選択肢を選んで1000レス目でED @ ウィキ内検索 / 「冬馬681~690」で検索した結果

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  • 冬馬681~690
    冬馬671~680 ピピピピピピ 目覚ましのアラームを止めながらのろのろと起き上がる。 「まだ少し寝たり無いかな……」 夜中に目を覚ましたのがいけなかったのか。 カーテンを開けて青空を見ても頭がまだボンヤリする。 パジャマを脱いで制服に着替え、一階へ下りる。 顔を洗いキッチンに行くと、ダイニングテーブルに冬馬先輩が座っていた。 「冬馬先輩、おはよう」 「愛菜。おはようございます」 冬馬先輩は制服を着て、ゆっくりコーヒーを飲んでいた。 私の席にはお義母さんが作ったサンドイッチが置いてあった。 「朝食お先にいただきました。愛菜のお母様は先にお家を出て行かれました」 「昨日、地方の取材で早く家を出るって言ってたから」 「取材ですか?」 「お義母さんは雑誌の記者なんだ」 「そうですか。お忙いですね」 「まぁね。だけど...
  • 冬馬691~700
    冬馬681~690 「一郎くん、ちょっといいかな」 教室に残っていた一郎くんは文化祭の資料から目を離して私を見る。 放送委員長だから準備もあってこの時期は忙しいのだろう。 「大堂か。一体、何だ」 昨日よりも突き放した冷たい言い方をされる。 ここでめげていては何も始まらない。 「実はお願いがあるんだけど……」 一郎くんの様子を伺うと眉間のしわが先日よりさらに深い。 私が冬馬先輩側についたのが気に入らないのかもしれない。 「またアイツの話か」 (アイツって……きっと冬馬先輩の事だよね) 「うん。冬馬先輩に頼まれてね」 「アイツに何を言われた?」 「えっと、昼休み……って、今からなんだけど冬馬先輩に会ってくれないかな」 一郎くんの机には資料がいくつも置いてある。 委員会の仕事を休み時間に済ませようとして...
  • 冬馬671~680
    ...った。 次へ冬馬681~690
  • 681~690
    671~680 681 ①冬馬先輩に駆け寄る 「冬馬先輩、血が出てるよ……ちょっと待って」 血が滴っていることを除けばいつもの通りの冬馬先輩の前で、私は慌ててポケットに手を突っ込んでハンカチを取り出す。 冬馬先輩は傷口に当てようとしたハンカチを私の手ごと遮って、言った。 「ハンカチが汚れます、愛菜」 「ハンカチって……そんなことより今は冬馬先輩の怪我の方が大事でしょう!」 思わず声を荒らげた私にも冬馬先輩は顔色ひとつ変えず、空いている方の手の甲で無造作に額の傷を拭った。 「この程度の怪我なら放っておいても何ら問題はありません」 絶句する私の後ろで修二君がこれ見よがしに大きなため息をついた。 「はー、やれやれ。お人形さんに間違って血が通っても、お人形さんはお人形さんだね。所詮まがいものだから、心配されたってわからない」 「……修二」 戒めるよ...
  • 冬馬651~660
    冬馬641~650 冬馬先輩と一階に下りて、ダイニングに行く。 するとお義母さんがキッチンで洗い物をしていた。 「御門くんも座ってちょうだいね。今日はすき焼きだけどよかったかしら」 コンロの上に、鉄のなべが乗っている。 その横には牛肉の薄切りと割り下、切った野菜も置いてあった。 「うん、大好き。先輩もすき焼き大丈夫だよね」 冬馬先輩は私の問いに黙ってうなずいた。 「冬馬先輩も食べれるって」 「よかったわ。御門くん、卵も用意してよかったわよね」 コップや食器を持ってお義母さんがやって来た。 「じゃあ愛ちゃん、火をつけて牛脂を入れてくれる?」 「私がやるの?」 「そうよ」 てきぱきと食器を並べているお義母さんは当たり前のように言った。 (こういう役目、いつも春樹だったからな……) 冬馬先輩が座った...
