レンジャー連邦王宮図書室 @wiki内検索 / 「スペシャルSS:『いってらっしゃいませ』」で検索した結果

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  • スペシャルSS:『いってらっしゃいませ』
    その男は威風堂々たる男であった。 風貌を言うのではない。 風を切るどころか、嵐の中の突風をぶち割ってでも進みそうなその屈強は、確かに優れたものであったろう。 服飾を言うのではない。 生まれた時から身に着けていたかの如く似合っている、機能的かつ低彩色の軍服は、確かに威圧的ではあったろう。 だがそれは、それらはその男を外から象っている表象に過ぎない。 その屈強を支えているものは何か。 その服飾を似合わせているものは何か。 意志である。 守るべきものがあると、そう思ったから屈強と化した。 守るべきものがあると、そう思ったから軍に所属した。 それは今でも何ら変わりない。 今に至るまで一貫して変わりない。 その、揺らがぬ意志こそが、男を威風堂々たる存在にしていた。 惚れ惚れとするような筋金の入った胴、腕、足腰は、例えどこを丸...
  • 城華一郎(星野十郎)
    ...館SS:『帰り道』 スペシャルSS:『いってらっしゃいませ』 秘宝館SS:『華』 秘宝館SS:『黄昏の歯車』 秘宝館SS:『星の瞳、太陽の羽根』 秘宝館SS:『精霊達の祝福』 秘宝館SS:『南洋の午後』 秘宝館SS:『大好きですよ、藩王さん!』 秘宝館SS:『ある1枚のメッセージカード』 秘宝館SS:『二人』 秘宝館SS:『青の宝石』(前編)/(後編) 秘宝館SS:『おかえりなさい』 秘宝館SS:『たった一つの君の背中』 秘宝館SS:『Love ya』 ●その他 I Dress 文族の思った文族のこと お祭りの傍らで:にゃんこふぇすてぃぼー 私書:手紙としての物語 短編:たまには夢の話を にゃんこ・りたーんず ジョニ子受難編 短編:おかえりなさいの裏側で。 龍の庵に響く声 『 Start to I_Dress 』 『 Time 』 学園開校に寄せて 小笠原への道! 昼下がりに...
  • 秘宝館SS:『大好きですよ、藩王さん!』
    『ICG=』  成すべき事を成すために、  高らかなる挑戦が電網宇宙を駆け巡る。 『蝶子さんの可愛さを定義する』  可愛さ。  つまり、小さく無邪気で愛らしい、子供っぽい様子のある事を言う。  ここは情報で出来た世界だ。  人に対する大小などの感じ分け方は、目ではなく、心に受ける印象が決定づける。  蝶子さんとは、どういう印象の人だろう。  証拠1.テンションが高く、よく動く。  小さいものほど動きやすいだろう。OK第一関門クリア。 『(蝶子は挙動不審で定規かなにかではじかれている消しゴムのような動きで近づいてる)』 『(蝶子、ヘラの握り方変)』  証拠2.脈絡なく挙動がたまに変でしかも素直だ。  無邪気としか言いようがないし、子供っぽい。OK第二関門クリア。 『にゃーしゅさーん。みどさーん』 『(ぎゅ...
  • 秘宝館SS:『青の宝石』(前編)
     指に掛ければ冷たく重い陶磁器の、広い、耳のような形をした取っ手が、戦士のものとは思えないほどに傷も歪みもない、大きくもしなやかな手に、今、柔らかく握られている。  生活必需品以外のものがない簡素な部屋内に、ひっそりとだが己の色を放つ水色のティーポット。  その口から、柑橘系のほのかに甘い香りと、爽やかな明るさとが上品にバランスを取った、落ち着きある香気が白い湯気と共に立ち昇っている。  ついと上向きに尖らされた口が、これも同じ水色をした一客のティーカップへと鋭角に立てられ、静かに空中でその傾きを深めてゆくことで、曲面に添って滑らすようにして赤褐色の液体を注ぎ込んでいく。 「…」  男は喉の奥に熱い香りと感触を流し込み、吐息もせずに立ち上がる。  大柄な彼に合わせて作られた、頑丈な木組みの椅子は軋みもしない。  色の濃い白人系の素肌に直接ベストを着込ん...
  • 秘宝館SS:『帰り道』
    森の中をメイドが歩いていた。 いかにも日当たりのよい、何も無さそうな、気のいい森の中である。 足取りは軽い。すぐ目と鼻の先にまで、その光景が見えてきていたからだ。 上天気に花の香りが凪いでいるその家へと、彼女は一抱えほどもある袋を持って、訪れた。 ちょうど玄関で出くわしたのが、分厚い筋肉のドアーみたいな体をした、巨躯の男である。 2人で揃って声をあげる。チャイムのような不粋はない。ノッカーを使う必要もない。 ここへは友を訪ねて遊びに来たのだから。 「こんにちは。沢邑ですー。お邪魔しにきましたー」 「中々ご立派な家ですな」 中からはーいという返事。 なかなかに元気な足音で、玄関は開け放たれた。小さな少女を肩車している、家主だ。 「いらっしゃいませ。まあ、まずはお上がりください」 気さくな感じで足元に揃えて出されるスリッパ。 沢邑勝海と谷口...
  • 秘宝館SS:『精霊達の祝福』
     白い風が、吹いていた。  空と海の間から生まれてくる、雲間の太陽に磨かれた強くも豊穣な風だ。  その風が、港を抜けて、埠頭に佇んでいるあゆみの髪を撫でていく。  横顔を、晋太郎が見つめていた。  どこか遠い人のような、やわらかく、そして揺るぎないものを内に携えた、細い顔。  今はただ、あゆみを見ていて、微笑みが優しい。  見つめと言葉を交わしあう、2人の久珂。  2人は頬にキスをして、抱きしめあい、それからまたキスをして、船へと歩き始めた。  ぎゅうと大切そうにあゆみの手の中で握りしめられている、小さな箱。  風が、2人の道行きを捲いていく。  還る波涛は光に温められて暖かい。 /*/ 『2人だね』 『また、2人だ』  さえずりの前で、照れたようになかなか触れあわないあゆみと晋太郎が、視線だけは...
