医療事故と医療過誤

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  • 医療事故と医療過誤
    ...  以上のように、医療事故と医療過誤は異なる取り扱いをする必要がありますが、報道の世界では「医療事故」を誤って「医療過誤」と同じ意味で用いる誤用・混同がしばしば見られる、と指摘されています。 以上につき、平井愛山「安全で透明な医療サービスの提供を目指して」判例タイムズ1191号30頁参照
  • 用語の問題
    ...係訴訟委員会 誤診 医療事故と医療過誤 悪意 法的三段論法
  • 日医医賠責制度
    患者側からみれば「結論を出すのが遅い」「患者側の言い分をほとんど聴いてくれない」「判断結果に至った理由がほとんど明らかにならない」などといった不満があり、医師側からみれば「レトロスペクティブな観点に基づく判断がなされることがある」といった不満が生じてもおかしくない、ということのようですから、その審査方法や判定結果の公表のあり方についてはまだまだ検討の余地があるようです。ただ、審査会のありようは措いたといたしましても、元行政先生が指摘されておられたように「紛争当事者となった医師が交渉の矢面に立たなくて済む」ということであれば、日医医賠責制度は医師にとって相当なメリットであるように思われます。もちろん、交渉の代理人となる医事紛争処理担当理事や弁護士とは事案の詳細を伝えるためにコミュニケーションを継続してとる必要があるわけですが、それでも先鋭に対立している相手方と面と向かって話をするよりずっと気...
  • ドイツ
    ドイツ医師会は医事紛争の急増に応じて、その迅速妥当な解決に資するため、1970年代にドイツ全国にまたがって「医療事故鑑定委員会・調停所(引用者注:以下「調停所等」と引用する。)」を設立した。現在は、各州の法律によって医師会に調停所等の設立が義務付けられているようである。調停所等の費用は、医師会と保険会社の拠出金によって賄われており、これを利用するにあたって患者の費用負担はない。鑑定委員会及び調停委員会の委員は医師及び法律家であり、鑑定を実施し、提出された書証や当事者から出された意見を踏まえて、委員会で検討した結果、委員会の最終判断を書面で出す。右最終判断に基づいて合意するか否かは当事者に委ねられている。調停所等に申し立てられる事件数は増加傾向が顕著である。ここで実体判断を受けた事件の医師の過誤の肯定率は約3 割である。調停所等は、中立的存在と評価されているのであって、多くの医事紛争は調停所...
  • 賠償額
    実務では損害賠償を請求する場合、「損害」の賠償を請求するわけですから、まず損害額の確定をします。被害者側に発生した損害額を客観的に確定するのです。損害額の計算方法はほぼ確立していて、積極損害(治療費、休業損害)、消極損害(障害に基づく遺失利益)、慰謝料を足し合わせて計算します。後遺障害についていえば、その人の障害の程度に応じてその後の遺失利益を計算します(行為者の過失の重軽は無関係です。)。で、その後で、その損害額を、誰に対して、どの程度の割合(過失相殺の問題)で請求できるかが検討されていくのです。医療事故の場合、素因減額(死という結果の発生に既往症が影響しているような場合)がされることがないとはいえませんが、交通事故のような大幅な過失相殺がなされるケースは少ないでしょう。 「患者は医師を信頼して身を委ねており、信頼を裏切られたことによる精神的苦痛が生じるため、慰謝料は交通事故よりも高額に...
  • 「医療ミス」報道
    わが国の患者と医師間の医療関係においては、明治以来長く、医師が患者の面倒をみ、これを助け、保護する、という、パターナリズム(paternalism・家父的保護主義)が支配的であった。しかし、戦後の或る時期(1961年頃)から国民皆保険が実施され、医療頻度が増え、従って医事紛争も増大し、それが医療過誤事件、判決として報道されるに伴い、医療関係についての契約的観察、ひいては患者側の権利意識が強まり、患者の自己決定権、インフォームド・コンセント議論が台頭するようになった(この点につき植木哲「医療の法律学」有斐閣113頁参照。坪井日本医師会長も日本の医療の悪い点はパターナリズムにあると指摘している。対談「医療の新世紀へ―自立した社会」日本医事新報4000号16頁)。 このように、医療過誤判例報道は医療関係の近代化に貢献しているのである。 学者(松倉、手嶋)は日本の医事法史を、明治から終戦までの医師...
  • 裁判の排除
    紛争が生じた以上、何らかの方法で解決しなければなりません。仮に訴訟を禁止しても(禁止は現行の憲法に違反すると思いますが、仮に憲法改正してでも禁止するとして)、訴訟に代わる何らかの紛争解決のしくみがなければ、不満を持った側が実力行使に出るでしょう。復讐のために刃物を持って病院に乗り込み主治医を殺傷するとか、賠償金代わりに病院の金庫からお金を奪うとか。病院も防戦するために武器を取ることになるでしょう。そのような、万人の万人に対する闘争を防ぐために、社会は紛争解決のルールを作ってきました。 萎縮医療や産科医の退職の原因は、医療過誤について損害賠償請求なしうるとされていること自体にあるのではなく、医学的に誤った判断や実現不可能な過剰要求をされることに嫌気がさしている(本当に過失がある場合は損害賠償請求されても仕方がないと医師は考えている)、というのが、この場のみなさんの共通認識であると思います。こ...
