読書感想しりとりリレー2006@Wiki内検索 / 「「返事はいらない」(宮部みゆき)」で検索した結果
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「返事はいらない」(宮部みゆき)
返事はいらない (新潮文庫) 宮部みゆきの凄さをいまさら語っても仕方が無いのだが、やはりこういうさらりとしながらも素晴らしい短編を見せられると、その実力の高さを痛感させられる。深い人間描写を絶妙の語り口が淀みなく流す。希代のストーリーテラーだなぁ。 本作ではカードローンを題材にした作品が複数あり、「火車」に繋がる部分を垣間見ることが出来、宮部作品の"ステップ"の部分を楽しむことも出来、「ドルネシアにようこそ」も都会生活にすこし疲れた若者を描いたちょっといい話になっており趣が深い。「聞こえていますか」もちょっと小学生頭良すぎなところはあるが、いろいろ考えさせられる作品となっている。 だが本作で一篇を挙げるとするならば、表題作である「返事はいらない」以外にはない。 短編のお手本のようなシンプルかつ鋭い切れ味の作品に仕上... -
走行履歴
...加納朋子) /橋立 「返事はいらない」(宮部みゆき) /ささき 「天文台日記」(石田 五郎) /なりた 「タスケテ…」(島村 洋子) /本条 「ネバーランド」 (恩田陸)? /マサトク 「どんどん橋、落ちた」 (綾辻 行人) /竹田 「つきのふね」(森 絵都)? /if 「ルナハイツ」(星里もちる) /若林 「冷たい校舎の時は止まる」(辻村深月) /橋立 「月に繭 地には果実」(福井晴敏) /ささき 「姑獲鳥の夏」(京極 夏彦)? /あちゃぞう 「宇宙船ビーグル号」(A・E・ヴァン・ヴォクト) /アンダー 「ブタの丸かじり」 (東海林 さだお) /なりた 「浪漫倶楽部 1」 (天野 こずえ) /本条 「重力ピエロ」 (伊坂 幸太郎) /竹田 「ナラタージュ」(島本理生) /マサトク 「砂の女」(安部公房) /if 「ダンス・ダンス・ダンス」(村上春樹) /若林 「スリーピング・マーダ... -
「名探偵はもういない」 (霧舎巧)
「名探偵の掟」だの「めぞん一刻」だのいろいろ候補はあったが、丁度ノベルス落ちしたばかりのこの作品を取りあげる事にした。端正な本格で、きっちりと「読者への挑戦までついていて、しかもカバー折り返しには作者自ら「ミスリーディングへの仕掛がある」と明言している期待感あふれる構成。 いや、霧者巧よ何処に行く、と探偵学園シリーズを始めたときにはどうなるかと思ったが、基本的には数少ないロジックを楽しませてくれる作家の一人だ。だがしかし、そういう「本格」に対して感想を語るというのは非常に難しい。感想内に書かれた地の文は基本的に真実となってしまい、余計な推理要素を持ち込むことになってしまうのだ。だからといって内容に全く触れないというのも味気ない。 いったいどうしたものか、と思いつつ結論だけ書くと、ある一点の伏線以外は導けたのでテストだったらまあ及第点なのだが……実は作者の言う「ある一点」とい... -
「少年たちの密室」(古処誠二)
少年たちの密室 (講談社ノベルス) あちゃぞうさんから「狙われた女教師」というタイトルで回ってきたので、まだまだ在庫(在庫?)に余裕のあるメフィスト賞作家の中から、男一匹古処誠二の「少年たちの密室」をチョイスしてみた。 ところで、この感想を書いている本日は七夕である。であれば、筆者の作品で同じく「し」で始まる「七月七日」を選んだ方が趣きもあるってものではないだろうか? それを選ばなかったのには理由がある。その理由というのは、いや、講談社ノベルスじゃないからとかじゃなくて・・・・・・、本当はあちゃぞうさんからは「しょ」で回ってきたから。いくらなんでも「狙われた女教師」はないだろう。というか、適当にでっち上げた。こんなタイトルの作品があるかも定かではない。(調べてみたらあった)(調べるなよ)(あと、あちゃぞうさんごめんなさい)。 ・・・・・・さて... -
2006年8月
8月29日(火) 【本条】 先程みなさまにメールを送信致しました。そちらと重複してしまうのですが、次周の「走行カレンダー」を 現状に併せて少しずらしてみました。…どうでしょうか。 8月27日(日) 【アンダー】 もう今日はお題が来る予定だった日なのですね。早いなぁ(←アップすごく遅れたやんけ)。 >ささきさん ありがとうございます。気になっていたので、後でやってみます。 遅れの件。 まさしく「人の事はいえない」状態ですが、現実的な面としては、代走でしょうか。 【ささき】 書影の件。たぶんアフィリエイトリンク機能が内部エラーかましてるんだと思いますが、ひとまずのソリューションとしては手動でタグ入れるぐらいしかないですね。 "#amazon(ISBNコード,left,text,image)" ... -
「むかしの味」 (池波 正太郎)
むかしの味 (新潮文庫) 正月、久しぶりの友達と携帯のメールをやりとりしていたとき、最近読んだ本のことが話題になった。ぼくが池波正太郎の名をあげると、相手はすぐ「読んだことはないけど、出てくる食べものの描写が旨そうらしいね」と返してきた。そうなのだ。前日、本屋で「む」で始まる池波の本作を見つけたとき、ぼくも「読んだことないけど食べものが…」と思ったのだった(ダビンチとかで見たのだろうか)。しかもタイトルは『むかしの味』。きっと旨いにちがいない。 さて、本を開いてみると、最初に料理のカラー写真が載せられた数ページがあり、次の「はじめに」のところにはこう書いてあった。「もともと、この本は、いわゆるhtmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。の本ではない。私の過去の生活と思い出がむすびついている食べものや店のことを語... -
「タスケテ…」(島村 洋子)