  • 秘宝館SS:『ある1枚のメッセージカード』
     嬉しいなあ、嬉しいなあ。  とりどりのブーケと、その傍らに添えてある個性豊かな沢山のメッセージカードが、控え室代わりに使っている部屋のテーブルに、並んで幸せの色を形作っている。  挙式に当たっては、自ら親子ともなぞらえてくれた藩王からの言祝ぎも既に戴いた。  テーブルの上には、今でも楽しみに眺めるだけの目的で開かれている、ドレスデザインの数々が載った手製のカタログブック。式が無事に終わったなら、この中からお色直しで着るものを選ぶことも出来るかも知れない。  奥羽りんくはずっとにこにこしていた。  ちょっと贅沢かな、と、薄いリップの乗った唇が穏やかにたわむ。  バージンロードを歩き出せば、もう、微笑むだけではいられない。  だからこそ、今だけは。  思って、首を横に振る。 (ううん、これからずーっと!)  幸せ...
  • 秘宝館SS:『りんくのいない日々』
    恭兵は、もう随分長いことのんびりしていた。 「あんまり長いことここにいると、太っちまいそうだな」 なあ、と手持ち無沙汰に、テーブルの上で丸まってる雉トラのヒゲをいじる。 遊んでもらったと思ったのか、きょうへい2はてしてし前足を繰り出して恭兵の指をキャッチ、かじりつく。恭兵、もう片方の手で尻尾をつつく。ぴょこんと機敏にきょうへい2はそちらへ向き直った。 そうして楽しそうに猫とじゃれあいながら、ふと、いつでも心に浮かべている相手の顔が、むすぅっと膨れていることに気がついて、今更ながら手を止める。 「りんくがいなくて寂しいよ」 お前もそうか?と、きょうへい2に聞く。 にゃあ、と雉トラは一声鳴いて、頭をこすりつけ、餌をねだるだけだった。 /*/ 秘宝館SS:『りんくのいない日々』 /*/ 宰相府の秘書官保養地は、いつ夜襲を...
  • 秘宝館SS:『華』
    白いシーツの上に、足を投げ出すようにして身をやすらえている、緑髪の女がいた。 きつい目鼻立ちをしている。頭の後ろで二房に大きく分けられた、長い髪。 霊安室を改造して急設された病室の壁は塗り潰されたばかりでまだ真白い。 自分以外は誰もいないその病室の中で、アララ・クランはまなざしていた。 厳重に外から守られたその病室の中で、身をこうしてやすらわすことしか出来ないベッドの上から、じっと、その、純白の壁を。 小ぶりだが形がよく、艶やかな唇は、堅くつぐまれている。 頭上に輝く白熱灯の無機質な電光が、室内の何もかもを光の色に染めていて、シーツの皺に寄った影さえ薄らいでいる。 死者の安息を保つため、分厚くはめこまれた壁が、何の音も通さない。窓さえも、ないのだ。 しん……と薬の匂いが静寂に漂う。 アララは身じろぎもしない。 時計の...
  • 秘宝館SS:『言葉のいらないその時を』
    細い頬がにっこりと膨らんだ。 その年頃の少女だけが浮かべることの許された、光の弾けるような丸い頬笑み。 人差し指で婦人の抱く赤ん坊をあやしながら彼女は言った。 「大変でしたね。大丈夫でしたか?」 「えぇ、こちらはなんとか」 初々しい、ある時を経た婦人だけが浮かべることの出来る、幸せに満ちた微笑み。 その笑顔に奥へと案内されながら、後藤亜細亜は、自分の選択が間違ってはいなかったことを確信した。 /*/ 前日の夜のことだ。 「何をやってるんだ、亜細亜」 PCの前で顔を覆いながらきゃーきゃー言っている彼女を見て、吹雪は言った。 ひょいと後ろからモニターを覗き、むうと唸る。 「小笠原のログには、発禁だけじゃなくR-15指定もあったがいいか知れんな」 「ええっ」 「冗談だ」 いつものパターンなら、いつ奥さんが後ろから目を光...
  • ★一方その頃…(ビッテンフェ猫さんの大もんじゃ祭り02「にゃーおん!」)
    「にゃーおん!」 ミ「さぁ~さぁ~皆様!よってらっしゃい、みてらっしゃい!最近結成された、猫士四匹組の本格派バンドのデビューライブの始まりでーす♪ 皆様♪おいしいもんじゃを食べながら聞いて下さいー♪それでは【にゃーおん!】の皆さん!お願いしまーす♪」 愛「どーも!皆さん初めましてードラムの愛佳でーす♪」 ナ「皆さーん、もんじゃ食べ過ぎて、お腹壊しちゃだめよー♪ギター兼ボーカルのナツメでーす♪よろしくー♪」 タ「キャー♪キーボード担当のタンジェリーナでぇ~す♪みんな~!盛り上がってるか~い♪」 じ「あ・・・あの・・・ベースのじにあです、よろしく。」 ナ「もぉー、じにあお姉さんたらぁ~緊張しちゃってぇ~♪」 じ「べ・・・別に緊張なんてしてないわよ、ちょ・・・ちょっと言葉に詰まっただけよ・・・。」 愛「もぉ~じにあお姉様ったら・・・か...
  • 秘宝館SS:『二人』
     気持ちのいい道だった。  ひんやりと柔らかな土は程よい葉影に隠されて、たっぷりの水と濃い空気をトンネルのように並木同士で循環させている。  目に透明で肺にすがすがしい清澄な光景は、きらきらと新緑に透けて降る陽光の賜物だ。  何より、隣にソウイチローがいる。  彼を求めて握る、自分より少し大きな手のぬくもりが、心地よい涼しさに相まって気持ちいい。  きりり、目鼻立ちの鋭角な印象のある黒崎の顔は今、丸く笑顔で鎔けている。白衣の間を器用に飛び出た尻尾が小さく揺れるのは、猫の証か、はたまた密かな興奮の表れか、長く艶やかな髪色に同じ毛色で森の風と良く似合う。  黒崎が男であった頃の間合いより、ほんのちょっとだけ狭まりそして安定した、気軽いはずの歩調は、だが、どこかいつもよりミリメートル単位で一歩一歩が短かった。  辺りには人の気配もない。  ソウ...