  • 冬馬641~650
    冬馬631~640 「ここが私の部屋だよ」 私は扉を開け、先に中に入る。 「失礼します」 冬馬先輩は続いて入ってきた。 「子供の頃からのぬいぐるみとかあるし、あんまり綺麗じゃないけどね」 くたびれたぬいぐるみがチェストの上に何体か置いてある。 もちろん隆からもらったチハルもいる。 みんな子供の頃から可愛がっていたから、手放すのもかわいそうで今も捨てられずいるものだ。 「いいえ、愛菜らしい部屋だと思います」 「……私らしいって?」 「よく整頓されています。新しいものに限らず古いものでも大切に使っている」 「そうかな」 「はい」 私が寝起きする最もプライベートな場所。 その場所を褒められると私自分が褒められているように感じる。 「あっ、先輩を立たせたままだったね」 「いえ、僕は平気です」 「駄目だよ。えっ...
  • 冬馬661~670
    冬馬651~660 お風呂を済ませると、リビングにもう冬馬先輩の姿は無かった。 休むといっていたし、もう寝てしまったのかもしれない。 客間に行って確認するのも憚られるので大人しく階段を上る。 そして自室に入って扉を閉めた。 「私も寝ようかな」 部屋の電気を消そうとして、干してある制服のスカートが目に入る。 脱いだときはかなり濡れてしまっていたけれど、もうほとんど乾いているようだった。 (そういえば……ポケットに番号札が入りっぱなしだったっけ) 私はポケットに手を入れて、札を取り出す。 プラスチックのプレートに703と印刷されている。 水野先生はこれが一郎くん達と冬馬先輩の確執の原因だと言っていた。 (サイコメトリーって言っていたけど、私にも出来ないかな) ベッドに腰掛けて、番号札を両手で握り締める。 静かに目を閉じ、物に...
  • 冬馬631~640
    冬馬621~630 校門に入り、私は冬馬先輩と向き合う。 「少しはしゃいじゃったかな。先輩も私も肩がぬれちゃったね」 「はい」 「先輩の下駄箱はあっちだよね」 私は三年の下駄箱のある入り口に視線を向ける。 この学校はそれぞれの学年ごとに下駄箱のある入り口が違っている。 「愛菜、傘をありがとうございました」 冬馬先輩は大荷物を左手にまとめると傘をさす。 「やっぱり荷物半分持つよ」 「いいえ、大丈夫です」 「だけど」 「あと少しですので平気です」 冬馬先輩はやっぱり私に荷物を持たせてはくれなかった。 (もうっ) 「じゃあ私、教室にタオルがあるから取ってくるよ。冬馬先輩も濡れてるし拭かなくちゃ」 「わかりました」 「先輩は荷物を持って先に戻っていてください」 「はい」 私は冬馬先輩と別れてぬかるんだ...
  • ストーリーを読む 3ページ目
    501番~750番台 251番台~500番台 501~510 511~520 521~530 531~540 541~550 551~560 561~570 571~580 581~590 591~600 601~610 611~620 621~630 631~640 641~650 651~660 661~670 671~680 681~690 691~700 701~710 711~720 721~730 731~740 741~750 751番台~1000番台
  • 冬馬611~620
    冬馬601~610 611 ③「じゃあ冬馬先輩の先天的な力は具体的に何ですか?」 「僕は『水』を操る力を持っています」 「水。そういえばさっき……」 「僕は剣。ですから蛇の眷属である水龍の力を得ています」 さっき春樹の居場所を突き止めたといった時、水の力を使ったと言っていた。 という事は、水を操る力が冬馬先輩の先天的な能力で間違いないだろう。 でもスイリュウって何のことだろう。 まさか架空の生き物の龍のことを言っているのだろうか。 まだ剣とか鏡とか、一体何を指しているのかも曖昧でよく分らない。 さっき冬馬先輩は『神の力』と言っていたけど。 確かに先輩の力を見ていると神がかり的と言えなくもない。 とはいっても、あれだけの説明ではやっぱり根本的な所が理解できないままだ。 「……愛菜」 「……は、はい!!」 考え込んでいたのに突然話し...
