結城友奈は勇者である@wiki内検索 / 「7・236・1」で検索した結果
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7・236・1
「樹ぃぃぃぃっ!」 「わぁっ!?お、お姉ちゃん、どうしたの?」 「樹が、樹がグレちゃったのよぉーっ!」 「ええ!?私がグレた!?」 勇者部の部室に入った瞬間、私に抱き着きながらお姉ちゃんが告げた衝撃の事実。 私がグレてしまったなんて、ちっとも知らなかった。お姉ちゃんをこんな風に悲しませるなんて、私はなんてことを。 ………あれ? 「えっと、お姉ちゃん?私っていつの間に不良になったの?」 「樹ちゃん、ゲームの話よ」 そう言って東郷先輩がノートパソコンの画面をこちらに向ける。 そこには私とよく似た女の子が煙草を口に咥えて、背中に“哀人形死亡”と書かれた改造制服を着てヤンキー座りをしていた。 「元は大赦が勇者の行動、思考パターンのトレスの為に作った再現プログラムなんだよ~。 リアルな人生ゲームって感じかなー。人間の感情とかは複雑すぎて結局...
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カップリング別
...2 7・117 7・236・1 7・420 7・447 7・784 7・936 8・124 8・422 ・その他(複数カップリング、ハーレム、ネタ等) +... H1・298 銀×東郷 H2・73 銀×東郷 H2・906 園子×夏凜 H3・716 夏凜×風×樹 【退院の日】 H3・776 複数(?) 【友奈←東郷さん←樹←風先輩←夏凜←友奈SS(前半戦)】 H3・790 複数(?) 【友奈←東郷さん←樹←風先輩←夏凜←友奈SS(後半戦)】 H4・36 友奈→東郷、東郷→園子 【次はその公式を使いたかっただけ】 H4・41 若葉×ひなた 【いつかその手を:前編】 H4・160 若葉×ひなた 【いつかその手を:後篇】 H4・173 銀×鷲尾 3・796 友奈ハーレム 百合ネタ 4・352 ED名 百合ネタ 4・370 園子×夏凜 4・400...
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投下日時順
...みも的な意味で)】 7・236・1 風×樹 7・236・2 風×夏凜×樹 7・238 園子×東郷 7・275 友奈×東郷 7・310 友奈×銀 7・317 風×夏凜 7・319 友奈×東郷 7・340 友奈×東郷 7・342 夏凜×東郷 7・369 夏凜総受け 7・370 友奈×東郷 7・395 友奈×東郷 7・417 友奈×東郷 7・420 風×樹 7・429 複数 7・431 友奈×東郷 7・445 複数 7・429のおまけ 7・447 風×樹 7・460 友奈×東郷 別アニメネタ 7・463 夏凜×東郷 7・483 風×夏凜 7・489 友奈×東郷 7・518 友奈×東郷 7・559 風×夏凜 7・562 園子×東郷 7・574 友奈×東郷 7・586 友奈×東郷 7・589 友奈×東郷 7・635 複数 7・638 友奈×...
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7・236・2
「夏凜、相談があるの」 「な、何よ。普段はにぼっしーとか言ってからかってるのに、急に真面目な顔しちゃって」 「……アタシと一緒に、寝てほしいんだけど」 夕暮れの迫る勇者部部室。 部活始めから何処か不穏な様子だった風が、そんな言葉を放ったのはそろそろ活動終了直前のことだった。 「は、はああああ!?な、何言って、何言ってるのよ!こ、このスケベ!エッチ!うどんジャンキー!」 「うどんは関係ないでしょうどんはぁっ!?何勘違いしてるのよ、別にそういう意味じゃ……無いから」 「何で一瞬黙り込んだの!?」 「急に眠気が襲ってきて」 嘘だ!絶対嘘だ!こいつ私を犯る気満々だ! 「落ち着きなさい、夏凜。アタシはね、寝たいだけなのよ」 「知るか!か、体だけが目当てとか堂々と!こいつ、成敗してやる!」 「いや待って!本当に落ち着けっての!マジでそういう意味じゃ...
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7・238
「こうして一緒の布団で寝てると、合宿を思い出すね~」 「そ、そうね///」 「やっぱりわっしーは手は温かいのに、足先は冷たいね~」 「え、ええ///」 「……わっしー、なんで目を合わせてくれないの~?」 「だ、だって私たちは……その、恋人になったのよね?」 「わっしーがこれからはずっと一緒にいてくれるって言ってくれたよね~。とっても嬉しかったよ~」 「恋人になって、初めて一緒に寝てるのよ?そのっちはなんとも思わないの……?」 「……?」 「私ってそんなに魅力ないかな……?」 「わっしーに魅力がないってことになったら、四国中の8割以上の人は魅力なしになっちゃうんじゃないかな~」 「……ふふふ、ずいぶん減っちゃうんだね」 「わっしー綺麗だからね~。……あ、もしかしてわっしー、えっちなこと考えてたの~?」 「そっ……そんなわけ――」 「――ねえ、わっしーのほくろ見せて...
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H2・236-238
風邪をひいた友奈の話。 「友奈ちゃん大丈夫?」 「…心配かけてごめんね東郷さん」 自室のベッドで友奈が顔を赤くして寝ている。 気温も暖かくなってきたので油断して薄着で寝ていたら案の定、という事だった。 「何かして欲しい事とかある? 私何でもするから」 「東郷さん…ありがとう」 東郷が心配そうに友奈の顔を覗き込む。 「…東郷さん、本当に何でもお願いしていい?」 「うん、何でも言って」 少し思案した後、友奈が恥ずかしげに枕元にあった白い紙袋を差し出す。 「あのね、お薬貰ってきたの…熱を下げるやつ…」 「分かった、お水入れてくるね」 「違うの、あのね…それ」 友奈が言いよどむ。何故か先程より顔が赤い気がする。 首を傾げながら東郷が袋から錠剤を取り出すと、 座薬だった。 ...