  • 秘宝館SS:『カイエ』
    空に鳥が見えた。 変わった飛び方をしている。緊張しながら飛んでいて、まるで辺りを警戒しているようだ。 鳥が、まっすぐ降りてきて、何という種類か分かるところまで近づいた時、笑った。 上手に飛ぶようになりましたね。カイエ。 /*/ 致命の一撃を繰り出さざるを得なかった。 胴を痛みという名の衝撃が貫通する。次いで、機能的欠損。 バロに比べて私は華奢だからなと苦笑する。 もっと強ければ。 傷のことではなく、そう思った。 傷は魔法でふさげる。しかし、失われた体重までは戻らない。 水分を山のように採り、たらふくの炭水化物で即効性のエネルギーを補給すると、体が動くようになった。 「大丈夫ですか!?」 カイエの心配する声が聞こえた。 実際的なことばかりを返事した。 /*/ 自分がうまく話題を見つけて話せないことは知っていた。 ...
  • 秘宝館SS:『黄昏の歯車』
    黄昏に焼けた空を、歯車色に夕日が廻る。 その下をくるくると、青いドレスを纏った女と青い舞踏服を纏った男が歩いていた。 心に青い、情報の衣を纏って舞踏をステップする、一組の男女。 限りなく機械的なシステムの中を、限りなく人間的な歯車で廻し、くるくると歩く。 女の名は綿鍋ミサ、男の名は矢上総一郎と言った。 鐘の音が夕焼けを渡る。 空一杯をまるで押し包むように、2階建ての校舎の何処から響いてくるのだろう、金属の厚い大音声。 解放されたとばかりにピロティから吐き出される大量の生徒。 その人込みの中に、ミサは居た。 レンズの細い、活発に見えるフレームの眼鏡と、それにも増して活発そうな大きなどんぐりまなこ。健康的に焼けた肌と金髪は、南国の色を示している。涼しげな水色を要点として配してデザインされたプリーツスカートの制服は、いまやうっすらと茜色に輝いていて、眩し...
  • 無限爆愛レンレンジャー:第一話(6)
     チリンチリン――  来客の合図に、ドアの上部をさり気なく飾ってある妖精像の手にした鈴が鳴る。 「あ、いらっしゃいま――」  接客業の常として、そこだけは条件反射になっているらしい。  バンダナの彼が、応対のためにレジ前まで小走りで迎に上がろうとする、足が止まった。  一人、二人、三人、四人、五人……その団体客は、ゆっくり、優雅に、余裕を持って入店してくる。まるでそれが唯一守るべきマナーだと、暗黙のうちに主張するように。  一人目は、コックコートに高いコック帽をした、長身の男だった。険の強い顔立ちで、料理人というより、マフィアの若頭とでも説明された方が納得してしまう、いかにも鋭い人相をしている。  二人目は、燕尾服に身を固めた、愛想の良い小男だった。そして愛想の良い、というのは、嘘だ。営業スマイルのような、陳腐な安物の笑顔ではなく、わざわざその筋の芸術家が悪意を込...
  • 秘宝館SS:『夢幻桜華』
    柔らかな空が、行けども行けども満ちている、桜の向こうに見えていた。 それが永遠であるかのように花びらは、止むことなく降り注ぎ、春の園の空気を淡くその色彩で彩る。 時折立っている露店では、カップルが楽しそうに賑々しくしている。 それを微笑ましそうに横目で通り過ぎながら、肌色の濃い、大柄で人の良さそうな若者が歩いていた。 手の中には大事そうに抱えられた風呂敷がある。 光景には、どこか美しさだけではない、胸をはっと打つような、そんな儚さがあった。 桜色に染め上げられた空気を、陽射しは無造作に縫って大地を照らしている。 その、光の水底に、その少女は眠そうな目をして佇んでいた。 桜の海に、呆れるほど大きな猫を抱えながら佇んでいる、黒髪、小柄な日本人の少女。 幻想的な光景とは裏腹に、どこまでも凛々しい顔立ちをしている。 現実をどこまでも諦めることを知らない顔。ずっと昔に...
  • 生活ゲーム:戦場の跡に
    城 華一郎@星野十郎 さんの発言 (22 58) こんばんは、生活ゲームの時間前になりましたのでお声をかけさせていただきました あと、同行者がおりますので、窓に呼ばせていただきます 芝村 さんの発言 (22 58) どうぞ 砂浜ミサゴ@レンジャー連邦 さんが会話に参加しました。 城 華一郎@星野十郎 さんの発言 (22 59) よろしくお願いいたします。記事は下記のとおりです。 http //cwtg.jp/qabbs/bbs2.cgi?action=article id=10639 あ、間違えた http //cwtg.jp/ogasawara/nisetre.cgi?no=5743 砂浜ミサゴ@レンジャー連邦 さんの発言 (23 00) こんばんは、本日もよろしくお願い致します。 芝村 さんの発言 (23 01) イベントは? ...
  • 秘宝館SS:『青の宝石』(後編)
    青の宝石(後編) /*/  ぴるりると、掛かる青空にさえずりが飛ぶ。  日当たりのよい、開けたところにあるベンチで、クリサリスと和子はコロッケをつまみながら世間話を交わしていた。  塗りもない、素朴な質感と形状とを生かした樹色のベンチは、周囲に溶け込み、よく調和している。 「最近、大きな戦いがあって、他のにゃんにゃんの国が大きな被害がでたそうです」 「それを理由にまた出兵する国が出る」 「うん、悲しい連鎖ですね」  大変だな、と声をかけられて、和子はそれが自分にではなくてっきり世間一般の話をしているものと思って相槌を打った。 「大変な人に、私が何かお手伝いできることがあると、いいのですが……」  くしゃり、新聞紙を押しのけて空になった紙皿をバスケットの中に押し込む。  振り向いた先にあった、こちらを捉えている青い輝きを、だから彼女...
  • 文族事始め・ぱあと1:『いきなりですが、始めます』
    始めに この文章は「文族ってこういうものなんだよ」という紹介を旨として書かれています。もっと具体的で役に立つテクニックは自分で探して見つけましょう。文族の、心さえ理解出来れば、後は実際に始めるだけですから! 文族事始め・ぱあと1:『いきなりですが、始めます』 あなたは今、誰の目を通してその世界を描写していますか? あなたが描いた文章は、誰かが感じたことなのです。物語の中で、誰かが感じたことなのです。 それは時に登場人物の感じたことであり、それは時に読者の感じたことでもあります。 文章とは、相手に感じさせることをこちらから指定することが出来ます。 もちろん、それを読んで実際にその人が何を感じるかまではわかりません。けれど、目も耳も聞こえない読者が、唯一頼りにするもの、物語の中でたった一つ与えられた、その世界を知るための唯一の五感、それこそが文字を読むとい...
