【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫 @ Wiki内検索 / 「67-509β「そこが小鍋立ての良いところなのだよβ」」で検索した結果
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67-509β「そこが小鍋立ての良いところなのだよβ」
67-509「そこが小鍋立ての良いところなのだよ」のルームシェア佐々木さんシリーズ番外編バージョン。 「成るほど」 ざくりと音を立ててささがきごぼうを噛み締め、佐々木はくるりと人差し指を回した。 「察するにだ。涼宮さんにとってもキミは『魔法使い』だったのかもね」 「魔法使い?」 オウム返した俺へ向かい、意味ありげに喉を鳴らす。 「いや、この場合、願いを叶えてくれる彦星さまだった、と言うべきなのかもしれないね」 魔法使いねえ、何時かもそんな呼ばれ方をした気がするな。 さて、なんだったか? と雑然たる記憶の倉庫をまさぐりつつ、俺は小鍋に豚肉を足した。 今晩の我が家のメニューは小鍋立て、具はシンプルに新ごぼうと豚肉。 それに各々の茶碗飯と小皿だ。 ……………… ……… 『小鍋立てというのは具は二、三品で良いんだ。代わりに出し汁は予...
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ルームシェア佐々木さんシリーズ
...木さんシリーズ 67-509β「そこが小鍋立ての良いところなのだよβ」 68-xxx ルームシェア佐々木さんと冬の朝
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67-509「そこが小鍋立ての良いところなのだよ」
「キョン、そこが小鍋立ての良いところなのだよ」 ほう、なるほど……と、佐々木の言葉を雑然たる記憶の倉庫に放り込みつつ、俺は土鍋に豚肉を足した。 七月になろうかという時期にまさか卓上コンロを自室に引っ張り出す事になるとはさすがの俺も思わなかったが、確かに旨いな。 差し向かいに土鍋をはさみ、昼食のメニューは小鍋立て。 具はシンプルに新ごぼうと豚肉。 それに各々の茶碗飯だ。 『やあ親友』 『どうした佐々木?』 何故か昼日中からごぼうを携えて佐々木が現れた時はどうなる事かと思ったが……… ……………… ……… 『小鍋立てというのは具は二、三品で良いんだ。代わりに出し汁は予備を多めに用意した方が良いがね』 日曜をゴロゴロ過ごすという正統派の休日を味わっていた俺に、どこぞの本の受け売りを教えてくれたのは例によって佐々木だ。 向かい合わせに座っ...
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Part67
トップページ >SS > 短編 67-9xx 解らないから知りたいのさ 67-9xx 何事も一長一短だよ、キョン 67-9xx「キミこそ余裕がないようだが?」 67-9xx「お前軽いな、ちゃんと飯食べてるか?」 67-9xx「僕は満たされているから」 67-9xx「……笑わないでくれよ?」 67-9xx そんなデイ・バイ・デイ 67-9xx ある日の橘京子さん 67-9xx 言えなかった、言わなかった 67-9xx カラダにピース、マスターピースさ 67-9xx「大事なのは評価基準さ」 67-9xx「次はわたしの番なのだから」 67-9xx やっぱ大事なプレミアシート 67-9xx 矛盾しない幸福論 67-9xx 旧交の日 67-9xx なんて当たり前なパーソナライズ 67-9xx ひらめきのミュータンス菌 67-9xx 佐々木「実に由々しき問題だね」 67-9xx「キョンの望みであ...
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66-545 ルームシェア佐々木さんとキミの耳
...キミの耳(完結)。 67-509β「そこが小鍋立ての良いところなのだよβ」(番外編) 「ところでキョン」 「ん?」 居間であぐらをかき、本を読む俺の前まで寄って来て、佐々木はじんわりと笑いながらこちらを見つめる。 なんだ、何かあったか? 「……僕は負けなかったぞ。キミへの感情で、理性的判断を、進路を曲げはしなかった」 得意げに笑う。ああそうだ、まるで妹が「よく頑張ったでしょ?」とにっこり笑う時に似ている。 「そうやって遠回りしたって、涼宮さんに先行を許したって、散々くじけそうになったって、僕は決して僕に負けなかった」 「着地地点はちゃんと決めていたからね。……僕は、僕に負けなかったぞ。キョン」 「……そうだな。お前は負けなかった」 「ん」 ぐいぐいと頭を撫でてやると、佐々木の顔が悪ガキの笑みへと変わった。 まったく笑顔のストック...
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67-527 「キョン、そんなの決まっているじゃないか」
それは小学校六年の頃の話だ。 父が浮気し、結果、両親が離婚した。 事実だけを列記するなら、ただそれだけの話であり、そしてわたしは教訓と責任を得た。 人は、一時の感情によってたやすく判断を誤る生き物なのだ。けれど、わたしはああはなるまい、と。 母の心痛を、これ以上増やすような事はさせまい。母一人子一人であっても、わたしは立派なわたしになってみせよう、と。 丁度、その頃憧れていた少女がとある含蓄のある言葉を発したのを聞いた。わたしがそれに感化されたのはさて運命だったのか。 中学一年のわたしは、両親の離婚に合わせて苗字が変わった。 そして『わたし』も変わった。 それが『佐々木』の始まりだ。 わたしは中立にして難解な存在になろう。 女子に対しては普通で良い。けれど男子にとっては難解、不可思議、遠巻きにしたくなるような存在が良いだろう。何故ならば...
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67-555「ホント、素直じゃないんだから」
初めて彼の胸に沈み込んだ時の事を今でも鮮明に思い起こせるのは、我ながら記憶の妙、不思議なものだとしみじみと思う。 ああそうだ、僕がぼろぼろと涙をこぼしたものだから、キョンは柄にもなく大慌てになったものだった。 その様子があまりにも心地良く、悪甘いと。ロクでもない僕の心はそんな思いを感じたものさ。 ぎゅっと抱きしめた感触、温かさ、匂い、どれもたまらなくてね。 これが僕のものなのだと思うとぞくぞくとした。 ただ隣にいるだけで、語り合うだけで、頬が緩み、笑顔が止まらない程度には幸せになれる自分は知っていた。 けれどやっぱりその一歩先は、もっともっと心地良かったのだ。 ああそうだ、ここだ、ずっとずっとここが良かった、ここに来たかったのだって。 ようやくたどり着けたのだと、とてもとても嬉しかった。 日々を重ねた甲斐があったなって思うと 笑顔も涙も...