  • 冬馬621~630
    冬馬611~620 621 ①二人を止める 「止めてよ二人共! どうして?」 二人の間に入り、首を大きく左右に振る。 「冬馬先輩も一郎くんも、研究所に居る主流派の人たちが悪いと思っているんだよね? だったら、なぜ協力しないの? ここで仲違いしている意味なんて無いよ」 目的が同じなら、手を取り合うべきなのに。 それなのに、一郎くんと修二くんは冬馬先輩に対して異常なまでに厳しい。 冬馬先輩もそんな二人に対して、歩み寄ろうとはしない。 すごく悲しくなるし、もどかしく感じてしまう。 「狙われて怖がる私を、二人とも心配してくれていたのは知ってたよ? こんな何も出来ない中途半端な私にも優しく接してくれる二人なのに、どうして? どうして協力できないの?」 冬馬先輩は何も言わず、黙って私を見ている。 一郎くんは少しだけ俯き、ため息を吐...
  • 冬馬601~610
    冬馬591~600 601 ②ここに鍵になりそうなものがないか探す (忘れないために必要なものは何だろう) せっかく夢でお母さんとの約束を思い出したのに、このまま忘れてしまいたくない。 私は濃い霧の中で必死に考える。 (駄目。こんな濃い霧じゃ何も見つからないよ) 諦めかけたその時、白い霧を裂くように、ドロドロの黒い霧が地面を這いずりながら現れた。 その黒い霧は、二つの穴が目のようにぽっかり開いている。 地面を這う黒い霧はしばらく動かず、空洞の目で私を静かに見続けた。 (な、何これ……気持ち悪い……) 地面を動くドロドロの霧は、一つの小さな黒い塊を空中に吐き出した。 すると、その塊に吸い込まれるようにして急速に人型が形成されていく。 私は恐怖のあまり、その場から動けない。 「我ヲ……」 「!?」 「我ヲ……コノ場カラ…...
  • 冬馬781~790
    冬馬771~780 身体全体がゆっくり光に向かって登っていく。 と、途中、グッと誰かに足を引っ張られる。 足首に目を向けると人の形をした黒い霧が私の足を両手でつかんでいた。 二つの穴が目のようにぽっかり開いている。 黒い霧はしばらく動かず、空洞の目で私を静かに見続けた。 (な、何これ………) 「ワレヲ……」 「!?」 「ワレヲ……コノバカラ……解放……」 「………!」 「フウイン……解ク……」 かすかに女の人のような声が聞こえる。 しゃがれ声で聞き取りにくいけど、確か誰かがしゃべっている。 とても息苦しそうに呻いているから、こっちまで胸の辺りが苦しくなってくる。 「……あ、あの」 「アカメノウ…マガタマヲ……」 いつのまにか私の手には緋色の勾玉が握られていた。 「これはあなたの?」 黒い...
  • 冬馬881~890
    冬馬871〜880 朝食を済ませた後、私は悩んでいた。 (服、どれがいいかな) 冬馬先輩と出掛けることになっている。 せっかくだしかわいい服が着たい。 (でも気合い入ってると思われちゃうかな) 部屋にはクローゼットから出した私服が並ぶ。 色々組み合わせてみたけど、しっくりこない。 悩んで結局、シンプルなワンピースを選んだ。 「愛ちゃん、お出かけ?」 出社前のお義母さんに尋ねられる。 「今日から文化祭前で自由登校だから出かけようと思って」 「かわいい服。もしかして今日はデート?」 「ち、違うよ。午後から冬馬先輩がアパート探しするみたいだから物件探しを手伝おうかなー、と思って」 「午後からなのにもう着替えてるのね。デート、楽しみで仕方ないのかしら」 「ち、違うって言ってるのに」 慌てる私が面白かったのかお義母...
  • 冬馬701~710
    冬馬691~700 「冬馬先輩、大丈夫?」 私は土下座の格好をしたままの先輩に手をさしのべる。 「すみません。情けない姿をみせてしまいました」 手を取った冬馬先輩の指先が震えている。 膝も少し笑っているようだった。 「ううん。情けなくなんか無かったよ」 「まだ震えてますね。僕は人……特に相手が高圧的に出られるとこうなってしまうんです。 幼い頃は恐怖を攻撃性に変えて手がつけられなかった時期もあるようでした」 獣のような僕と冬馬先輩は言っていた。 だけど今は誰も傷つけられてはいない。 支えるようにしながら、冬馬先輩を座らせる。 私もその隣に腰掛けた。 「冬馬先輩のおでこ、少し血がついてる。ちょっと待ってて」 きっとコンクリートに額をつけた時だろう。 私はポケットからハンカチを取り出す。 「ハンカチが血...