カリスマアイドル・橘リリカには、ある秘密があった。そんな彼女の周辺で、いつからか不気味な現象が続出し…? 3つの視点――リリカの視点、リリカが立ち寄ったペットショップ店員の視点、そして過去にリリカを取材したことがあるライターの視点が交錯しながら、次第に すべての発端となったある事件が明らかになる、サイコホラーです。 彼女の作品は、今までにエッセイを2冊読んだことがあります。1冊目は、恋愛論を綴った「好きで、たまらない」、2冊目は、色々な不思議体験(例:霊能者に見て貰う、など)のレポートなどで構成された「不思議な体験、したかった。」という作品。どちらも高校時代に読んだので記憶がやや曖昧ですが、それぞれ とてもおもしろかったような印象があります。 そして、今回の「タスケテ…」。サイコホラー…とのことなのですが、幸か不幸か 恐怖シーンはイマイチな気がします。次々に起きる“現象”... -
「宇宙船ビーグル号」(A・E・ヴァン・ヴォクト)
皆様こんばんわ。 えー、ぶっちしたと思われるでしょうか。していません。いつアップだったのか思い出せないぐらいブッ放しましたけど。またか。そうこうしているうちに今年も終わっちゃいそうです。 毎度のご挨拶です。この「読書感想しりとりリレー2006」では海外もの主義という事で海外作品のみを紹介させていただいております。今回は「う」で来てそろそろSFをという事で『宇宙船ビーグル号の冒険』はアウト、なら『宇宙船ビーグル号』………ところがお題を送った後に、本が買えないのなんのって。『ウは宇宙のウ』とか買ってこれでもいいかとか思っていたんですが、字だけあってて本は違う、っていうのがいいのかどうか解りませんでした(駄目だろ)。 本が見つからなかったので買いなおしたのですが78年に出ているハヤカワ文庫版、2002年でたったの十刷なのですね………読まれていないもんです。 ワ... -
「鈍い球音」(天童真)
二階の自室だと空調が必要なくらい熱い季節になりました。単純に言えば七月に入った訳で、既に半分リレーを終えたことになります。過ぎ去る月日は早いものだなあ、と思いつつ今回の作品の検討経緯。一番目に目についたのは倉知淳の「日曜の夜は出たくない」、猫丸先輩シリーズ第一作なのですが、氏の作なら「星降り山荘……あ、絶対だめじゃん」ということで保留に。「人間失格」にするかな、と思いつつ自宅の本棚に見あたらないし買ってまで読み返したくないな、と思ったところに目に入ったのが「鈍い球音」。とりあえず同氏の代表作「大誘拐」には及ばないけれど十二分に面白いし、解説が倉知淳という偶然のバッティングも面白かったので採用決定。 いろいろ監督がらみで因縁のある「東京」と「毎日」の日本シリーズ直前に監督がトレードマークの髭をのこして行方不明になるところから事件は始まり、その調査を行うのはコーチの友人の新聞記者が引き... -
「ルー=ガルー 忌避すべき狼」 (京極 夏彦)
ルー=ガルー ― 忌避すべき狼 本条さんから「る」のバトンが回ってきたときになんだかいやな予感がしたのだが、果たして、今回の本の選択にはとても苦労した。「る」で始まる本は、出版数はそれなりにあるのだろうけど、どうも個人的に弱点らしく、本屋に行ってもなかなか目にはいらないようなのだ。そんなわけで「しかたなく」選んだのが本作。いや、読む前から面白いのはわかっていたのですが、ちょっと分厚くて、重いし、ほら、8月って暑いし…(締め切りは7月で今は9月です)。 さて、本作は京極夏彦の2001年の作品である。現在から30~50年ほど先の世界を舞台にした近未来SFだ。そこは、住人に対する管理が行き渡り、逐一その居場所や行動が記録される。生活のあらゆる箇所が制御された人工物で埋め尽くされ、家族と言えども人間同士がモニタを介さず対面することはほとんどなく、道徳や倫理も合理的でないものは徹底的に... -
「超・殺人事件 -推理作家の苦悩-」 (東野圭吾)
超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫) あちゃぞうさんから「ち」で回ってきた時に、最初に読もうとしたのは『チーム・バチスタの栄光』だった。第4回このミステリーがすごい大賞受賞作だ。ただ、この作品の刊行は1/21。お題が回ってきた時点では出ていない。1/23の感想アップには十分時間があるものの、次走者の橋立さんへのお題メール締め切りはとうに過ぎている。困った。ああ困った。 とりあえずルールを見る。「未刊行のお題はふっちゃ駄目! もーぷんぷん!」とは書いていないのでルール的には問題ないようだ。(よんしば書いてあったとしても、僕の知る限りでだが、本条さんはさとう珠緒ではないはずなので「ぷんぷん!」とは書かないだろう)。 では、こうしたらどうだろうか? 橋立さんには『チーム・バチスタの栄光』とともに同じ「ち」で始まり「う」で終わる別作品を保険として伝えておく... -
「イブのおくれ毛」 (田辺 聖子)
イブのおくれ毛 (ベスト・オブ・女の長風呂) htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 後れ毛というと、女の人が髪をまとめて、そこから少しこぼれてほつれた幾筋かの毛のことを指し、ぼくはあまりピンとこないのだが、人によっては色気を感じるポイントなのだとか。さて、その「おくれ毛」をタイトルに含む、「おせいさん」こと田辺聖子のこの本は、色、をテーマにしたエッセイ集である。「ベスト・オブ・女の長風呂」というシリーズ名がまたいい。最近、歳のせいか、カタカナの「オブ」しかも後に中黒(・)が付いているのをみると、「ジョイトイ」と続けるしかないという強迫観念につきまとわれているのだが、それもまた色に遠からじ。 さておき、今回の課題図書を選ぶ段、図書館をうろついていると、まずこのシリーズ名が目に入り、なんだと思って見ればその... -
「ダンス・ダンス・ダンス」(村上春樹)
