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広いリビングに、真里亞だけひとりぼっち。 
不気味なほど静かな空間の中に、虚しい時計の音だけが響いていた。 
時刻は、十一時半。ぐずぐずとママの帰りを待っていたせいで、もうこんな時間だ。 
「……うー」 
何でもないのに、何故だか目頭が熱くなる。 
真里亞はおかしい子だ。悲しくなんてないのに。寂しくなんてないのに……。 

今日も先生に叱られた。男の子にからかわれた。休み時間はひとりぼっちだった。 
ママも帰ってこない。夕食はひとり。お風呂もひとり。 
それでも、真里亞は確かにしあわせ。 
だって、お友達がいるから。 

『……うりゅー。真里亞、寂しい?』 
声がする。真里亞の大切なお友達。 
普段はライオンの姿をしているけど、ベアトリーチェのおかげで人間の姿も持っている。 
少しお馬鹿だけど、可愛いライオンの男の子。 
「うー?寂しくなんてないよ、さくたろ。今日もとっても楽しかった。うー!」 
『うりゅ……本当に?それ、本当なの?』 
さくたろは真里亞を咎めるかのように言い寄ってくる。 
まるで真里亞が嘘をついてるみたい。さくたろは悪くないけど、ちょっぴりムッとしてしまう。 
「うー!真里亞嘘ついてない!さくたろが信じない!うーうー!」 

ほんとはそれほど怒ってないけど、少し大袈裟に言ってみた。軽く地団駄を踏んで、じたばたと暴れてみる。 
……あまりやりすぎるとママに叱られてしまうから、あくまでフリだけ。 
するとさくたろは真里亞を落ち着かせようと、ひどく慌てふためく。これがまた面白かった。 
『うりゅりゅ!ごご、ごめんね、真里亞!ボクはただ、真里亞が寂しそうだったから心配でっ……!』 
「うー、真里亞のこと、信じる?」 
『うりゅ!信じるうりゅー!』 
もう我慢の限界だった。真里亞は怒った顔を崩して、クスリと笑ってしまう。それを見るとさくたろは少しだけびっくりした顔をして、それからやんわりと優しい笑顔を見せてくれた。 
ご近所の迷惑にならないよう、ふたりで静かにクスクスと笑った。 
これで辛いことは全部吹き飛んでいってしまう。そんな気がした。 

さくたろといるときは楽しい。 
学校にいるときよりも、つまらない授業を聞いているときよりもずっとずっと楽しい。 
そして……もしかしたら、怖いママといるときよりも。 

『うりゅ?真里亞、どうしたの?』 
「うー、何でもない。それよりさくたろ、今日も真里亞と遊んでくれる?」 
さくたろは、少しだけ困った顔をした。理由はだいたい分かる。明日の学校のことだ。 
「……うー、大丈夫。寝坊したりしないよ!うー!」 
『うりゅ……。で、でも、この前も遅刻しそうだったんでしょ?』 
ふたりでいるときに学校の話をするのは嫌だった。せっかくの楽しい時間なのに、それが塗り替えられてしまうようで……。 
真里亞は明日のことよりも、ただ今さくたろと遊んでいたい。そう思った。 
「さくたろは真里亞と遊びたくない?……うー」 
『そ、そんなことないよ!うりゅ!遊ぼう、真里亞!』 
「うー!」 
さくたろも真里亞と遊ぶのが楽しいみたい。嬉しいな。 
あ、そうだ。今日は学校の帰りに、とっても面白いものを見つけたんだった。そう……確かさくたろにも見せて 
あげようと、頑張ってもって帰ってきたんだよね。 
ママに怒られちゃうかもしれないけど……。見つからなければいいよね、うー! 
『うりゅ?それ、なぁに?』 
真里亞がランドセルから取り出した雑誌を見て、さくたろは不思議そうな顔をした。表紙を見ても理解できないらしく、ただポカンとしている様子だ。 
やっぱりライオンの子だから、少しお馬鹿なのかな? 

