていたように、逃げの一手を打つ鞘師たちリゾネイターだったが。 【補足】 ■ アバウトイシカワリカ -   X石川梨華- ■から相次いでの娘OG編連発…となることもなく、リゾネイターサイドの時計の針が進むことになった。 というか結局、「■アバウト~」は本作を描く為の布石だったのか。 「■アバウト~」の結びで新...
  • 狂犬は晦日に吼える(前)
                                         next→ 超能力者集団リゾナンターの拠点、喫茶リゾナントのある町の駅前には中型の業務スーパーがある。 食料品や飲食店の什器品を取り扱うその店舗は飲食業者のみならう一般客も利用できる。 年の瀬の迫った折も折、その店舗で光と闇の決戦が繰り広げられようとしていた。 その一方の当事者は中国生まれの中国育ち、見聞を広げるためにやって来た日本の国でリゾナンターのリーダー高橋愛に見出された獣化能力者。 リゾナントインディゴことジュンジュンだった。 そのジュンジュンと対峙しているのは、ダイナマイトなボディを白衣で隠し、天才的な頭脳でリゾナンターを苦しめるドクターマルシェその人だった。 「フフフフ、ジュンジュンいやリゾナントインディゴ。 ここであったが百年目。 今日こそは憎きお前を下して、獣化能力の秘密を暴...
  • 娘。12期メンバーに関する雑談
    ... こうなった⇒ 『幻影(前)』 導入としては中々のものじゃないでしょうか 鞘師に確執というか対抗意識を抱いているのは羽賀さんのイメージでしたが 377 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] 投稿日:2014/11/11(火) 14 10 14.46 0 生田のは精神的に追い詰めて発狂させる能力。 はるなんの偽装幻視は自分を別の物質へ書き換える能力。 方向や平行の感覚を奪うのは"重力操作"に近い気がする。 406 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] 投稿日:2014/11/11(火) 22 25 22.44 0   377 たぶん作中の設定でいうと偽装幻視とかは 集団幻覚だから物質的な変化は起こしてないと思う ■ アガルリフタアガルズ -飯窪春菜- ■ 407 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] ...
  • Dive into the“FUTURE”(前)
                                             Dive into the“FUTURE”(中)→ 「報告は、以上です」 執務室のデスクを挟んで、向かいにいる吉澤ひとみの端正な横顔に向け、新垣里沙は短く言った。 i914こと高橋愛監視任務の経過をまとまった形で報告するのはこの時で二回目になる。 吉澤は報告書に視線を落したまま「ご苦労さん」と軽やかな口調で言った後、里沙に視線を向け直し 「なかなか読ませる文章じゃないか。上も満足するよ」 と、目を細めた。 「恐れ入ります」 そう答えた里沙の言葉に僅かながら混ざり込んだ硬質な響きを、吉澤は見逃さなかった。 目を細めたまま、里沙の言葉の中にある“硬さ”の正体を吉澤は見極めようとしている。 涼しげな目元をしているが、その奥には闇と呼ばれる組織の影の部分を束ねる者とし...
  • 『妄想コワルスキー・Congestion』 (前)
                                   ←back     next→ ―その人は偽りの正義を掲げた私を疑うことなく受け容れてくれた。 ―その人は偽りを続けることに耐え切れなくなっていた私を責めることなく見守ってくれた。 ―その人は裏切っていた私のことを身を挺して守ってくれた。 ―その人は裏切りの罪が白日の下に晒された私を許してくれた。 ―そして今その人は私の目の前にいる。 私のことを心配そうに見つめている。 その人は…。 「だから、ガキさんシーッ、シーッって何を言ってるんや。 まさか、トイレ行きたいんか!」 えっ、何この人。 何言ってるの? 理解不能なんですけど。 確かに今の時間帯は人通りが少ないけど、だからって道の上でレディに向かって大声でトイレに行きたいのかって、ありえないんですけど。 …...
  • 『妄想コワルスキー・Full throttle』(前)
                                  ←back    next→ 【こんな話だったよ】 人類の宝『凡奇湯』を守るべく、一人戦い続ける誇り高き戦士、新垣里沙。 (己の肉体をボン。 キュッ。 ボン! とすべく欲望の虜となり、一人相撲を取り続ける新垣里沙) 喫茶リゾナントに救うおっぱい亡者どもの手から「凡奇湯」への招待状を奪取すべく虎口に飛び込んだ里沙。 (「凡奇湯」への招待状を盗み出さんと、喫茶リゾナントの郵便受けに腕を突っ込んだは良いが、抜けなくなった里沙) 苦境に陥った里沙を救ったのは、莫逆の友にして情人高橋愛の存在だった。 (苦境の里沙の気を紛らわせたのは、愛と露出プレイや幼な妻プレイに興じるという妄想だった) 鋼鉄の罠を打ち砕いた愛のサイコキネシス。 (能力とか諸設定はかなしみ戦隊なんでそこんとこヨロシク) 危機を...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 59回目
    ● 紺野の私室。 そこには血溜まりに横たわる「不戦の守護者」と呼ばれた女。 紺野は女を見下ろしながら、思いを馳せる。 「何や。今更後悔か?」 「いや。昔のことを少し、思い出していただけですよ」 現れたのは、着物姿に番傘を肩にかけた「首領」。 この世界とは別の世界で組織を束ねる者。 「そう言えばあんたは、『ダンデライオン』の出身やったもんなあ」 「よく御存知で。そちらの世界にもあるのですか?」 「まあな。うちじゃ『蒲公英隊』っちゅう名前やけど」 「首領」を含む5人の能力者たちによって創設された「アサ・ヤン」。 そこからさらに「M」、そして「ダークネス」へと発展と変遷を繰り返す中において、「不戦の守護者」が立ち上げたのが組織内部 隊「ダンデライオン」だった。 「しかし。『ダンデライオン』の創設メンバーの二人を同時に失う、か。うち...
