ローゼンメイデンが普通の女の子だったら @Wiki内検索 / 「s.d.1」で検索した結果

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  • s.d.1
      自分の店を持ちたい、というのが夢だった。ただ、それが実現出 来るのは相当自分も熟年に達してからだろうとは思っていたのだが。   自分の将来設計の為に(と言ってもあくまでマイペースで)普通に 働いていたところ、祖父の訃報が耳に入った。   もともと祖父は時計屋を営んでおり、その死をきっかけに店に空 きが出来た。   僕自身は時計を作ることに興味は無かったが、店にはよく遊びに 行っていた。おじいちゃんっ子、と言えばそうだろうか。 『僕もいつかお店を持ちたいんだ。喫茶店なんかいいな』   そうか、頑張れと。祖父は微笑みながら僕を応援してくれた。   哀しみにくれる僕に対し、祖父は遺言状を残していた。自分が死 んだあとは、時計屋の土地と建物を、僕に譲ると。その書状は、今 でも机の引き出しに大事にしまってある。   時計屋を改装して、客が佇めるス...
  • s.d.4
     「有難う御座いました。またのお越しを」 最後の客が店を出る。今日はそろそろ店仕舞いだ。 「お疲れさまぁ。今日も忙しかったわねぇ……」 肩をぐるぐると回している水銀燈。全くだ、今日は月曜日だと言う のに。評判というものは恐ろしいものだ。 「お疲れ様でした、水銀燈さん。お陰様で、今日も繁盛しました」 「私が居なかったらお店が潰れるってこと、無いわよねぇ」 ジト眼でこちらを見てくる彼女。 「お客様が来るも来ないも、僕はそれなりにやっていきますから。   ま……大丈夫でしょう」 その辺りについては、割とのほほんと構えている。何しろ今までそ れほど客が居ない状態でも、やってこれたのだ。 「楽観的なんだからぁ」 そんな台詞を残して、彼女は着替えのために奥に引っ込む。今日彼 女が仕事中に消費したお酒は、バーボンのボ...
  • s.d.3
      「私の名前はめぐ。柿崎めぐ」   そうして、夢の中では聴くことの無かった彼女の声が、僕の中に 響き始めて。それが僕の中にある曖昧な記憶を形にしていく。 「思い出した?」 そうだ。いつも夢で逢っていたというのに、今の今まで僕は気付く ことが無かったのだ。なんとも間抜けな話である。 「ごめん……まだちょっと曖昧だけど、確かに逢ったことがありま   すね」 曖昧。まだ何処か『もや』が頭の中にかかっているような感じだっ たけど。そうだ、確か前に学校で…… 「そう、良かった。白崎君の引き出しは、壊れてないみたいだね」 「引き出し?」 「そう、引き出し。頭の中の何処かにある、記憶をしまっておくた   めの引き出しだよ」   『再会』からすぐ、こんな話を始めてしまう僕等は、少し奇妙な 感じだったかもしれない。   ...
  • s.d.8
    「……」   視界には、やっぱり白い世界が広がっていた。   違うことと言えば、身体が全然動かない、というか酷く痛むことで…… 「白崎さぁん!!」 「? ……」 声が出ないし、まだ眼の焦点が合わない。 誰かが覗き込んでいる。眼鏡が無いと、ちょっと誰だか…… 「白崎さん、良かったぁ……」 泣き声が、聴こえる。――そうか、僕は…… 「馬鹿ぁ! あなたが居なかったら、お店はどうなっちゃうのよぉ!」 ぽかぽかと胸の辺りを叩かれる。 ちょっ、い、痛いです、いたいです! 「す、水銀燈、やめなさい! 死んでしまうのだわ!」 「そうだ、落ち着け水銀燈!」 二人の声に制されて、胸を襲う衝撃が止む。……助かった? 「だって、だってぇ……」 ぐすぐすと泣き止む様子の無い彼女。えっと……声は出るだろう...
  • s.d.2
    s.d.2   店に戻り、とりもあえず営業再開とする。今日休憩をとっていた のには自分なりに目算があって、月曜日は比較的客がこないことを 僕は知っていた。   客の多寡について、僕は常連客が足を運んでくるかどうかで判断 している。そんなことを言っているから、いつまで経っても新規の 客が増えないだろうかとも思うのだが、あまり大きな問題では無い。   忙しさよりも、流れる時間を大切に。それがこの店のモットーだ と考えているから。   とは言っても、夜の部になればそれほど悠長に構えてはいられな い。今から一年ほど前に雇ったバイトの娘の評判がとても良いから だ。なので、バーでの売り上げは上々と言える。昼間とはうって変 わった喧騒に包まれる時間はそれなりに充実していると感じるあた り、自分の考え方も少しは変わってきたのかもしれない。   今日はそのバイトの...
  • s.d.エピローグ
      君が"居なくなって"しまってから、八度目の夏がやってきた。   あの事故後の退院から。僕は相変わらず店を営業している毎日で ある。でも相当体力が落ちていたのか、すぐに疲れてしまってなか なか最初は思い通りにはいかなかった。   そんな僕を支えてくれたのは水銀燈で。夜は週四日だったシフト に更に一日加えるという行動に出た。それによって更に客が増えた というのは、まあしょうがないとして…… 『ここで一杯修行して、私も自分の店を持とうかしらぁ』 などと言っていた彼女。真面目に考えてみても、彼女なら実現出来 そうな感じがする。 『店の名前はどうしようかしらぁ。そうねぇ……』   今年の夏も、暑い。だけどこの公園のベンチの涼やかだけはずっ と変わらず。僕はあいかわらずここで休憩をとっている。   公園の子供たち...
  • L/R.1
    ―/― プロローグ  ――声が聴きたい。  思った。  きっと、声というものには、それを発したひとのたましいが込められるのだろうと。  時にそれは己を勇気付ける。  無ければ、少しさみしい。  ――そう。さみしいのだ。かなしい、のでは無い。  僕は受話器に手をかける。  あのひとの、声を聴くために。  声は、眼に見えるかたちで残らない。  だけど、それを聴いている最中。そう、その瞬間は、確かに。  それは僕のこころの中に、響き続ける―― ――――――――――  ――言葉を綴ろう。  思った。  きっと、言葉というものには、それを綴ったひとの想いが込められるのだろうと。  時にそれは深い感動を与えてくれる。  無ければ、少しかなしい。  ――そう。ほんの少し、かなしいだけ。  私はペンを手にとる。  何の為に、という問いがあったならば――それに答えることは出来ないだろう...
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