  • 冬馬981~990
    冬馬971~980 ゆっくり瞼を開いた。 目の前には薄い水で覆われた、先輩が作った膜がある。 そのシャボン玉のような物に、もう一度触れてみる。 (この水の膜、これは防御障壁だ) 今ならこれが私を捕らえておく檻じゃなく、命を守るための盾だと分かる。 (冬馬先輩、厳しい事言ってたけどやっぱり優しい) そのシャボン玉を指先で弾く。 するとその膜は簡単にパチンと弾けた。 「これが覚醒した力……すごい」 あと少しでこの建物の結界も解かれそうだ。 網の目のように複雑に入り組んだ術式がほどかれていくのを肌で感じる。 (香織ちゃんたち、すごく頑張ってくれたんだ) この建物を覆う結界さえ無くなれば、自然界の霊気が自由に取り込める。 そうすればこの時間を元の場所に還す事ができる。 (その前に冬馬先輩と春樹が!) ...
  • 冬馬591~600
    581~590 591 ③「そういう隆の料理の腕はどうなのよ?」 隆の言う事は正しいのかもしれないけれど。 なんとなく釈然としないものを感じてそう問い掛けると、隆はふふんと笑った。 「人並み程度には。まあ、お前よりはまっとうな料理作れるぜ」 「まっとうなって……さっきから随分な言い様じゃない」 「だから言ってるだろ。料理が上手くなりたいんならマズイものを作ったらマズイって気付かなきゃ駄目だ。お前のとこの春樹やおばさんみたいに黙ってちゃ愛菜はわからないだろ」 散々な言われように言いたい事もあったはずなのに、隆の言葉に私は思わず口をつぐんでしまった。 (春樹も、お義母さんも……私に気を使って何も言わなかったのかな?) 「そう、だね。……我慢してマズイもの食べさせるなんて、可哀想だよね」 「愛菜?……やれやれ」 押し黙ってしま...
  • 冬馬791~800
    冬馬781~790 『悪天候のため飛行機が欠航で今日は帰れなくなりました。愛ちゃん、よろしくお願いします』 お義母さんからのメールに気付いたのは家の前だった。 「お義母さん、今日帰ってこられないって連絡来てたよ」 「そうですか」 「あの……」 「何でしょうか」 「あのね、あの……」 (少しでも先輩と一緒に居たい) この先、どれだけ時間を共有できるか分からない。 もしかしたら、春樹が無事に戻って来たら姿を消してしまうかもしれない。 私のそばに居てくれたとしてもたった5年しか無い。 どちらにしろ、あまりに短過ぎる。 (離れたくないな) 「えっと……」 「……」 「その……」 (でも振られてるし、言い出すのが難しいよ) 「もしかして、心細いですか?」 先輩が尋ねてくる。 私は「うん」と首を大きく...
  • 691~700
    681~690 691 ①「照れてるんじゃないかな」 「そうなんだ……わかった! 僕のカッコがみんなと違うから照れちゃうんだね」 チハルはポンッと音をさせて、男子の制服姿になった。 「この姿なら、みんなと一緒だよ。これならいいかな?」 「きっと言ってくれると思うよ。ねぇ、一郎くん」 そう言いながら、私は一郎くんに目配せをした。 一郎くんも観念したのか、諦めたような溜息を吐いている。 チハルはクルクルとまわりながら、一郎くんの元へ駆け寄っていった。 「変身したよ。だから、チハルって言ってよぉ」 「…………チハル。これで、いいのか?」 「うん。やったー! 愛菜ちゃん、言ってくれたよ」 また私のところに駆け寄って、抱きついてくる。 一方の一郎くんは、どっと疲れたような顔をしていた。 キーンコーン 三時間目の予鈴が鳴った。 私たちは部...