  • 『モーニング戦隊リゾナンターR 第??話 「半分エスパーの世界(前)」』
                                      next→ 世界の破壊者 高橋愛。 守るべきものの為に立ち上がれ。 2011-2-20 12 08 00 ランチ テーマ:ブログ 今日のお昼は近所の喫茶店でいただきました。 カメラの調子が悪いので画像は上げれませんが オムライス↑ バジルパスタ↑ 美味しかったです。 店のマスターは私より年下のカワイイ女の子です。 関西弁がとても素敵です。 アメちゃんももらいました~。 ラッキー! 日課になったブログの更新を終えた高橋愛は溜息をついた。 その原因は故郷の母親から送られてきたお見合い写真。 相手は地元でゴルフ場やホテルを経営している企業の跡取り息子。 “お前もそろそろ身を固めたらどうだい”という手紙が添えられて...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 74回目
    ● まるでミルクの雲に包まれているみたい。 さゆみは、乳状の靄の掛かった空間で、薄桃色の光を帯びて横たわったまま浮かんでいた。ゆるやかな川の流れに乗るよう に、ふわふわと、どこかに運ばれてゆく。 そう言えばさゆみ、あの黒い触手に捕まって。 その後のことは、わからない。 ぷっつりと記憶が途切れてしまったように。 勝ったのか、負けたのか。 生きているのか、死んでいるのか。 それすらも、わからなかった。 リゾナントに、帰りたいな。 漠然と、そんなことを思っていた。 思いと裏腹に、目の前の景色は相変わらず見通しが利かない。 白い混沌とした世界がどこまでも広がってゆく。 横たわっているのか、それとも実は立ったままなのか。位置の把握すら出来ない不思議な、さゆみ一人だけの空間。 そこへ、新たな光が射す。水色の、きらきらとした輝き。 そ...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 14話
    ● 自らの体が溶けてゆくような感覚。 目の前が黄緑色の光に包まれ、そして視界が晴れてゆく。 これ、あの時と同じ感覚…? 衣梨奈は、さくらの精神にダイブした時のことを思い出す。 成功したのか。喜びに思わず握り締めた拳は、しかし目の前の光景が先ほどまでとまったく変わっていない。 当たり前のようなそうでないような。思わず首を傾げざるを得ない。 レールの上に停車している電車。 地面に敷き詰められたバラストに枕木。横たわっている黒髪の少女。 いや、これこそが彼女の精神世界なのか。 そんな想定は、慌てて電車から降りてやって来る若い男の姿に否定される。 「きっ君たち大丈夫かい!!!」 どうやら線路上に突如現れた彩花を轢いてしまったものと勘違いしているらしい。 顔は顔面蒼白、表情を引き攣らせながら駆けつけた運転手は、倒れている少女たちがほ...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 35話
    ● 奇しくも、刺客を打ち倒したリゾナンターたちが一所に顔を合わせたのは、ほぼ同時。 「あれ、亜佑美ちゃん何やってると!?」 「生田さんこそ!って言うか小田も!!」 「いや、あの譜久村さんが急にいなくなって」 互いが互いの状況を把握できていない。 我先にと口を開くものだから、収拾がつかなくなりつつあるところを。 「ちょっとみんな落ち着いて。まずはそれぞれの身に起きたことから話そう?」 さすがは最年長の貫禄と言ったところか。 春菜の言葉に従い、一人ずつ話し始める。能力者に襲われた、もしくは一緒にいた人間とはぐ れてしまった。など。 互いに情報を交換してようやく、自分達が置かれている状況を理解するのだった。 「くそ!またあいつらかよ、しつけーな!!」 「まさが出会ったらぐしゃぐしゃって丸めて、ぽいってしてあげたのにね」 自分た...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 42話
    ● 施設各所から吹き上げる炎の柱は、光の国の居城前からもはっきりと見ることができた。 炎の根元がどういう状況になっているかは、想像しなくても理解できる。 「どうしよう、このままじゃ遊びに来た人たちが!!」 「とにかく、助けなきゃ!!」 「その必要はないね」 リゾナンターたちの言葉を遮るように、一人の少女が目の前に降り立つ。 へそ出しショートパンツという軽装の、ポニーテール。 その顔には、見覚えがあった。 「こいつ…この前の譜久村さんに擬態してた!」 亜佑美が、思い出す。 確かに少女の顔はあの時の襲撃者のそれによく似ていた。が。 「ざけんな。あんな出来損ないと一緒にすんなって。まいいや、”のん”が面白い場所に、連れてってあげる」 それだけ言うと、右手をリゾナンターの面々に翳す。 何かの攻撃か。身構えた一同だったが、次の瞬間...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 46話