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67-599 キョン「そんな涙目で見つめても何も出ないぞ」
67-592 佐々木「唐突だがぼくは歯医者が嫌いでね」 ガチャ キョン「よう、どうだった」 佐々木「……」 キョン「そんな涙目で見つめても何も出ないぞ」 佐々木「……」 キョン「先に外で待ってるからな」 佐々木「う゛ん゛」 ――――――――――――――――――――――――――――――― 佐々木「……いだがった」 キョン「そりゃそうだろ」 佐々木「とてもとても痛かった」 キョン「今度からは気合を入れてから行くんだな」 佐々木「君はいい人ではあるんだが、大事な時に冷たいことがあると思うんだ」 キョン「気のせいだ、それにお前には弱点なんてないんじゃなかったか?」 佐々木「いつものぼくは閉店しました(プイ」 キョン「おれとしてはいつものお前に戻ってくれるとありがたいんだがな」 佐々木「ふむいいだろう、それが君の望みとあ...
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67-642「そこに意味なんて求める必要はないんだよ」
「お、今日の給食は貝のバターソテーか」 「キミも割と渋い趣味だね。中学生男子としてどうなんだい?」 「ほっとけ」 おいおいそんなに呆れることはないだろ佐々木よ。 むしろこの乾いた日々に少しでも潤いを見出そうとする俺のフレッシュな感性を讃えて欲しいね。 「ふ、くく、そういう事にしておこう……ほたて貝か。旬だからね」 「ほほう。そうなのか」 「ところでキョン。ほたてといえば帆立のコキールだが、店によってはコキーユというね。あれはどちらが正しいのだろう」 「知らんわ」 「コキールは英語、コキーユはフランス語なんだ。料理としての出自を鑑みれば……」 そろそろ聞き流すぞ佐々木。 「くく、それは残念」 なんてやりつつカレンダーを見れば、もう十月も半ばを過ぎている。 その割にはまだ暑い日もたまにあるが、そんな事よりも今年はそろそろ高校受験という言葉の方が気になる...
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67-9xx 「構わないよ、親友」
67-9xx「そう謝らニャいでくれ、キョン」と、67-9xx「いや謝らせてくれ、佐々木」の続き。 「キョン、キミは涼宮さんのせいだと言いたいのかい?」 「違うぞ佐々木。謝っているのはあくまで「俺」だ。猫化が進行してるんじゃないのか?」 「くく、これは手厳しいニャ」 ベッドに横になったまま、視線をこちらに見せて笑う。 口の端を釣り上げるように笑いながら。 今回の一件、ハルヒは無自覚に能力を行使してお前に猫化の呪いをかけた。 けどそれはあいつが悪いんじゃない。自分の日常を守る為に、異分子の存在を警戒するなんて当たり前の発想だ。 あいつの根っこが変人でも神様でもなくて、ただの普通の女子高生だから起こる警戒心なんだ。 mikuruフォルダをヤスミが気にかけなかった一件とは違う。 ああそうとも。あの春の事件で古泉が言っていたように、身内じゃない、ロ...
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67-9xx「そう謝らニャいでくれ、キョン」
一度成功した事に味を占めるというのは、決して珍しいことじゃない。 例えばだが、猿の檻に「ボタンを押せばエサが出る装置」を置いておけば、猿だってその装置を「扱う」ようになるという。経験は力なのだ。 しかし柳の下に泥鰌がいつも居ると思っちゃいかんし、ましてや切り株にウサギがぶつかってきてコロリと逝くなんて 発生する方が稀な珍例でしかない。そんなものをアテにしちゃいかんのである。 まあ要するにだな……。 「俺はやらん。もう二度とシャミセンの事を団活を休む理由には使わんぞ……」 「キョン、決意を固めるのも誠に結構な事ではあるが、そろそろ現実に戻ってきてはくれニャいか」 「おい?」 「ふむ」 佐々木は小鼻の脇から左右それぞれ三本ずつ生えた「ひげ」を興味深げにさすりつつ首を傾げた。 うん、まあ、そういう事だ。そういう事なんだ。 「すまん佐々木」 「そう...
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67-9xx 何事も一長一短だよ、キョン
昔の奴はズルい、だって? なるほど。キミは面白い発想をするね。 今のように学問が整理されていなかった時代であれば、こんなに苦労することなんかなかったろうに、か。 おやおや、キミは国民学校時代くらいがお望みかな? けれど当時の質実剛健な暮らしぶりにキミが従事している姿など想像もつかないな。 昼寝でもしてみたまえ、竹刀で一喝が日常だったと聞いているよ? ん、なに? もっと昔の時代? ああ、学校なんかなかった時代がお好みなのかい? そうだね、確かにもっともっと昔の子供の大半は、学問というものに縁がなかったかもしれない。 けれどそんな時代の子供は、肉体労働を強いられていたというよ? 子供が、子供だから、とのびのび暮らせるという意味ではむしろ現代っ子の方が恵まれているのではないかな? 少なくとも、現代における学問は強制というには弱すぎるから...
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67-9xx 佐々木さんと「やあ、親友」「そして」
67-9xx 佐々木さんと「じゃあね、親友」続編。 北高からの帰り道に僕は思う。 日常の側に残ってしまった、キミに何もしてあげられない僕自身を。 「・・・・・それとも僕は」 僕も、非日常に入ろうとすべきだったのか? 僕の「非日常」の属性とやらを、たとえ彼を舌先三寸で騙してでも、たとえ「神様」になってでも・・・ そうすれば彼を救えるはずなのだから・・・・・・。 くく、矛盾しているね。 涼宮さんから力を取り上げなければ、僕は「非日常」の側には行けない。けれどそれが彼の一番望まないことなんだ。 僕は「非日常」の側に立てない。立つ事はできないんだ。 僕には彼を救えない。 キョンを助けたければ彼を裏切るしかない。 実に、実に、矛盾している。 悲しくなんか無い。辛くなんか無い。 けど、羨ましい、くらいは思ってもいいだ...