  • 民事訴訟
    アメリカのJCAHOは、報告された内容につき、患者や医師などの個人名など特定情報を削除してテータベース化しており、患者などは情報にアクセスできないことになっている。連邦法によってピアレビューの民事訴訟への開示を制限する規定も存在する。(医療事故情報システムの機能要件4頁) ニューヨーク州においても州法上明確に院内情報、院外情報へのアクセス制限を定めている。政府へのインシデント報告および、病院内で事故原因究明を行う質評価委員会の設置設置を定め、これらの報告情報は、患者には公開されず、また、患者は院内報告書にアクセスできないことが法律上明文で示されている。一方で、医師に対する行政処分を管轄するOPMCは非常に強力な調査権限を有しており、情報がNYPORTSからOPMCに流通しているため、医師にとって報告へのディスインセンティブとなる恐れがある。また、NYPORTSは病院へのらいセンシングを行う...
  • 刑事処分の不都合(C)
    地方の医師不足(最新追記8/8) No.127 mktaxi73さん 医師が捜査機関とかかわる場合業務上過失との扱いになることがほとんどですが、業務上過失は、傷害を起こす危険が予見(予見義務)でき、そのような結果を回避すべき義務があるにもかかわらず、その実行において注意を欠く行為により重大な結果を招来すること(注意義務違反)によって成立します。しかし、当初より相当程度に危険が予見でき、回避可能な手段が極めて限られているにも関わらず、実行されることが多い医療行為に対して、過失罪を適用することが本来の過失罪の目的にかなうものかどうか 医療崩壊に対する制度論的対策について(その2) No.171 YUNYUNさん 医療行為は本来的に一定の危険を含んでおり、試行錯誤によるしかないため、結果を保証できないという性質があります。その中で個人の刑事責任を厳しく追及することはミス隠蔽に繋が...
  • 無過失補償制度
    >無過失保障制度、スウェーデンでは成功しているようですが。人口900万人、かつ税率が高額なスウェーデンの事例をそのままもってきても、1億3000万弱で高齢者(医療にかかる可能性が高い人々)が多い日本において、同じくらいの税率を課したとしても可能なのでしょうか。詳しく検討した上で取れるべきなら無過失補償制度が良いと思いますが。 出産時の事故に関する無過失補償制度が検討されているようですが、単なる金銭給付だけでは期待するほどの効果はないように思われます。特に遺族には、「医療過誤があったのかも知れないのに、原因究明も何もしないのでは亡くなったあの人(子供)に申し訳ない」という心情があることが多いのです。 これは誰がいつ避け得るミスと判断するのか、どうやって判断するのかと言う点で問題が残るのです。私見ですが、原則重大事案(死亡・重い障害)に関しては無過失補償制度を適用する方が良いと思います。そして...
  • 誤りから学ぶ
    医療過誤を防ぐ最善の方法が,「誤りから学ぶ」ということに尽きることは言うまでもない。過誤の事実を隠蔽することは,「誤りから学ぶ」機会を医療者自らが放棄し,類似の過誤の再発を促進させる結果としかならない。ここで問題となるのは「誤りを犯した個人の不注意を責める」という姿勢を取りがちな病院が多いことであるが,この「個人の不注意を責める」という姿勢が実は過誤の隠蔽を奨励する原因となっているのである。さらに,誤りがなぜ起こったかの原因を追究して,その再発防止策を講じることが肝心であるはずなのに,「個人の不注意を責める」という立場からは「同じ過ちを繰り返さないように,これからはいっそう気を引き締めて注意しましょう」という,何ら実効性を持たない精神論的再発防止策しか出てこないことが問題なのである。誤りから学ぶためにblame free system(誰も責めないシステム)を構築するということが,医療過誤...
  • 標準的な医療から著しく逸脱した医療に起因する死亡(C)
    医療事故書類送検報道 No.88 モトケン さん 実は第3次試案がどういう場合を想定しているのかよくわからないのですが、私としては、上記の分類に従い、「標準的な医療から著しく逸脱した」かどうかが問題になる場合というのは、医療の不確実性が問題になる場合についてではないかと思います。血管内に空気を混入させたということを問題にした場合、いったい誰のどの行為を問題にすべきかが問題になります。そして、その行為のとらえ方と医療行為の定義如何によっては、そもそも医療行為ではないという評価もあり得ると思います。大野病院事件の場合は、まさしく医師の裁量の当否が問われました。そして裁判所は、「標準的な医療から著しく逸脱した」かどうかを問題にして、そうとは言えないと判断したように読めます。つまり、医師の裁量が問題になる場面についての過失の有無を問題にしたと考えることができます。しかし、脳血管に空気を混入さ...