  • NWの夏・上
     連邦の夏に蝉は居ない。そもそも、夏そのものが存在していない。あるのは長い雨季と長い乾季、季節を問わないスコール、それくらいだ。  あのしゅわしゅわと油の細かく爆ぜるような鳴き声も、また、樹肌と一体化した茶色い姿も、土中で何年もじっと過ごし、空でつがいと巡り合うために飛ぶ、儚きたった一週間を象徴する、どこか物悲しさを感じさせる羽化の透明な抜け殻も、砂漠の国には無縁の風物詩なのだ。  砂中に潜むのは、日本人である私達にとり、もっと得体の知れない、馴染みの薄いものたちばかりである。  アイドレスの世界は、日本であって日本でない。現実を、手で触れられる領域に限るなら、アイドレスの世界はあらゆるフィクションの世界がそうであるように、現実ではない。しかし、人の心がそこにあると感じさえすれば、いくらでもフィクションは現実に変えられる。悠久の昔より、人は、そうして現実を自らの意志...
  • 短編『唇の雪』5
    「いらっしゃい、いらっしゃい!」 「あったかいスープ、あるよ!」  大通りの方からは、物売りたちが練り歩く、元気な声が聞こえた。  ここは街の少し奥まったところにある、アキトさんの自宅である。  連日の異常気象に刺激されてか、妙に沸き返る街とは対照的に、私はといえば、大変な居心地の悪さに包まれていた。  目前の狭い中庭で、跳ねるようにはしゃぎ回っている子どもたち。私はそれを、窓枠に肘突きかけながら、ため息混じりに見守っている。横に立っているアキトさんが、手を後ろに組みながら、今、彼らがしている遊びは、東国では、雪合戦、雪だるま、そういう名前なんだよと教えてくれているところだ。  アキトさんは急に庭の方へ向き直ると、 「ちゃんと手袋をして、あんまり長い間、裸の手で触り続けないようにな――!」  はあーい。異口同音に返ってくる、元気のいい返事。  人にものを...
  • 秘宝館SS:『おかえりなさい』
    …………。 熱いという言葉を、何と言い換えよう。 …………。 熱いという感覚を、何と取り替えよう。 …………。 ノ/…イズ/……混じり……/ノ……。 …………。 パルスが。-・―・――・――・――。 …………。 ザ ざザ ザざ ZAAAAAAAAA……。 …………。 明滅する。チカ・チカ・意識に火花が。 …………。 ど  く  ん。 体を内側から叩かれた音がする。 ど   く   ん。 体を内側から熱かれた音がする。 熱-音-熱-音-熱-熱-音-。 ざ ざザ ザざざ-・――・―・―――・Tiカ・チKa・ぴ・GAAAAAAA…………。 それが心臓であることを理解したのは、彼女が一面の灼光に目を圧されたからだった。 彼女が一面の灼光に目を圧されたから、それが心臓であることを理解したのはだった。 彼女は、それが...
  • 農業
    農業:新型肥料の開発 カツカツカツ・・・・。 西の都、農業大学の廊下を2人の男が歩いていく。 「・・・・・・・楠瀬さん、急に仕事をお願いして申し訳ないです。」 「いやいや、全然いいよ~。」 「・・・・・・・・・・・・。」 青海は朗らかに笑う楠瀬の頬に新たにつけられた引っかき傷を見つけて、戦争が終わったらこの人の良い文士仲間とその親友猫士に他国旅行でもプレゼントせなあかんな、と思った。 やがて、2人は一つの部屋の前に立つと、ノックして中に入った。 集まっていたのは農業大学の教授達である。 礼を交わし席に座り、青海が口を開いた。 「皆様、お忙しい中お集まりいただいたことを。まずは心より感謝いたします。」 青海と楠瀬が西の大学を尋ねた理由は、先に発表された食糧増産計画にあった。 連邦はただでさえ不足気味の食料生産力の全てを振り絞ってこの計画...
  • 彼は飛んでいった
    前回までの補足:豊国 ミロは前回、お説教をしたりうるさく色々言ったりして、バルクさんを閉口させ、結果バルクさんは鳥に変化して逃げていってしまいました…  のつづき。 豊国 ミロ こんばんは。20時からの生活ゲームを予約していたのですが、今よろしいでしょうか? 芝村 記事どうぞ 豊国 ミロ 多重国籍者です。予約した名義とは違うPCでゲーム致します。よろしくお願いします。 予約した名義とは違うPCでゲーム致します。よろしくお願いしいます。 【予約者の名前】1800160:豊国 ミルメーク:詩歌藩国 【実施予定日時】5月20日/20:00~21:00 【ゲームの種別】生活ゲーム 【イベントの種別(時間):消費マイル】  ・ミニイベント(1時間):20マイル×1時間 【予約の有無】今回は不要 【召喚ACE】(※生活ゲームのみ)  ・バルク...
  • レンジャー連邦・よけろ!滅亡祭(仮) その2
    /*/ 芝村 メイが立ち上がった。 舞花 「走れ、サクさん!」 メイ 「ほら、私が見事に解決した!」 サク ヤガミまって サク いきます!! 双樹真 (とゆーか今、俺とミロさんは陸にいるのでしょうか? 萩野むつき 「メイさん、まあ、確かにw(ビールもっとどうですか?)」 遊佐呉 (メイさん、ヤガミ呼んだだけじゃん) 芝村 陸に戻りました>お二人 双樹真 (素敵だ…メイさん… サク ヤガミ追いかけます。できませんか? 舞花 「メイ姐さんは、ヤガミの使い方、間違えてませんかねぇ・・・(はふ)」 芝村 メイは勝ち誇ってる。天才、私は天才。 (絵:萩野むつき) 双樹真 (了解しました 萩野むつき 「ドランジさん、もしかしてメイさん酔ってます?」 芝村 サクは間に合った 双樹真 「流石です!メイさん!...