「大誘拐」(天童真)が紹介できるなあ、とも考えたのですが、「傑作なのでとりあえず読め」しか浮かばなかったので却下していろいろ考えた。例えばささきさんに対抗して「ダブ(エ)ストン街道」(浅暮三文、再読する気にならず)とか「大熱血。」(火浦巧、好きだけど未来放浪ガルディーンってつけたらアウトだし古いしなー)とかいろいろ考えた結果、シリーズものの中間、とも言えるこの作品をあえて選択しました。 タイトルとしては独立しているけれど、「羊男の冒険」とははっきり連続していて、「1970年のピンボール」とも重なると言って良いのだけれど、今読み返したところ大変面白かったのと、これは「ダンス・ダンス・ダンス」から読んでも問題ないと判断したので採用に踏み切った次第であり、了承願いたい。 いや、やはり私にとっての文学ってのは村上春樹なんだなあ、というのが再読して思ったことであり、そして主人公である... -
「蹴りたい背中」 (綿矢 りさ)
蹴りたい背中 ごぞんじ、綿矢りさの芥川賞受賞作。 主人公は高校一年生の「ハツ」という女子。彼女は、入学して間もないというのに、はやくもクラスでは浮いた存在になっている。浮く理由は簡単で、自分からすすんで周りを遠ざけているからだ。同級生や先輩、先生のふるまい、特に意味のないおしゃべりをしたり、他愛もないことで笑いあったりなどの、人付き合いを円滑にしようというコミュニケーション上の努力のことをバカにしているのだ。そして、私は違う、おかしくもないことで笑ったりしないし、くだらない話はしないし、どうでもいいやつとつるむのなんてまっぴらだ。そう思いながら、いつでもつまらなそうな顔をして、たまに誰かがいったことで笑いそうになっても、無理やり笑いを我慢する。相手の機嫌をとろうとしたり、気をひこうとしたり、先生だっていい年して生徒に媚びるようなまねをして、どうしてこいつらはこんなに分かりやす... -
「イブの後れ毛」 (田辺 聖子)
イブのおくれ毛 (ベスト・オブ・女の長風呂) htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 後れ毛というと、女の人が髪をまとめて、そこから少しこぼれてほつれた幾筋かの毛のことを指し、ぼくはあまりピンとこないのだが、人によっては色気を感じるポイントなのだとか。さて、その「おくれ毛」をタイトルに含む、「おせいさん」こと田辺聖子のこの本は、色、をテーマにしたエッセイ集である。「ベスト・オブ・女の長風呂」というシリーズ名がまたいい。最近、歳のせいか、カタカナの「オブ」しかも後に中黒(・)が付いているのをみると、「ジョイトイ」と続けるしかないという強迫観念につきまとわれているのだが、それもまた色に遠からじ。 さておき、今回の課題図書を選ぶ段、図書館をうろついていると、まずこのシリーズ名が目に入り、なんだと思って見ればそのタ... -
2006年6月
6月29日(木) 【アンダー】 ち、ちくしょうこんな文字回しやがって!wというのが来ましたが、何とか回してあちゃぞうさんに昨日、MAILしました。ああ感想アップは何とか間に合わせたい。そしてmixiの読書会の方もちゃんとやりたい。そしてそしてアニメも週にXX本ちゃんと観るぞー。 6月26日(月) 【なりた】 読んだ本のなかに当てはまるのがあるだけでもすごいですね。 感想アップしました。 6月23日(金) 【本条】 私が読んだ本の中で当てはまるのは「ルドルフともだちひとりだち」だけかしら…。 amazonで「る」から始まる単語をてきとーに検索していたら、「ルール違反も恋のうち」というのが引っかかりました。「これか!?」と思って詳細画面をみたら、ボーイズラブ小説でした。…これか!? 6月22日(木) 【橋立】 「る」で始まって「ち」で終わるのが、み... -
この企画について
企画の概要/期間/ルール/代走について/バナー 企画の概要 本のタイトルでしりとりをしながら、参加メンバー(固定制)が3日ごとに本の感想をアップしていく企画です。 期間 2006年1月1日(日)~12月31日(日) (予定) メンバーの都合等により、早めに終了したり、途中でメンバーが入れ替わったりする可能性もあります。 ルール しりとりのルールは以下の通りとします。 末尾が濁音・半濁音 できればそのままで! 例:「ふしぎ遊戯(ぎ)」→「(ぎ)偽造の手口」 ○ 例:「封神演義(ぎ)」→「(き)きみとぼくの壊れた世界」 △ 末尾が拗音 そのままで! 例:「幽☆遊☆白書(しょ)」 →「(しょ)ショムニ」 ○ 例:「ハローウィン・パーティ(てぃ)」→「(て)テノヒラタンカ」 × 例:「スパイラル・オーヴァ(う゛ぁ)」→「(う゛... -
「死のロングウォーク」 (スティーヴン・キング)
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー) 皆様こんばんわ。 何と言っていいものか………数日前からこれの内容を考えていたんですけど、まさかこういう日に書くことになるとは思っていませんでした。いや、これは個人的な感傷でありまして、読んで下さっている皆様には関係のない事ではあります。 さて、改めていつもの調子に戻って書かせていただきますと、「読書感想しりとりリレー2006」のお時間がやってまいりました。今回、和泉さんから「し」でお題を頂きました。 しりとりなので何が来るか解らないという楽しみがありますが、今回はほっとしたような………「シ」もそうですけど、「ク」とか割と好みです。 そこで今回は「いやいやそんな直球な」「でも次に同じお題が来るかどうか解らないし」と脳内会議の末に決定したS・キングの『死のロングウォーク』に決まりました。 もは... -
「タイホされたし度胸なし」(藤田 宜永)
金融業者と そのペットのインコが、何者かによって殺害された。奇しくも第一発見者となってしまった サラリーマン・鳥越九郎は、自らの置かれた状況と 生来の臆病さから、「自分が疑われるのではないか」という不安を肥大させ、やがて「犯人は自分である」と思い込むようになる。 一方、絶倫の私立探偵・中堂鈴之助と、性欲旺盛な助手・色田姫子は、別の観点から その事件の真相に迫ろうとするのだが…。 という物語なのですが、だからといって『自らを犯人だと思い込んだ男と、社会の闇に立ち向かう探偵達が織りなす、サイコホラー的サスペンス』では、全くありません。 小心者で思いこみが激しい鳥越に振り回される、スナックの客たち――フェロモン振りまき探偵&助手、曰くありげなヤクザの親分、薄幸そうな人妻、自らの性に悩む青年、老いらくの動物学者、…etc.を描いた、ドタバタコメディです。 中盤、鳥越が「人質」た... -