「うー、わかんない?よく見て、うー!」 
『うりゅりゅ?大人のお姉さん?』 
「それだけじゃないよ、うーうー!」 
さくたろはうりゅーと目を凝らし、えっちな表紙をじっと凝視した。 
傍から見ると、何だか面白い光景だった。 
『うりゅ、りゅ……!!』 
やっと理解できたらしく、雑誌から顔を離し赤面するさくたろ。 
もっとからかってみるのもいいけど、それよりも続きを見せてあげたかった。 
「うー!中はもっとえっちだよ!見る?見るー?」 
『わわっ!やめて!近づけないでぇー!』 
どうやら本当に恥ずかしいらしく、さくたろは広いお部屋を必死に逃げ惑った。それを追い掛け回そうとしたところで、ハッと思い出す。 
……ああ、いけない。このままではおにごっこが始まってしまう。 
「うー!さくたろ、こっち来て!」 
『うりゅ、で、でも……』 
「来ーるーのー!早く!うーうー!」 
『わ、わかったよ真里亞……うりゅ』 
かなり強引に、さくたろを隣に座らせる。さくたろは軽いので、ソファはあまり沈まない。何だか変な感じだった。 
……ぺらり。 
表紙は難しい漢字ばかりで読めないので、無視。 
さくたろにも見えるようにしながら、荒々しくページをめくる。 

「……わ」 
……恥ずかしいわけではないが、少しびっくりしてしまった。 
ママくらいの年の女性が、全裸で男の人と抱き合っていたからだ。静かな雰囲気が、少しママと似ている。不思議と嫌な感じはしない。 
次のページでは、女性は不思議な顔で男性のおちんちんを触っていた。 
その次のページでは、ごちゃごちゃしててよく分からない道具が出てきた。それから、それから……。 
いつの間にか、夢中になってページを見ていた。いやらしくて、滑稽で、面白かった。 
……真里亞はパパがいないから、男性の体は初めて見る。好奇心と、それから不思議な気持ち。 
あ。 
「……さくたろのも、こんなの?」 
『う、うりゅ!?な、何言って……』 
ちょっとした遊び心だった。 
それに、こんなことを聞けるのはさくたろしかいない。 
「うー、見せて!ちょっとだけ!」 
『だだだだ、だめ!だめだよ、うりゅ!うりゅりゅりゅー!』 
素早くさくたろの肩を掴み、ソファへぼふっと押し倒す。するとさくたろは早くも観念したらしく、ぎゅっと目を瞑り抵抗をやめた。 
あまりにも抵抗してこないので少しつまらなかったが、したばたされるよりはマシだった。 
半泣きのさくたろには目もくれず、せかせかとぶかぶかの洋服をまくりあげる。 
少し可哀想かとも思ったが、幼い好奇心には勝てない。何より、見てみたい。 
容赦なくズボンをパンツごとずり下ろしてやった。 
……ぴょこん、と可愛いものが姿を現す。 

「うー?本のと少し違う」 
かなり小さい気がしたが、握ってみると以外と手におさまりがある。 
『うりゅ、まだ子供だもん……。って、うりゅーッ!?』 
「うー、濡れてる」 
『だだっ、だめ!だ、……うりゅ、う……』 
こうかな……? 
本の女性を真似て、適当に指で弄くってみる。 
『あ、うりゅ……!だ、だめぇ……』 
「うー?どうしたの、さくたろ?」 
『や、やめ……ないでぇ……』 
かなり意外な言葉だった。 
本当は嫌で仕方がないのを無理やり押し倒したつもりだったのに。さくたろも本当は楽しんでいるのだろうか?ここを弄られるのが、楽しいのだろうか? 
たぶん違うと頭のどこかで思いつつも、これもひとつのお遊びだということにしておく。 
優しくなでてみる。先っぽをクリクリしてみる。それから、上下に激しくこすってみる。 
「うー?こう?」 
熱い。硬い。 
最初は可愛いものだと思ったけど、今では威圧感すら感じる。何だか怖くなってきたが、続けて欲しいと懇願するさくたろを見ているとやめるわけにもいかなかった。 
腕が疲れてきたが、それでも構わずいじり続ける。 