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7・21
「ひっ……くしゅん!」 部室前の廊下で、上下虎柄ビキニ姿の夏凜が、両手で自分の身を抱いて大きなくしゃみをする。 その隣では、同じ格好をした友奈が 「えへへ……『鬼は外!』って、追い出されちゃったねぇ~、夏凜ちゃん」 と、頭をかきながら照れ笑いを浮かべていた。 「ったく……みんなして本気で豆ぶつけてくるんだもの……つーか、何なのよ、この格好!? いくら何でも、恥ずかしすぎるわよっ!」 「あ、それは確か風先輩が、『どうせやるなら、本格的な鬼になってもらわなきゃ!』って、どこからか……」 「……後で絶対ブッ飛ばすわ、あのアホ……へ、へ、へくちっ!」 眉間に大きくシワを浮かべながら、夏凜がもう一度、くしゃみをし、ずずー、と鼻をすすった。 「……寒いの? 夏凜ちゃん」 「ああ、当ったり前でしょ……2月よ、2月……!」 「……それじゃあ……」 さ...
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7・275
「ただいまー、東郷さん!」 「おかえりなさい、友奈ちゃん。温泉旅行は楽しかった?」 「うん!でも、途中から東郷さんが恋しくなっちゃったかな」 「たった1日じゃない。ふふっ、でも私も恋しかったからお相子ね」 祝日を利用して家族旅行に出かけていた友奈ちゃんが帰って来たのは、日曜日の夜のこと。 こうやって帰ると真っ先に私の元へ来てくれるのがとても嬉しくて、昨日今日と感じた寂しさは吹き飛んでしまう。 「そうだ、お土産があるんだよ!東郷さんに合うかなーと思って」 「あら、何かしら。その言い方だと食べ物ではなさそうだけど」 「私のお土産=食べ物なの?」 友奈ちゃんがふざけて口を尖らせるのを宥めながら、彼女がお土産を取り出すのを見つめる。 そこまで大きなものでは無さそうだ、包みを開けば掌に乗りそうなくらい。 「これって、木彫りのお雛様?」 「当たり...
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5・235
友奈「東郷さんのが可愛い!」 東郷「嘘!(友奈ちゃんのが可愛い)」 友奈「嘘じゃない!」 東郷「嘘…(ry」 友奈「嘘じゃない!!」 東郷「………ほんと?」 友奈「うん!!!」
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H4・238
N○K・仕○の流儀。 東郷美森。 職業──プロそのっち愛好家。 香川県観音寺市。 四国でも有数の“プロそのっち愛好家”であり、“そのっち愛好永世名人”の肩書を持つ東郷美森はそこで家族と共に暮らしている。 世間にはあまり知られていないこの仕事の真髄を知るため、我々は東郷氏の一日に迫った。 東郷美森の朝は早い。 早朝5時、東郷氏の部屋にスマートフォンのアラームが鳴り響く。 『おはよ~わっしー朝だよ~! おはよ~わっしー朝だよ~! おはよ~わっしー朝だよ~! おはよ~わっしー朝だよ~!』 なんとも可愛らしい少女の声の録音が東郷氏のアラームのようだ。 その声に呼応し、布団から起き上がった東郷氏に我々はまず挨拶をした。 「おはようございます」 「……」 東郷氏は我々の声が聞こえていないのか、我々を一瞥もせず、今だ鳴り続けて...
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H4・233
神世紀300年秋。 ほぼ植物人間状態だった友奈が急に回復したことは周囲を驚かせた。 入念な検査が行われて数日後、ようやく解放された友奈を東郷が出迎えた。 友奈の後ろに立ち、車椅子のハンドルを握る。ゆっくりと力を込め、歩み始めた。 行き先はいつもの病院の中庭だ。 「友奈ちゃん、どうかしら?こんな感じでいい?」 「うん。すごく上手。東郷さんは丁寧だからね、安心だよ」 東郷は友奈に車椅子の扱いについて尋ねていた。 友奈の意識がないときも何度となく車椅子を操作してきた東郷だったが、意識が戻ってからは2度目だ。 友奈にはなるべく優しくしてあげたい、というのが東郷の望みだ。 「でも、車椅子って怖くない?」 「後ろにいるのは東郷さんだからね。私はまったく心配してないよ」 東郷にとっては嬉しい言葉だ。 「それにね。思い出したけど、私、車椅...
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6・117-122
「勇者システムの後遺症?」 「一度は神樹様に捧げられたものが自分の体に還る訳だからね~。何か影響が出る可能性はあるよ」 「生命に危険の及ぶ可能性は低いとか大赦は説明しているけど、何処まで信用できるんだか…今回ばかりは信じたいけどね」 ある日の放課後、夏凛ちゃんと園子ちゃんに呼び出された私は、大赦からの一方的な、そして無視できない連絡について聞かされていた。 勇者システムが消えた直後に他とは違う症状を発した私、満開で失った箇所の多かった園子ちゃん。 そして、二世代に渡る勇者システムの着装者となった東郷さん…特にこの3人には何かしらの後遺症が現れる可能性があるらしい。 「今のところ、私は特に変化はないみたいだけど…園子ちゃんは?夏凛ちゃんだって心配だよ?」 「私も元気元気だね~。まあ、仮に影響が出るなら私が真っ先だろうから安心してね、ゆーゆ」 ...
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6・139-148
「……おっ? ねえ、見てみて、みんな」 いつもと変わらぬ勇者部の部室にて。 勇者部あてに届けられた郵便物を整理していた風が、ひとつの手紙を手に取って、他の部員を手招きした。 「どうしたんですか? 風先輩」 ほうきとちりとりを手に、部室の掃除をしていた友奈が返事をする。風は手紙を見せながら、うれしそうな 笑顔で説明した。 「ほら、これ。こないだ行った老人ホームの職員さんから。みんなでやった、劇の感想が送られてきたの」 「わあ、本当ですか? 見せてください」 それを聞いた友奈もにこっと笑い、手紙の文面に目を通す。 「えーと……『先日はありがとうございました。入居者のみなさまも大変喜んでおいでで、よいレクリエーションに なりました。特にあの、劇の完成度にはみなさん驚いてらしたようで、口々に好評を述べておりましたよ。今後とも、 ...