    ● まるで魔法の絨毯にでも乗っているかのようだ。 ただ一つ。絨毯がコンビニの入り口に敷かれていたダスキンマットであることを除けば。 逆に言えば、それがさゆみに現実感というものを齎していた。 風に乗り、さゆみを乗せて一定のスピードで飛行するマット。 それを巧みに操るは、足の長い、黒髪の美少女だ。 かそくどそうさ?で操ってるんさぁ。 ふわりと浮いたマットに乗るよう促したその少女は、さゆみとともにそれに飛び乗ると、軽快に空を 飛ばしていった。 危ういバランスで飛行しているような様子を不安げに見ていたさゆみに、少女が掛けた言葉がそ れだった。 「加速度操作」。 そう言えば、先日春菜と衣梨奈が助けた能力者の少女の使う能力が、それだったはず。 さゆみは思い出す。彼女は。 スマイレージ。 警察組織が新たに対能力者の切り札として結成した「エ...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 62回目
    ● 悪夢だ。 でなければ、何かの冗談だ。 福田花音には、そうとしか思えなかった。 圧倒的優位に立っていたはずの自分達が、今やまともに動けるのは花音一人。 彩花は、紗季は。そして憂佳は。生きているのか、死んでいるのか。あれだけの爆発をまともに受けてしまえば、死んでしま うのが当たり前。そうでなくても、もう手遅れなのではないだろうか。 いや、人のことを考えている余裕などない。 赤き死は、確実に自分にも手を伸ばしているのだから。 「あんた一人だけになっちゃったねえ」 夕陽を背に、「赤の粛清」が語りかける。 ぼろぼろになった外套を靡かせ、にっこりと微笑む姿。 彼女は、アイドル「松浦亜弥」として、テレビに出ない日はないというくらいの活動をしていた。ある意味、見慣れた顔。だ からこそ、怖い。彼女の漂わす、非日常の「死」が。 「さて、どうする? ...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 37話
    ● 「Dr.マルシェ!こちらにおられたのですか!!」 息を切らし、黒服のサングラスといういかにもな格好の男が建物に入る。 ここは、ダークネスの本拠地に設置された、食堂。 非合法な組織にしては意外とまともな作り、一見どこかの大学の学食と見紛うばかりだ。 そこで紺野は、少し遅めの朝食を取っていたのだった。 「騒がしいですね。何か御用ですか、諜報部の方…ああ、すみません。マッシュポテトは大盛りでお願 いします」 自らの食事タイムの邪魔をされたせいか少々不機嫌になった紺野ではあるが、すぐに食堂の中年女性に 追加注文をする。テーブルには、少しずつ食べたトースト、目玉焼き、スクランブルエッグ。 「探しましたよ!てっきり研究室にいるものとばかり…」 「日夜部屋に篭り、わずかばかりの栄養ゼリーと煮詰まったコーヒーで腹を満たす。そんな典型的な研 究者像に...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 75回目
    ● それまで規則正しく動いていた、デジタルの数字。 パソコンの画面上に映し出されていた、「実験」のあらゆるデータ。それらがまるで示し合わせたかのように、ぴたりと止まる。 数字はやがてありえない数値を弾き出し、計算式を飛び出し、画面をゼロの数字が埋め尽くす。ゼロ、ゼロ、ゼロ。 測定不能。 遠隔操作も一切受け付けない。 紺野は、遠く離れた研究所の共鳴抽出機械に致命的な事象が発生したことを悟る。 「どうやら実験は失敗に終わったみたいですね」 ドアのノックがないのは最早お約束。 紺野は無機質な二枚の硝子を訪問者へと向けた。 「ええ。予想以上にリゾナンターたちが活躍してくれたようで」 「相変わらずのポーカーフェイスですね。大失態とも言うべき事態なのに、顔色一つ変えてない」 里田まい。 ダークネスの幹部「不戦の守護者」に仕えていた、「...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 23話
    ● 「ぐはっ!!!!」 小さな体が、ゴム鞠のように地面にバウンドする。 蹴られ地に伏した女を見下ろすように、ライダースーツの金髪が仁王立ちしていた。 ダークネスの本拠地の、倉庫区画。 物々しいフェンスに囲まれた空間は、滅多に人が立入ることはない。 「何だ、やられっ放しかよ」 「…よっちゃん、意味わかんねーし」 ポニーテールの少女は苦痛に顔を歪めながら、否定のポーズを取る。 私刑を受けることも、それに対し反撃する事も納得のいってないような顔だ。 しかしそれも、金髪 ―「鋼脚」― が無防備な腹部を踏みつけることで即座に悲鳴に変わる。 「ほら、反撃してみろよ。なんならお前が諜報部の監視役たちをやったように、あたしのこともぶっ殺してみるか?」 「ぐっ…がっ!!!」 「歯ごたえねえなあ。市井さん殺った時みたいに、びっくりさせてみろよ」 ...