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67-592 佐々木「唐突だがぼくは歯医者が嫌いでね」
佐々木「唐突だがぼくは歯医者が嫌いでね」 キョン「ホント唐突だな」 佐々木「あの耳の奥に響くドリルの音ったらないよ、地獄の拷問具もかくやと思うばかりなのさ」 キョン「そうか、お前になら閻魔様も手加減しそうだがな」 佐々木「それでだね、キョン。そんな恐がりが明日の夕方歯医者に行かなければならないとしたら その運命はどういう言葉で飾られるべきだろうね?」 キョン「……よかったら付いて行ってやろうか?」 佐々木「うん」 67-599 キョン「そんな涙目で見つめても何も出ないぞ」
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67-9xx カラダにピース、マスターピースさ
「ふむ。確かカルピスが世に生まれたのは今から遡ることおよそ90年ほど前、大正8年の7月7日だったと聞いている」 「なるほど。だからか」 奮発したのか、若干濃い目のカルピスを口に含みながら隣の佐々木に相槌を打つ。 今日は七月七日、いわゆる七夕……の前日。 つまり七月六日である。 「しかしアレだな、学生服っつーか、教室でこんなん飲んでると特別って感じがするよな」 「くく、いつかのエンターテイメント症候群かい?」 「まだそんなの覚えてるのかお前は」 しかし、七月七日だから、なんて言って教師が振舞ってくれたのはそんな理由があったのか。 まあ面倒ごとの代価としちゃあ、ちょっと安っぽい気もするがな。 「くく、キョン、笹飾りの手伝いがそんなに重労働と感じたかい?」 「時給換算してみろよ。最低賃金をぶっちぎりで下回るぜ」 「そもそも居眠りしたキミが悪い」 「...
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67-9xx「キミこそ余裕がないようだが?」
67-9xx「お前軽いな、ちゃんと飯食べてるか?」の関連。 「なあ佐々木」 「なんだい親友」 それは二人して向かい合い、額をつき合わせて夏休みの宿題をやっていた時の事だ。 そのはずだった。なのにどうしてこうなった。 「いい加減、俺の背中から離れろ」 「くく、つれないじゃないか」 「計算式がわからないとヘルプを求めたのはキミだよ? なのに何故今になってそんな事を言うんだい?」 「そこは感謝感激五体投地で礼を言うさ。だが何故いつまでも俺の背中に引っ付いているんだ?」 「くく、他に計算間違いがないかチェックしてあげているのさ、親友」 「何か問題でもあったかい? 大体キミの背中なんて中学時代に張り付きなれたものじゃないか。何を今更」 「こんなに密着してた覚えはねえよ」 「まだ足りないという事かな?」 「何がだ。第一、お前の頭脳ならとっくにチェ...
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67-9xx「大事なのは評価基準さ」
「キョン、先日テレビCMで見たのだが」 それは佐々木にしては珍しい切り口から始まった。 「ボールドという洗剤は柔軟剤入りで、洗濯物がふわふわに柔らかく仕上がるらしいね」 「CMらしい誇張表現ではあるだろうがな」 「キョン」 「なんだ」 ああなんだ。着地点が見えた気がするぞ。 「キミの膝まくらも、柔軟剤を使えば柔らかくなるのだろうか」 「いやなら降りろ佐々木」 人ごみに酔ったなんて言い出したのはお前だろうが、なんで俺が辱めを受けにゃならんのだ。 俺は冗談めかして降ろそうとしたが、佐々木の奴はしっかり捕まえて離さない。 「キョン、キミは弱りきった親友を一人で放り出すような奴だったのかい?」 「弱りきった奴はそんな皮肉は言わん」 「すまないね。気が休まるとどうも気が大きくなっていけない」 確かにそんなもんかもしれん。 「くっくっく、そうかな?」...
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67-9xx「いや謝らせてくれ、佐々木」
67-9xx「そう謝らニャいでくれ、キョン」の続き。 「涼宮さんの能力が、僕に影響を及ぼした事は理解しているつもりニャよ」 「そうだ。その事が問題なんだ」 小鼻の傍に生えた左右計六本のひげをしきりに撫でながら佐々木は苦笑する。 大丈夫だ、心配なんかしていない、と。 だが俺はそうではないんだ。 心はあの春の騒動に立ち返る。 あの騒動の時、騒動の発起人である橘が危惧したのは「ハルヒが力を暴走させ、世界を危機に陥れる」事だった。 その為に「精神が落ち着いた神候補、佐々木」に力を移し、世界を安定させようとしたのだ。 だが俺は提案を一蹴した。 ハルヒの奴はそこまで精神をボーダーの向うまでやっていない。 せいぜいがストレスで神人を発生させ、古泉の小遣い稼ぎを手伝ってやる程度でしかない。だから心配は要らないのだと。だが…… 「……キョン...
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7-500「東京タワー」
「東京タワー 佐々木と俺と、時々、誰か」 てな感じで、リリー・フランキー原作のベストセラーにあやかったタイトル通り、 俺は佐々木と、須藤、岡本などのグループで東京タワーを見上げていた。すでにお察しの通り、 東京見物を主題とした修学旅行の二日目、自由行動日である。自由と言っても、事前に担任 教師に行く先とスケジュールを書いた行動予定表を提出してのモノだ。グループ単位の レポートの提出が義務づけられているものの、我が班には、佐々木様がおられる以上、これは 楽勝というものだ。そんなわけで、俺は完全にただの観光客と化していた。だが、修学旅行な んてそんなものだろう? 真面目に勉学をしようなどという変わり者は……ひとり心当たりは あるが、そこまで無粋なヤツでもない。さて、そんな我らが佐々木は、先ほどから俺たちに 対し、バスガイドよろしく淀みなく東京タワーの解説を行なっている。 「……というわけで...