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6・107-112
気が付いた時、私はまた、暗闇の中でたった一人だった。 それは生半な暗闇ではなかった。 四方八方、上下左右、どちらを振り仰ぎ見下ろしても、視界にはかすかな変化すらない。すぐ眼の前にあるはずの自分の 手さえ影も形も認識できない、漆黒にべったりと塗りつぶされてしまったかのような暗闇だった。 そしてその暗闇には音がなかった。どれだけ耳を澄まして集中しても、耳鳴りすらも聞こえない、完全なる無音。いったい、 この騒々しくもにぎやかな世界で、いかにすればこれだけ音を排除できるのかと思う程の静寂だけが広がっていた。 光も、音もない空間。この場所で、私は一人きりだった。 それでも、私には経験がある。 戦士として、訓練を重ねて培った、鋭敏な感覚は残されている。 周囲のどこかで、何かがかすかに動いている気配がした。 私は即座に戦闘の構えを...
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7・369
風「出来たわよ!次の劇の脚本!我ながら最高の出来だと思うわ!」 友奈「さすがです!風先輩!」 夏凜「タイトルは……『ニボシガンダム~星屑の鼓動は愛~』ってなによこれ!?」 樹「お姉ちゃん……この前までZガンダム見てたもので……」 東郷「劇でガンダムはどうかと……」 園子「でも面白そうだよ~。なせば大抵何とかなる!一回セリフ合わせだけでもやってみよ~」 フウーン・カーン「サングラスの方、イツキ様の前に」 ミモリ・バジーナ「……」 フウーン「イツキ様の前に!」 ミモリ「……」トコトコ……サングラスハズシ イツキ・ザビ「は!やはりスミ・アズナブルだ!変わりない様だ。また会えて嬉しい。遊んでくれたの、覚えているよ」 ミモリ「2歳のときのことを、覚えてらっしゃるのか?」 ミモリ「今更なぜとは聞かん」 ユウナ・ロンド「ミモリ、あなたはいつもそうして!い...
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7・936
例えば、あなたに妹が―――何に変えても惜しくない、目に入れても痛くないほど可愛い妹がいるとしよう。 姉として、家族として、亡くなった良心の代わりとして愛情を持って育てて来て、大変に仲も良好であると仮定しよう。 そんな妹が、愛らしい容姿と相反するのに不思議と似合っている下着姿で視界をウロウロしているとしたら、あなたならどうする? 「樹…だらしない格好しないの。そういうことしてたら、いざという時に癖になって出るわよ」 「お姉ちゃんの前以外では、こんなことしないもん」 そう言ってクスクスと笑う最愛の妹、樹の様子はまるで小悪魔。 ほんの数か月前までは大人しく、自分を出すのが苦手な奥手な女の子だった。 お姉ちゃんお姉ちゃんと後ろを付いて来てくれるのは嬉しかったけど、アタシにすら何処か遠慮があった。 けれど、勇者としての日々は彼女に自信と夢を与え、仲間と駆け抜...
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7・155
今宵の月は真紅に近い色合いに染まっている。 大気と光の関係であるとは解っていても、それはどこか不安を感じさせる神秘を湛えていた。 この不可思議な事件の幕引きには相応しい情景かも知れないな、と私は他人事のように思った。 「友奈ちゃん、あなたは本当に―――」 こちらを見詰める友奈ちゃんの表情は、月を背にしているからか良く見えなくて。 その口元の鋭い輝きだけが闇の中で目に焼き付いた。 『結城友奈は吸血鬼である?』 「貧血ですか?」 「そうなの。流行ってるって言い方も変だけど最近多いらしくてさ。 正月明けのダイエットのやり過ぎもあるんだろうって話だけど、あんたたちも気をつけなさいよ」 「ふん、サプリとにぼしを常用してる私には縁の無い話ね。最新のサプリも試験摂取中よ!」 「にぼしはサプリとと同列なんだねー、にぼっしーの中でー」 ...
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7・117
「樹―、遊びに来たわよー」 「あ、お姉ちゃん…」 お姉ちゃんは時々、こうやって休み時間にわざわざ1年生の教室までやって来る。 クラスで頼りにされて友達も多いお姉ちゃんだけど、私と過ごす時間が一番楽しいと行ってくれるのは嬉しい。 けど私は―――。 「ほら、樹ちゃん、風先輩来てるよ?」 「相変わらず格好いいなー。あの見た目で妹想いとか超ポイント高いし」 「樹ちゃんが羨ましいなあ。私も風先輩の妹になりたいかも!」 私は―――正直、ちょっと困ってます。 ※ 「風先輩が教室に来るのをどうにかしたい?」 「そ、そうなんです。私、困ってて」 「解る解る。風は正直過保護すぎなのよね。それが重荷だし、クラスメイトに恥ずかしいって話でしょ?」 「いえ、違いますけど」 夏凜さんがポカンとした顔でこちらを見詰める。お姉ちゃんが来てくれること...
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6・205
―――その社さんは、あの日と変わらずそこに存在していた。 神樹様を祀ったものなのか、それともそれ以外の神様を祀ったものなのかは解らない。 ただ相変わらず誰かの手入れを受けている様子は無く、荒れるに任されている。 あの日、秘密基地が出来たと喜ぶ銀と興味津々のそのっち、そして仲裁役気取りの私。 3人は放置されていたこの社さんを掃除して―――そして彼女と出会ったのだった。 「そのお社がそうなの?」 あの日と違うのは、一緒に訪れた相手が後に出会った相手と同じであること。 恋人になった友奈ちゃんと共に、私は想い出の社さんにやって来ていた。 夏休みを利用して、自分の欠片を再確認する旅…大切な人と共に“鷲尾須美”を巡る旅路に。 「ええ、少しも変わっていないわ。私たちは…主に私だけど、この放置ぶりに憤って。 懸命に清掃をして、お供え物を探す為に一旦...