  • 秘宝館SS:『魔術師の望むもの』
    あまりの状況に落ち着いていない神経が原因だったのだろう。 慌てて緩く上空を旋回したが、一帯には動くものの気配もその人影以外のものも何もない。 安心すると共に、羽ばたき、まっすぐに彼へと落ちていく。 無意識に力強いストロークを刻んだ。少しでも早く、その思いが風を翼で圧し、鼻先で、より濃く分厚くなった空気を掻き分ける。 その先で横たわっている長い黒髪の美丈夫に、見知ったものを見る、親しみの色が僅かに浮かんだ。 どこまでも優しい微笑み。 しかしその頬は、記憶の中にあるものより、やや、削げていた。 微笑みが、変わらず優しいために、なおさら目についた。 「カイエ、人にお戻り」 その微笑みの前、以外では決して出さぬと誓った己の真名を口にする。 「良い腕です」 バルクは、目の前でウミネコから人に変わった女性を見て、そう言いながら微笑んだ。 /*/ ...
  • NAC企画・食博覧会出店:レンジャー連邦
    『いっしょにごはんたべよ!』  -ある国民の言葉   /*/ ◆序文にかえて  会場は人込みで溢れていた。  どこへ行こうか、不思議と顔は皆一様にいきいきとしていながらも、人々の足元では、ゆったりと焦らない、鷹揚でどこか気持ちの大らかな足音足取りばかりが重なって、歩く流れは、寄せては返す、さながら打ち寄せる大海原の潮騒のようである。  波打ち際の岩場のごとく、彼らを迎えて散り散りにさせる海岸線は、軒を並べる出店の数々。自然の岩に同じ形がないように、いずれもユニークな装いや店構えでながみ藩国の収穫祭に訪れたニューワールド各国からの来客を待ち受けていた。  いつもと違うのは、明らかに異国の風情があちこちから漂っている点だ。 「ね、ぜんぶ回ろ、ぜんぶ!」  はしゃいで袖を引っ張る友人に、困りながらもまんざらではない笑顔を返すのは誰か。 「だ...
  • ドランジ歓迎祭
    ドランジさんいらっしゃい祭り関連SS ドランジ歓迎祭り:前奏にかえて ドランジ歓迎祭り:いよいよ開催 ドランジ歓迎祭り:悪乗り編 ドランジ歓迎祭り:悪乗り編の舞台裏 ドランジ歓迎祭り:続・悪乗り編 ドランジ歓迎祭り:続々・悪乗り編 ドランジ歓迎祭り:テストフライト 歓迎祭りの傍らで。盛り上がりも何もない1コマ ドランジさん歓迎祭の片隅で ドランジ歓迎祭り:星空の物語(前編) ドランジ歓迎祭り:星空の物語(後編) ドランジ歓迎祭り:アフター ドランジ歓迎祭り:アフター(裏) 短編:おかえりなさいの裏側で。 龍の庵に響く声
  • ご依頼SS本編:青森さんといっしょ
    やわらかな雲と、笑い声。 あふれる日差しに揺れる緑。走り抜ける影。 窓際に並ぶ小物のシルエット。せっせと手を動かしては、時折額をぬぐう割烹着姿。 ちぃ? と、小首を傾げる、ネコリスの尻尾……。 波打ち際の光があんまりにまぶしすぎて、彼女たちは、 その、光の海に手をかざした。 /*/ 『……………………』 まあるく唇に微笑みがこぼれる。 傍らにいる男性は、ぶしょうひげの似合う顔をした、黒髪黒目の純日本人だった。肩幅は広く、うっすらと線の浮いた体つきは、自分1人や2人くらいどーんとぶつかっても受け止めそうなたくましさで、肌を日光にさらしている。 いい海で、とても、ここが昔戦場になっていたとは思えない。はやる気持ちもそのままに、ついでにぐいと、早くも腰を落ち着け始めていた男性の腕をひっぱった。しっかりした手ご...
  • 結婚式の思い出:高原と、高原アララのお祝いの席で
    「先日は、本当にありがとうございました…」 沢邑はそういいながら清子さんの車体を、無礼にならない程度に撫でた。清子さんの車体は過日の折りにぴかぴかに磨き上げられていたはずだったが、既に泥と、埃と、硝煙の匂いにまみれていた。きゅ、きゅ、とその車体を服の袖でぬぐってやる。隠しきれない傷や金属疲労もあったが、それは逆に、こうして磨かれることで、彼女の歴戦を彩る勲章のように、誇らしげに鈍い輝きを放っていた。 「どうです、花嫁には負けたでしょうがべっぴんさんでしょう、うちの清子さんは」 振り返ると後ろには、戦車小隊トリオの一人、加納が片手に皿を、もう片方の手には脂の滴る、ぱりっと焼かれた皮もうまそうなローストチキンを持って、もしゃもしゃとほおばりながら立っていた。加納は、清子さんのそんな姿をこそ誇りにしているような顔つきだったので、沢邑はそっと拭くのをやめて、頷いた。 ...
  • 支援SS:-幸 ゲンカツギ 運-
    【-幸 ゲンカツギ 運-】 「変わったことしてますねえ」 誰に声をかけられたかは忘れたが、小笠原出発前の集合時に、帽子をわざわざ逆さにかぶってから、右、左と靴ひもを結び、もう一度といてから結ぶという、はたから見ればよくわからないことを、俺はしていた。 「げんかつぎなんですよ。前にうっかり寝ぼけて帽子逆さに被ったまま出かけたら、いい結果が出たことがあって。道中赤っ恥かきましたけど、今日はそんなこと言ってられないでしょ?」 その次には、小笠原上陸前にだぶだぶのベルトをわざわざ無理矢理そこで締め直し、やっぱり変わったことしてますねえと、また他の誰かに声をかけられた。どうしても自分のベルトが見つからなくて、父のベルトをしていったことがありまして、人前に出る時きゅっと締めておいたら話がうまくいったんですよと今度も説明をした。 実は上着の内ポケットに使い古しの財...