  • システムエラー
    全ての保険医は医科診療報酬点数表(か診断群分類点数表)に基づいて診療を行っています。毎月、医療機関は各患者毎に行った医療の内訳を「レセプト」と呼ばれる紙にまとめて、かかったコストを保険者に請求します。レセプトはまず審査機関に送られ、請求ミスや過剰診療と思われる検査、投薬などが「減点」されます。減点された結果の数字で医療機関に保険者から診療報酬が支払われます。近年の保険者、国、地方自治体の財政難から、点数表で規定されていない部分での審査がどんどん厳しくなってきています。以前では医師の裁量として認められていた部分も、減点されてしまうのです。実際、「過剰診療」とされる部分の多くは、一般の皆様が想像されるような「不正請求」的なものではありません。とくに公的医療機関においては。むしろ傍目には診療上不可欠と思えるものまで減点されていたりします。その一方で、判例は濃厚診療を要求しています。現場の医師とし...
  • 医療裁判は医療機関に不利なのか
     医療の結果が悪かった。その結果が悪いのを、どうにかして、救済してあげたい。医療機関はお金を持っているし、医師も保険に入っている。だから、医療機関と医師にお金を出させる救済方法を無理やり考えましたというのが、司法の答えなのでは?という指摘があります。  しかし、報道されるのは病院側敗訴のケースが殆どなので、裁判所が病院に辛いような印象をお持ちのかたも多いかも知れませんが、あれは「珍しく病院側が負けたからニュースになる」という意味合いも強いようです。実際には、医療過誤訴訟は数ある損害賠償請求訴訟の中で、最も原告(=患者)敗訴率の高い類型の一つです(-地裁民事第一審通常訴訟事件の認容率 平成19年は通常訴訟(医事関係訴訟以外も含む):83.5%(うち人証調べ実施:63.8%) これに対し医事関係訴訟:37.8%) 司法統計上の「認容」という項目は、必ずしも原告の全面勝訴を意味するもの...
  • 医療機能評価機構
    2004年10月から、特定機能病院、国立病院等(対象約250病院)を中心に、医療事故の情報提供を義務付ける制度が開始されています。収集先は財団法人日本医療機能評価機構で、医療機関、医療従事者、国・地方自治体から独立した第三者機関に夜活動を目指しています
  • 院内事故調
    第三者機関はあくまでも、第三者である。なぜ、医療事故がおきたのか、なぜ、防げなかったのかを最もよく知るのは、医療機関内部である。そして、何より事後の安全対策や教育を行うべきなのも、当該医療機関内部のはずである。とすれば、第三者機関に頼らず、まず、病院内の自己調査委員会の能力・権限確保、医療従事者同士における自浄作用を十分意識していかなければならない医療事故情報システムの機能要件
  • 産科の現状と将来展望
    産科崩壊は時間の問題ですね。現在も産科医は少ないですが、産科医の40%が50歳後半から60歳以上で占められているのです。彼らは、これから 10年程度で臨床現場から離れますが、それをおぎなう若手がいません。確かに、若手もゼロではありませんが、分娩を扱わない産科医(不妊治療など)や婦人科系を希望しているようです。また、若手は女性医師の割合が非常に高いです。半分以上は女性です。別に女性を悪く言うつもりはありませんが、一日おきの当直(夜はほとんど眠れませんから、当直と言う言葉は適切ではありませんが)を、男性医師と同様にやりつづけることは、無理と思います。 今の状況は過渡期なんだと思います。医者のやることには「ご意見無用」だった時代の揺り戻しが来ているのではないかという気がします。ちょうど、犯罪被害者が日陰者だった日本社会のアンチテーゼとして、極端に大きな声を張り上げる本村氏が現れたように。今まで医...
  • システムエラー(C)
    医療崩壊に対する制度論的対策について(その1) No.18 老人の医者さん 大手メーカーの危機管理マニュアルなぞを見せてもらうとそのあたり実に徹底してよく考えてるなと感心させられます。ま、現場レベルで今ひとつ理念にまで理解が及んでないところがあるってことと、一般の製造業と違って医療の場合なかなかやり直しがきかないことがあるって部分でつらいものもあるんですがね。 医療崩壊について考え、語るエントリ(その9) No.50 uchitamaさん 東京大学医療政策人材養成講座の研究班(筆頭研究者・神谷恵子弁護士)では、2000~06年に刑事判決の出された事件のうち、ほぼ9割18件の判決文を入手、医療提供者、政策立案者、患者支援者、ジャーナリストという立場を異にするメンバーの参加により、その妥当性を検討した。評価は、①事件の非難可能性②処罰の適切さ③事件の原因分析④再発防止の教育的効...
  • たんなるクレーマーの訴訟もトリアージできず、不毛な裁判を余儀なくされているのか
    たしかに個別事件に対する検察の判断に対する賛否はそれぞれあると思いますが、それでもなお、マクロで見れば、日本の司法は医療事故・事件には抑制的だと思います。年間に民事の医療訴訟は現在約1000件です。一方、検察が起訴し有罪になる医療事件は20件ほどです。民事も含めてこの数字は実際に起こる医療事故・事件の一部分だろうと思われます。また民事訴訟を起こす人もほとんどは最初から民事を希望するわけでは無いと言います。最初に弁護士に依頼するときは、刑事告訴を求める事が多く、警察・検察、あるいは弁護士から、よほどのことでないと刑事は難しいと諭されて民事裁判に切り替える人が少なくないそうです。しかも民事としても、専門性が高く時間も通常事件の2倍かかり当然その分費用も掛かる医療事件は訴える側にとって決して楽な道ではありません。それでもなお日本の裁判では医療訴訟の勝訴率は通常事件の2分の1であり、やはりマクロで...
