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とてつもない日本
麻生 太郎 (著) 祖父・吉田茂は、私が幼い頃、よくこんなふうに語っていた。 「日本人のエネルギーはとてつもないものだ。日本はこれから必ずよくなる。日本はとてつもない国なのだ」----。 日本の底力はまだまだ凄い! 「この国の底力を信じてみようじゃありませんか」 |
はじめに 平成十七(二〇〇五)年の暮れ、外務大臣としてインドを訪問する機会があった。首都ニューデリーに滞在中、できたばかりの地下鉄を視察したのだが、この時インドの方々からうかがった話が今でも忘れられない。 この地下鉄視察が日程に組み込まれたのは、日本の政府開発援助(ODA)を使って建設されたものだからであった。私たちが訪ねた駅には日本とインドの大きな国旗が掲げられており、日本の援助で作られたということが大きな字で書いてあった。改札口にも大きな円グラフが表示され、「建設費の約七十パーセントが日本の援助である」と分かるように、青で色分けしてあった。その配慮に感激し、私は地下鉄公団の総裁に御礼の言葉を述べた。 すると、逆にこんなふうな話をしながら、改めて感謝されたのである。 ――自分は技術屋のトップだが、最初の現場説明の際、集合時間の八時少し前に行ったところ、日本から派遣された技術者はすでに全員作業服を着て並んでいた。我々インドの技術者は全員揃うのにそれから十分以上かかった。日本の技術者は誰一人文句も言わず、きちんと立っていた。自分が全員揃ったと報告すると、「八時集合ということは八時から作業ができるようにするのが当たり前だ」といわれた。 悔しいので翌日七時四十五分に行ったら、日本人はもう全員揃っていた。以後このプロジェクトが終わるまで、日本人が常に言っていたのが「納期」という言葉だった。決められた工程通り終えられるよう、一日も遅れてはならないと徹底的に説明された。 いつのまにか我々も「ノーキ」という言葉を使うようになった。これだけ大きなプロジェクトが予定より二か月半も早く完成した。もちろん、そんなことはインドで初めてのことだ。翌日からは、今度は運行担当の人がやってきた。彼らが手にしていたのはストップウォッチ。これで地下鉄を時間通りに運行するよう言われた。秒単位まで意識して運行するために、徹底して毎日訓練を受けた。その結果、現在インドの公共交通機関の中で、地下鉄だけが数分の誤差で運行されている。インドでは数時間遅れも日常茶飯事であり、数分の誤差で正確に動いているのは唯一この地下鉄だけである。これは凄いことだ。 我々がこのプロジェクトを通じて日本から得たものは、資金援助や技術援助だけではない。むしろ最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。今インドではこの地下鉄を「ベスト・アンバサダー(最高の大使)」と呼んでいる――。 私はこの話にいたく感銘を受けた。 地下鉄建設に携わった日本人技術者たちの仕事ぶりそのものが、優れた外交官の役割を果たしたのである。彼らはなにも、よそ行きのやり方をやって見せたわけではない。いつものように、日本で普通に行なっているスタイルで仕事をしたに過ぎない。しかしそれが、インドの人々には「価値観が覆るほどの衝撃」だったのだ。 日本ではよく「カローシ(過労死)」を例に挙げて、日本人は働き過ぎだ、日本人の働き方は間違っているという人がいる。だがそれはあまりに自虐的で、自らを卑下し過ぎてはいないだろうか。「ノーキ」を守る勤勉さは、私たちが思っている以上に、素晴らしい美徳なのである。 第三次小泉改造内閣、安倍内閣と続けて外務大臣を拝命し、一年半が過ぎた。この間、二十三か国を訪問し、国際会議や国内での会談を含めれば、のべ百か国以上の首脳とお目にかかったことになる。 私は外務大臣をやらせていただいていることに心から感謝している。なぜなら、外務大臣として様々な国を訪ね、各国要人と話したことで、世界における日本の位置づけを改めて確認することができるからだ。どの国の人からも日本に対する期待がヒシヒシと伝わってくる。外相就任は、日本の実力を冷静な視点で再確認できたという意味で、貴重な経験になっているように思う。 日本はまことに不思議な国である。 敗戦後は一度も戦争をすることなく平和と安定を維持し、数十年に及ぶ努力の結果、世界史上でも希に見る経済的繁栄を実現した。 にもかかわらず、新聞を開けば、やれ格差社会だ、少子化だ、教育崩壊だ……と大騒ぎ。テレビをつければ凄惨な殺人事件ばかりが報じられ、識者と称する人たちが「日本はなぜこんなにおかしくなったのか」などと語っている。新聞やテレビを見ていると、まるで明日にでも日本が滅びそうな気がしてくる。 