  • 昼ごはん
    自由だけど、働きっぷりはまじめです。 幸せ小前提:「だいすきー!」 だいすきはすてきだ。大好きが多いとごはんが美味しい。ごはんが美味しいと(以下略)  蝶子さんとチョーコさんがお仕事に行くのを行ってらっしゃーいとお見送り。  私は孤児院に行く。  基本的にみんな好きな事を好きなようにやっている。  たぶん、  「各州(国民)は各々の州法(愛)に従ってその正義と勇気とを行使して下さい」  という蝶子さんの言葉が根付いているんだなー。  ちょーこさーああああん、素敵ーーーきゃあああああ。  もじもじ悶えます。  え、めったにしませんよこんなこと。  「あ。またやってるー」  「浅葱さん元気だねぇ」  「今日も平和だねー」  孤児院の子供たちがいつの間にか出てきて  「あ、浅葱がまた悶えてるーレンレンジャーキーッック!!」  「げふ、い、だだなんばす...
  • 支援SS:-敏 マシン 捷-
    【-敏 マシン 捷-】 マニューバ。 なんかかっこよさげな言葉だなとだけ思っていた。よくわからんが、いかにもメカっぽくてかっこいいぜ!である。 I=Dに乗り込んでいる今なら解る。こいつはとんだじゃじゃ馬で、すこぶるつきの感度のよさで人間とは比べ物にならない速度を叩き出す。そいつをうまく制御するために、こんな概念が必要になったんだ。 図体もでかいがその分だけ歩幅もスピードもある。日常、変な先入観で言葉だと巨漢=鈍いと思われがちだが、それは小回りの問題で、パワーの塊をみっしり搭載している戦闘用のボディの場合はそのパワーを上手に集めれば、目玉をぶん回すような威力が出ているのだ。 「双海さぁん、まだ、いけますよ!」 燃料は宰相持ち。だからといって、余分に搭載したりすることが出来るわけではないが、気分的にはたっぷり出し惜しみなく動かせる。 デー...
  • レンジャー連邦・よけろ!滅亡祭(仮) その3
    /*/ 萩野むつき (15分ですね、お萩はあんこと胡麻です、ミロさんw) 舞 「ふむ。今日は気分がいい」 芝村 メイはドランジを叩いている。 舞花 「(メイさん、かんべんしてくださいー)」 萩野むつき 「ドランジさん、おきませんか、メイさん。」 双樹真 「それは、重畳です(笑」 豊国ミロ 「ど、毒とかもってるのかな、あの蛇さんは!とりあえず吸い出した方がいいんじゃ?」 遊佐呉 スイトピー追いかけ…られなかった? 舞花 「毒ないから!むつきさん(きっぱり)」 蝶子 「この間サクさんが噛まれ済み(・・・)なので、毒の面は大丈夫ですよ。」 メイ 「こら、起きなさい。ヤガミ以下よ。そのままじゃ」 サク 「・・・噛まれたけど、一応大丈夫だったよ」(ぶー 萩野むつき 「知ってますよ?無いの。まだ、潰れてるのかと思って。」 萩野むつき 「(...
  • 霰矢惣一郎のジャケット解説ページ
    なんか黄ジャンじゃなくなった惣一郎のジャケットを、お言葉に甘えてデザインしてみました。 このページは秘宝館等に依頼する際の説明用ページとして作られております。 画像が大きいので携帯から見るのには向きません。すみません。 もし携帯から見たいという物好きな方がいらっしゃる場合は、蝶子をとっ捕まえて何とかしろと言ってみて下さい。割と喜んで何とかします。 前から見た様子 蝶子さんにデザインのセンスがないのは仕様です。不憫、惣一郎。 グレーと青の中間色と、白からなるジャケットです。青グレーについては中間の色であれば、この絵より青っぽくてもグレーっぽくても薄くても濃くても構いません。アバウトです。すいませんが光の当たり具合とか気温とか湿度とかで色が変わる新素材、ということにしておいて下さい。 チェーンは二連です。二連であれば鎖タイプとかでも構いません。こっちもアバウトです...
  • 秘宝館SS:『星の瞳、太陽の羽根』
    ヤガミは蝶子の腰を抱き寄せたまま、今しか味わえないこの景色を存分に体感していた。 「これが…………」 見つめる先で、唇が動く。 ちょっと赤くなりながら、蝶子はヤガミが何を言おうとしたのか想像する。 これが、パーフェクトワールドか。 これが、ゲート。 これが、お前の見ている風景か。 どれもしっくりとは来なかった。 ヤガミは結局何も続けずに、細い蝶子の体を抱えている。 びゅうびゅうと風を切る音だけが響く。 言葉交わさぬままでいれば、それはまるで爆音のようで、2人は弾丸のように、向かい風とさえ呼べないそれを突き抜けていく。 灰色の長い髪が風に持っていかれそうになる。 ヤガミが、ぐい、と胸に蝶子の頭を抱き寄せるようにして、その髪の思う存分乱れてはためくのを、自らの体で遮った。 「眼鏡、なおしますか?」 ...
  • おやつ
    恋バナ 浅葱空の恋バナ:「元気になったヤガミを蹴る。」 ねちこいのでまだ覚えています。あの事を。 マイルないから見果てぬ夢ですが。夢はあってもいいじゃない。いつかかなうかもしれないし。 いろんな愛の形があるのです。ここが私の愛の最終形態。  「お疲れー!みんなーおやつだよー」  「おやつーおやつー」  「おやつちょうだい、浅葱ー!」  「ええい、群れるなちみっこども、みんなの分あるからおてて洗ってらっしゃーい」  「はーい!」  「浅葱さーん、おやつしましょう~♪」  サクさんとむつきさん、彩貴さんがおやつ持参で来てくれた。  「あ、サクさんだー」  「むつきさーんもーお久しぶりです」  「彩貴さーん、おやつ一緒しようよー」  わらわらと三人に群がる子供たち。みんな丁寧語だ。   ちみっこども、なぜ私とみんなへの態度が違うのだ・・・。  まぁ、それは...
  • 歓迎祭りの傍らで。盛り上がりも何もない1コマ
    編隊を組んだ4機のアメショーが爆音と共に宙を舞い空を駈けてゆく。 それを見ながら少し微笑んで、双樹真は歩きだした。 「おい、こら、双樹!待つにゃ!。」 双樹の頭で垂れている猫士の夜星が尾で双樹の頭をぺちぺち叩く。 「ん、どうしたんだよ?」 「まだ藩都でやっているとかいうドランジさんいらっしゃいパレードを見ていないのにゃ。戻れにゃ。」 双樹はあからさまに嫌そうな顔をする。 「えー。俺は摂政の挨拶が見たいんだよ。だから反対方向じゃないか。」 夜星は尾を双樹の首に巻き付ける。 「パレードではおっきな金の鰻が泳ぐらしいにゃ。」 ちょっと苦しい。 「…金の龍のこと?」 双樹の脳裏にドランジの金の登り龍が浮かぶ。 そういえばそれを模した張り子の演舞をやるとか言っていた。 「長くてくねくねしてたら全部鰻にゃ。大して変わらんにゃ。」 キュ。 夜星の尾に力が入る。 「…パレ...