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6・243
―――すーすーという寝息が聞こえて、私はPCから顔を上げる。 見れば友奈ちゃんが、折紙の途中で机に伏せるようにして眠っていた。 慣れない車椅子生活で疲れているのだろう。 加えて、実動班として動けない間はせめて裏方の仕事がしたいと友奈ちゃんは言い出した。 そこで昨日は遅くまで2人でパソコンの操作の勉強をしていたので、それもあると思う。 「お疲れ様、友奈ちゃん」 みんな勇者部の活動で出払っているので、今は部室には私たち2人しかない。 友奈ちゃんの寝息と時計が針を刻む音、私がキーを叩く音が不思議なメロディを形造る。 最近寒くなって来たので風邪を引いてしまうといけないと思い当たり、何かかける物を探して立ち上がった時。 「東郷さん…」 目を覚ましたのかと思ったけれど、友奈ちゃんは相変わらず目を閉じて伏せたままだ。 寝言だろうか。自分の名...
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6・364
「――そろそろ、いいかしら」 私、東郷美森は夜中に突然くわっ、と目を覚ますと、物音を立てないようにそうっと自室のベッドを降りる。 そろりそろりと廊下を進んで両親の寝室の前まで行き、聞き耳を立ててみると、どうやら二人とも寝入っているようだ。 「――よし」 それを確認した私は再びそろりそろりと自室へ戻ると、部屋の押し入れにしまっておいたダンボールをずりずりと 引きずり出す。すでに一度開封済みのふたを開けて、その中にしまわれていたものを取り出す。 折りたたまれた布状のそれをベッドの上に広げて眺め、私はしみじみとつぶやいた。 「……やってしまった」 そこに敷かれているのは、表面に友奈ちゃんのイラストがプリントされた、1メートル半ほどの袋状の物体―― 俗に言う、『抱き枕カバー』であった。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇...
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6・285
「そう、けれど家の事情と言うなら仕方ないわね」 「風先輩と樹ちゃんにはどう伝えるの?」 「悩んでるけど、引っ越し直前までは伏せておくつもり。 樹も今が一番大切な時期だし、変に動揺させたくないわ」 「寂しくなるねー。よーし、そんなにぼっしーを私が慰めてしんぜよー」 樹と2人して勇者部の部室にやって来たあたし、犬吠埼風の耳に届いた情報はあまりにもショッキングなものだった。 引っ越し?親の都合で?今の話の流れ的に、夏凛が? 見れば樹も顔を真っ青にしてこちらを見詰めていた。どうやら聞き違いではないらしい。 慌てて勇者部の入り口から離れて、2人で事態の確認を行う。 「ど、どど、どうしよう、どうしよう、お姉ちゃん!」 「おお、落ちつきなさい樹!勇者はうろたえない!ほら、ひっひふー、ひっひふー、深呼吸!」 「それ深呼吸じゃないよ!?」 とはいえあたし...
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6・213
「……友奈が、カゼでお休み?」 放課後の勇者部で、作業を終えた夏凜がカバンを肩にかけながら、驚いた様子で言った。 それに応じて、東郷が電源を切ったPCを片付けながら答える。 「そうなの……昨日の夜、『なんだか熱があるみたい』って連絡があって」 「はー、珍しい事もあるもんねえ、あの元気娘が」 PCをしまったロッカーに、かちん、と鍵をかけながら、東郷は夏凜の方を振り向く。 「それで、今日はこれからお家にお見舞いに行くつもりなんだけれど……よかったら、夏凜ちゃんも来てくれない?」 「私が?」 「うん。きっと友奈ちゃんも、夏凛ちゃんが来てくれれば喜ぶと思うから……」 うーん、と夏凜は天を仰いで考える。 「……東郷がいれば十分喜ぶんじゃないの?」 「そんな事はないわ。友奈ちゃんにとって、私もきっとそうだろうけれど、夏凛ちゃんだって、大事な友達なんだか...
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6・229
「……夏凜さ~ん……」 私が3本目の缶ジュースを飲み干したところで、樹はようやく姿を現した。道の向こう側から ぶんぶんと手を振り、ぱたぱたと駆けてくる。 「き、来たわね、樹……」 私はぎこちない動作で空き缶を近くのゴミ箱へ放る。が、惜しくも狙いがそれてカコン、と 地面に落ちてしまったので、これまたぎこちない動作で拾い上げるとゴミ箱へ捨て直す。それから、 駅前スタンドの軒下から出て樹を出迎えた。 「はあ、はあ、ごめんなさい……遅くなっちゃって……待たせちゃいましたか?」 「い、いや、今来たばっかりだから……」 膝で息をして私を見上げる樹を、私は見つめ返す事ができず、視線をあっちこっちにさまよわせる。 「えと……ふ、風のヤツには、気づかれてないわよね?」 「あ、はい……お姉ちゃんには、一人でお買いものに行く、って言ってきたので、大丈夫です」 「そ...
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6・836
「――おいっす、お疲れー……って、ありゃ」 しゅん、と音もなく開いた開発室のドアをくぐり抜け、あたしは部屋の主に挨拶する。 が、そこであたしが目にしたのは。 「……んん……むにゃむにゃ……」 白衣を体に引っ掛けたまま、研究用の机に突っ伏して眠る、あたしの十年来の友人――三好夏凜の姿だった。 「あーあ、だらしないカッコしちゃってまあ……おーい、研究主任殿―。かわいいかわいい風ちゃん先輩が遊びに来たわよー」」 あたしは手に持っていたコーヒーカップと小箱をそっとわきに置いて、ゆさゆさと夏凜の肩を揺すぶる。すると、 「……ん~、聞こえてるわよ、うっさいわね……」 目をしょぼしょぼとさせて、うなっている犬のような声を出しつつ、夏凜がむっくりと起き上がった。 「おはよ、夏凜。コーヒー淹れてきたから、よかったら飲んで?」 「……ありがと、風」 ...