「リンドキストの箱舟」(アン・ハラム)
リンドキストの箱舟 皆様こんばんわ。「読書感想しりとりリレー2006」のお時間がやってまいりました。一週間超遅れてしまった事はもうお詫びのしようもありません。何とかお題だけは規定日に回したし本も読んだのですが感想がなかなか。 先日参加したmixiの読書会が楽しくてその反面、自分の未熟さにショックを受けまして………あ、また言い訳ですね。 この「読書感想しりとりリレー2006」では断固、海外もの主義!という事で海外作品以外は紹介しないことにしております。それで今回が「り」でして、また迷った挙句、決めさせていただきました。 ハードカバーの、しかもファンタジーを読むなんて久しぶりだなぁと思ってしまいましたが、子供の頃からたどって考えると、もともとはファンタジー作品好きだったのです。読むものがわからなくなってきて、今ではファンタジーのほか、ホラー、SF、ミステリなど乱読状... -
「世界の中心で愛を叫んだけもの」 (ハーラン・エリスン)
世界の中心で愛を叫んだけもの (ハヤカワ文庫 SF エ 4-1) 皆様こんばんわ。 「読書感想しりとりリレー2006」も二順目に入りました。駅伝なら第一区、といった所で各走者様子を見て………と言いたい所ですが、皆さんの取り上げる本、感想に対して唸らずにはおれません。 さて前回は『キング・コング』で新レーススタートという事でいささか力が入りすぎ冗長になってしまったな、と思ったので今回は短くします。 「読書感想しりとりリレー2006」の中では唯一、海外小説を担当させていただいております。海外小説といってもどうしても英語圏が多くなってしまいますが、日本の作品にはない味わいを紹介して、たまにはそういうものも読んでみようかと思っていただければ幸いです。 乙一『暗いところで待ち合わせ』というタイトルで来たので、お題は「せ」。「それは解るけど、それでいいのか?」と取り上げるま... -
「ルナハイツ」(星里もちる)
「ルール」(古処誠二)でいっかな、と思っていたら発掘できず、他にお勧めできる作品も見あたらず、ということで私的に封印していた漫画を選ぶことにしました。単純に読んでいなかった星里もちる作品ということで丁度良かった、というのもあるのは否定しない。一番の氏のお勧めは汗がニトログリセリンのニトロ少女「危険がウォーキング」であるが、現在は傑作の短編が収録されていないアスペクト刊(オリジナルは少年キャプテンコミックス)のほうが入手しやすい。 一体何回やれば気が済むのであろう、という「りびんぐゲーム」より始まった「無理矢理同居もの」であり、今回は結婚前に婚約者に逃げられた主人公の自宅が、女子寮化しつつ、主人公も同居するという設定である。ルール無用の無茶な設定を強引に押し切り、思いテーマを軽い演出で楽に読ませるのが氏の持ち味ではあるのだが、まあ成功しているのかな、という感じ。実際、前作の「本気のし... -
「99%の誘拐」 (岡嶋 二人)
岡嶋二人氏の作品を読むのは、「どんなに上手に隠れても」に続いて2冊目です。今回の「99%の誘拐」といい、岡嶋氏の作品には、つい「…ん?」と手に取りたくなってしまうタイトルが多いような気がします。「三度目ならばABC」とか、「開けっぱなしの密室」とか。 さて、このあとに あらすじや感想が続く予定なのですが、今夜はちょっと頭がズキズキするので(風邪がぶり返したか、それとも アトラスの新作「デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団」のやりすぎか…)、続きは明日に。すまんです。 (以下後日追記) この作品「99%の誘拐」は、「ある男の手記に残された、8年前の誘拐事件の記憶。そして12年後、その事件を模倣したかのような誘拐事件が起きて…?」という感じの物語です。 「誰が犯人なのか?」「犯人の目的は何か?」などを推理しながら読み進めていく、というのが一般的なミステリです... -
記事の追加・編集について
編集方法について 「掲示板」以外は、リレーメンバーのみが書き込み・編集できる設定となっています。 まず、画面右上の「ログイン」をクリックします。 ユーザ名とパスワードを入力して下さい。 編集したいページを表示させて(左メニュー等からジャンプ)、枠の右上(タイトル写真バーの右下)の「このページを編集する」をクリックします。 ボックス内に、記事を書き足したり修正したりします。 右下の「投稿」をクリックすれば、編集完了です。「タイムスタンプを更新しない」や「更新情報を宣伝する(Ping)」のチェックは、特にこだわりがなければそのままでオウケイです。 記事内容を確認したい場合は、「投稿」の前に「プレビュー」をクリックしてください。「プレビュー」して問題がなければ「投稿」を、何か問題があればそのまま更に編集作業を続けたあと「投稿」または「プレビュー」をクリックします。 「プレビュー」... -
「月に繭 地には果実」(福井晴敏)
月に繭地には果実―From called “∀”Gundam 福井晴敏と言えば、『亡国のイージス』で日本推理作家協会賞・日本冒険小説協会大賞・大藪春彦賞の3賞を受賞して一躍その名を世間に知らしめた。そしてその2年後、『亡国のイージス』の記憶冷めやらぬうちに、『終戦のローレライ』を発表すると、これも吉川英治文学賞新人賞・日本冒険小説協会大賞を受賞したことで彼の作家としての勢いはさらに増すことになる。 両作品の映画化や、それに伴う文庫の好セールス、自身のファンサイトの管理人を嫁にするなど、いろいろな意味で目を見張る氏の活躍は皆さんもご存知のことかと思う。 この作品は『亡国の~』と『終戦の~』の間に文庫3巻組で発表された作品を1冊にまとめてハードカバーで出版したものであり、富野信者としても有名(あと高村薫も好きらしいので、作中のアレはガチ)な筆者が(おおよ... -