  • 『闇を抱く聖母』(後)
    ☆ ★ ☆ 「その子は、特殊な能力の持ち主でして」 モニターに映る、白衣を着た女。 「うちの組織の被験体、いわゆる『エッグ』というカテゴリーに属するんですが」 薄闇に佇むその姿は、いつ見ても嫌悪感しか催さない。 なぜならば。 「さゆ。あなたなら、知ってますよね? 彼女の能力の『本質』を」 画面の向こう側の女が浮かべる笑みは、命を弄ぶ人間のそれだからだ。 白と、赤と黒が交差する戦闘服を身に着けた十人の少女たちはそのことを痛感する。 「まあ、あなたたちがその子を連れだすことを阻みはしません。どうぞご自由に」 だから、本能的に理解できる。 彼女が投げかける、次の言葉を。 「ただし、『できるならば』ね」 ☆ ★ ☆ 部屋が再び、沈黙に沈む。 研究所の最奥、隔離されたような作りの部屋にその少女は立ち尽く...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 63回目
    ● 「ここに来たってことは。覚悟を決めてきたって思って、よいのかな?」 夕陽を背にして、粛清人。 所々から血を流してはいるが、それが大きなダメージとなっている様子はない。 つまり、ほぼ万全の体制。 「約束。果たしに来たで」 「へえ。あたしとは戦いたくなかった、なんて言ってたのに。やっぱあれ?このままじゃ自分の後輩たちにまで危害が及ぶ、なんて 考えちゃった?」 愛に向かって、見透かしたような笑顔を見せる「赤の粛清」。 彼女の言うとおりだった。目の前の女は、目的を果たすためなら何でもする。若きリゾナンターを血祭りにあげることも、警察組織 の後輩たちを餌に自分をおびき寄せることすらも厭わない。 ならば、これ以上犠牲を増やすわけにはいかなかった。 「今度はもう邪魔者はいない。だから…見せてよ。全てを光へと還す、至高の力を!!」 「赤の粛...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 50話
    ● 異変は、車両内にいた春菜たちにも伝わっていた。 何の前触れも無く、ゆっくりと動きを止める列車。その止まり方に、春菜は既視感を覚えていた。 もしかして、これは。 「鈴木さん、物質透過をお願いします!!」 「え?あ、うん、わかった!」 取り合えず外に出ようという判断なのだと悟った香音。 自身と春菜、そしてさくらに物質を透過させる力を与えた。 最初からそこに何もなかったかのように、車両のドアを摺り抜ける三人。 春菜は、先頭車両の鼻先に立っている女性を見て、思わず声をあげる。 この独特な雰囲気。見間違えるはずもない。 「あ、彩ちゃん!!」 和田彩花。スマイレージのリーダーにして、加速度操作能力の使い手。 やっぱり、という気持ちと同時に、まさかこんな場所で会えるなんて、という驚き。 スマイレージのリーダーとして、花音の手助けに来た...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 69回目
    ● 業火。 肺腑まで焦がす炎熱地獄の中、新垣里沙と「鋼脚」は対峙していた。 周囲はすっかり赤い舌に嘗め尽くされ、ごうごうと音を立てて燃え盛っている。里沙にとっては最悪の状況であることは間違 いない。 「へえ。ちゃんと使えてるじゃん。『伝達遅延』。呼吸法と組み合わせれば、致死量の猛毒の煙の中でも数分間は生きてられ る。師匠としても鼻が高いね」 炎の壁を見渡しながら、「鋼脚」。 その表情は少しも歪んでいない。先ほどまで炎の中で戦っていた里沙に比べ、今しがたこの場に到着したと思しき「鋼脚」。 何よりも。 「伝達遅延」は自らの精神に作用させることで、毒物等の身体に害を及ぼす物質の影響を遅延させることが出来る能力。 そして、呼吸法により極力毒気を吸い込まないことにより、その効果は飛躍的に高まる。 問題は、そのどちらも、目の前の金髪の女性が里沙より...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 40話
    ● ダークネスの幹部「煙鏡」が流したアナウンスは、もちろん工事区画内の里保にも届いていた。 それ以前に、激しく舞い上がる炎の柱が鉄板の壁の向こうにはっきりと見ることができる。 「…厄介なことになった」 そう言いつつ、ちっとも困っている様子のない女。 寧ろ、元から困っているような表情をしているので判別が難しい。 「…あなた、リヒトラウムの管理者って言うなら。この状況はまずくないですか」 「確かにね。どうしよう」 里保の心は、「煙鏡」の悪意に満ちた声を聴いた時からすっかり落ち着いていた。 とてもではないが、こんな場所で遊んでいる時間はない。そう言った意味の落ち着きではあるが。 不意に、メロディーが流れる。 女が面倒臭そうに、自分のポケットから携帯を取り出した。 「もしもし…はい。はい…ああ、そうですか。了解」 実に、素っ...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 43話