  • 鑑定
    医療崩壊に対する制度論的対策について(その1) No.9 uchitamaさん 有識者と言っても教授や院長などではなく、市中病院で働く無作為の中堅医師が選ばれるべきと思います。何より医療は生ものですから、地域性や時間帯、もちろん勤務状況なども勘案すべきです。 No.16 元研修医さん 大学教授や某有名人医師もトンデモなコメントを出したりしますので、地位があれば医療の現状に即した正しい判断ができるわけでもない。 No.75 モトケンさん 民事医療過誤訴訟というのは、被告医師対裁判所という対立構造というよりは、被告医師対原告側医師の対立構造のように思います。そして民事訴訟の建前上は、被告医師の過失の存在が事実認定としてグレーゾーンにとどまる場合は原告は負けることになるはずです。 No.76 PINEさん 「被告民間病院や医師会契約の保険会社(保険会社代理人弁護士)...
  • 誤りを責める
    医療過誤を防ぐ最善の方法が,「誤りから学ぶ」ということに尽きることは言うまでもない。過誤の事実を隠蔽することは,「誤りから学ぶ」機会を医療者自らが放棄し,類似の過誤の再発を促進させる結果としかならない。ここで問題となるのは「誤りを犯した個人の不注意を責める」という姿勢を取りがちな病院が多いことであるが,この「個人の不注意を責める」という姿勢が実は過誤の隠蔽を奨励する原因となっているのである。さらに,誤りがなぜ起こったかの原因を追究して,その再発防止策を講じることが肝心であるはずなのに,「個人の不注意を責める」という立場からは「同じ過ちを繰り返さないように,これからはいっそう気を引き締めて注意しましょう」という,何ら実効性を持たない精神論的再発防止策しか出てこないことが問題なのである。誤りから学ぶためにblame free system(誰も責めないシステム)を構築するということが,医療過誤...
  • 誤診
    「臨床診断における誤診は、医療の限界からくるものであり医療過誤ではない」とされている
  • 報告の義務化
    現在、財団法人日本医療機能評価機構は毎月、医療事故の情報を収集しています。例えば06年には、報告を義務付けた273病院と、任意の報告を求めている300病院から事故情報を収集しましたが、報告義務付け病院からは計1296件の医療事故が報告されたのに対して、任意の病院からの事故報告は計155件しかなかったのです。報告義務付け病院は厚生労働省の管轄にある国立病院や特定機能病院などが中心で、事故が起きやすい高度医療を手がけるケースの多い点が結果に影響しているのかもしれませんが、それにしても任意の病院の報告数は少なすぎるのではないでしょうか。(飯田英男弁護士)http //medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/t016/200807/507306_2.html アメリカではJCAHO(医療機関評価委員会)への有害事象報告は自発的報告が60%を超えている(医...
  • 医療の実践の無い裁判官が最終的な結論を下すこと
    http //www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2002dir/n2489dir/n2489_05.htm 事故や過誤はまったく存在しなかったと考えられる事例の約半数で賠償金が支払われている一方で,過誤が明白と思われる事例の約半数でまったく賠償金が支払われていなかったのである。それだけではなく,賠償金額の多寡は医療過誤の有無などとは相関せず,患者の障害の重篤度だけに相関したのだった。 日本でもアメリカでも、裁判を起こすか否かは起こす人の意思次第ですが、日本とアメリカの民事裁判制度は大きく異なっており、引用されている部分との関連では、アメリカでは民事裁判でも一般市民が裁く陪審制度が取り入れられていることが大きいと思います。陪審制度のもとでは、下手をすると理屈の世界ではなくなってしまいます。 自動車が日本で走り始めた当初から交通事故は起こっていました。そして人...
  • 業務上過失致死罪とは(C)
    医療崩壊に対する制度論的対策について(その2) No.240 YUNYUNさん 刑罰の抑止力が全くないと考える説は極論であり、特に故意犯についてまで抑止力がないとする説は、国民全体の間で極少数であろうと思います。(もし多数であるならば、刑法全廃の動議が、とっくの昔に起こっているはずです。)どの程度の効果があると考えるかは、見解が別れるということでしょう。故意犯に比べて過失犯の場合に、刑罰による抑止効果が小さいということは、法曹関係者の間でも、常識的であろう思います。だからといって抑止力ゼロとは解されておらず、それなりに効果がある(効果がある場合もある)と信じるからこそ、現行刑法体系の過失犯処罰規定が維持されているのですが。 医療崩壊について考え、語るエントリ(その1) No.5 循内勤務医さん 医師を処罰すれば抑止力が働くと考えているようですが、そこのところが、根本的に間違...