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67-9xx 佐々木さんと「じゃあね、親友」
66-236 佐々木さんの踏ん切り続編。 僕は、あの雨の日に素直になれなかった自分を後悔した。 だから僕の答えはこれだ。 キミには後悔なんてして欲しくない。 だから僕は素直にならない。 だって私はキミが欲しい。 それを告げれば、キミの選択のノイズになる。 僕は、キミが今抱いている素直な気持ちを、そのまま形にして欲しいんだ。 僕は、自分の気持ちの為に、キミの気持ちを犠牲になんかしない。させるつもりはない。 『どうもキミと話しているときは何だか笑っているような顔に固定されているようでね』 僕は役者になれない。そう結論した。 四年前、僕は涼宮さんに憧れて「演技」を始めた。 性別を超越した変人を演じ、注目され、「浮いた」自分を楽しむ。 そうやって自分の枠を作って、僕は誰にも自分を見せないようになっていた。 けれど...
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17-509「さぁ・・・いこうかっ!」
#1 ~???~ ・・・カタカタカタ、カタカタ・・・・・・。 やや暗めの照明に照らされた静かな室内に、キーボードを叩く音が響いている。 軽快なこの音が嫌いな人はいないだろうと私は常日頃思っているし、 事実、落ち込んでいるときに耳を傾けると心が落ち着いてくる・・・。 「・・・ふぅ、このくらいかな」 一旦手を止めて、今書き上げたばかりの乱雑な文を眺めつつ息抜きに椅子によりかかる。 オリジナルの小説・・・誰にも見せる機会のない、私だけの作品が画面上を寂しげに飾っている。 あの日、彼が突然いなくなってしまってから書き始めて今ではかなりの長編となってしまっているが、 相変わらず文脈に上達の兆しが見られることはない。一般的な思考の持ち主ならば、その冒頭の部分を 流し読みしただけで眉をひそめるであろう・・・支離滅裂だ。 「・・・あ」 しまった。次々に浮か...
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67-826「キョン、口の端に五目飯がくっついているよ?」
「キョン」 なんだ佐々木。と言う視線だけを向ける。何故なら今まさに俺の口の中で給食の五目飯が味覚の交響曲を奏でているところなのでな。 しかしこの場合、咀嚼中の口は閉じていれば味の交響曲だが、開けば周囲に汚らしい光景を晒すのが問題だ。 俺はこれでもマナーという奴の欠片くらいは理解しているつもりなんだよ。 だから目線だけを向けてやる。 「キョン、口の端に五目飯がくっついているよ?」 俺が「そうなのか?」という視線だけを向けてやると、佐々木はやれやれとばかりに指を伸ばして摘み取ってくれ そのまま俺の唇の真ん中辺りに押し付け、くるりとあらぬ方向を向く。 「くくっ。ここで僕が「しょうがないなあキョンは」とでも言いつつ口に運ぶとでも思ったかい?」 「何言ってんだか知らんがお前も口についてるぞ」 「え?」 俺はひょいと佐々木の口の端から米粒を摘み取ると、先...
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66-418 「ところでキョン。紅茶かコーヒーかと言えばだ」
「ふむキミは紅茶か。では僕はコーヒーにしよう」 「で、また俺のを一口飲むつもりかお前は」 「くく、いいじゃないか」 「ところでキョン。紅茶かコーヒーかと言えばだ」 なんだその嫌そうな顔は。 「キミは紅ヒーというものを飲んだことはあるかい?」 「コーヒーじゃなくてか」 「実はね。以前橘さんと喫茶店に行った時の話なのだが」 「という事があったのだよ」 「ほう」 「ってなんで省略されてるんですか!」 「いたのか橘京子」 ウエイトレス姿とは新鮮だな。バイトか? 「うう……だから嫌だったんです。なのについ……」 「お前ってツッコミ似合いそうだもんな」 「そうですね。佐々木団じゃ常識人ポジションでしたから……って誰がツッコミですか!」 「ほれやっぱり」 ん。どうした佐々木? 「キョン。もしかしてキミの中での僕は『ボケ』なのかい?」 ...
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67-708『だって、あたしだってそうだったし?』
「う、ん」 自室の椅子で大きく伸びをし、かちり、ぱたん、と弄んでいた携帯に、意を決して発信ボタンを押す。 とるるるるるるる……発信音になんとなく心が折れる気がする。 けれどここで切ったら、それはただのいたずら電話だ。 そう思った瞬間に繋がった。 繋がってしまった。 『や、お久しぶり佐々木さん』 「久しぶり、岡本さん。一年ぶりくらいね。ちょっとお話したいんだけれど、時間だいじょうぶ?」 『こんな時間だもの、大丈夫よ大丈夫。それにしても随分久しぶりじゃない』 電話口に出たのは中学三年時代のクラスメイト、岡本さん。 正直言って彼女との親交は深かったとは言いがたいが、久しぶりと言いつつその口調は軽快で、いぶかしがる様子はない。 うん。なんとなく嬉しい。 『何か用? あ、聞いてるよ? 北高の涼宮さんにケンカ売ったってホント?』 「え? ...
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67-9xx ひらめきのミュータンス菌
「やあキョン」 「やっぱり佐々木か」 まとわりつくシャミセンを振り切ったある日の事。 俺の背後から声をかけてきたのは、いつもの笑顔を浮かべ、いや、珍しく笑顔を浮かべきっていない佐々木だった。 「やれやれ、やっぱり、とは失礼な奴だなキミも」 「そう思うなら常に人の意表を突こうとするその登場パターンをなんとかするんだな」 「くく、そうか。パターン化はマンネリ化というものだ。考慮しておくよ」 言って喉奥で笑ったものの、音響になんというか張りが無い。 なんだ、どうかしたのか佐々木? 「おやおや、キミは鈍重な感性がウリだと思っていのだが」 「人の特性を妙な方向性で固定するな。なんとなくだよ、なんとなく」 「ふ、くく、そうか、い」 笑顔を広げようとして失敗する。 おい、なんか本格的におかしいぞ。どうした? 「キョン、キミが余計な事を言うから余計...