  • 671~680
    661~670 671 ①八尺瓊勾玉の存在 なぜか八尺瓊勾玉だけを聞き取ることが出来なかった。 でも、私の知っている祝詞は三種の神器がすべて揃っていたはずだった。 (幼い私が力を捨ててしまった時のように……勾玉も心の枷になってるという事?) 剣と鏡と勾玉はご神体だった。 私は巫女として祝詞を奉読したり、神楽を舞ったりしていたのだ。 そして、神託を帝に……。 「私は……巫女として…神様の声を…神託を告げる役目だったよ」 声に出して認めた瞬間、ぼやけた映像が鮮明に変わっていった。 まばゆい光に包まれて、意識が吸い込まれる感覚に襲われた。 ――ずっとずっと昔、人々がまだ八百万の神々だけを信じ、祈りを捧げていた時代。 日本がようやく一つの国として成り立ち始めた頃、私は生まれた。 でも、混乱した時代はまだ続いていた。内乱は収まらず...
  • 601~610
    591~600 601 ①「……春樹の話してくれた昔話、男の人が幸せになる結末だったらいいな」 「そう思う?」 「うん、今までの努力が報われるといいなって思う」 「……うん」 春樹に向かって笑いかけたとき、ふと身体が引っ張られるような感覚がした。 遠くで名前を呼ばれている感じがする。 (あ、そろそろ起きる時間かな) 「姉さん?」 「春樹、そろそろ起きる時間だよ。いい? くれぐれも無茶しないでね?」 「わかってるよ。まったく……なんで夢でまでなんでこんなに………」 春樹の呟きが徐々に遠くなり、ふっと景色が変わる。 どこまでも続く草原。 (あれ?) 相変わらず遠くでは私を呼ぶ声が聞こえているが、どういうわけかその方向へ向かおうとしても何かに邪魔をされているような、妙な抵抗感がある。 廻りを見渡しても見えるものは何も無く、見たことのない場所...
  • 481~490
    471~480 481 ②実は春樹にもなにか力が? 「もしかしたら…春樹にもなにか力があるって事?」 私は思った事をそのまま口に出した。 「それがね、よくわからないんだ。愛菜ちゃんと隆にはゆらゆらしたのが出てるのに、春樹には無いよ。 だから、フツーの人なんだけど…ぎゅってすると気持ちいいの」 何か感じ取っているチハルすらもお手上げのようだ。 春樹は下を向き考え込んでいたが、不意に顔を上げた。 「………ゆらゆらって言うのは、おそらく力のことだと思う。 一郎先輩と修二先輩の力で姉さんを見た時、体の中心に炎があって、体全体が蒼白いゆらゆらと流れるものに覆われていた。 見た人全員に炎はあったけど、蒼白く流れるものはなかったんだ」 「宗像兄弟はそんな力を持っているのか。あいつら一体、何者なんだ?」 隆が双子の話を聞いて、眉をひそめながら呟...
  • ストーリーを読む 1ページ目
    ストーリーを読む 共通・トゥルールート 1番台~250番台 1~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~90 91~100 101~110 111~120 121~130 131~140 141~150 151~160 161~170 170~180 181~190 191~200 201~210 211~220 221~230 231~240 241~250 251番台~500番台へ
  • 281~290
    271~280 281 ②御門くんを見る 御門君までこんな行動を取るとはおもわなかった。 びっくりして、御門君を見つめてしまう。 御門君は相変わらず無表情で何を考えているのかわからない。 「冬馬も、そう思うか。うんうん。やっぱりかわいいよなー」 頭に手を載せたまま、周防さんがうんうんと、頷いている。 「………」 「そっかそっか、冬馬も妹ができたみたいでうれしいかー」 御門くんは何も言っていないが、周防さんは一人でニコニコと笑っている。 (…って、あれ?) 周防さんの言葉に、引っ掛かりを覚えて、周防さんの言葉を反芻する。 そして、その引っ掛かりがなんなのか気づいて、思わず… 1.御門くんって1年生なんじゃ? 2.姉の間違いじゃないですか? 3.御門君を凝視する。 282 2.姉の...