  • 不法行為
    医療過誤訴訟の主張は普通、1.行為者=医師の責任←民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。2.使用者=病院の責任←民法715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。使用者責任は、被用者がなした不法行為について責任を負うので、被用者(この場合は医師)に過失があり不法行為が成立していることが前提となります。 医師が個人開業医である場合はに契約責任、不法行為責任の選択問題が起こるが、医師が病院に雇用され、医療契約上の履行補助者である場合は医療契約は患者と病院間に締結されるから、医師には不法行為責任しか追及できず、病院には債務不履行責任または不法行為上の使用者責任(民法715条)を追求する、ということになる。
  • 刑事処分のリスクはどの程度か
     警察庁のまとめでは、医療事故の警察への届け出件数(被害関係者や医療関係者などからの届け出、異状死としての届け出などを含む)は、1997年から2007年までで計1662件、そのうち立件送致したのは595件でした。その中で、実際に起訴になった、つまり、刑事訴追された医療事故がどれだけあるのかは、公式統計がないのが現状です。ただ、飯田英男弁護士が過去の資料を基に調べたところ、99年1月から04年4月の5年余りで刑事訴追の件数は計79件、被告人の数にして112人でした。このデータから、刑事訴追は年10~15件程度発生していると推測されます。 http //medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/t016/200807/507306.html  実際には、検察は特に悪質な事例に限って起訴してきたと言ってよいでしょう。  以上を踏まえると、福島...
  • イギリス
    http //www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1472712  この文献に示されているようにイギリスでは医師の刑事罰を問うケースが増えたようです。この点について、当然のことながらイギリスでも問題になっています。  そこで、警察との関係では http //medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/mric/200805/506603.html によると  まず始めに、医療機関であるNational Health Service (NHS)、警察当局Association of Chief PoliceOfficers、医療安全システムの政府部局Health and Safety Executive(HSE)の3者が話し合いをして、調査していきます。  その際に...
  • 捜査の開始・送検(C)
    医療事故書類送検報道
  • 過失がある場合にはすぐに示談するから訴訟にならない。医者が過失はない、と考えるものだけ訴訟になる、と言う考えについて(C)
    医療崩壊について考え、語るエントリ(その6) No.236 L.A.LAWさん 医療機関が過失を認めればそれで示談等がすぐ成立すると考えられるでしょうし、それが当然ですが、必ずしも、あるいは、相当数の場合そうではないというのが、むしろ弁護士の感覚ではないでしょうか。まあ、その場合は、そもそも、医療機関側は、過失があるかどうかは言わず、示談の話し合い自体を拒否するということになるでしょうが。というのは、任意で示談したからと言って、保険会社が払うか、またその金額はというと、なかなか難しいという問題があります。これは、保険会社から見れば、払うべき場合かどうか、また、その金額が妥当なのかどうかというのがわからないからです。そこで、裁判所の判決・和解であれば、客観的にはっきりするから払うということになるのです。また、保険会社も経済的合理性を追求する以上、できるだけ支出を抑えようとします。たとえ...
  • はじめに
    とりあえず、試みに公開してみます。 モトケンブログでコメントしてくださった皆さん、ありがとうございますm( _ _ )m むこうで一つ一つのコメントに御礼をするのも邪魔になるのでこっちでお礼を述べさせていただきます。 このサイトの使用上の注意 1 ごらんの通り、まったく中途半端のまま放置状態(汗)。あくまで未完成の状態であることをご承知ください。分類等もかなりメチャクチャです。 2 このサイトの記述は、モトケンさんのエントリ「このブログと医療問題について」で引用されている「地方の医師不足(最新追記8/8)」、「医療崩壊に対する制度論的対策について(その1~2)、「医療崩壊について考え、語るエントリ(その1~12)」を基礎にしていますが、これらのエントリでの議論を基にした管理人(ろくろくび)の作文です。文責はろくろくびにあります。ちなみにろくろくびは医者でも法曹で...
  • 提案
    医師の立場による究極の目標は、医療事件を民事・刑事の訴訟の枠組みから外してしまうことです。 民事訴訟を阻むために考えられる方策としては、 1.訴訟に前置する医事紛争調停 現行の憲法秩序の下では紛争の最終的な解決は裁判によると定められているから、 これと矛盾しない形で訴訟以外の紛争解決手段を導入するとすれば、前置しかできない。 しかし、調停を経ることを法的に強制すれば、訴訟に至る件数を減らせる。 2.真相解明を目的とする専門的調査機関 訴訟の真相解明機能を期待する患者のために、別のより良い手段を提供する。 3.無過失補償制度 一定の金額が簡易な手続きで得られるなら、訴訟するのはやめておこうと思わせる。 (補償金を受ける条件として、損害賠償請求権を放棄させる) 以上の手段をもってしても、損害訴訟提起を阻止できないこともありますが、 それでも、調査...
  • 自浄努力(C)
    地方の医師不足(最新追記8/8 No.23 FFFさん 医師の法的責任を問うこと自体に強い拒否的反応を示す方は、医療業界ではむしろ多数派だろうと想像しています。しかし、密室内で専門性のある行為をしていることをいいことに、医療の手抜きをし、あるいは無用な治療をし、責任を問われそうになるやカルテを改ざんし、民事の法廷でも虚偽の証言をする、あるいは看護師に偽証させるという医師が一定数いることも事実でしょう。医療過誤の被害者は泣き寝入りしてきた時代が長く続きました。そして、医師自らが、医療過誤やカルテの改ざん等に自律的に対応してきたかというと、そのような事例を寡聞にして知りません。医師会が患者の訴えに耳を傾け、医療過誤やカルテ改ざんのあったことを認定して当該医師にペナルティを科したり、同種事例が再発しないよう何らかの防止策を講じたりということはあるのでしょうか。 医療崩壊について考え、語...