  • 支援SS:-回 ガッツ 避-
    【-回 ガッツ 避-】 「うーーーっ、ひょーーーーーう!!!!」 頓狂な声を上げながら、とてもそんな場面とは思えないコミカルな表情と、それとは裏腹の、死に物狂いの大激走が、男の両脚では開始されていた。男は祈る。一路その胸に一心に。 (なっこちゃんに会いたい英吏と酒が飲みたい英吏と源のコンビに混ざりたいセーラ帰ってきますようにみんなしあわせになーれ天戸文族で名を上げたい根源力たくさんほしいお国にいっぱい資産ほしいなオーマ覚醒してみたい士族になりたい新しいアイドレス着たいetcetc…) 欲望の塊だ。 「しまった英吏は未成年かまあいい気にするなともあれなにはなくともなーーーっこちゃーーーんあいらーーーびゅーーーーんんん!!!!!」 意味なく裏声混じりに大シャウト。吐き出す息と蹴り出す地面と、優雅にバレエダンサーのように足を伸ばして跳躍し、たーん、...
  • ドランジ歓迎祭り:いよいよ開催
    法を守るものと、法から民を守るもの、法官と護民官。 その合格率は3割程度とされており、現在のペースでいけば採用者は4~5人であろうと推定されている。我がレンジャー連邦からは藩王を含む4人が受験を既に志願していた。 情報を泳ぐフィクショノートたちにとって互いを参考にし、より高度に解答を洗練させることは容易いはずであった。だがそれをするものに法も民も守る資格はない。受験者達は、それぞれが誇りをもってこれに挑んだ。  * * *  「こりゃ落ちたな」 自己採点後、男は頬杖ついて諦め顔で呟いた。しゃっぽを脱ぐ、である。くるくると指先でトレードマークの黒いつば広帽子を回して、同時に藩王への敬意を改めて深める。俺が試験官なら絶対藩王は採る。たとえそのI_Dressが舞踏子であろうが、絶対この資格だけは持たせておく。ある意味安心だ。上に戴くのにこれ以上ない人...
  • 支援SS:-知 アイジョウ 識-
    【-知 アイジョウ 識-】 アイドレスは当然だが無名世界観のゲームである。そこにおいて知識を求められるということは、一般的な知識はもちろんのこと、それに基づいた無名世界観のまなざしを持たなければならない。 アイドレスは情報の宇宙であり、網である。 プレイヤーは思い出す。プレイヤーはPCに託す。これまでどれだけの歳月をそこに賭けてきた。人、それぞれに違うだろう。見ているものも違えば、把握している量も違う。それでも、 「それでも、好きだから、ファンだからここにいるんだろうがよ」 にぃや、と、へばりつくような強烈な笑みを浮かべながら彼は、PCとしては、それぞれの国立図書館で仕入れた情報を、プレイヤーとしては、ゲーム・アニメ・小説の無名世界観、あるいはブログ・Wiki・HPで仕入れた知識を、いざこの時!と使う場面を待ちに待ち焦がれながら、わざわざこの冒険のた...
  • 支援SS:-医 ジンジュツ 療-
    【-医 ジンジュツ 療-】 彼らとどこかで隣り合わせた時には、確かにごく普通の人たちだったように記憶している。 なんという堂々たる指示で、鮮やかを通り越し、艶やかですらある手付きの美しいことよ。 心のどこかが目の前にある現象と乖離して、一人の人間として、たった一人の名医の動きに、磨きぬかれた技術にほれぼれとする。悪い癖だな、どんな時でもこういうのを見とれてしまうってのは。 医は仁術。 一人の人間の命そのものを見つめて向き合うことは、確かに仁を成す立派な一つの術だ。 医師たちは、医療行為を行う時、普段持つ能力よりもさらに格段の、そう、それこそ別格といっていい次元にまで己の能力を発揮する。わかっていた。それは、わかっていたはずなのに。 本当に、倍するほどにも一気に動きが見違える。佇まいの質感が変わる。空気を従え、そこを一つの戦場に変える。...
  • 無限爆愛レンレンジャー:第一話(3)
     結構シリアスに締めた続きなのに悪いけども、私も真面目なことばかり考えて生きてるわけでもなかった。  運動をするとお腹が空く。  だから、ぐうぐう鳴ってるお腹の、出てるへその上あたりを覆って私がいそいそと食べ物屋に急ぐのも、何の不思議もないわけである。  関係ないけどレンジャー連邦では、愛はお腹に宿るといって、既婚者はへそを覆う風習がある。未婚者は、へそを覆わない服装がデフォルトだ。関係ないけど。今の話の流れと、すっごく関係ないけど!  むかしから女系の強いお国柄だけあって、甘いもの屋はそこかしこにある。甘いものと言えば帝国の星鋼京、なんだけど、そこはさすがに地産地消という奴で、観光立国もしている我が国には、ちゃーんと非輸入もののスウィーツがいっぱいある。原材料までは手に入らないものも多いらしいと教えてもらったが、あるったら、ある。  女子高生、運動部、部活帰り、甘いもの。なんて...
  • 文族事始め・ぱあと4:『幻をぶっとばせ!』
    文族事始め・ぱあと4:『幻をぶっとばせ!』 初めてやることや、不慣れなことって、知らないことばかりだからすごく怖いですよね。で、実際にやってみると、案外怖くない、なんてことも結構あったりします。 文章を書く場合、怖いことって、難しそうだっていう印象が一番だと思いますが、 やっぱり大抵幻です。 て、テーマって何!?とか、ぷ、プロットだとお!?とか、設定、設定ってなんだ、どうやって書けばいいんですか、とかいう風に、未知の用語と、それに対して自分で作り上げたイメージと格闘すると、小説の場合、酷い目にあいます。 失敗した時、目に見えるものを作っているならまだわかりやすいのですが、小説の場合、本当に作り上げるものは文章そのものではなく、それによって何を感じさせようとしていたかという、浮かび上がるイメージ、印象、感想、そういったものの方が本体だからです。 テ...