    ● 一方、同じミラーハウスの別の場所に転送されていた春菜は。 「擬態」能力の持ち主がこの場所を戦場に選んだ目的を早くも理解していた。 しかし、春菜は心の余裕を保つ事ができる。なぜなら。 「おーい、はるなん!!」 すぐに、遥のものだとわかる塩辛い声。 彼女の「千里眼」と自分の「五感強化」があれば、相手がいかに自分達のうちの誰かに擬態しようとも 見破る事ができるはず。 遥の声のするほうへ駆け寄ると、相手もまた春菜を探していたようで、出会い頭でばったりと出くわした。 「なんだ、こんな近くにいたのかよ。いるんだったら返事くらいしろって」 「えっ、あ、ごめん。ちょっと考え事してて」 相変わらずの年上を敬わない態度、けれど今はそれが頼もしく映る。 能力者の少女の攻略に、遥の能力は不可欠だからだ。 「ねえくどぅー、『千里眼』で相手がど...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 09話
    ● 喫茶リゾナント。 普段は店主のさゆみが腕を振るい客をもてなすこの店。とは言ってもその機会はめったに訪れないが。 今日はさゆみが朝から所用で出かけているため、同じく学生という立場から離れている春菜がキッチンに立っていた。 あまり客の訪れることはないリゾナントだが、今日に限ってはそのほうが幸せなのかもしれない。 春菜の料理のセンスは、絶望的だった。 からんからん。 さっそく朝から犠牲者第一号、もといお客様の登場に腕撫す春菜。 だがその人物の顔を見た途端、なぁんだ、という言葉が思わず漏れてしまう。 「なぁんだ、って何。衣梨もお客さんやろ」 「だって、生田さんお客様としてきたわけじゃないですよね」 春菜の反応に不満げなのか、それとも店に春菜しかいないことに不満げなのか。 ともかく学生ならば学校に通っているべき時間に現れた衣梨奈は、店の奥のテーブル...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 70回目
    〇 「邪魔しようもんなら、ぶっ飛ばす!ふぐ面科学者!!」 衣梨奈の勇ましい声が、研究室に響く。 それを聞いた白衣の科学者の立体映像が、肩を竦めた。 「じゃあ試しに。その二人を助けてみてください。私は何の邪魔もしませんので」 助けてみてください。 それは許可のようにも、挑発のようにも聞こえた。 ただ、何かがあるからと言って手を拱くような状況ではない。 八つの影が、一斉に機械に襲い掛かる。 それと時を同じくして、周囲の空気がぐにゃりと音を立てて歪んだ。 次の瞬間には、もう誰も立っていなかった。 目の前に広がる少女たちの無残な死に様。 飛び出した刃に額を貫かれた屍。 弩に喉元を撃ち抜かれた屍。 槍で心臓を貫かれた屍。 5.56ミリのライフル弾で身体を蜂の巣にされた屍。 火炎放射器に焼き尽くされ墨と化した屍。 貴金属すら溶...
  • 『友(とも)』
    from『私がいて 君がいる』 『友(とも)』 〈優しくいれるさ〉 1-1 10人のリゾナンターと関根梓、そして8匹の犬は、山奥の洞窟の前に立っていた。 ダークネスに囚われている梓の仲間を救出したい。そこにいる全員が同じ思いだった。 さゆみは梓に尋ねた。 「梓さん、ここがあなたのいた所?」 「はい、この洞窟の奥に、ダークネスの秘密の研究所があります。 私が瞬間移動したのは、その辺からでした。 洞窟の中では、瞬間移動を妨害する装置が作動していましたから…」 さゆみは後ろを振り向き、目を閉じて何かを探っている工藤遥に声をかけた。 「工藤、中はどう?」 「はい、ここから100mくらいの範囲には、敵の姿は特に見あたりません」 「…そう」 「警備兵がおらんってどういうことかいな?」 隣りで腕組みをしているれいなが、洞窟の入り口をにらみながら...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 31話
    ● しかし見れば見るほど異様な光景だ。 異能力に目覚めて以来、大抵の異様なものには慣れていたつもりの春菜だったが。 「何を驚いているんだい? 見ての通りさ! 君の盟友である生田衣梨奈は今まさに! 四つの魂 に分けられたのだよ!!」 赤を基調とした、中世フランス的な軍服に身を包んだ男装の麗人。舞うように、踊るように春菜の目 の前に一歩踏み出す。どこかで見たことがあるような所作。 巻き巻きの金髪ロングからして、ベルばらだ。いや、宝塚か。 それよりも、問題はその衣梨奈のほうだ。 「はるなん、これどういうこと?」 「お前ら、元に戻すっちゃ!!」 「あーもう面倒臭いと。どうでもよかろ」 「全員ぶっ飛ばす! えりはいつでも臨戦態勢やけん!」 同じ顔した衣梨奈が、四人。 さっきのオスカルの言葉を信じれば、文字通り「魂を分けられた」のだろうが...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 19話
    ● 竹内朱莉は先ほどから、度々深いため息をついている。 テーブルの正面には、ツインテールの少女。意思の強そうな眉とそれに反比例した子犬のような鼻、そして口元から 覗く八重歯は愛らしくすらある。ただ、朱莉のため息の原因は明らかにこの少女に起因していて。 「だからさ、めいたちはもうお笑い担当でいいと思うわけ」 「…能力者のお笑い担当って何よ」 「だって和田さんとか福田さんは一線級で活躍してるわけじゃん。でもめいたちはずーーーーっとサポートしかでき なくてさ。何か悔しいじゃんそういうの」 「そりゃまあ。でもお笑いと関係なくない?お笑いの能力って意味わかんないし」 先ほどから目の前の少女・田村芽実が主張する「お笑い担当能力者」という存在について、改めて朱莉が疑問を投げ かける。すると、 「めいたちははっきし言って能力も中途半端…まありなぷーのアレは何か...
