安楽死

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安楽死 - (2007/12/11 (火) 23:20:18) の編集履歴(バックアップ)


末期医療の諸問題

関寿美奈 冨永裕美 早川香織 藤村佳世(企業法学科4年)
斉藤貴之 山本和弥 松本夏樹(企業法学科3年)
Ⅰ.序論
 近年末期医療の急速な進歩により果てなく延命がはかられる結果、死にたいする概念があいまいになり、植物人間、脳死・臓器移植など、死に関する論議が活発になった。
 日本医師会が公表した「末期医療に臨む医師の在り方」についての報告は、回復の見込みがない患者の延命治療を本人の希望によって打ち切る「尊厳死」は認めるが、薬物などで積極的に死をもたらす「安楽死」は認めないとした。
安楽死は、今日では様々な形態に分類され一言に論ずることは難しいが、総括していえば「安楽死とは、苦痛を訴えあるいは人間の尊厳性を求める不治の末期患者の要請に応じ、 医師その他の他人が、積極的あるいは消極的手段で患者を死に至らしめる こと」といえる。
 臓器移植に関しては平成9年に「臓器移植に関する法律」が成立 、同年10月から施行された。これにより「脳死したものの身体」からの臓器移植が法的に認められるようになった。

 間接的安楽死とは、モルヒネなどの鎮痛薬の継続的投与による苦痛緩和・除去の付随的結果として死期が早まる場合をいう。たとえば癌患者の苦痛を除去するために睡眠薬を投与し、それにより啖の排出が低下し、肺炎となり、結果死に至るという場合などである。
 間接的安楽死は適法であるという結論でほとんどの学説が一致している。医学的適応性・正当性、患者の同意があるとき、適法な治療行為として違法性を阻却するとする。

 消極的安楽死とは、回復の見込みのない末期患者に対して病苦を長引か
せないために、 生命延長・維持のための積極的治療を差し控える、あるいは停止するというものである。
 これらは近年末期医療の現場に置いては日常的に起こる問題となり、意思能力の無い患者に対する生命維持治療の差し控えや停止、また停止可能な治療の種類と停止する時期などの問題があり、濫用の危険を考慮する必要がある。

 積極的安楽死とは

判例
【名古屋高裁昭和37年12月22日判決】(高刑集15巻9号674号)において、「1現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、しかもその死が目前に迫っていること、2病者の苦痛が甚だしく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものなること 3もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと、(4)病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託または承諾のあること 5、医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合には医師により得ないと首肯するに足る特別な事情があること 6、その方法が倫理的にも妥当なものとして容認しうるものなること」の6つの要件が備わっている場合、安楽死を認めうるとした。しかし「倫理的」という言葉の曖昧さが批判された。

【東海大学「安楽死事件」】(横浜地裁平成7年3月28日)
 東海大学医学部にて昏睡状態の患者Kの治療に従事していた医師は、親族から治療の中止を強く求められたため、患者に殺意を持って塩化カリウム製剤を静脈に注射した。
 患者は心停止により死亡し、これを問われ医師tは刑法199条殺人罪で起訴された。判決では、医師による積極的安楽死として許容されるための4要件として1患者に絶えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること2患者は死が避けられず、その死期が迫っていること 3患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと 4生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があることをあげた。 そして、本件では患者が昏睡状態にあり意思表示ができず、また痛みも感じていなかったた1,4を満たさないとした。

安楽死が許容される要件として
1、患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること 2、患者の死が避けられず死期が切迫していること 3、治療行為の中止を求める患者の意思表示があること 4、安楽死の方法については不作為型の消極的安楽死、苦痛の除去が同時に死期を早める可能性のある間接的安楽死、 苦痛から逃れさせるために意図的に死を招く措置を取る積極的安楽死があるとしそれぞれを考慮した。