でも、ちょっと待っていただきたい。日本は本当にそんなに「駄目な国」なのだろうか。そんなにお先真っ暗なのだろうか。 私は決してそうは思わない。むしろ、日本は諸外国と比べても経済的な水準は相当に高いし、国際的なプレゼンスも極めて大きい。日本人が考えている以上に、日本という国は諸外国から期待され評価されているし、実際に大きな底力を持っているのである。 バブル崩壊以降、日本はもっとグローバル・スタンダードを導入すべし、などという議論が幅をきかせたけれども、私に言わせれば、むしろ「日本流」がグローバル・スタンダードになっている現実もあるのだ。トヨタ、ソニー、カラオケ、マンガ、ニンテンドー、Jポップ……。「ノーキ」や「カイゼン」が、世界の経済にどれだけ貢献しているか。インスタント・ラーメンやカップ麺が、どれだけの人を救ったか。 日本は、マスコミが言うほどには、決して悪くない。いや、それどころか、まだまだ大いなる潜在力を秘めているのである。 もちろん、目の前に課題がないわけではない。少子高齢化に伴い、人口構成が変わってゆくのは間違いないし、それに応じて政策を変えていかなければならないだろう。社会の活力を維持しながら、セーフティネットを構築することも不可欠だ。しかし、そもそも社会というのは常に変化するものなのであり、それに合わせて臨機応変に対策を講じていけばよいのである。目の前の変化に怯えて、いたずらに悲観ばかりしているのは、かえって国の舵取りを危うくさせるのではないだろうか。 本書は、そんな思いから、私なりに「日本の底力」をもう一度、見つめ直してみようとしたものだ。ときには話が脇道にそれてしまったり、かなり乱暴な物言いになってしまったりしたところもある。しかし、これは「失言」や「放言」のたぐいではない。発想の転換のために、あるいは考えるヒントとして、あえて暴論、異論めいたことも述べさせていただいた。あまり眉間に皺を寄せずに、柔らかい頭で読んでいただけると有り難い。これからの日本を考える上で、本書が議論のきっかけになれば本望である。 祖父・吉田茂は、私が幼い頃、よくこんなふうに語っていた。 「日本人のエネルギーはとてつもないものだ。日本はこれから必ずよくなる。日本はとてつもない国なのだ」――。 私はいま、その言葉を思い出している。 |
◇誇り~伝えよう日本のあゆみ~ 1/3
開国~欧米の植民地政策~ロシアの脅威~朝鮮の近代化を望む~清国の反対~日清戦争~三国干渉~日露戦争~日韓併合~台湾・朝鮮・南満州の近代化 【関連】 明治開化期の日本と朝鮮 韓国はなぜ反日か? 辛亥革命~中国近代化運動の実際 | |
◇誇り~伝えよう日本のあゆみ~ 2/3
ソ連(旧ロシア)の謀略~中国大陸で泥沼の戦に~世界恐慌で欧米列強がブロック経済化~アメリカで高まる日本脅威論~経済封鎖(ABCD包囲網)~ハルノート~大東亜戦争開戦~神風特攻隊~原爆~敗戦~靖国神社~GHQのウォー・ギルト・インフォメーションプログラム~東京裁判~パール判事~ 【関連】 中国はなぜ反日か? GHQの占領政策と影響 東京裁判の正体 靖國神社参拝問題? | |
◇誇り~伝えよう日本のあゆみ~ 3/3
日本の戦いの根底にあった気持ち~戦後の教育~マッカーサーの発言~戦争は自衛のため~正しい歴史を学ぶことの大切さ~これからの日本のあり方~第二次世界大戦後の戦争~日本人だから出来ること 【関連】 自虐史観の正体 村山談話の正体 | |
大東亜戦争 名言集
■解説■ 大東亜戦争。中国・韓国・北朝鮮以外の国はしっかりと日本の功績を評価しています。 【関連】 世界から見た日本 (コメントを消して動画を見る場合は、右隅のヒヨコのマークをクリックしてください。) |
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武士道
新渡戸稲造(著) 約十年前、著名なベルギーの法学者、故ラヴレー氏の家出歓待を受けて数日を過ごしたことがある。ある日の散策中、私たちの会話が宗教の話題に及んだ。 「あなた方の学校では、宗教教育というものがない。とおっしゃるのですか?」とこの高名な学者が尋ねられた。私が「ありません」という返事をすると、氏は驚きのあまり歩みを止められた。そして容易に忘れがたい声で、「宗教がないとはいったいあなたがたはどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか」と繰り返された。 そのとき、私はその質問に愕然とした。そして即答できなかった。なぜなら私が幼いころ学んだ人の倫たる教訓は学校で受けたものではなかったからだ。そこで、私に善悪の観念をつくりだせたさまざまな要素を分析してみると、そのような観念を吹き込んだものは武士道であったことにようやく思いあたった。 |