  • 支援SS:-敏 コウキドウ 捷-
    【-敏 コウキドウ 捷-】 それは、ただのがむしゃらではなく、数学的な動きであった。 自然界の法則をもっとも簡易な形で体現しているものが数学であり、それに乗っ取っているということは、もっとも自然であるということである。それは、美しくすらあった。 基本は単純。そしてそれにしたがい、迷いなく動くこと。 まるで枝葉の伸びるよう、機動は大地の上を縫い、簡便な基本動作パターンの組み合わせから複雑な紋様の如くに動きが生まれる。 決して人の域を大幅に越えた速度が出ているわけではない。また、精妙に過ぎるほどの挙動を示しているわけでもない。だが、ただ、信頼しているのだ。 人の歴史は古くまた争いの歴史も然り。ゲームは戦争を模した演習として生まれ、その中で、どのように動くべきか、洗練に洗練を重ねられ、幾度もの根本的な挙動の変質をくぐりぬけ、それでも最後に残ったのは...
  • 支援SS:-偵 カンサツリョク 察-
    【-偵 カンサツリョク 察-】 偵察は、観察力が命だ。事前に仕入れておいた情報から組み立てた予想を華麗に使い潰してあくまで現実をつぶさに拾い見よう。 ぎょろぎょろと、つば広の帽子の下で、見開いた目がひそやかにうごめく。 何か動いているものはないか。動いていないもので不自然な痕跡のあるものは。その逆もまた然り。つまり…敵に気付かれないよう、痕跡を殺して歩くことも、偵察には必須の技能。今回は特に念入りにその作業をやっておかねば。 なぜならば、事前に仕入れた情報では、状況は極めてBAD。手前の体だけでなく、あれそれNPCの身柄を取り扱う必要が出るかもとのこと。そいつは、まあ、要するに、いつもは心強い友軍であるはずの彼らが、あてにならないどころか、作戦行動上は足手まといになるかもしれない、ってことだ。 おっと焦るな、足手まといなんて言葉を使っちゃあいるが、彼...
  • 文族事始め・ぱあと3:『そろそろ文章の話でもしましょうか』
    文族事始め・ぱあと3:『そろそろ文章の話でもしましょうか』 小説だけではない、文章全般に共通する、「まあ普通アイスクリームに醤油かけないよね」みたいな常識レベルでの書き方というものを書いていこうと思います。あ、ちなみにアイスクリームに醤油かけて新しい味を開拓したい人は是非本気でチャレンジしてみてください、案外世界に名だたる文学とかって、本質ではそういうものが山ほどあります。 それはそれとして、一番大事なことを最初に書きますね。 読みやすくしてください。 ぐちゃっと盛られた料理は食欲がそれだけで落ちます。食べやすく取り分けられた料理は、それだけでついつい食べすぎちゃいます。それが文章におけるレイアウトの大事さで、それが箇条書きや、無駄なことを可能な限り徹底的に省く、同じ内容を少しでも繰り返すことのないよう吟味して項目ごとに書き分けることの意味です。 わ、わ...
  • GAME小説:『君の答え』:第二章
    2007年2月4日。 戦勝パレードによって共和国各藩へとばらまかれた資金は買付注文となって市場に押し寄せ、値の釣り上げを狙いすぎた一部の機関投資家達により、需要と供給のバランスは崩れ、取り引きは一気に破綻。 多くの個人投資家が現物を用意することが出来ず、莫大な負債を抱えることになる。 先の不戦敗の責任問題を巡って分裂に揺れる帝國とは対象的に、遭遇戦に勝利した共和国の再びの平穏を破ったのは、皮肉にも、自身の犯した過ちであった。 /*/ 「ムゥエの奴、大丈夫かな…」 教室で、鞄からノート一式を取り出しながら呟くミード。隣ではクラディスが相変わらずノートも開かずにぼんやりしている。 「しょうがねえよ。今回のありゃあ、どっちかっていうと舵取りを間違えた大統領が悪い。金バラまいたら使うに決まってるだろう、常識的に考えて」 「先輩、二人の生活か...
  • まったりしていってね!
    編成会議 「いい男!城華一郎です。今回の戦闘に出撃する人員編成会議を開きたいと思います。いい男です。」 「いくらなんでもキャラいじり過ぎじゃないか?」 「いやぁ、前々回のSSで【青ツナギ】ネタがツボだったらしいでござるから、城殿に【いい男】補正をかけてみたでござるよ。」 「怒られるんじゃね?」 「さて、まずは体調不良で今回の編成会議を欠席している、藩王から手紙を預かっておりますので、発表させて頂きます。 【私、出るんだからね!絶対、絶対に私も出撃するんだからね!私を編成に組み込まなきゃ、めー!よ!】 と云う事で、まず一人目は藩王と・・・。」 「後は私、いい男!城華一郎も出撃させて頂きます。何故かって?いい男だからです!」 「今回の出撃は五人編成にしたいと思いますので、後三名ですが・・・出撃したい方みえますか?」 「ハ...
  • 支援SS:-医 イノリ 療-
    【-医 イノリ 療-】 諦めるな、諦めるな……! 必死に声をかける。それでも集中の乱れぬ医療部隊の整然とした手付きはさすがだった。 本当は震えたいほどの気分に違いない。いつも思う。 目の前で息絶えかけた仲間の蘇生行為をする間、どれだけの量の絶望と戦いながら、それを固く払いのけて、精妙な診断と治療を行っているのだろう。 そしてそれを断行するために発揮されているものは、間違いなく、『勇気』と呼ばれるもののはずだった。 愛は勇気の友、なるほど。 このぎりぎりの際になって痛感する。勇気がなければ、愛は力を発揮しえないのだ。 そしてまた、愛がなければ勇気の立ち向かうべき困難も見出せはしない。 がんばれ、がんばれ……! 既に目一杯がんばってるはずの仲間達に、それでもかける言葉が他に見つからない。 振り絞るような祈り...
  • @wiki全体から「スペシャルSS:『いってらっしゃいませ』」で調べる

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