  • ストーリーを読む 冬馬
    ストーリーを読む 共通・トゥルールート591の選択肢より分岐 冬馬591~600
  • 621~630
    611~620 621 ①「熊谷……さん?」 私は香織ちゃんに向って、半信半疑のまま話しかけた。 「よく判ったなぁ。でも、実際は俺じゃねぇんだ。操っているだけだからよ」 (操るって……まさか) 「ファントム……まさか、香織ちゃんにファントムを……」 「おっ、知ってるなら話は早いぜ」 香織ちゃんはフンと鼻を鳴らして私を見る。 「こんな汚ねぇ手は好きじゃないが、命令だからなぁ」 (で、でも……前に隆に聞いたときは、すぐに操れないって言ってたけど) もしかしたら、嘘を言っているかもしれない。黒い靄は見ていないし、話を鵜呑みにするのは危険すぎる。 「黒い靄を見ていないけど、どういう事ですか?」。 「さっき近づいたときに、仕込んだんだよ。無防備すぎて、拍子抜けだったけどな」 「ファントムは、操るのに一週間はかかるはずですよ」 「はぁ?...
  • 話の流れまとめ 冬馬
    冬馬ルートの流れ 冬馬ルートは共通トゥルールート591の選択肢より分岐 経過日数 該当レス 登場人物 主な出来事 8日目(火曜日) 591~603 愛菜、隆、冬馬 愛菜の携帯電話がなる。着信は電話ボックスから。 愛菜が動揺しすぎていてチューニングが出来ない。落ち着くように言われる。 内容を聞く前に電話がきれる 外に人影、冬馬先輩かもしれないと外に出ようとするが隆に止められあきらめる チューニングをして冬馬と通信。水野が操作された事で主流派が動き出した事を知る。 上記、春樹が出て言った事に関係するかもしれないと思う。 春樹の父博信と、異母兄秋人の事を聞く。 組織の目的は愛菜の力だといわれるが、それも時と共に変わると言われる。 愛菜の力について冬馬が話せないのは、愛菜の母との約束があるからだと知る。 子供の頃の自分と母の夢を見る。夢を見た事を忘れるのは母との約束があったから...
  • 冬馬801~810
    冬馬791~800 お風呂から上がり、部屋着に着替えて水を飲む。 すると居間のソファーに冬馬先輩が座っていた。 昨日のTシャツを用意しておいたから、先にお風呂に入っている先輩も用意した服に着替えていた。 「先輩、客間に布団を敷いておいたからね」 「ありがとうございます」 「少し時間がはやいね。まだ寝ない?」 「はい」 「私もまだ眠くないかも。少しお話ししてもいいかな」 「僕も愛菜と話したいです」 「よかった。何か飲み物持ってこようか?」 「大丈夫です」 「そっか。私も今はいいかな」 私は冬馬先輩と少し距離を置いて隣りに腰掛ける。 「私……今日ずっと考えてたんだ」 「何をですか?」 「私の能力って以前教えてもらったけど、強く願えば未来を思うように実現できるんだよね」 「封印を解けば可能だと言われています」 「冬馬先輩の時みたいに、...
  • 冬馬891~900
    冬馬881~890 夕食も済んで、私の部屋に冬馬先輩を誘った。 一緒に暮らす話を、まだお義母さんには内緒にしておきたかったからだった。 小さな折りたたみの机に不動産屋さんでもらった物件のコピーを並べてみる。 「花沢さん、とっても親身になってくれたね」 「少しも良くないです。今度会ったらキツく言っておきます」 「いいよ。私は気にしてないし」 冬馬先輩に案内されたのは駅前の昔からありそうな『花沢不動産』だった。 気の良さそうな恰幅のいいおじさんが出迎えてくれた。 冬馬先輩に対して、その人はすごく丁寧な話し方をした。 「神器って、すごいんだね。それだけで待遇が良いんだもん。家賃が要らないって言われた時にはびっくりしたよ」 「僕は愛菜が口を滑らさないか、ずっとハラハラしていました」 「私が巫女である事は黙っておくようにって言われた時は、なんで...
  • 冬馬871~880
    冬馬861〜870 家の鍵を開けると、キッチンからお義母さんが顔を出した。 「愛ちゃん、御門くんおかえりなさい」 「ただいまー」 「ただいま戻りました」 私達は家の中に入る。 「長く一人暮らしなので、ただいまと帰ってくるのは久しぶりです。良いものですね、出迎えてくれる人がいるのは」 冬馬先輩が廊下に立ち止まってポツリともらす。 安心したような、照れるような横顔があった。 (シェアハウスの件、ちゃんと考えてみようかな) 冬馬先輩が嬉しい事、楽しい事を惜しんでちゃいけない。 あっさり振られたって、好きな内は追いかけると決めたんだ。 「しばらくご厄介になります」 キッチンに行って、冬馬先輩はお義母さんに丁寧な挨拶している。 「水道が使えないなんて生活が大変だもの。直るまでうちに居て頂戴ね」 「ありがとうござ...