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5・136
神世紀以降、我が国では同性同士での恋愛、結婚が認められている。 現在ではほぼ常識になりつつある制度だが、旧世紀では我が国では認められていなかった事実があったことには疑問を禁じえない。 もっとも、ウイルスの影響でまともに生活を行える地域が四国のみに限られている我が国の現状にあっては、人口増加による 居住地区の確保が困難になることを危惧して、同性同士での恋愛を認めたという経緯があることは意外と知られていない。 そんな前置きはともかくとして、とどのつまり、お互いが愛し合っていれば女の子同士でも結婚ができるというのが、今の我が国であるのだ。 だが、私の場合は、さらにちょっとした特殊な状況にあった。 「…おねえちゃん?どうしたの、わたしのことじっと見て」 「うん、樹がかわいいなーって」 「もう、おねえちゃんたら」 そう、私は・・・実の...
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8・223
明晰夢。それはこれが夢であると自覚しながら見る夢のこと。 理由は簡単で―――私が立っているのはもう存在しないはずの場所だったからだ。 燃え上がるような見事な紅葉、人の絶えることのない長い長い橋、そして多くの日本人以外の観光客。 「ここは…文献や昔の映画で見たことがある、京都?」 「そうだよ、東郷さん」 「おはよう~…まだこんばんはかな~、わっしー」 振り返ると、そこには舞妓さん?のコスプレをした友奈ちゃんとそのっちの姿。 思わず橋に寄り掛かり、そのあまりの不意打ち可愛い攻撃に必死に耐える。 「と、東郷さん大丈夫!?変だったかな?」 「ううん、とっても可愛いよ~、ゆーゆ」 「園ちゃんはすごく似合ってるよ。でも、これじゃちょっと動きにくいね」 そういうと2人は、漫画の怪盗がやるようにバッと着物を脱ぎ捨てて讃州中学の制服姿になった。 ...
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6・28-30
―――それを目撃したのは本当に偶然のことだ。 友奈ちゃんと2人の帰り道、新刊を見たかったから少し大きめの書店に寄った。 結局目当ての本は見つからなかったけど、友奈ちゃんと過ごす時間というだけで私には楽しく掛け替えが無い。 「きゃっ!もう、友奈ちゃんったら……」 「東郷さんカイロだよ!えへへ……東郷さんあったかーい♪……あれ?」 「どうしたの、友奈ちゃん?」 「あれって風先輩と樹ちゃんかな?」 いつもと違う道すがら、大きな橋の袂に隠れる様にして風先輩と樹ちゃんが居た。 あんな所で何をしているのだろうか―――その疑問はすぐに解消される。 樹ちゃんが自分より背の高い風先輩を壁に押し付けて、背伸びをするようにキスをした。 「!?」 「え?今、2人……え?」 ここからでは声も聞こえないし表情も見えない。けれど、2人は...
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7・154-157
「本当、わっしーは総合力高いよね~」 「急にどうしたの?そのっち」 「ゆうみも、ふうみも、いつみも、ぼたにぼ、勇者部の誰とでも筆が進むんだ~」 「……」 「あ、あれ?わっしー怒ってる?」 「園ちゃん、自分のことには鈍感だなあ」 「本人以外は皆気付いてるのにねぇ」 「まあね、友達同士を恋人とか言われたらそりゃ怒るわよ」 「夏凛さん…」 「なんだかよく分からないけど、ごめんねわっしー。機嫌なおしてよ~」 「……そのみもは無いの?」 「え……!?わ、わたし~!?」 「そのっちは、私のこと嫌い?」 「そ、そんなことないよ~。で、でも……わたしなんかでいいの~?」 「そのっちがいいの。私の初恋は、そのっちなんだよ?」 「う、うわ~。いきなりでちょっと頭が混乱しちゃって...
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7・195-196
『それでは、ただいまより借り人競争を開始します。選手の人は位置についてください―――』 讃州中学体育祭も後半戦に突入。 次なる競技は、紙に書かれた内容に合致する相手を連れてくる人間版借り物競争。 司会の席で私は上機嫌で準備を続けていた。 偶然にも第一走者は友奈ちゃんと樹ちゃん、更に司会特権で見せてもらった借り人の中身は“尊敬する先輩”と“好きな人”。 これは風先輩を取り合う2人の姿が見られるに違いない。昼ドラBGMと語りの準備は万全だ。 「と、東郷さんって、意外に見た目とイメージ違うんだね…」 「そうですか?」 嬉々として準備を続ける運営委員の先輩に応えながら、私は開始の合図を待ちわびる。 我が国の成り立ちを語れなかった分、ここで色々と取り返さなければ、と気合を入れる。 『それでは、用意―――開始です!』 流石に初速は友奈...
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7・6
「……ふぅ…っ、はぁん……」 狭いトイレの個室の中で、私は夢中で友奈ちゃんの唇をむさぼっている。 むにゅり、と柔らかく、瑞々しさを備えたそれは、この世のどんな果実にも勝る甘さを帯びており、どれだけ 舐め続けていても飽きることはなかった、 「……とっ、東郷さん……んむっ……ちゅぅっ……もっ、もう少し、優しく……」 私の背中に手を回してぎゅっと抱きついたまま、友奈ちゃんがそう訴えかけてきた。私はキスを中断し、友奈ちゃんに応える。 「優しく……? どうして? 友奈ちゃん、こんなに気持ちよさそうなのに……」 「でっ、でも……ここ、学校のお手洗いだし……もし、誰かに気づかれちゃったら、大変だよ……」 「ふふ、要するに、気持ち良すぎて声が出ちゃうのを、抑えきれないってことなのね?」 「そっ、そういう事じゃなくて………んぷっ」 顔を真っ赤にする友奈ちゃんがか...