「三毛猫ホームズの推理」(赤川次郎)
愛蔵版 三毛猫ホームズの推理 「三毛猫ホームズ」になるとは思わなかったが、赤川次郎は複雑な思いとともに一度取りあげようと思っていた作家です。好きな作家、と聞かれて迷わず挙げることができた小学生~中学生時代の頃から、「うーん」と思い始めて読まなくなった高校生まで、それでも杉原爽香シリーズは結構追いかけていたりした。 単純に赤川次郎=読みやすくてさっくりと楽しめるライトミステリ、という感覚で初期作品を読むと意外なほど内容の重さと濃さに驚くかもしれない。いや、バカミスみたいなトリックや、漫画みたいなキャラ設定やエピソードもあるんですが、やっぱり天童真と同じ時代性だろうか。簡単に意味無く男女は寝るし、売春だのお見合いだの(この辺は赤川次郎だ)が「三毛猫ホームズの推理」でも登場するわけだが、やはりこの作品、あるいはシリーズの最大の特徴はホームズであろう。 うん、タイトル通りホーム... -
「Uの世界」 (神林 長平)
htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 竹田さんの「with you」の次は、「う」で行くべきか「ゆー」で行くべきか…「上と外」(恩田陸)は 読みたいけど全6巻だし、同氏の「ユージニア」は まだ文庫落ちしてないから高い…いっそ「YU-NO」のノベライズにするか!(いやあれは「この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO」だからダメだ)…などと軽く悩んだ結果、いろいろ放棄して「u」から始まるタイトルの 全然知らない本をチョイスしてみました。 ちなみに「この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO」は超絶おすすめゲームなので、機会があったら是非。…18禁だけど。PC98版とセガサターン版しかないけど。 閑話休題。 この作品「Uの世界」は、6話の短編が収録された連作短編集です。 各物語の主人公は、それぞれ「優子」「祐... -
「罪と罰」 (ドストエフスキー)
「月は東に日は西に」(わかつきめぐみ)でも取りあげて楽をしようかと最初は考えた。単純に「はにはに」なるエロゲはどこまでこの名作を意識していたのだろうか、とか小ネタもあるし、何より氏の漫画が好きだからだ。 だがしかし、せっかく「つ」でまわってきた訳だし、こんな機会でもないと再読する機会がないだろう、というわけで「罪と罰」と相成った。棚には1987年、第67刷という恐ろしく昔の岩波文庫版(翻訳者は中村白葉だ!)があったのでそれを素直に再読したのだが、価格は上中下で250,300,300円だわ、ドストエーフスキー表記だわ、「パス」という単語にかっこがきで注釈(しかもトランプではなくカルタを例に出していた)がついていたりと、まあ何だ、高々20年前の翻訳ものってこんなんだったんだなあ、と内容とは関係の無いところでも色々感慨があった。単純に当時中学生だった私が「何だろうなこれ」と思いつつ読んだ... -
「扉を開けて」(新井素子)
扉を開けて (コバルト文庫) ファンタジー小説、というのが苦手なのです。 どうも、自分と関わりのない世界の話だと感情移入が出来ないみたいで。現世とつながってない世界の歴史とかを語られても興味を抱くことは少ないし、そんな世界で国盗りしようがどうでもいいし、剣とか魔法とか自分が使えないアイテムでどうにかされてもどうにもならないし、みたいな。 で、本作なんですけど、簡単に説明しますと、架空の世界に迷い込んだ主人公が、剣や魔法を使って国盗りをするお話です。これ以上ないくらいビンゴで駄目な点を突いているのに、なぜか読んでいて全然退屈しないで、むしろ大変面白く一気に読んでしまいました。 それは、どこまでもミクロな視点で描かれているからなのだと思います。あくまで1人1人の登場人物が何を思い、どう考えて行動し、個人的な問題にどのように立ち向かって解決していくか... -
「ちょっとネコぼけ」 (岩合 光昭)
ちょっとネコぼけ 一週遅れの感想アップ、申し訳ありませんでした。 さて。 この作品「ちょっとネコぼけ」は、「地中海の猫」に続いて2冊目の購入となる 岩合氏のネコ写真&エッセイ集です。 収録されているネコ写真作品については…もう、表紙がすべてを物語っている感がありますが、ほかにも、幸せそうに寄り添う二匹のネコ、軟体動物と見間違わんばかりにグネグネうにょ~ん としているネコ、してやったりの表情で魚の切り身をくわえているネコ……。やー、たまりません。 「我が家の自慢のネコちゃん大集合!」といた趣の 愛猫写真集も良いものですが、この写真集のように 一期一会の風情が漂う「散策中に出会ったネコたちの写真集」というのは、また格別だなぁ、と。 同氏の「地中海の猫」を読んでいるときも感じたことなのですが……これらの写真集の中には、日本の風景だけではなく、見慣れない装... -
「太陽の塔」 (森見登美彦)
いちおう「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作ということだから、クォリティはある程度は担保されているだろうと買っては見たものの、SF方面の知人友人のあいだで「京大ダメ学生(オタク)小説」等と大学名を冠されて話されることが多く、何とはなしに敬遠して積んでいたもの。 「読書感想しりとりリレー2006」の課題で「た」が回ってきたのをいい機会と、普段は手を伸ばさない棚にある『太陽の塔』をに読んでみたら、いやびっくり、これが猛烈に面白かった。愉快で、チャーミングで、切なかった。 『太陽の塔』の主人公は、非モテで、いちおう頭は良く、けれど肥大しきった自我を持て余しがちな京大五回生の男子で、これは彼が「終わってしまった恋」を再確認する、というような話だ。 しかし、私が女ッ気のなかった生活を悔やんでいるなどと誤解されては困る。自己嫌悪や後悔の念ほど、私と無縁なものはないのだ。かつて私... -