  • 『上へ追えぇ(うええおええ) (中盛)』
    川*’ー’)<リゾナンターとしてみんなにはまだまだ学んで欲しいことがあるんよ ||c| ・e・)|<うん、それはその通りだね ノノ∮‘ _l‘)<大事なことですよね、正義でしょうか? |||9|‘_ゝ‘)<わかった!愛嬌っちゃね♪えりなが新垣さんを愛するように ノリ*´ー´リ<何言うとるんじゃ?必要なのは強さにきまっとるじゃろう? 从*´◇`)<常識も必要なんだろうね 川*’ー’)<うんうん、みんないいね。もちろん大事だけどね。それだけじゃないの。 ハo´ 。`ル<え~高橋さん、教えてくださいよ~ 川*’ー’)<教えられない。だって、それはみんなが考えることが必要だからね ||c| ・e・)|<与えられるだけでは成長しない。考える過程にこそ価値があるのよ 川*’ー’)<・・・でも、ただ考えろっていうのも難しいがし。だからヒントはあげるから。れいな 从 ´ ヮ`)...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 44話
    ● 四方八方を鏡に囲まれた、空間。 鏡の一枚一枚に映った糾弾者が、たった一人の犯人に一斉に視線を向けた。 「今…全てがわかりました」 春菜が、静かに言う。 そこには、いつもの弱弱しさなど微塵も見られない。 「だね。かのも今、はっきりと確信した」 そこへ続くのは香音。 戸惑うのは遥一人だ。 「なにが…わかったんだよ?」 「『金鴉』が化けてるのは…」 ほんの一瞬の、沈黙。 そして。 「くどぅー、あなたよ!」 「は?ちょ、ちょっと待てって!何でそうなるんだよ!!」 指差され、納得のいかない表情の遥。 一方妙なことをされまいと、香音と春菜が間を詰める。 「だってはるは、はるなんと一緒にいただろ!そん時に『金鴉』の野郎がべらべら喋ってたじゃんか!!」 「あのアナウンスが、予め用意されていたものだとしたら...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 13話
    ● はぁ…金がしこたま入って来るのはええねんけど、こんなんばっか続くとしんどいわぁ。 せっかくのあいぼんさんのつるつる卵肌にめっちゃ影響出るやん。 社長の机っちゅうのも案外居心地のええもんと違うな。 て言うか何やねんこの事業計画書の山は。「詐術師」のやつ、こんな山ほどみみっちい仕事抱えてたんか。そらチリも積もれ ば山となるんやろうけど、なぁ。 欲かいて首領の首も狙うわな。それで死んだら元も子もないか。 何や。うちめっちゃ忙しいねんけど。 お客さん?そんなん聞いてへんわ、とっとと追い返し。 だいたいアポなしでうちに会おうなんて100年早いわ… ほんまか。ほんまにそいつはそう名乗ったんやな。 成りすましてこともあるやろうけど、ま、ええわ。早よこっち通し。 しっかし随分久しぶりに聞く名前やな。うちらがあないな目に遭わされた前後で姿消しよったって聞いてたんやけど...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 22話
    ● 数日後。 福田花音は警視庁にある対能力者部隊本部に赴いていた。 昨日は思わぬ出来事で会議途中で離脱してしまっていたが、会議内容の詳細を部長代理に聞かなければな らない。ダークネスにとっても切り札であろう「銀翼の天使」の保護は、国家権力に属する能力者たちにとって 重要な作戦と言っても過言ではない。 不本意ながらも、赤の粛清を討滅したことで「スマイレージ」というグループの実力を示すこととなった。ここで さらに今回の作戦で功を成せば。 もうあんなやつらなんて、眼中になくなる。 花音は忌々しい連中の顔を思い浮かべ、舌打ちする。 赤の粛清戦で助けられたばかりか、一度は「壊れてしまった」和田彩花を救い出された。プライドの高い花音 にとって、それらの全てが屈辱でしかない。 ついでに、あの日から彩花がはるなんはるなん五月蝿い。 人に対して滅多に心...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 07話
    ● 「だからさぁ、昨日の試合がチョー面白かったんだって。坂本選手がめっちゃカッコよくて」 べちっ。 「…て言うかタケってニワカだよね。イケメン選手のことしか話さないし」 べちっ。べちっ。 「うほっ!うほうほうほうほっほ!!」 べちっ。べちっ。べちっ。 「出た!かななんのゴリラのまね!じゃあめいも物まねやる!!」 べちっ。 べちっ。べちっ。 重たい緩慢な音が、部屋にこだまする。 音の主は、部屋の隅で座り込んでいる人物であることは間違いない。 その状況を、部屋を共にしている少女たちはまるでなかったもののように扱った。 いや、そうすることしかできなかったと言ったほうが正しいか。 艶やかだった髪は乱れ張りを失い、かつて怜悧な輝きを保っていた瞳は目の前の壁を見ているようでまったく見ていなかった。 なのに、手先だ...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 17話