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7・8
「私たち以外の勇者部?」 「うん、考えてみたら私たちが選ばれることは直前まで大赦にも解ってなかったんだよね? ということは、こうやって集められた女の子たちは他にも居るんじゃないかなって思って」 「わっしーとゆーゆと大赦の家の姉妹が揃ってる時点で最有力候補ではあっただろうけどねー。 私も他に集められた子たちについてはよく知らないんだよ」 思えば最初の戦いから色々とあり過ぎて、他の勇者候補たちがどうなっているかを考えることはほとんど無かった。 もしかしたら、その中から次のバーテックスと戦う“明日の勇者”たちが選ばれるかも知れない。 そう思うと何となく逸るような、申し訳ないような複雑な気持ちになる。 「お、いい所に気付いたわね後輩たち!実は今日、他校の勇者部の部長がやって来ることになってるのよ」 「急な話ね、何でもっと事前に話さないのよ」 「いやー、平穏...
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7・68
「お姉ちゃん、朝も言ったけど今日はお仕事でご飯いらないから先に食べててね」 「あたしもパスで。剣道部の打ち上げに出てくれないかって言われてるから」 ここ最近は夏凜を加えた3人での食事が当たり前になっていたので、1人の食事は久しぶりだった。 こういう時、私は思いっきりズボラにぐーたらしようと決めている。 そもそも私の料理は樹の母親代わりを務める為に始めたもので、1人で居る時は凝るのが面倒で仕方ないのだ。 「適当にコンビニで買ってー、東郷から貰ったぼた餅をデザートにー♪」 無理にテンションをあげて買い物は何とか終えたけど、家が近づく毎に段々テンションが落ち込んで行く。 マンションの階段を登る頃にはすっかり足が重たくなって、全力疾走の後みたいに部屋に辿り着くのに苦労した。 食べても、休んでも、眠っても、消えない疲労。まるで泥のようなそれが急に溜まるこ...
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7・698
「樹ぃ、アタシはもうダメよ…どうか、次代の勇者部を支えていってちょうだい…」 「おねえちゃーん!?しっかり!傷は浅いよ!」 「…風先輩、どうしたの?」 「ああ、よく行く幼稚園の…ほら、トロ子の所。あそこの子供に声をかけたらギャン泣きされたって。『魔王が出たー!』って」 私たち勇者部は時々幼稚園や老人ホームで劇をしたりするが、勇者を題材にした話の時はほぼ確実に風先輩が魔王役である。 演技力の関係もあるし、何より割とノリノリで悪役を演じる風先輩のハマり役だったのだけど、子供の涙が堪えたらしい。 「と、言う訳で」 復活した風先輩が、お手製の魔王愛用どくろステッキを手にし、そしてそっと床へと置いた。 「わたし、普通の女の子に戻ります!」 「東郷さん、あれなあに?」 「昔、西暦の時代にあんな風にして引退したアイドルがいたのよ」 「ごふっ。滑ったネタ...
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7・589
「そう言えば、友奈と東郷が勇者部に入部したばかりの頃はいろいろ大変だったのよ」 お姉ちゃんがそんな風に、何かを懐かしむように呟いたのはある日の放課後、勇者部の部室でのこと。 当の友奈さんと東郷先輩は、他の部活のお手伝いで今部室に居ない。 「なに、最初は失敗続きだったとか?ま、私みたいに初めから完璧に溶け込むとかそうは出来ないわよね」 「それはもしかしてギャグで言ってるのかい、にぼっしーや。 いや、勇者部の活動自体はアタシも慣れてなかったからさ。失敗やらはみんな共通だったんだけど」 「何か他にあったの?仲良くなるのに時間がかかったとか?」 友奈さんも東郷先輩も、私が入部した時にはすごく優しくて親切で、あっという間に仲良しになれた。 人との触れ合いがあまり得意でなかった夏凜さんともすぐに打ち解けてしまったし。 そんな2人がお姉ちゃんとだけ相性が悪...
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7・445
先のネタのおまけ(需要があるか分かんないけど) おまけ1 園子「じゃあ私がにぼっしーの思い合う相手になってあげる~」 夏凜「はあ? そんなのいらないわよ」 園子「素直じゃないな~ 私にぼっしーのこと好きだよ~」 夏凜 かあぁ//(あれ?前にもこんなことがあったような) おまけ2 東郷の部屋 友奈「東郷さん」ヌギッ 東郷 ドキッ 友奈「ジャーン ブルマでーす」 東郷「それどうしたの?」(か、かわいい) 友奈「園ちゃんから」 東郷(そのっちは色々持ってるわね。他にも色々友奈ちゃんに着せてみたいわ) ビデオカメラを取り出す東郷 東郷「ねえポーズとってもらえる?」ハアハア 友奈「うんいいよ。でもこういうことするの東郷さんの前でだけだからね」
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7・750
それは勇者部が6人体制になってから少し過ぎた頃のこと。 「そうだ、園子。次の劇の台本書いてみてくれない?」 「ふぇ?私がですか~」 「そう!勇者部に入ったからには一通りの仕事をこなしてもらわねばならないのだ」 「そんなこと言って風が楽したいだけじゃないの?」 「そ、そんなわけ、ありゃしもはん!にぼっしーどん!」 どこの言葉か解らない言葉を叫び出す風先輩だけど、実際はそのっちが勇者部に更に溶け込めるようにという配慮だろう。 親友としてその気遣いに感謝しつつ、そういえば彼女の書くものは少し独特というか、特定の嗜好があったなと思い出す。 「解りました~。乃木園子、大命受諾します~」 「前の“明日の勇者”の評判が良かったから、バザーの特設ステージでやる奴よ。一般の観客も入るから気合入れなさい!」 「そのっち、大丈夫そう?」 「わっしーは心配性だなー。大...
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7・635
始まりは、あたし――犬吠埼風の提案からだった。 「勇者部も6人になったことだし、そろそろ誰が最強なのかはっきりさせようじゃない」 「最強……でありますか、風先輩」 「わ~、なんだかわくわくしてくる単語だね~『最強』~!」 「そのっち、それは中二病の予兆よ。気をつけておかないと5年後、10年後に枕に顔をうずめて足をバタバタさせるはめになるから気をつけて」 「最強って、風……そんなの完成型勇者であるわたしに決まってるじゃないのよ!」 「夏凜さんノリノリですね。でも最強って言っても色々な分野があるけど……お姉ちゃんは何の最強を言ってるの?」 最強――字を書いて如く『最』も『強』い者。 しかし、一言で最強と言っても『何をもって』ということになる。 神様のように全知全能であれば分野に関わらず『最強』といえるのだろうが、人間にはどうしても得手不得手がある。 「ふふ...