「天文台日記」(石田 五郎)
天文台日記 (中公文庫BIBLIO) ぼくが子供のころ、うちの父親は自分が自然を相手に仕事をしていたからか、ぼくにも自然に対する興味を持たせたかったようで、キャンプや釣りなどアウトドアな遊びによく連れ出そうとしていた。子供が使うには過ぎるくらい上等な天体望遠鏡を買い与えたのも、その一環だったのだろう。何度か家のベランダから月のクレーターや火星を見た覚えがある。けれど、ぼくは漫画やゲームが好きで、そちらにばかり関心が向き、父に誘われずに自分から望遠鏡を覗くことは結局なかった。そのうち、望遠鏡は、片付け好きの母がリサイクルに出したかなにかで処分されてしまった。 もし今あの望遠鏡が手元にあったら、ちょくちょく覗いてみたりするだろうか、と本書を読みながら思った。天文台での日々を綴ったこの日記には、夜通しで天体観測をする天文学者たちの姿がある。真っ暗な観測室のなかで、狙う星に焦点を定め... -
「ストームブレイカー」 (アンソニー・ホロヴィッツ)
感想今日アップだと思っていたら昨日ですか!というわけでちょっと遅刻、ではなくていきなり勘違いしてあわてて書いている、といういいかげんな奴ですごめんなさい。いい加減ついでにタイトルについて言い訳しておきますと、「女王陛下の少年スパイ アレックス!」×2についてはシリーズ名ということで省略、という解釈を致しました。だってほら、背表紙には「ストームブレイカー」しか書いていないし。 しかしこの本の積ん読期間は長かった。単純に荒木飛呂彦関係ということで表紙買いしたのですが、実に3年半も詰まれていたという、個人的には「積ん読」という情けない習慣が始まったきっかけの本でもあったりしたわけで。 で、まあそろそろ内容に入ってどういうシリーズなのか説明しますと、第一巻の本作では14歳(先は知らない)が少年が主人公の007みたいな話なんですが、テイストとしては昔読んだアルセーヌ・ルパンなんかに非... -
「むかし僕が死んだ家」 (東野 圭吾)
「かまいたちの夜」というゲームがある(→htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。)。我孫子武丸氏が脚本を手がけ、チュンソフトが世に送り出したこの作品は、吹雪に閉ざされた山荘で殺人事件を目の当たりにした主人公たちが、真相を求めて試行錯誤するミステリノベルゲームなのだが、とりあえず今回の「むかし僕が死んだ家」にはあまり関係ない。ただ、来月発売予定の続編htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。が猛烈に楽しみだ!…が、来月はhtmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。も発売予定だし お財布が大変だなぁ、という主張がしたかっただけだ。 …というのは半分冗談で、今回チョイスした「むかし僕が死んだ家... -
「超々難問数理パズル」 (芦ヶ原 伸之)
超々難問数理パズル―解けるものなら解いてごらん (ブルーバックス) (この記事は書きかけです。) サブタイトルが「解けるものなら解いてごらん」だから厳密には「ん」で終わっちゃう、ことには気づかないふりをしようと思った。 「数理パズル」というわりには、「あるなしクイズ」などの ことば遊び的パズルもそれなりに多い。 まだ2割くらいしかチャレンジしてなくて、今のところ正解率は7割くらい。でもそのうち8割くらいが 前述の文系パズル。そして手つかずの残り8割は、パッと見 本格的な数理パズルばかりだ…!(読了はいつになるのだ) 表紙の写真(だまし絵の3D化)の種明かし編を見たのだけど、まだ納得がいかない。 -
「リンドキストの箱舟」(執筆中です)(アン・ハラム)
リンドキストの箱舟 皆様こんばんわ。「読書感想しりとりリレー2006」のお時間がやってまいりました。一週間超遅れてしまった事はもうお詫びのしようもありません。何とかお題だけは規定日に回したし本も読んだのですが感想がなかなか。 先日参加したmixiの読書会が楽しくてその反面、自分の未熟さにショックを受けまして………あ、また言い訳ですね。 この「読書感想しりとりリレー2006」では断固、海外もの主義!という事で海外作品以外は紹介しないことにしております。それで今回が「り」でして、また迷った挙句、決めさせていただきました。 ハードカバーの、しかもファンタジーを読むなんて久しぶりだなぁと思ってしまいましたが、子供の頃からたどって考えると、もともとはファンタジー作品好きだったのです。読むものがわからなくなってきて、今ではファンタジーのほか、ホラー、SF、ミステリなど乱読状... -
「リアルワールド」(桐野 夏生)
●「リアルワールド」桐野夏生 本作を読んで、なんとなく思い出したのが、綿矢りさの「蹴りたい背中」である。 「蹴りたい背中」の主人公ハツは、クラスメイトたちの上辺だけの友達ごっこにウンザリして、端からクラスに馴染もうとしないオタク少年の生き方に救いを見出そうとしていたが、本作の主人王であるトシやキラリンたちが救いを見出そうとした少年は、オタクどころの話じゃない。下着ドロボウの覗き犯の親殺しという、正真正銘の犯罪者である。彼の逃亡を手助けすることで、社会に対する優越感を抱いていたキラリンたちは、「蹴りたい背中」のハツに比べるとまた一段と男の趣味が悪い(w 物語の前半では、友達と遊んだり勉強したりという「リアルワールド」と、フィクションの如き少年の逃走劇という対比の構造があったはずなのに、話が進むにつれ、普段の生活のほうが幾層もの欺瞞で固められたフィクションだったことが露見して... -
「闇から生まれた女」(F・ポール・ウィルソン)