  • 民事訴訟のルール
    もし民事判決をご覧になられる際には、以下のことを頭の片隅に置いてください。民事裁判では弁論主義という仕組みがとられていて、原告と被告が争わない事実については、訴訟上真実と認め、それを前提に裁判を進めることになっています。上記の裏返しですが、裁判官が判断を下すのは当事者が争った部分だけです。そして、裁判官が判断を下す範囲は、当事者が訴訟において主張した事実についてのみであり、その事実が当事者の提出した証拠によって裏付けられているかを裁判官は判断します。極端なことを言えば、医学界において正しいことも、被告側が反論しなかったり、あるいは反論しても証拠で証明できなければ、判決には反映されない制度になっております。 医療訴訟は不法行為または債務不履行による損害賠償請求であり、原告患者側としては訴訟前の出発点は「損害がある(マイナス)」状態です。このマイナスを、ゼロになるまで回復することを求めているの...
  • 検事、裁判官、弁護士が、産婦人科の医療崩壊を引き起こしたのか
    地方の医師不足(最新追記8/8) No.165 Anonymousさん まずご認識いただきたいのは、法曹三者は国民の代表者である国会が定めた法律の範囲内で活動しているということです。刑法は、業務上の過失により人が死亡した場合には行為者を処罰する、という定めをしています。そして、刑事訴訟法は、警察・検察は「犯罪だ!」と思えば捜査を開始し、検察は「処罰すべきだ!」と思えば起訴し、それに対して被疑者・被告人には弁護人を依頼する権利が認められ、最終的に裁判所が犯罪が成立すかを判断すると定めています。現在の法制度は、処罰が目的であり、事故再発防止が目的ではありません。鉄道事故も航空事故も同じで、関係者は逮捕起訴され処罰されうるのです。最近は調整がなされているようですが、前までは、刑事訴訟法に基づき警察が証拠類を全て押収していまっているため、事故調査委員会が原因究明の調査をすることができない事態...
  • 過失
    実際の判決文を、証拠や鑑定意見と併せて全文読んで頂ければお分かりになるかと思いますが、司法判断では、ある手術が教科書通りに行かなかったから有罪だとか、過失があると単純に結論づけているわけではありません。 医療側の方たちは、刑事について言えば、たぶん起訴された事例を医療側から見た視点で過失概念を形成されているのだと思いますが、法曹側は多数の不起訴事例も含めて過失感覚を持っています。この点については、法曹側からもっと説明をすべきであると思いますが、医療側もそれを理解しようとする姿勢をお持ちいただきたいと思います。 結果の回避可能性については、ある場合もあればない場合もあるでしょう。ない、あるいは殆どない場合は、無罪になるでしょうが、これは、別に医療行為に限ったことではなく、結局は程度問題だと思われます。 また医療事故を起こす背景にあるシステムにもっと目を向けるべきと思います
  • いわゆる刑事免責について(C)
    地方の医師不足(最新追記8/8) No.13 PINEさん 例えば手術中の緊急事態という極限状態の中では少しぐらいのミスは仕方ないと思います。 No.81 じじいさん ゼロか100かの議論ではなく、どこまで訴訟の危険性が高まれば、リスクとして取れなくなるかという議論かと思うんですが。医師としてはゼロに越したことはないでしょうが、社会のバランス上、難しい面もあります。 医療崩壊に対する制度論的対策について(その2) No.196 オダさん 「不注意」も「不正」もなかったが起きてしまった医療事故に関しては、「刑事」「民事」とも免責にされるべきです。 医療崩壊について考え、語るエントリ(その2) No.48 PINEさん 刑事裁判については、そもそも国家刑罰権の発動の問題なので、立法によって、事故原因究明のために刑事免責を与えるとか、第三者機関で審理してその結果...
  • 裁判で真実を明らかにする
    医療崩壊について考え、語るエントリ(その6) No.107 YUNYUNさん 司法とは何か、司法にどんな役割を果たすべきか、ということの国民の理解も問題です。裁判には、医療事故の真相解明や今後の医療水準を向上させる機能が、全くないとは言えませんが、それはあくまで副次的な効果にすぎません。訴訟の効能を過大に宣伝したり、実のない期待を持たせることは欺瞞であり、法曹は一般国民の前に「司法の限界」を率直に認め、無意味な訴訟を裁判所に持ち込まないようにお願いすることが必要ではないか。 「保険会社の代理人」がお目付役でついているので、不本意ながら事実を曲げることもあります(保険約款では、勝手に責任を認めてはいけないことになっている)。加藤先生の提唱する「救済センター」のように免責があれば医師は喜んで事実解明に協力するでしょうが、もとより裁判では免責はできません。上田和孝「少数派の医療裁判制度改...