    ● 春菜の目に、鮮やかな色彩が飛び込んでくる。 原色を基調とした部屋の中には、たくさんの子供達がいた。 ビビットな色に反比例して際立つ、白いワンピースを着せられた少女たち。 数人でかたまって無邪気に遊具で遊ぶものもいれば、一人で座り込み虚空を見つめているようなものもいる。そして彼女たちを。 マジックミラー越しに見ている、白衣の男たち。 春菜は、今自分が見ている光景が「研究所」のものだとすぐに理解する。 なぜなら、彼女もまた似たような環境に置かれていたから。 部屋の裏手にあるドアが、かちゃりと音を立てて開錠される。 現れた白衣の男。少女の一人に声をかけ、手を引いて外へ出て行った。 あの子は…それに、もしかして… 幼いながらも、はっきりとした顔立ち。浅黒い肌。 連れ出された子は、間違いなくこの精神空間の主である彩花。そして連れ出した男の目的...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 15話
    ● 一方、彩花の精神世界に入り込んだ春菜は。 一面に草花が咲き誇る草原に立っていた。 見上げると、抜けるような青い空。それでも、春菜はその景色に違和感を覚えていた。 一番大きな違和感は、ここまで晴れ渡っているにも関わらず。 光差し込む源が存在していないということ。太陽が、ない。 吹き抜けるそよ風も、美しく咲く花も、どこまでも広がる草原も。 色彩だけが強調され、そこに温度と言うものが存在していなかった。 さらに、もう一つの異常な光景は。 目の前には、木枠に嵌った美しい絵画。 それと同じものが、無数に空間に浮かんでいた。 これが、今の和田さんの精神世界… かつて春菜の前で絵の魅力について語った彩花。 だが、色彩だけが暴走し無数の絵画が不安定に浮かんでいる光景からは。 その片鱗すら、見受けられない。 それにしても、見たこと...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 76回目
    ● 喫茶リゾナント。 流行りの店というわけではないが、朝はそれなりに客が入る。 大抵が出勤前の慌ただしいサラリーマン。入店し忙しくモーニングセットを詰め込み、そしてまた急かされるように店を飛び 出る。 他のメンバーたちは学校がある。この時間帯で奮闘しているのは、店主のさゆみと高校を卒業しこの時間でも手伝いができる ようになった春菜の二人だ。 「ふう。やっと終わりました」 「この時間はうちの生命線だから、しっかり稼がないとね」 最後の洗い物が、乾燥機に仕舞われる。 ラッシュアワーとも言うべき時間帯を乗り越え、二人は安堵のため息をついた。 この時間を過ぎてしまえばあとは閑古鳥。さゆみの言葉にも説得力がある。 「あれから、1週間が過ぎたんですね」 「そうだね…」 戦いは。 リゾナンターの勝利に終わった。 さくら。そしてれいなを救出し、...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 10話
    ● 国道沿いの、とあるファミレス。 全国的に有名なチェーン店ではあるが、店内には客はほとんど見当たらない。 それもそのはず、今はサラリーマンが眠い目を擦りつつ電車に乗り込むような早朝。そんな時間にファミレスで食事などという人 種はそうはいないはずだった。 普段なら厨房の中で暇を持て余したウェイトレスと調理担当のバイトが世間話に花を咲かせているような時間帯。のはずだが。 必死の形相をしたウェイトレスが、料理を両手に窓際のテーブルまで運び込む。 それが終わるとすぐさま厨房に向かい、次の料理を受け渡される。その、繰り返し。 昼のピークタイムと見紛うばかりの忙しさ。店内には、ひと組の客しかいない。だが、その客が大問題だった。 露出の多い服を着たギャルと、白衣の眼鏡の女性の二人組。 何の繋がりもなさそうな妙な取り合わせではあるが、彼女たちにはある共通点があった。...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 36話
    ● でぃんどんでぃんどん…でぃんどんでぃんどん…てんてけてんてん…てんてけてけてけ… 眩い電飾と床置きサーチライトに照らされた、大広間。 中年男性のアカペラ音楽とともに入場するのは、どこかで見たようなキャラクターたち。 目つきの悪い、鼠に似た団扇のような大きな耳をした男と女の二人組。 続いて、「ミツ」と書かれた黄色い壺を持っている茶色い生き物が、ふらふらと入ってくる。 さらに、緑色の四足歩行の馬のような、犬のような。そんな不思議な物体。 最後に、水色のセーラーを着た不細工な鳥の顔をした男。 よたよたと連なって歩く様は、何かのパレードのようにも見えた。 広間の中央に敷かれた、赤絨毯。その最奥の玉座に、ポニーテールの少女が座っていた。 しばらく少女は、その奇妙なパレードを眺めていたのだが。 「…うざ」 それだけ言うと、中年男性の声でず...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 11話