  • 冬馬771~780
    冬馬761~770 「ちょっと人が多すぎるわね。こっち来て」 小さな私と隆は、先を行く女の子に黙ってついていく。 「ここにあらかじめ結界を張っておいたの」 「ケッカイ?」 「秘密基地みたいなものよ。さ、入って」 公園の一角、木々が茂った死角がある。 そこは木漏れ日が芝生に影を落としていた。 「……その、あなたは私の味方なんだよね」 「そうよ」 「こんな所に連れてきて、私と隆くんをどうするの?」 小さな私はオドオドと隆に隠れながら言った。 「お前、まさか愛菜ちゃんをいじめるんじゃないだろうな」 「違うわよ」 「もしかしてあのドロドロの仲間か」 「まさか」 「じゃあ、大人に言われたのか」 「細かい事はいいでしょ。それより私、ランドセル買ってもらったの。一体何色だと思う?」 女の子は突然質問を投げかけてくる。 ...
  • 611~620
    601~610 611 ①隆をたたき起こす 「隆! 起きて遅刻するよ!」 部屋には入らず大きな声で叫んでみるが、隆はうるさそうに寝返りを打って向こうを向いてしまった。 起きる様子は無い。 隆の寝起きは良いほうだから、これで起きないのは珍しい。 「まったく……」 私はため息をついて隆の側まで歩いていって揺さぶる。 「隆、起きてってば!」 「……ん~」 返事はするもののそれだけだ。 今度は軽く叩いてみる。 「返事だけじゃダメなんだって! 遅刻するって言ってる……わっ」 唐突に隆の手が伸びてきて私の手を掴んだ。 次の瞬間には力いっぱい引っ張られ、私はバランスを崩して隆の上に倒れ込む。 とっさに手をついて隆に全体重をかけてしまうのは阻止したが、多少衝撃があったはずなのに隆が目覚める様子は無い。 「愛菜ちゃん!」 「あー、チハル...
  • 581~590
    571~580 581 ①「組織は周防さんが生き返ったことをなぜ公表しなかったの?」 「身内から反逆者が出たとあっては、権威に関わりますからね。 組織にとって、死んだままのほうが好都合だったのでしょう」 「で、でも……周防さんはちゃんと生きているのに……」 「それが組織のやり方なのですよ」 美波さんは苦笑を浮かべた。 「あ、あの…力を使った綾さんは、一体どうなったんですか?」 綾さんの事がどうしても気になって、私は美波さんに尋ねた。 「綾は脱走犯として隔離棟の厳重な監視下に置かれ、二ヶ月後、誰にも会うこと無くこの世を去りました」 私は何も言葉をかけることが出来ず、冷めた紅茶に口をつけた。 隆も黙ったまま、美波さんをジッと見つめている。 「綾の死後半年以上が経ち、私は周防と面会の機会を得ました。 本来、会わす顔も無いのですが、一...
  • 81~90
    71~80 81 3、一人で行く 「もぅ、二人とも、私だって子供じゃないんだから、一人でいけるって」 微妙な雰囲気の二人に、つとめて明るく笑う。 「私に付き合う口実で、サボろうとしてるんでしょ?まったくもぅ」 やれやれと、肩をすくめてみせて靴を履く。 「それじゃ、二人とも遅刻しないようにね?」 「うん、姉さんも、無理しないで痛かったら休むんだよ?」 「…………」 「はいはい」 春樹が苦笑ながら言う。隆は何かをいいたそうだったが、無言で頷いた。 タクシーのドアが閉まる。 行き先を告げ、走り出したタクシーの中で思わずため息をつく。 隆へどう接していいのかわからない。 修二くんの言った事が本当かどうかわからない今、態度を変えるのはおかしいことだとわかってはいるけれど…。 診察を終え、会計を済ませる。 湿布を張り替え...