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7・431
「私って、友奈ちゃんへの愛情が足りないのかしら」 「愛情足りてない人は10回もどっちがどっちを想ってるかー、とかで喧嘩しないと思うよー?」 「けど、友奈ちゃんと恋人同士になってから一度も勝ててないのは事実よ」 勇者部の本来の活動は他人のためになることを勇んでやること。 別に毎度毎度バカップルの死闘を盛り上げている訳ではない、いや本当に。 今日は東郷と園子以外の部員は全員勇者部の活動で外出している。東郷にとって絶好の相談タイムだった。 「第7回はキス対策にこだわり過ぎて耳を甘噛みされて敗北し…」 「本当にそのまんまの負けっぷりで、にぼっしー動揺してたねー」 「第8回は贈り物作戦に出たけどお礼の笑顔で轟沈。あれは反則だったわ。 第9回は初心に戻って身1つで挑んだけど、友奈ちゃんからの前回のお返し贈答で一撃腰砕け」 「第10回は迷走して、誰かさんの入れ知恵...
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7・638
「風先輩、笑ってください。はい、チーズ」 パシャリと携帯のカメラのシャッターがきられる。 咄嗟のこととはいえ、ばっちり笑顔を決められる辺りは流石の勇者部部長、とアタシは自画自賛する。 「なになに、急に写真なんて撮っちゃって。ホームページに載せるとか?可愛く撮れてる奴にしてね」 「いえ、そうではなくて…!?」 写真を確認した東郷の顔が急に凍り付く。何だろう、手ぶれでも酷かったんだろうか。 「…風先輩、これを」 「な、何よ、マジ顔してからに。大丈夫よ、ちょっと失敗してもアタシはビッグハートで受け入れて―――」 振り向きざまに笑顔を決めるアタシの背後。部員以外は誰もいないはずのそこに、白装束の女が立っていた。 「ふぎゃあああああああああああ!?」 「お、お姉ちゃんどうしたの!?むぐぐ…くるひい…」 「何よいきなり大声出して…って、...
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7・574
私の全てが友奈ちゃんのものなのは、あと―――。 ※ 「はい、それでは一泊二日でご予約の結城様、結城美森様でよろしかったでしょうか?」 「はーい!」 元気よく返事をしたのは、どうにも照れが入ってうまく受け答えのできない私ではなく、隣で荷物を持ってくれている友奈ちゃんだ。 多分、姉妹だと思われているのだろう。微笑ましげな受付の人が部屋の鍵を渡してくれる。 「ごめんなさい、うまく対応できなくて…予約の名前くらいそのままでも良かったんじゃない?」 「ダメだよ!今日は1日、東郷さんは私のプレゼントなんだからね!それにほら、将来の予行演習にもなるし?」 「か、からかうのはやめて」 ―――私たちは、友奈ちゃんの誕生日祝いを兼ねて小さな温泉旅館に泊まりに来ている。 それというのも、今年の誕生日の贈り物に頭を悩ませ過ぎたことが発端だった。 勇者...
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7・489
樹が雑誌にちょっとだけ載ることになり、見本を貰えるという提案を敢えて断ってアタシは本屋へやって来た。 少しでも売上が伸びれば次の仕事に繋がるかもしれない、という淡い期待があってのことだったのだが。 「友奈?」 「ひゃあっ!?」 漫画だったら口から心臓が飛び出しそうな勢いで驚く友奈。 彼女が本屋に居ること自体はそう珍しくないのだが、雑誌コーナーを本棚に隠れるようにして見ているのはどう考えてもおかしい。 「お、大きな声出さないでよ、何やってるの?」 「ふ、風先輩。あの、実は、欲しい雑誌があるんですけど」 「買えばいいじゃない。店頭に無いなら店主のおばちゃんに取り寄せ頼めばいいでしょ?顔見知りなんだから」 「いや、顔見知りだから頼みにくいと言いますか、そのう」 普段は何事にもハキハキしている友奈の様子が明らかにおかしい。悪いものでも食べたのだ...
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7・562
「わっしーわっしー、コイバナしようよ~」 「コイバナ?」 「うん。私はずっとベットの上の二年間だったから、出会いなんてなかったけど~わっしーは学校に通ってたんだからなにかあるでしょ~?」 「そうね……付き合っている人はいないけど」 「え~?わっしー綺麗なのにモテないわけないよ~」 「付き合うなら、友奈ちゃんね」 「えっ……?」 「でも、夏凜ちゃんも捨てがたいのよね」 「わ、わっしー……ゆーゆもにぼっしーも女の――」 「――二人ともいざって時に頼りになるし、誠実で優しい。でも、一緒にいた時間の長さで友奈ちゃんが一歩リードかな?」 「そ、そうなんだ~」 私は今までの人生の中で一番困惑していた。 自分はただ、二年前はなんの膨らみもしなかった話題を今ならば膨らませられるのではないかと気軽に話してみただけだったのだ。 なのに……。 (わっしーが同性愛者だったな...
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7・310
―――今日は目が覚めると、真夜中の勇者部の部室に居た。 基本的にはここで意識を取り戻すことが多いが、あたしの意思で決定できないのでたまにとんでもない所で目覚める。 一度なんて、階段の下で目を覚ましたせいで思いっきり踏んづけられてしまった。誰が14段目だ、誰が。 「こんばんは、銀ちゃん。良かった。今日は部室に居たね!」 「うん。こんばんは、友奈さん」 「友奈でいいって言ってるのに」 「初めて会った時の印象が強すぎて、なかなか変えられないんだよ。でもほら、口調は大分砕けて来たし」 「うんうん、いいことだよ。あ、これ東郷さんのぼた餅!ちょっとだけ残しておいたんだ!」 …まあそのお陰でこうやって話し相手が出来た訳だけど。 ※ あたしの名前は三ノ輪銀。人類の天敵バーテックスから世界を守るために戦う勇者…だった。 バーテックスとの戦いの中で力尽...