  • 医療費の削減
    医療刑事訴訟が医療崩壊の流れを速くしているのは確かだと思いますが、私はそれが主たる原因とは思っていません。日本の医師数の変化をみると、昭和50年には、病院勤務医5万7千人、診療所医師6万8千人でした。それが平成10年では病院勤務医15万3千人、診療所医師8万3千人です。現在でも医師数は増加しています。一方出生数は、昭和50年には200万人を超えていまいした。それが今や110万人ちょっとです。病院勤務医が3倍近く増えているのに、出生数は半分近くに減っているのです。これでお産が出来ないとしたら、いかに産婦人科医が減ったのかよくわかりますし、医療訴訟だけが原因とは到底思えません。医療訴訟は拍車をかけただけだと思います。一番の問題は、出生数が減ったのでどこの病院でも産婦人科と小児科の規模を縮小したことではないかと思います。おかしな成果主義が幅を利かせたためです。診療科毎の診療報酬をみれば、少子化の...
  • 弁護士増員の影響
     日本では、国民の感情的にも、印紙代や弁護士着手金等の実際的な費用負担の面でも、訴訟は紛争解決手段としては敷居が高いものであって、気楽に「訴えることができそうだから訴えてみる」という状況ではありません。また、アメリカの弁護士は完全成功報酬システムが普通で、弁護士数が多すぎて過当競争であるため無理筋の事件でも引き受けると言われていますが、日本では着手金と成功報酬の二段階システムが普通で、今のところ人数が限られているため、救急車の後を追いかけて(ambulance chacer)まで仕事を取る人はいません。法律的に全く成り立たない濫訴の事件を受任することは、弁護士倫理に反することと考えられています。日本の民事訴訟法には、懲罰的賠償や純粋な意味での集団訴訟(クラス・アクション)の制度がないので、無闇に大金を請求することは法的に不可能である上、日本の裁判官はキャリアシステムと転勤のためにアメリカに...
  • 捜査の開始・送検
     医療に対する捜査の開始は大きく分けて以下の三つに分類できます。 Ⅰ 遺族その他の関係者による告訴・告発 Ⅱ 医師法21条に基づく届出 Ⅲ その他、遺族その他による捜査機関に対する申告・相談、マスコミ報道等  まず、Ⅰの告訴・告発が警察に対してあった場合には、必ず警察は検察に送致(送検)しなければなりません(刑事訴訟法242条)。嫌疑なし、または嫌疑不十分と認める場合であっても送付しなければなりません。  ⅡおよびⅢの場合、警察が捜査したら、法律の特別の定めのある場合(自転車窃盗などの微罪事件(犯罪捜査規範198条)をいい、業務上過失致死罪はこれに含まれません)を除き、事件を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法189条2項、246条)。警察は捜査した結果犯罪が成立すると考えた場合はもちろん、犯罪の嫌疑が十分でないと認めた場合や犯罪の成立を阻却する事由があると認...
  • 人選について
    「医師主体の第三者機関が医事紛争を扱うようにすべきだ」とのご見解がいくつか見られますが、不確定な要素を意識しつつ将来指向的に行う臨床医の判断を基準とするのではなく、病理解剖をはじめとする確定的所見が揃った段階で示される鑑定医の回顧的判断を基準とするのであれば、裁判官が事実認定の主体であろうと医師が事実認定の主体であろうと、裁かれる立場に置かれる臨床医の不満は解消されないように思われます。もし仮に、医師を主体とする第三者機関を設けるとしても、審判者たる医師が臨床現場から長く遠ざかっている者であれば、結局皆さまが今の鑑定意見に対して抱く不満と同様の不満を第三者機関の判断に対して抱くことになるでしょう。臨床医の皆さまは、臨床経験の乏しい厚労省医官のような者が、理論上は誤りではないが医療の現実に即していない、結果論的・回顧的な判断基準で皆さまを裁いたとしても、「医師主体の専門機関が下した判断だから...
  • 業務上過失致死罪とは
    (業務上過失致死傷等) 第二百十一条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。 業務上過失致死傷罪が成立するためには 1.業務上必要な注意を怠ったこと 2.人が死傷したこと 3.過失行為と、人の死傷と言う結果との間に因果関係があること が原則として必要です。 業務とは? 「業務とは、本来人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う行為であつて(昭和二五年(れ)一四六号同二六年六月七日第一小法廷判決、集五巻七号一二三六頁参照)、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とするけれども、行為者の目的がこれによつて収入を得るにあるとその他の欲望を充たすにあるとは問わないと解すべきである。」(最判昭和33年4月18日刑集12巻6号...
  • 業務上過失致死罪は必要?(C)
    医療崩壊に対する制度論的対策について(その2) No.240 YUNYUNさん 刑罰の抑止力が全くないと考える説は極論であり、特に故意犯についてまで抑止力がないとする説は、国民全体の間で極少数であろうと思います。(もし多数であるならば、刑法全廃の動議が、とっくの昔に起こっているはずです。)どの程度の効果があると考えるかは、見解が別れるということでしょう。故意犯に比べて過失犯の場合に、刑罰による抑止効果が小さいということは、法曹関係者の間でも、常識的であろう思います。だからといって抑止力ゼロとは解されておらず、それなりに効果がある(効果がある場合もある)と信じるからこそ、現行刑法体系の過失犯処罰規定が維持されているのですが。 医療崩壊について考え、語るエントリ(その1) No.5 循内勤務医さん 医師を処罰すれば抑止力が働くと考えているようですが、そこのところが、根本的に間違...