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66-67 ルームシェア佐々木さんと意思疎通
「やぁキョン。僕はね、親友というのは何年も会わなくても勝手に自転車の荷台に座っていようとも許される関係だと思うんだ」 お前と最後に会ったのは今朝だ。 「ところで今夜はハンバーグなんだが、何故一般にハンバーグステーキはハンバーグと略されるのだろう」 いいからそのスーパーの袋を寄越せ。 帰るぞ。 「ん」 籠に荷物を。荷台に佐々木を。 二人乗りは道交法上褒められたものではないが、我ながら手慣れたもんである。 それは大学も引け、SOS団大学支部で一騒ぎしてからの事だ。 ついでに本屋にも寄ったというのに、なぜ別の大学帰りの佐々木とばったり出くわすのだろうか。 「お前、まさか俺に発信機でも付けてないだろうな」 「そこは盗聴器と言って欲しいな」 おいなんだ瓢箪から駒か。 「冗談だよ。それともキミは僕がキミの行動を予想できないとでも思っていたのかい?」...
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55-381「月刊佐々木さん6月号」
昨今巷で騒がれている地球温暖化の影響による異常気象とやらも 梅雨前線にはあまり関係がなかったようで、つまりここのところ しとしとと雨が降り続ける毎日なのである。 6月も半ばを過ぎ、紫陽花が青に紫にピンクと通学路の彩りを 加えてくれているコトは本来自然に感謝すべきところなのだろうが こうも毎日続くと気が滅入ってしまうのは仕方のない事だった。 「よう、佐々木」 「あぁ、おはようキョン。今日も浮かない顔をしているね」 いつものことだ。気にするな。 「梅雨に敵愾心を抱くのは無理からぬ事かもしれないが、自然には逆らえない。 それに日本から梅雨がなくなっては農家の方々を始め、夏場の水不足が 深刻な地域など、困る人が大勢いる事も忘れてはならないね」 わかってるさ、そんな事は。だがたまにはお天道様の顔を拝みたくなるのが人の性だろ。 「だね。実は僕の母親もこの時期になると、乾燥機の導入を真剣に父と論議し...
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67-613「やれやれ、ひどい雨だ」
「やれやれ、ひどい雨だ」 「まったくだな」 突然の大降りの雨に、閉店した店舗のアーケード下に二人で逃げ込む。 俺と同様、服をびしょぬれにされた佐々木はそれだけ言うと、いつかそうしたように上を向いて黙りこくった。 俺も、なんとなく、なんとなく視線を外す。フラッシュバックする光景があったからだ。 ……………………… 『キョン、こっちを見ないでくれないか』 『何でだ』 『キョン、キミは時々忘れるようだが、僕は遺伝子的に紛れもなく女なんだよ。さすがの僕でも、こんな姿……解りやすく言うと 下着の下すら露になりかけているような、破廉恥な格好を人目にさらして平気な顔ができるほど無神経じゃないんだ』 ああそうとも、こいつはどうにもこうにもデジャヴすぎるな。 いつかの雨の日のメモリーズ……………… ………… 「……くく、僕らの雨の日に苦い思い出がある...
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17-404「作家のキョンと編集者佐々木~調子のいい日」
『調子の良い日』 その日は朝からなんだか調子が良かった。 夢で見た内容をきっかけに起きてから次々と素晴らしいネタが浮かんできた。 以前夢で浮かんだ素晴らしいネタを忘れて悔しい思いをしたのを教訓に俺の枕元にはメモ帳がおいてある。 浮かんだ内容はそこに書き留めるようにしてあるのだが所詮は寝起きの脳みそ。 寝ぼけた文字のせいでで判読不能だったり改めて読んでみたら理解不能な内容だったりすることが多々あった。 ……この蟹味噌ってのはどういうつもりで書きとめたんだろう? しかし、今日に限っては違った。 俺の脳が完全に覚醒したとき書いてあった文字はきちんと読めるものだったし、内容も現在の連載に即した使える奴だった。 それをきっかけの俺の頭の中には次々と原稿の内容が生まれてくる。 それは俺に早朝から仕事をさせるのには充分な理由だった。 普段ならまだベッドで...
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67-665「セミがうるせえな」「それは重畳だね」
高くそびえるひまわり、あの大量の花弁が全て小さくしぼんで、すっかり別の植物のように変わり果てたあじさい、耳喧しいせみ時雨。 どれも夏の頭の風物詩だ。そんでもっていよいよ太陽の奴も猛威を振るい始める頃な訳で。 いよいよ、夏だね。 「ああ夏だ」 「そうだな佐々木」 帰りの通学路。いつものように並んで塾に、いや正確には塾に向かう為に自転車が置いてある我が家に一旦向かう為に歩きつつ 学校で栽培したらしい朝顔の鉢植えを抱えてよたよたと歩いていく小学生の姿を見送る俺である。 ああそうだったな、あんな風に終業式頃に鉢植えを持って帰らされたんだったか。 中学生にもなるとあの手の行事は激減したな……。 そりゃ、やりたいって訳じゃない。 が、懐かしさはある。 「結果、玄関に置いたまま、ほうっておいて朽ち果てさせてしまったのかい?」 「なんだ佐々木、お前と...
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10-66「1乙に関する考察」
「 1乙」 「へ?」 今何つった? もっぺん頼む。 「いち、おつ」 ぁんだ? って佐々木、もうレス60以上行ってんぞ。それに俺は 1ではない。 「いや失敬。10スレ目のお披露目のご挨拶も無事済んだし、丁度良いタイミングだと思ってね。それに、 ちょっと声に出して言ってみたかったものだからね」 SOS団御用達の喫茶店で、大きな声で、しかも俺の目を見て言わんでくれないか。俺は周りを見渡す。今日 は喜緑さんはいない。 「それにしてもだ、実に潔い言葉ではないか。新たにスレを立ててくれた 1に対する感謝とねぎらい、そ れにホスト規制など諸般の事情でスレを立てられなかったものたちの無念と憧憬の思いなどが渾然一体と なり、しかして悪意のかけらもない、簡にして要を得た表現と言うべきだろうね。この表現を発明した人 に対しては敬服の至りだ。」 異論...
