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志望理由書 - (2009/12/23 (水) 13:25:29) の編集履歴(バックアップ)


 

 私は税金のない国家を実現するために慶應義塾大学総合政策学部を志望する。これは松下政経塾の懸賞論文で優秀賞を許されて以来の私の志だ。金融危機を経た今日でも無税国家は現代日本の諸問題を解決する最良の解決策であると私は信じる。

 今日の日本においては、景気の低迷を招いている三つの失敗がある。

 第一には構造改革の失敗がある。これは、農協や問屋のような中間搾取層の取引に税金がかからないため圧力団体が残ったことが原因だ。すべての間接税を廃止し、企業間取引にも税金をかける付加価値課税制度を導入することにより流通の構造改革がなされ、圧力団体が消え、問題が解決される。逆累進性の問題は小泉信三賞に応募した論文で私が提唱した排出権給付制度で富裕層と貧困層のあいだでの排出権の取引を促すか、後述の最低所得保障制度を導入するなどして問題の内部化を図るべきだ。

 第二には量的緩和政策の失敗がある。これは、金利をゼロにまで下げても効果がない流動性の罠に陥っている事が原因だ。すべての直接税を廃止し、マイナス金利としての総合資産課税制度を導入することで問題が解決される。賃金の価格下方硬直性により同一価値労働においても世代間で同一賃金になっていない現状を踏まえると世代間格差の是正にも役立つ。財産の海外流出の懸念は、海外移転への心理的抵抗や為替のリスクを考えれば考慮するに値しないだろう。もし、流出したとしても円安が促進されれば、相手方通貨建ての対外投資からの為替差益が得やすくなる。製造業も息を吹きかえすだろう。多面的に見ればリスクはほとんどない。

 第三には積極財政の失敗がある。上記案では一割の付加価値課税五十兆と、年率二分の総合資産課税六十兆、合計百十兆の歳入が確保される。負担が重過ぎれば、国有資産の運用も視野に入れるべきであろう。十年間の強化期間を定めて、一年当たり五十五兆円ずつ国有資産を売却し、五分の付加価値税二十五兆と、年率一分の総合資産課税三十兆という税制を行うのがもっとも妥当かもしれない。

 十年は国債早期償還に余剰を当てるとしても、歳出は二十五兆まで抑制し、八十五兆の余剰を創出することが可能だと私は考える。今日の予算は九十兆であるが、ここから子供手当てと戸別保障で十兆円、基礎年金国庫支出分で十兆円、福祉負担適正化で四兆円、公共事業削減で三兆円、防衛の効率化で三兆円、中小企業助成と地方交付金で十兆円、農業の自由化で五兆円、ここまでで四十五兆円の削減が可能である。国債費以外の予算も地方・民間への委託を進めれば十兆まで削減可能であり、六十兆円分の削減は十五兆円分の貧困層向け基礎所得保障に取って代わる。よって二十五兆まで歳出削減できる。

 償還以後の歳入余剰金と外貨準備高を財源として国家ファンド群を作ることで、年間三十兆の利益を生み出せれば総合資産課税も付加価値課税もない完全な無税国家が可能になる。日本の産業空洞化による対新興国通貨での十年で二倍の円安と、新興国からの一年当たり一割の投資利益とがこれを可能にする。こうして、日本は先進工業国からコンサル・金融・先進技術開発を軸とした「研究所国家」への転換を果たすことができる。世界初の脱工業化社会となるのである。

 こうした変化を実現するためには、私たち一人一人が当事者として為政に関わる必要が生じる。高校在学中に私が始めた「あなたのマニフェスト」運動は、政治家ではなく専門分野に精通した一市民がマニフェストを作ろうというものである。私は地元紙から四ヶ月の取材を受け、紹介記事が掲載された。結果、公認会計士が経済戦略について論じ、芸術家が都市計画を描き、経営者が自宅でビデオ学習会を開き、医療法人の理事が利権の不合理を指摘する理想的なサイトとなった。私自身は、無税国家論の一提唱者として、あるいは創設者として関連の記事を執筆している。

 この運動を貴大学にも広めることで新しい企業が生み出される。それが日本変革の核になることを私は望んでいる。具体的には、私は貴大学で公共部門業務における民間活力の導入と、民間企業の公共部門参入とを手助けするコンサルティング会社を立ち上げたいと考えている。そのためには、井上教授や曽根教授に代表される貴大学の政策立案能力を総動員する必要がある。「あなたのマニフェスト」が提供するツイッター形式の議論場と、貴大学の優れた人的資源が組み合わさった時、シカゴ大学から生まれたマッキンゼーをもしのぐ、新しいコンサルティング会社をここから生み出すことも不可能ではない。ここから生まれる「工夫ある民営化」により、小さなコストでも大きな満足を与える行政サービスが実現できるとさえ私は考えている。

 小さな政府は問題さえ、新しい力に変えていく――。これは、高校一年生の時から今日におけるまで、金融危機を経ても一切変わることのなかった私の信念である。この信念を現実のものとして日本国民に示すために、ぜひとも貴学のお力添えを願いたいものである。