『ひっ、く……あっ、何か……出るぅ……!』 
「え、待っ……!!」 
え?出る?おしっこ!? 
一時中断しようとしたが、遅かった。 
『あ……で、出るっ!出ちゃうよぉおおおおっ!!』 
さくたろは下半身をびくびくと震わせ、止めることもままならず放尿を……。 
……しなかった。 
代わりに数滴の何かを噴射し、はぅ、とため息のようなものをつくと果ててしまった。 
ソファに落ちたものを見てみる。……何と表現すればいいのか分からないが、おしっこでないことだけは分かった。 
これが、そうなのか。 
不思議な気持ちに襲われながら、しばらく放心する。 
『う、うりゅ……。これで気が済んだ……?』 
さくたろのおずおずとした声で気づく。 
ああ、もう十分楽しんだ。もう時間だし、そろそろ寝ようか……。 
……いや、まだ確かめたいことがある。 
「うー、まだ。あのね、教科書で習ったことがあるの」 
『うりゅ……?真里亞、何で脱いで……』 
パジャマに着替えるついで。ぽんぽんと乱暴に脱いで、部屋に撒き散らした。もちろん、後で片付けるつもり。 
……たぶん。 

パンツまで脱ぐと、まだ幼い性器が露出する。これがおしっこをするためだけの器官でないことは、真里亞もよく知っている。 
授業でも習ったけど、ほとんど独学だ。 
……そしてそれを、まだ熱くて硬いさくたろのものにこすり付けてみる。 
『う、うりゅ……!?』 
ぬるっとして、少し気持ち悪い。 
『な、何するの……?』 
「うー、見てて」 
えーと、これをここに……。 
双方よく濡れているおかげか、ぬるぬるしていてすぐにいけそうだ。 
少しだけ怖い。でも……。 
……一気にいってしまおう。 

ズッ……。 

あっさりと入ってしまったように思えたが、さすがにそうもいかなかった。 
「いッ……!ぐ、ぅ……」 
『う、うりゅ……!真里亞、大丈夫……!?』 
すぐに激痛が襲ってくる。まるで刃物で抉られたような痛みだった。 

自然と涙もこぼれてくる。それでも、もうやめてしまおうとは思えなかった。 
「うっ、く……う……」 
何故だか、寂しさが込み上げてくる。 
今、真里亞はさくたろと繋がってるんだ。寂しいことなんて何も無い。それなのに、涙がボロボロとこぼれてくる。 
『真里亞、血が……!い、痛いでしょ?早く抜いて……』 
「う、うー……だい、じょうぶ……。すぐに良くなる……」 
ゆっくりと、出して入れてみる。 
……だいじょうぶ、だいじょうぶ。だいじょうぶだよ。 
早く動けないのがもどかしいけれど、とにかく出し入れを繰り返してみる。ぴちゃぴちゃといやらしい音が響くたびに、もっと早く動きたくてたまらなくなる。 
『あ、そ……そんなに動いたら、んっ……!』 
ずっ、ちゅ……。 
「ふ……あっ、は……あ……」 
動かせば動かすほど、段々と良くなってくるのが分かる。もう少し。もう少しで……。 
「ん、さくたろ、きもちぃ……?」 
『う……き、きもちぃよ、真里亞……!』 

痛み以外の気持ちが脳裏を支配していく。 
ぼんやりして、何も考えられない。壊れた玩具のように、ただ上下に動く。 
さくたろ、大好き、さくたろぉ……。 
気持ちいい、気持ちいい……。 

「あぁ……ああああぁ……ッ!さくたろので、いっぱい、で、真里亞の中が、こすれて、ボク、ボク……真里亞、まりあ、まりあ……あぁああああああ……ッ!!」 

気づくと、時計は深夜の二時を指していた。 
魔法が解けて、冷たい現実が真里亞を包み込む。 
たくさん泣いたけど、ママは帰ってこない。 

今日も、真里亞はひとりぼっちだった。 

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