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67-460 斜め45℃のサスペンダー
「暑いな……」 「キョン、そんな事を言うとなお暑くなるというものだよ」 中学三年も三ヶ月が過ぎ、七月になろうかって頃のムシムシとする昼休み。なんとなく呟いた俺に佐々木は呆れたような声を出した。 ああ、ああ解っとる。誰だって暑い。それを口にすればなお暑い。 暑いと言えば言うほど暑いし、聞けば聞くほど暑いのだ。 解っちゃあいるんだが暑いもんは暑い。 暑いんだから仕方ないだろう。 「ま、僕も気持ちは理解できるつもりだがね」 「解ってくれるか友よ」 「……ちょっと岡本さん、キョンが壊れたみたいなのだけれど」 前言撤回だ。おいこら佐々木。 「大丈夫よササッキー。そんな時はそう、斜め四十五度からキスすれば治るわ」 「キョン、岡本さんも壊れているみたいなんだが」 「知らんわ」 岡本も妙なアドリブ入れるな。 「えー」 えーじゃない。 ウチの女...
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67-846「二人きりでって訳じゃないんだろ?」
『くく、それは二人きりでって訳じゃないんだろ? なら構わないよ』 俺と佐々木とは中学と塾通いだけが接点で、放課後一緒に遊びまわるような仲ではなかった。 今思えばあいつの家に行った事もないし、あいつが俺の家に来るのも、それは俺の自転車に乗る「ついで」みたいなものだったしな。 けど、別に放課後まったく一緒に遊ばなかったって訳じゃない。 そこまでいったら逆に不自然だ。 当たり前だろ? けど、結局たった一度だけだった。 俺と佐々木が、たった一度だけ放課後一緒に遊んだ時の事。それはそう、月めくりカレンダーの十枚目をめくった頃だったろうか。 ……………………… …………… 「佐々木、たまにはお前も一緒に来ないか?」 「くく、それは二人きりでって訳じゃないんだろ? なら構わないよ」 残暑がしつこく居座る十月、俺が冬服の上着をずだ袋か何かのよう...
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67-116 Rainy Day …… What?
「佐々木さん、それってどのくらいの確率なのですか?」 「どのくらいの確率って」 それはある日、喫茶店で二人で昔話をした時の事。 一通り語り終えた僕へ、橘さんがよくわからない事を言い出した。 あの春先の事件から結構して、僕はそれなりに橘さんと打ち解けあい、それなりに昔話などをするようになっていた。 彼女は「組織」や「機関」の興味深い逸話の代価に、僕の今昔の話などを所望したからね。 四年前からずっと監視していたというから珍しい話でもないだろうと思ったが 僕の視点というものに興味があったのかもしれない。 その日に語ったのは 『岡本さんのならまだしもさ』 我ながら、ホントにみっともない事を言ったあの事件。 しとどふる雨を眺め、あの雨の日に、今にして思えば分水嶺だった日に、そう、僕が進路を確定した日に思いを馳せた。 すると橘さんは「佐々木さんら...
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67-9xx「いや謝らせてくれ、佐々木」の続き。 「キョン、キミは涼宮さんのせいだと言いたいのかい?」 「違うぞ佐々木。謝っているのはあくまで「俺」だ。猫化が進行してるんじゃないのか?」 「くく、これは手厳しいニャ」 ベッドに横になったまま、視線をこちらに見せて笑う。 口の端を釣り上げるように笑いながら。 今回の一件、ハルヒは無自覚に能力を行使してお前に猫化の呪いをかけた。 けどそれはあいつが悪いんじゃない。自分の日常を守る為に、異分子の存在を警戒するなんて当たり前の発想だ。 あいつの根っこが変人でも神様でもなくて、ただの普通の女子高生だから起こる警戒心なんだ。 mikuruフォルダをヤスミが気にかけなかった一件とは違う。 図らずも古泉が言っていたように、身内じゃない、ロクに見も知らぬ人間が「自分の身内」と仲良くしているのを見れば 普...
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67-82「キョン、リヤカーと言えばだが」
「ところでキョン、リヤカーはあるのに何故フロントカーはないのだろう」 「そりゃ引っ張る方がラクだからじゃないか?」 実際に引いてみたらなんか解る気がするぞ。 直進だって曲がるのだって大変だろう。 「くく、やはり経験に勝るものはないね」 「出来れば得たくなかった経験だがな」 リヤカーを引っ張りながら軽口を叩き合う。 九月とはいえまだ気温が高い。夏服だってのにとっくに汗でびっしょりだ。 「ちなみにリヤカーの起源とは、いわゆるサイドカーにあるという説が強いらしい」 「サイドって言うとバイクの横についてるアレだっけか?」 「そうだね」 リヤカー後部から佐々木のうんちくが始まった。 というか関係あるのかそれ? 「要するに荷台さ。それに日本古来の大八車が融合したらしいね」 バイクの積載力を増やすべくサイドカーが考案され、更にそのサイドカーをヒ...
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20-424「キョンを評価する佐々木さん」
なぁ佐々木、本当に俺なんかで良かったのか? 「どういう意味だい?キョン」 いやだって、お前はその、美人だし、頭も良いし、性格だってちょっと理屈っぽいが面倒見が良くて頼りになるから、 その気になればもっといい男を捕まえられるだろうに。 それにいつだったか自分で俺の親友だと言ったよな、だからそれ以上は踏み込ませないつもりだと思ってたが。 「くっくっ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。だが先程の問い自体は愚問だね。 確かに僕はキミに対して所謂燃え上がるような恋心というような物は抱いていない。 恐らく今後も抱く事は無いだろう、他の誰に対しても、ね。だのに何故キミを受け入れたかというとだね、僕にとってキミが最も丁度よかったからさ。」 丁度いい? 「そう。僕が求めていたのは100点満点の人なんかじゃない。75点の人なのさ。考えてもみたまえ、 もし僕が完璧な人間であるならば...
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長編
ssトップページ > SS > 長編 74-16「SOS団との決別」 74-16「キョンの退団宣言」(エロ物 注意) 71-874「俺の後ろに佐々木がいる」 74-16「佐々木からのプロポーズ(驚愕If Bad End) 74-16「佐々木からのプロポーズ(驚愕If) 70-483『バッテリー』 70-432「恋愛苦手な君と僕~放課後恋愛サークルSOS」 68-866『Wanderin Destiny』 68-111「佐々木さんのキョンな日常」 67-9xx 失言と猫ヒゲ 67-9xx どこか足りないフラグメント 橘京子「それが佐々木さんの役割だって言うんですか?」 67-708『だって、あたしだってそうだったし?』 67-116 Rainy Day …… What? 67-30「じゃあ、僕はこれから塾に行かなきゃいけないんでね」 66-358 Rainy Day by? 65-...