  • 本館ブログで本音が言えないストレスを発散するスレ
    1. 法務業の末席 2008/08/07(木) 13 15 13 近頃は本館ブログでチョコット冗談話を投稿すると、 外部よりソラ見たことかと、キッツ〜イご批判を頂くようになりました。 お陰で小心者の私など、コレは書いても大丈夫かな? と自主規制することが多くてストレスが溜まります。 同じようにストレスを感じている方、ここで思いっきり発散しましょう! まずは私から。(左翼系デモ行進でのシュプレヒコールのノリで) モトケンブログのコメントを、24時間監視ウオッチングするのはヤメレェ〜! 偏見に満ちた反論、議論の吹っ掛け、揚げ足取り、詭弁のループ、ハンタァ~イ! モトケンブログに、発言の自由と平等と平穏をォ取り戻せェ〜! 11. 沼地 2008/08/07(木) 15 34 19 あああ、まるさんに捕まってる間にmohnoさんがいなくなってる。 こっちの方たちに聞いてもいいのかなあ? 民事のと...
  • 東大病院ルンバール訴訟
    第二次未熟児網膜症事件の基礎となる『東大病院ルンバール事件(最高裁昭和50年10月24日)について、今月のJURIST(2007.3.15号、p75-92)で詳説がありました。 『因果関係-「ルンバール事件」からの問題提起」(溜箭将之、立教大学講師)』 この論文で、事件の鑑定結果が5通、認定事実を詳細に分けて提示してあります。 どの鑑定を採っても(一貫して採れば)、過失認定には至りません。 筆者は 「最高裁による因果関係の具体的判断は、個々の間接事実に対応した証拠を摘示しているとはいえ、結論に整合する証拠のみを取り上げている面を否定できなかった。そ の結果、緻密な間接事実の積上げの形をとりながら、具体的な判示は、因果関係を肯定する方向、言い換えると患者を救済する方向につんのめっている印象を与えることにな る。さらに、具体的な認定と抽象的な判示との...
  • 法的責任追及の弊害
    医療行為は侵襲的行為であり、不作為が重大な結果を招くと予想される場合にのみ実施されべきであるということは大前提と考えます。そして、本来は患者さんの状態、これから予想される事態、医療行為による改善の見込みと避け得ない合併症の確率から判断されるべきものに、その行為を失敗したときに生じる法的責任要素が判断に入ってくることは一概に望ましいとは言えないと思われます。自身の技量では法的責任を取れないと感じ、他医への紹介という結果になり専門医の下でうまく治療されたという場合は、法的責任がよく機能したものと思われます。しかし、緊急時で時間の余裕がない、あるいはそれ以上の専門医はいないという状況の場合、法的責任を考えすぎるあまり不作為を生じる危険が増大するとの議論も成り立ちます。 時代はEBM(根拠に基づいた医療)からすでにJBM(司法判断に基づく医療)ですか。その判断も医学的視点で明確な基準が定めてもらえ...
  • 和解(C)
    医療事故書類送検報道 No.131 法務業の末席 さん 「和解合意=過失責任の承認」では無いことをご説明していきたいと思います。まず和解の一般論(医療事件での和解に限定しないという意味)ですが、合意事項に「何らかの過失を認め謝罪する文言」を明確な表現で入れることは実際には少ないと思います。逆に過失の有無については慎重な言い回して確定的な文言となることを避け、過失責任の存在は敢えて不明確にしたまま、支払う金銭額についてだけ取り決めるのが和解契約では多いパターンだと、自分の少ない経験では思っております。ですので、和解契約書に盛られた内容を根拠に検察が刑事責任を追求する、このようなことは現実的ではないと思っています。普通に法律家(原則的には弁護士)が、和解金の支払側の助言者となって和解交渉を進める場合、一番気を遣うのがこの「過失責任や賠償責任を認めないまま和解する」という交渉の難しさなので...
  • 良きサマリア人の法
    急病人など窮地の人を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人にできることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法です。 現行法上の民事責任  民法698条には緊急事務管理に関する規定があり、これによると、「管理者(義務なく他人のために事務の管理を始めた者)は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない」とされており、この規定により「善きサマリア人の法」が目的とすることが実現できるとする学説がある。しかし、現時点では通説とまでは言えず、また民事上の判例も存在していない。また、緊急事務管理による免責成立のためには「重大な過失」がないことは手当て者が証明せねばならず、手当て者にとってはやや重い立証責任が課せら...
  • 一部の患者の誤解
    産科の問題に限らすですが、まず命は有限だということ、病気は理不尽なものだということ、専門家ができることなど実は蟷螂の鎌に等しいということ、この認識を患者も医師も持つことが必要だと思います。どんな患者でも直せる医師などいませんし、そういうことを過剰に感じさせる医師もよくないと思います。理不尽なことに対して所詮できる範囲のことをするしかない、それが医療の実態です。その部分にどれだけの手間をかければ死というものに対して納得できるのか、医療は結果よりもむしろ過程に意味があるものだと思います。父権主義的な医師に対して批判が集まりますが、それでも患者さんが満足して死に望めればそれはそれでありだと思いますし、そのような過程には満足できないという方も当然いると思います。文句を言いたい方は文句はむしろ言っていただいたほうがよいと思います。そのほうが死という結果を不本意に迎えられるよりは、よほど双方にとって建...
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