安楽死

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安楽死」を以下のとおり復元します。
末期医療の諸問題

関寿美奈 冨永裕美 早川香織 藤村佳世(企業法学科4年) 
斉藤貴之 山本和弥 松本夏樹(企業法学科3年) 
Ⅰ.序論 
 このところ“安楽死”や“尊厳死”に関する議論が盛んである。
この議論は古くからあるが、とくに近年にいたって末期医療が急速に
進歩し果てしなく延命がはかられる結果、死にたいする概念があいまいに 
なって、“植物人間”、重度の恍惚老人あるいは脳死・臓器移植などの問題とともに、死に関する論議が活発になった。 
 なかでも「安楽死」問題が一般の注目をあつめるようになったのは、
東海大医学部付属病院で、医師が意識不明の末期ガン患者に塩化カリウム 
を静脈注射して死にいたらしめ、殺人罪として起訴された事件による。 
 ついで、日本医師会は同会の生命倫理懇談会がまとめた「末期医療に臨
む医師の在り方」についての報告を同会の見解として公表した。その報告 
書によると、回復の見込みがない患者の延命治療を本人の希望によって打 
ち切る「尊厳死」は認めるが、薬物などで積極的に死をもたらす「安楽 
死」は原則的に認めないとしている。これを契機に安楽死と尊厳死の問題 
はさらにクローズアップされてきた。 
安楽死は、今日では様々な形態に分類され一言に論ずることはきわめて難
しい。 その定義は多種多様にあるが、総括していえば「安楽死とは、
苦痛を訴えあるいは人間の尊厳性を求める不治の末期患者の要請に応じ、 
医師その他の他人が、積極的あるいは消極的手段で患者を死に至らしめる 
こと」といえるであろう。 
 安楽死を求める側にさまざまな要因があるため、形態も様々である。
人間の尊厳性を失いたくないという人、植物状態の人、耐えがたい身体的 
苦痛にある人、家族に過度の負担をかけている人などが、そこからの解放 
を求めているからである。 
 また臓器移植に関しては平成9年に「臓器移植に関する法律」が成立 
し、同年10月から施行された。これにより「脳死したものの身体」からの 
臓器移植が法的に認められるようになった。

・間接的安楽死とは
間接的安楽死とは、モルヒネなどの鎮痛薬の継続的投与による苦痛緩和・除去の付随的結果として死期が早まる場合をいう。たとえば癌患者の苦痛を除去するために睡眠薬を投与し、それにより啖の排出が低下し、肺炎となり、結果死に至るという場合などである。 
間接的安楽死は適法であるという結論でほとんどの学説が一致している。医学的適応性・正当性、患者の同意があるとき、適法な治療行為として違法性を阻却するとする。

・消極的安楽死とは
 消極的安楽死とは、回復の見込みのない末期患者に対して病苦を長引か
せないために、 生命延長・維持のための積極的治療を差し控える、あるいは停止するというものである。 
 手段として尊厳死に近い。 
 過剰な延命治療の差し控え・停止は、末期医療の現場に置いては日常的
に起こる問題となっている。 
ここでは意思能力の無い患者に対する生命維持治療の差し控えや停止が問
題となる。 また停止可能な生命維持治療の種類、停止する時期などの問題があり、濫用の危険を考慮する必要がある。

・積極的安楽死とは

判例
【名古屋高裁昭和37年12月22日判決】(高刑集15巻9号674号)において、「(1)が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、しかもその死が目前に迫っていること、(2)病者の苦痛が甚だしく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものなること、(3)もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと、(4)病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託または承諾のあること、(5)医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合には医師により得ないと首肯するに足る特別な事情があること、(6)その方法が倫理的にも妥当なものとして容認しうるものなること」の6つの要件が備わっている場合、安楽死を認めうるとした。しかし「倫理的」という言葉の曖昧さが批判された。

【東海大学「安楽死事件】(横浜地裁平成7年3月28日)
事件の概要 
 東海大学医学部医科学科に勤務していた医師tは、 
多発性骨髄腫で入院中の患者K(当時58歳)の治療に従事していた。平成3年4月13日昏睡状態が続く患者kについて 
親族が、呼吸が苦しそうに見えるのでkから点滴やカーテルを取り外してもらい、治療を中止してkが自然の状態で楽に 
死ぬことが出きるようにして欲しいと依頼、医師tは不本意ながら治療を 
中止することを承諾、フォリーカーテルと点滴が取りはずされた。 
しかし依然患者kがいびきをかくような荒い呼吸を続けたため親族は医師に再度楽にしてやって欲しいと依頼、
医師tは鎮痛剤、抗精神病薬を通常の二倍の投与量で注射した。 
 しかしなおも苦しそうな状態は止まらず、親族に「今日中に家につれて帰りたい」と強く求められたため
医師tは殺意を持って一過性心停止の副作用のある塩酸ベラパミル製剤40mlを注射し、
変化がなかったため塩化カリウム製剤20mlを希釈せずに静脈に注射した。 
 患者は午後8時46分ごろ急性高カリウム血症による心停止になり死亡した。  
 これを問われ医師tは刑法199条殺人罪で起訴された。 

判決 
判決では、医師による積極的安楽死として許容されるための4要件として、 

1患者に絶えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること 
2患者は死が避けられず、その死期が迫っていること 
3患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと 
4生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること 
をあげた。 
そして、本件では患者が昏睡状態にあり意思表示ができず、また痛みも感じていなかったため1,4を満たさないとした。 
ただし、患者の家族の強い要望があったことなどから、情状酌量により刑の減軽がなされ、執行猶予が付された。 


論点 
判決の内容として尊厳死や間接的安楽死の要件、積極的安楽死についても新しい用件を具体的に示した。 

治療行為の中止要件について 
治療行為の中止とは治療不可能な病気に犯された患者が回復の見込み無く、治療を受けても死を避けられないとき、 
意味の無い延命治療を中止することが許されるかという問題である。 
と安楽死が許容される要件として 
1、患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいるこ 
2、患者の死が避けられず死期が切迫していること 
3、治療行為の中止を求める患者の意思表示があること 
4、安楽死の方法については不作為型の消極的安楽死、苦痛の除去が同時に死期を早める可能性のある間接的安楽死、 
苦痛から逃れさせるために意図的に死を招く措置を取る積極的安楽死があるとし、それぞれ許容性を考慮した。

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