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67-586「喧嘩売ってるなら三割引で買ってやるぞ佐々木」
「憂鬱だ」 「おやキョン、キミでも憂鬱になることがあったのかい?」 中学三年の七月も半ばを過ぎ、いつもならばハイテンションブギウギになる時期のはずだというのに溜息が漏れた。今年ばかりは例年と違うのだ、と。 するといつものようにくつくつと笑いながら隣の席の奴が身を乗り出してくる。 お前はホントいつも楽しそうだな。なあ 「喧嘩売ってるなら三割引で買ってやるぞ。佐々木」 「くく、口喧嘩で良ければ売って差し上げようじゃないか。キョン?」 なら止めておくさ。お前に口で勝てるとは俺だって思わん。 そう言ってやると見事なオーバーリアクションで肩をすくめられた。お前は欧米人か。 「生憎だがれっきとした日本人だよ。 それより僕としてはキミが暴力に身を任せようと企んでいたことに衝撃を禁じえないね。 キョン、物事は口、つまり交渉によって解決すべきだと僕は思うよ。西...
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67-9xx「次はわたしの番なのだから」
「まるで空が切り取られていくようだね」 「また今日は詩的だな佐々木」 自転車越しにくつくつと笑いを放る。 自転車越しに笑いあい、僕らはビルだらけの夜空の下をゆっくりと並走する。 『ん、ああ佐々木か』 『やあ親友』 七限目を終えた学校帰り、駅前に降り立ったところで偶然に出会った。 偶然? いやまあそれは偶然なのだろう。 彼にだって駅前に用事くらいあろう。 『ここもビルになったんだな』 『そうだね。確かその隣と三軒隣はあの頃にビルになった。ここ数年で再開発が進んでいるのだろう』 『よく覚えてるな』 あの頃と違うのは風景だけではない。自転車の後ろではなく、彼と自転車で並走していること。 それはまるで、キョンとの距離感そのものの変化のようだった。 そんな事を考えていたからかもしれない。 だから口をついたのかもしれない。 「まるで空...
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67-9xx ある日の橘京子さん
67-708『だって、あたしだってそうだったし?』の派生のお話。 「あたし、佐々木さんの事が解ってないんだなって」 「そりゃそうよ、きょーこちゃん」 いや、あたしは解らないとダメなんですけどね。という言葉を橘京子は飲み込んだ。 この子をわざわざ不思議な非日常に巻き込むことはない。既に橘自身がドロップアウト組ではあるのだが、それでも無駄に巻き込むことはない。 そのつもりはない。 佐々木の元同級生岡本、佐々木の元信奉者橘。 二人は佐々木と言う縁でいつしかタッグを組んでいたのが現状であり、岡本の部屋でクッキーを前にくつろいでいるのが現況であった。 「まあでもアレよ、あたしはササッキーが大事なものの為なら我慢しちゃう娘だってことくらい解るわ」 「あたしだって、佐々木さんが大事な人の為なら、我慢する事が、自分にとって幸せなんだって思えちゃう人だって事く...
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54-375「月刊佐々木さん5月号」
新緑萌える5月。 桜もその色をピンクから鮮やかな緑へと衣替えを終え、 ゴールデンウイークも特筆すべき事もないまま終わってしまった。 いや、例年と比べ明らかな差異として学習塾の存在があったのだが……。 「やぁキョン。ちゃんと今日も来たようだね」 コイツは佐々木。 たまたまこの4月から塾に通う事になった俺と、 たまたま同じクラスに居合わせた中学の同級生だ。 「そりゃ家じゃ母親が目を光らせているからな」 「ほう」 くつくつと真似のできない笑い方をし、佐々木は薄い口唇を開いて言った。 「まるでご母堂のお叱りがなければ塾など来ないと言わんばかりだが」 「…進んで勉強しようって人間なら成績の心配なんてなかったろうな」 「違いない」 楽しそうに喉を鳴らせて笑う。 「さて、課題はやってきたかい?」 「ぬかりないさ」 それは結構、と佐々木は前を向いた。 授...
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67-9xx「……笑わないでくれよ?」
「……なあ、やっぱり止めないかキョン。ホントに痛いんだよ。色んな意味でだ」 「そう聞いちゃなおさらだ。観念しろ佐々木」 着替えが終わったよ、と俺が部屋に入ることを許しつつも、あいつはカーテンから顔だけを出していた。 佐々木よ、言っちゃなんだが白カーテンだから光でちょっと透けて見えてるぞ。 「え」 「まあ身体のラインくらいだが」 「うう……」 「まあ観念しろ。それにな、そもそも最初に話を飲んだ時点でお前の選択は既に終わっているんだ」 「……キミに言葉責めの趣味があったなんて知らなかったよ」 俺はいつもお前に言葉責めされている気がするがな。 「……笑わないでくれよ?」 「保障はしない」 「うう」 それでも姿を見せたのは、常に筋を通すあいつらしい頑固さの賜物か、或いはその頑固さを利用した俺の勝利か。 ピチピチに張った服を着た佐々木がカーテンから現...
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67-295 退場者達の語り場で
「やあ、随分待たせてしまったようだね」 「いいえ」 遅れてきたとばかりに少女が微笑むと、文庫本を見ていた少女も釣られるように柔らかな笑みを返した。 なんとも絵になる風景、しかし違和感だけしか残らない風景。 本当は、出会うはずの無い風景。 そこは真っ白な喫茶店。 白い、だだっ広くも真っ白な空間にぽつりぽつりとテーブルと椅子が並ぶオープンカフェ。 喧騒は無い、なにもない、ただそこには静かな空間だけがあった。 「ええと失礼だが、長門有希さんだったかな?」 「そう。佐々木さん」 男性のような喋り方をする少女は佐々木、眼鏡をかけた少女は長門有希。互いに名前を確認する。 既に解っていることを、一応確認するという風に。 「実は僕の流儀に反する事なのだがこれも記号なのでね。悪いけれどこの喋り方を通させてもらうよ」 初対面に気後れしたのか、軽く朱が差し...