闇から生まれた女〈上〉 (扶桑社ミステリー) 皆様こんばんわ。 毎度毎度、遅れのお詫びを書くのもどうかと思っているのですが、今回はあまりにぶっ放し過ぎました。申し訳ないです。 毎度のご挨拶です。この「読書感想しりとりリレー2006」では海外もの主義という事で海外作品のみを紹介させていただいております。今回は「や」で来て一瞬、迷ったのですが「闇」で始まる作品って結構、多いものですね。 さて今回は私の好きな作家の一人、F・ポール・ウィルソンであります。 となると、新刊も出たばかりだし「始末屋ジャック」シリーズ………といきたい所なのですが、諸事情ありまして今作を選ばせて頂きました。 F・ポール・ウィルソンについて簡単に紹介させていただきます。1946年ニュージャージー生まれ。医者(家庭医)を開業しつつ、作家として活躍中。日本でもファンが多く、邦訳がいろ... -
「ドクター・ブラッドマネー」 (フィリップ・K・ディック)
ドクター・ブラッドマネー―博士の血の贖い― (創元SF文庫) 遅れましたが、今回は「ど」ということでフィリップ・K・ディックの「ドクター・ブラッドマネー」を読んでみました。 SFはたぶん好きなんだけれど、実は(?)あまり読んでいないので造詣がまったく深くなかったりします。ディックは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」だけ読んだことがある。 「ドクター・ブラッドマネー」はいわゆる核戦争物で、舞台は1981年。これが書かれたのが1963年ということなので、書かれたときには近未来世界、でも今読むと起こらなかった過去の世界で、いきなり読み始めるとけっこう違和感があります。テクノロジーの発達具合が微妙。1963年当時の(ディックの)未来のイメージはこうだったのだなーと楽しめる部分でもありますが。 核戦争自体の描写は割とあっさり終わり、主眼は核戦争後の世界の描写に置かれ... -
「エイジ」 (重松 清)
エイジ (朝日文庫) 神戸の酒鬼薔薇事件が起きたのが1997年。本書の元になった新聞連載が開始されたのが1998年。あの頃、巷では「14歳」がキーワードだった。本書は、14歳の中学二年の男子生徒を主人公にした物語である。 本の背表紙にある概要を抜粋してみる。 ぼくの名前はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレートし、ついに捕まった犯人は、同級生だった――。その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか?……(後略) うん、そう。他にもいろいろイベントはあるのだけれど、この概要に付け加えることがあまりない。同級生が通り魔で、世間でいう「14歳」として取りざたされる。そうした状況に置かれた中学生と周囲の大人の様子を主人公の視点で書いた作品だ。 なにせ... -
「つめたいよるに」(江國香織)
つめたいよるに (新潮文庫) ささきさんからのお題が「つ」ということで、次はあれがくるだろうと予想していた方、期待を裏切ってすみません。ほんとのことを言うと、結構迷ったのですが、あえて今回は別の作者の本を選んで見ました。 この新潮文庫版の「つめたいよるに」には、短編集「つめたいよるに」と「温かなお皿」の二つがあわせて収録されています。 文庫で200ページほど、その中に21篇もの短編が収められているわけですから、1話あたりは10ページ足らずということになります。どの話も淡々としていて、特に起伏や印象的ば場面があるわけではないけれど、読み終わったあとに、ああいい話を読んだなあ、という気持ちになれます。 特に「桃子」「夜の子どもたち」「スイート・ラバーズ」「藤島さんが来る日」「冬の日、防衛庁にて」「とくべつな早朝」は秀逸です(好みの傾向がわかりやすいな、これじゃ) ... -
「冷たい校舎の時は止まる」(辻村深月)
冷たい校舎の時は止まる (中) (講談社ノベルズ) 第31回メフィスト賞受賞作品なのだそうです。 基本的に文庫になるまで本を買わない主義でもあり、あんまり○○賞受賞とかそういうことで本を選ぶこともないので、この本を購入してみたのはほんとうにただの偶然でした。 上中下巻の3冊組みでひとつの絵になる装丁、ちょっと気になるあらすじ、で、なにげなく見た著者紹介。千葉大学教育学部卒…あらあら後輩だ、しかも年齢的に在籍期間もかぶってるし…ちょっと読んでみようかなあ、くらいの軽い気持ちでした。 ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春とい... -
「ラグナロク洞 -“あかずの扉”研究会影郎沼へ- 」 (霧舎巧)
ラグナロク洞―「あかずの扉」研究会 影郎沼へ (講談社ノベルス) 霧舎巧を僕は"タクミン"と呼ぶ。 嘘。呼ばない。もちろん藤原伊織のことも"イオリン"とは呼ばないが、佐藤友哉は"ユヤタン"と呼ぶかもしれない。"なっち"といえば安部ではなく京極だし、"辻ちゃん"は辻真先に決まっている。これはミステリ読みにとっては常識と言えることである。知らねば恥ずべきことだが、人に言ったらもっと恥ずかしいことになると思うので、口外するのはお勧めしない。 さて、冒頭の挨拶(挨拶だったんだ)は、これくらいにして作品の感想に入りたいと思う。 本作は筆者のデビュー作から続く「あかずの扉研究会」シリーズの三作目にあたる作品である。全編に漂うラブコメ臭と霧舎学園シリーズの扉... -
「暗闇坂の人食いの木」 (島田荘司)
暗闇坂の人喰いの木 (講談社ノベルス) 島田荘司である。今日の本格ミステリを語る上で決して外すことの許されない作家である。……であるのだが、ささきはミステリ読みの癖にあんまり島田作品を読んでいない。ひとこれをモグリという。ひきこもりだけど、モグリは嫌なので「ひ」のお題でこの作品を選んだ。 本作は『占星術殺人事件』、『斜め屋敷の犯罪』に続く御手洗シリーズの三作目、つまり作家石岡和己が巷間に上梓した三番目の事件ということになる。石岡先生曰く、この事件に比べたら前者ふたつはまだ生易しい事件になるらしい。 その言葉の通り、この暗闇坂の大楠を取り巻く事件は非常におぞましく、人間の狂気を垣間見せられた。中でも一番恐ろしかったのは、あの厚さであった。あつーい! あついよ小沢さーん! ただ、その重厚(冗長?)な物語の割にメインのトリックは分かりやすいもので... -