    ● 福田花音は、急いでいた。 今日は久々の「エッグ」のミーティングだ。いつものように「一部の人間を除いて立入りを禁じられている」エリアを顔パスで通り、早 足で会議室へと向かう。 今回のミーティングの内容よりも、彼女には気がかりなことがあった。スマイレージのリーダーである彩花のことだ。 別に彼女の症状がどうだとか、そういうことは考えていない。問題は、彼女を自分達の拠点に置き去りにしたこと。間の悪いことに 後輩メンバーたちには全員仕事が入ってしまい、呆けてしまった彩花を監視するものはいない状態。比較的軽い仕事の中西香菜 がすぐに戻るとは言ってくれたものの。 「随分急ぎ足じゃない。トイレにでも行きたいの?」 早足で歩く花音を追い越しながら、女が話しかけてくる。 自称「新宿のシンデレラ」などというふざけた異名を持つ、目の上のたんこぶ。 「エッグ」の中で...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 25話
    ● 喫茶リゾナントからそう遠くない場所にあるマンション。 その一室に、光井愛佳が構えている事務所があった。彼女の生業は、所謂何でも屋。 迷い猫探しから、要人警護までをモットーに。今では海外進出をも視野に入れ、ニュージーランドと日本を 行ったり来たり。ちなみに事務所の代表は愛佳で社員も愛佳一人。人手不足はリゾナントの後輩たちに補 ってもらっている。今のところ、海外で得た英会話力を生かせるような仕事は、舞い込んで来てはいない。 愛佳の携帯電話が、鳴る。非通知。依頼者だろうか。 今日はいつになく忙しい。普段は一日一件くらいの依頼が、今日に限って10を超える本数。同業者に聞 いたところ、都内のその手の「能力者」たちが何らかの用事に掛かりっきりなのだと言う。どちらかと言え ば暇を持て余している愛佳のような個人営業者には願ったりな状況ではあるが。 「お電話ありがと...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 33話
    ● 白亜のお城をバックに、玉座に座るシンデレラ。 彼女を守るようにして、生気のない顔をした取り巻きたちが取り囲む。 「唐揚げ」 姫が命じれば、下僕の一人が跪き、白い皿に盛られた唐揚げを差し出す。 その山の一つを摘み、満足そうに口に入れ頬張る姫。 唐揚げだったら、無限に食べられる。そんな至福の表情だ。 「ティッシュ」 次の命令で、別の下僕が引き抜きタイプのウエットティッシュを御主人様の目の前に。 引き抜いたティッシュで油のついた指を丁寧に拭い、それから意地悪な視線を正面に立つ人物 へと差し向けた。 「タケちゃんさあ、あたし、何て言った?」 ゆっくりとした口調に隠された、鋭い棘。 名指しされた、茶色い頭の少年少女は途端に顔を引き攣らせる。 覚悟を決めてきたはずなのに、たった一言で朱莉は萎縮してしまった。 「あの、て...
  • 『リゾナンターЯ(イア)』 72回目
    ● 光は、やがて闇へと還る。 だがその闇もまた、光の彼方へと消えてゆく。 そのことを象徴するかのように、意識は闇の中へ消え、再び光が射す。 里保が意識を取り戻した時。 そこには同じように夢から醒めたかのような顔をしているメンバーたちがいた。 「ここは?」 「やった!やった!成功したっちゃん!!」 里保の疑問を無理やり押し出すような嬌声。 衣梨奈は、それこそ全身をばねみたいにして飛び上がっていた。 「オムニバス!!成功した!!新垣さんに!!褒められる!!!」 「ねええりぽん、何そのオムニバスって」 「あ、それ、新垣さんから聞いたことある」 香音が、おぼろげな記憶を引っ張り出す。 「精神干渉の能力者が相手の精神に自らの精神を潜り込ませる『サイコダイブ』、その発展形として他者を相乗りの形で一緒にサイコ ダイブ方法があるって」...
  • 『リゾナンター爻(シャオ)』 32話
    本物さながらのヤンキーと化した芽実を前にして。 春菜は完全に、びびっていた。 「いっ!生田さんをははは早く元にいい!!」 春菜は。 ヤンキーという人種が苦手であった。 この世界に足を踏み入れる前はもちろんのこと、異能力を手にしてからも。 コンビニなどでこのような輩に遭遇する度に、五感全てをシャットダウンしてしまいたくなる。 サブカルガールと不良は、相容れない生き物同士なのだ。 「さっきからごちゃごちゃうっせえんだよ!!」 「ご、ごめんなさいっ!!!!」 春菜の襟元を掴み、壁伝いに吊るし上げる不良芽実。 いつの間にか、ガムまで噛んでいる。 「俺はこの姿になるとなぁ、喧嘩最強になるわけよ? オメーみてえなモヤシ、3秒でボッコだっつー の!あぁん?」 「生田さん!た、助けてくださいっ!!」 これがヤンキーの気迫なのか。 すっかり...
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