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7・447
それは勇者としての役目を終えて、日常に帰ってからしばらく経った頃のこと。 「こんっ、こほんっ…!」 「―――樹、今」 「あ、うん。ちょっとむせちゃったみたい。昨日から喉がちょっといがらっぽくて」 私が鞄の中の飴に手を伸ばそうとするより早く、お姉ちゃんは電話に手をかけていた。。 「もしもし、讃州中学ですか?3年の犬吠埼風です、はい、1年の犬吠埼樹の姉の。 妹が体調を崩したようなので、今日は学校を休ませたいと思います」 「ええっ!?い、いいよぉ!そんな大げさなものじゃ」 「はい、私も念のために看病で休みます。この時期にすいません。では。…樹、着替えてベッドに行こうか」 「ちょっとお姉ちゃん!?ダメだよ、本当に大したことないんだから!お姉ちゃんはせめて学校に行って…」 説得じみたことを言う私の言葉を遮るように、お姉ちゃんは私の体をぎゅっと抱きし...
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7・429
風「そういえば夏凜って美脚よね」 夏凜「はあっ?いきなり何言ってんのよ//」 友奈「確かに」 東郷「確かに」 園子「確かに」 夏凜「ちょ、東郷まで」 樹(お姉ちゃん脚フェチなのかな?) 風友奈園子東郷樹 ジー 夏凜「そんなに見つめるな!」かあぁ 風「変身したとき綺麗な脚してると思っていたのよね」 夏凜「戦闘中にそんなこと考えてたの!てか真面目に戦いなさいよ!」 風「ということで今日は…」 黒板に『夏凜の美脚を活かす方法』と書く風 風「考えようじゃないの」 樹ボソッ「お姉ちゃんのほうが美脚だもん…」 夏凜「ちょっと今、樹が何か言った!」 風「 (無視) 何かアイデアはないかしら。はい園子」 ...
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7・811
「わっしー、わっしー」 「なあに、そのっち?」 「えへへー、ちゃんと一緒に居るんだなーって思って、声をかけただけだよー」 「なあにそれ。変なそのっち」 クスクスと笑いあう私とそのっちを、友奈ちゃんはニコニコと見守ってくれている。 他の供物と同じく私の記憶も返され、私は先代勇者としての記憶を、そのっちや銀との日々を思い出した。 友奈ちゃんもみんなから少し遅れて目を覚まし、そのっちもそれより更に遅れて全快し勇者部へとやって来た。 バーテックスと残酷な世界に奪われかけた2人の親友に挟まれ、共に命をかけた仲間に囲まれ、私の日々は平穏を取り戻した。 「それじゃ、今日の活動はこの辺にしときましょうか」 「なによ、まだ早いじゃない。ははん、さては受験勉強が煮詰まってるわね」 「心を読むんじゃない!くくく、今のうちに自由を楽しんでおくがいい…私を見ろ!お前たちの未来...
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7・319
「友奈ちゃん、大丈夫?眠ってもいいのよ」 「ふ、ぁ…けど…それだと、東郷さ…1人で…」 必死に目をこすろうとする友奈ちゃんだけど、その手すら頬の辺りまで上がって、くたりと下がってしまう。 老人ホームでやる隠し芸大会の飾りを作っている途中で、友奈ちゃんの眠気は限界を迎えようとしていた。 「まだ日にちに余裕はあるから大丈夫よ。みんなが戻ってきたら起こすから、ね?」 「ありが…東ご…さ…ふにゃ…くぅ…」 お礼さえ最後まで言えないままに、友奈ちゃんはこくりこくりと船を漕ぎはじめた。 慣れない車椅子生活で疲れも溜まっているだろうし、他のみんなよりも治りが遅い不安でよく眠れていないのもあるのだろう。 歩けなくなっても友奈ちゃんが頑張りすぎてしまう所は変わらない、私たちが―――私が気にしてあげなくてはいけないのだ。 「すぅ…すぅ…ん…むにゅ…」 ...
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7・463
【誰にも渡さない】 カードは残り二枚。その内ジョーカーではない方を東郷に抜き取られる。 「うぅ、また負けた」 「ならまた今度、勝負しなくちゃね」 このようなことを2人でしている理由。それは友奈だ。ずっと友奈と一緒にいる東郷に黙っているのはどうなんだろうと思い、東郷に私は友奈のことが好きだと打ち明けた。 すると東郷は少し思い悩んだ様子の後に「ならどちらの方が友奈ちゃんの隣に相応しいか、私と勝負しましょう」と言って来たのだ。 それからは色んなことで勝負をしているのだが……一度も勝つことができていない。ただ何度負けても東郷はそこで終わりとは言わずに「また勝負しましょう」と言うだけだ。私が勝つまでやり続けるのだろうか? それにしても最近はそんなことをしているからか、友奈よりも東郷と2人で過ごす時間の方が多くなっているような。今だって東郷の家にお邪魔し...
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7・559
樹がひと月ほど歌手のレッスンの関係で、練習所に泊まり込みながら学校に通うことになった。 実の姉妹なのに休み時間と勇者部の活動中にしか会えないというのは、何だか完全に会えないよりもモヤッとする。 家に帰ると1人きりと思うとどうにも気が乗らなくて、夕飯の買い物で気付けば1時間以上も売り場をうろうろしていた。 「あれ、夏凜?」 「…………」 普段はコンビニで見かけるくらいの夏凜が、何故か今日はアタシの行きつけのスーパーに居た。 乾物コーナーをジッと見つめながら、私の声にも反応せず微動だにしない。 「ちょっと、夏凜?無視するとか反抗期?部長はそんな風に育てた覚えないわよ!」 「…………」 「おーい、にぼっしー?だし汁ぶしゃーっ!」 「煮干し!?」 「ふぉっ!?い、いきなりどうしたのよ!?」 煮干しと言えば、ここ数日の夏凜は煮干しを口にして...
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