2006年5月
5月29日(月) 【アンダー】 何とか締め切りに間に合うようにアップしてみました。個人的にいろいろありましたけど読んで頂ければ幸いです。 5月28日(日) 【本条】 私は謝罪する!感想のアップの遅れが1~3日程度じゃなかったことを! (ごめんなさい…先ほど追記しました) 5月19日(金) 【本条】 私は予言する!感想のアップが1~3日程度遅れるであろうことを! (明日か明後日にタイトルだけあげます…) 5月18日(木) 【なりた】 和泉さん、次のお題メールを出したのですが、エラーで戻ってきてしまいました。いつものアドレスに何度かお送りしてみたのですが…。ご一報いただけますでしょうか?(追記:解決しました) 5月17日(水) 【竹田】 感想文アップがなぜか18日だと思い違っていて何気なく走行カレンダーを覗いたら本日が感想アップ日だったの... -
「砂の女」(安部公房)
砂の女 (新潮文庫) 高校生の頃の私の読書生活には、過渡期が訪れていた。それまでSFが好きでハヤカワ文庫ばかり買っていたのに、思春期にありがちな中二病に罹ったせいで、「ブンガク」の世界へ興味を抱きだした。エンターテイメント小説をくだらないと切り捨て、その割りに無理して買ってみた文学全集は数ページで眠くなって挫折したり、我ながら馬鹿な生徒だった。 そんな時に、何の違和感もなくスムーズに、自分をSFから文学の世界へ連れていってくれたのが、本著である。 安部公房さんは実際にバリバリのSFもたくさん書いているし、本書の設定もややSF風味である。しかし、ただそれだけの理由でSFと文学を繋いでくれたと言っているわけではない。 安部公房の作品は両者とも、非日常的な出来事が起こり、それに対処していくという点では変わらない。違うのは、その非日常が何によって作り出されたか... -
「スリーピング・マーダー」 (アガサ・クリスティ)
アマゾン・アソシエイトがうまく働いてくれないので、今回は写真なしで行きたいと思います。 この作品は、さすがに巨匠クリスティのものだけあって、文庫だけでも版がいくつもあるようですが、これから読むなら「クリスティ文庫」版が絶対オススメ。なぜなら解説が絶品だからです。1冊で二度おいしいというわけです。 スリーピング・マーダーは記憶の中の殺人を題材とした作品で、ミス・マープルの最後の事件としても有名です。 ある日偶然買った家なはずなのに、なぜか既視感にとらわれる若妻の記憶と過去をめぐって、若い夫婦が調査を進めるというのが話の主筋になり、ミステリーとしてだけではなく(むしろミステリーとしては凡庸だともいえる)、心理的なホラーの要素もふんだんに取り入れられています。ミス・マープルものとは言うものの、マープル自身がそれほど前面に出てきている感じではないのですが、それでも抑えるとこ... -
「生きながら火に焼かれて」 (スアド)
生きながら火に焼かれて 中東の農村部では、女性の婚前交渉は死刑に値する行為である。そのような女性は「一家の恥」とされて、家族によって殺しても罪にならない。むしろ家族は一家の名誉を守るために、間違いを起こした我が子を殺さなければいけない。このような習慣を「名誉の殺人」という。アフリカなどに伝わる女子割礼と並び、2大女性人権問題とも言える。 本著は、そのような経緯で家族によって火あぶりにされた少女スアドが、スイスの人権団体によって救われ、フランスで第2の人生を送り出すまでのノンフィクションである。 動物以下の扱いを受ける女性の描写は衝撃的であるし、資料の少ない「名誉の殺人」文化の研究において、生の情報が得られるというのは貴重ではあるものの、口述筆記という性質上、読み物としては高水準とは言えない。特に、シスヨルダンの村で殺されかけるまでのエピソードは、物語とし... -
「うらおもて人生録」 (色川 武大)
うらおもて人生録 (新潮文庫) 著者の色川武大は、阿佐田哲也という別名のほうが有名かもしれない。そちらの名義で『麻雀放浪記』のヒットを出した、ばくちエンターテイメント業界(?)では神さまのような人だ。 中学を停学になってそのまま辞めてしまい、ちょうど日本は敗戦。これからどうやって生きようと思った著者が選んだ道は、賭博。そんな…と思うけれど、著者本人は劣等生だったから、まともに仕事をしてやっていけるとは考えてなくて、これならと思えるのが賭博だったのだとか。 そんな著者が週刊誌に連載した、人生を勝負にたとえて劣等生の子供に語る本。と聞くと、殺伐としたゴロツキが勝負の厳しさについて、九割自慢でガキを煽る、みたいなイメージを持つ人がいるかもしれない(いないか)。まず、引用で雰囲気だけでもつかんでもらいたい。先にいっとくけどすごく優しいから。 最初の章から、各段落の始めの... -
「石の来歴」 (奥泉 光)
石の来歴 (文春文庫) 小学生の頃、よく石ころを蹴りながら通学路を歩いた。できるだけ同じ石をずっと蹴り続けて学校まで行くというルールだ。大事に小刻みに蹴っていくと確実なのだが、それではなんとなくつまらないから、遊びはだんだんと大胆になっていった。思い切って遠くまで転がるように蹴るのだ。こうすると、たいてい石はすぐに畑や道端の水路に落ちてしまう。石はよくどこかに行ってしまったけれど、そんなことをいちいち気にすることはなく、すぐに別の石で続きを始めた。ただ、ごくたまに寝る前などに、枯れた用水溝の中に落として見えなくなった石のことを思い出して、今もあの石は同じ場所にあるんだろうか、これからもずっとあの溝の中にあり続けるんだろうかといったことが頭に浮かぶことはあった。もちろん翌朝には忘れて、違う石を蹴るとか、服にくっつく植物の種を投げるとか、水路に草を浮かべるとか、大変忙しく通学していた。 ... - @wiki全体から「「返事はいらない」(宮部みゆき)」で調べる