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67-241 やさしい雨
おさんぽシリーズその4. ざざぁ。と学校が終わって放課後。 お疲れさまでした、また明日。 さて、帰りましょう。そうしましょう。の一歩手前。 私は恨めしげに空を睨みつけていた。 今日は、午後から雨だった。 雨はあまり得意では無かった。 いい事もあったがわるい事もあって、正直に言うと私にはまだ割り切れない。 朝……ちゃんと晴れていたのに。 今朝は学校に行く前に新聞で今日の天気を確認した記憶がある。 降水確率は30%未満だったはずだ。 いつもは傘を忘れたりもしないし、置き傘だってちゃんとおいてある。 だがいつもの傘は天気予報が、置き傘のビニール傘は何者かによって連れ去られてしまった。 むぅ。と眉根を寄せて傘入れを睨みつけた。 まだまだ沢山の傘達は出立を待っていたが、出番を待ち続けている筈の相棒の姿は無い。 ...
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67-9xx「僕は満たされているから」
「くく、礼を言うよキョン。おかげさまでまた一つ昔の夢想が叶ってしまったようだ」 「俺なんぞの膝枕で礼を言われても困るぜ」 するとくつくつと喉奥で笑い、佐々木は手を伸ばす。 中空へ、電灯の光でも掴もうとするように。 「そう言うなよ。キミだって、そうだな、グラビアアイドルや女優を見て触れ合いたいという願望を抱いた事くらいあるだろう?」 「おいおい話がまったくもって摩り替わっちまってるじゃないか」 「さあて、どうだろう」 そんなご大層なもんじゃねえだろ。 家だって同じ市内、同じ学区、遠く離れてた訳ですらねえ。 「くく、願っても叶わない、触れ合えない、という点では変わらないさ」 俺なんかにそんなに触れたかったってか? 「お前はそんなタイプじゃなかったろ」 「そうかもしれない」 「そしてキミもそういうタイプだ。 キョン、キミは割と優しい人だ。...
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67-732「結果がここにあるのにかい?」
「やあ親友」 「……佐々木? だよな?」 「くく、他の誰に見えるのかな?」 それは高校三年の冬の終わり。 なんとか希望通りの大学合格を決めた俺の家へ久しぶりにあいつが訪れた。なんとなく昔の印象と違う気もするが 「仕方ないさキョン。実に丸二年も顔つき合わせなかったのだから」 「そりゃそうだ。久しぶりだな」 玄関先でにこにこし、俺の顔を下から覗き込んでくる。 また身長差が広がっちまったかな。 「くく、そうだね。ここ二年ほど出会っていなかったが故に、デジタル的に僕の変化を感じてくれたのではないかな?」 相変わらず小難しい喋りをする奴だ。 「で、何の用だ」 「何、風の噂で聞いてね。大学合格祝いと言う奴だ」 言って、玄関に立ったままごそごそとハンドバックを探りだしたので釣られて覗き込むと 「ほらキョン」 「ん!?」 佐々木が電光石火の如く俺の後頭部...
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26-656「漢詩と佐々木さん」
~黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る~ 李白 故人 西のかた黄鶴楼を辞し 古くからの友人『孟浩然』は(揚州より)西の方角にある黄鶴楼(※) に別れを告げ、 煙花三月 揚州に下る 春の霞が立ち上る三月に、揚州に向けて下っていった。 弧帆の遠影 碧空につき 『孟浩然』が乗る帆掛け舟の遠い影も、青空に吸い込まれて見えなくなり 惟だ見る 長江の天際に流るるを ただただ、長江が天の果てまで流れているのをみているだけであった。 ※黄鶴楼 中国の武漢の南西にあった建物。 突然だが、漢詩というものをしっているだろうか? 中国に昔から伝わる詩のひとつだ。僕はこれが大好きなのだよ。 昔の人がどんな事を考えていたか、どんな経験をしていたのか、昔を知る手がかりになるからね、とても面白い。よんでいてワクワクする。意外と昔の人も今の...
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67-273「……そんなに妙な顔をしていたかい?」
「キョン、どうだい一口?」 「丁重に遠慮させてもらおう」 塾帰り。珍しく俺の前を歩きながら、佐々木が飲みかけの缶コーヒーを差し出してきた。 気遣いありがたいが、そいつはちょっと遠慮させてもらいたい。 「おや? 何か問題でもあったかな?」 「強いて言うならお前の顔だな」 「……キミは随分失礼だな」 言って佐々木は片手で自分自身の頬を撫でる。 ん? ああいや別にそんな意味じゃないぞ。すまんな、失言だ。 「造作がどうのじゃねえよ。むしろお前はハンサムな方だろ? そうじゃなくて表情の話だ」 「キョン、今日のキミからは次から次へと聞き質したい言葉が飛び出すね」 佐々木は怪訝そうに眉をひそめ、くるくると細い指を回す。 「しかし佐々木よ。残念だが俺の口は一つしかないぞ」 「くく、流石の僕も増やしてくれとは言わないよ」 「むしろ俺としてはもう少し減ら...
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7-527「フラクラ返上」
先日の日曜日に、佐々木はともかくとして、その他の同席しているだけでも怒気を抑え切 れなくなりそうな連中と会談を持ってから早数日が経過していた。 その日は、あと5時間も経過すれば再び休日となる週末の夜であり、運動部という強制休 日出勤団体には幸い入っていない俺としては、休みの前の優雅なひとときを過ごせる最良 の状況でもあった。 それにSOS団のトンデモ市内探検も翌月まではないだろうし、脳内を検索しても俺の検索 エンジンからは一件も出てこないほどに憂慮すべきことがなかった。何を言っているのか わからないだろうが、そのときの俺はそれほど上機嫌だったってわけだ。 だが、そんな気持ちよく自分のベッドに寝っ転がっていたとき、マイ携帯が予告もせずに 鳴り響いた。やむなく俺がベッドから起き上がり、卓上ホルダに差し込まれている携帯の ディスプレイを確認すると、日曜日に会ったばかりの佐々...
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