  • 冬馬971~980
    冬馬961~970 黄泉醜女。 日本神話に登場する鬼。 逃げた神様を追いかける怖い女。 顔は醜く、執念深く恐ろしい化け物。 私の中でイメージしていた容姿と目の前の可愛らしい少女とが結びつかない。 「本当に黄泉醜女さんだよね」 「はい」 「ツノ、生えてないんだ」 私は頭の上を指で差しながら呟く。 「ツノもありませんし怖くもないですよ」 「そっか。よかった」 「黄泉の国は中つ国の人達にとっては異邦人。霊力を自在に操り、怪しい術を使う得体の知れない者。ですから、伝承に尾ひれがついてしまい、ツノを持った鬼となったのでしょう」 (しこめって醜い女って意味だけど、すごく可愛らしいよね) きめの細かい肌、色白に映える頬の薄紅色。 長い髪はツヤツヤでお人形のように整っている。 それでいて受け答えや言動が大人顔負けに落ち着いている。...
  • 651~660
    641~650 651 ①混乱してしまい、涙が溢れてきた 「愛菜! 落ち着けって!!」 その言葉に、私はいやいやと頭を振る。立ち上がって、声にならない気持ちを訴える。 聞きたいのはそんな言葉じゃない。 力が無い私には、何も出来ないのは分かっている。足手まといになるだけだって、理解してる。 守ってくれる人を犠牲にできるのか? 後ろを振り向かず、逃げ切れるのか? ……やっぱり私には無理だと思う。 守られるって――一どうして辛いの? 突然、両腕を力強く掴まれ、我に返る。 さっきまでテーブルを挟んで座っていたはずなのに、目の前には、真剣な隆の顔があった。 「混乱させるようなことを言って、すまなかった。そっか、泣くほど悩んでたんだな。……気がつかなくて、その…悪い」 (私……泣いてるの?) 呆けたまま、私は隆を見つめる。 私の頬...
  • 881~890
    871~880 881 ②(壱与なの?) 問いかけても答えは返って来なかった。 (壱与! 壱与ならちゃんと答えて) 独り言を考えているみたいに、一方通行の呼びかけにしかならない。 混乱したまま、状況だけでも確認しようと意識を向ける。 部屋の壁に押し付けられたままの修二くんが、息苦しそうに声を出した。 「笑うな……」 「ふふふっ。鏡よ、まるでお主は玩具を手に入れたがっている子供じゃ」 「どういう意味だ」 「言葉のままじゃ。この者を強引に手に入れたところで、玩具のように壊れてしまうだけだというのにな」 「黙れ。アンタに人の心が分かるのかよ……」 「自惚れるなよ、鏡。お主こそ人ではなくただの道具ではないか」 『道具』という言葉を聞いて、修二くんが息を止める。 さっきまで抵抗していた修二くんの両腕が、だらりと垂れた。 「道具...
  • 591~600
    581~590 591 ③「そういう隆の料理の腕はどうなのよ?」 隆の言う事は正しいのかもしれないけれど。 なんとなく釈然としないものを感じてそう問い掛けると、隆はふふんと笑った。 「人並み程度には。まあ、お前よりはまっとうな料理作れるぜ」 「まっとうなって……さっきから随分な言い様じゃない」 「だから言ってるだろ。料理が上手くなりたいんならマズイものを作ったらマズイって気付かなきゃ駄目だ。お前のとこの春樹やおばさんみたいに黙ってちゃ愛菜はわからないだろ」 散々な言われように言いたい事もあったはずなのに、隆の言葉に私は思わず口をつぐんでしまった。 (春樹も、お義母さんも……私に気を使って何も言わなかったのかな?) 「そう、だね。……我慢してマズイもの食べさせるなんて、可哀想だよね」 「愛菜?……やれやれ」 押し黙ってしまった私の前で、隆は困っ...
  • 冬馬811~820
    冬馬801~810 (おなかすいた) 眼球だけうごかして周りをみる。 (よるだ。何かたべたい) とにかくおなかぺこぺこだった。 いつものつめたい箱の中にたべものがあるはず。 深い海の底のようなとても静かなよる。 わたしはおよぐように階段をおりる。 つめたい箱の扉を開けるとまぶしくて目がくらんだ。 あかりは嫌い。 目がつぶれてしまいそう。 まぶたを閉じて、匂いでたべものをさがす。 (きょうはすくない) 愛菜のははおやがかえってこなかったから食べるものがほとんどない。 それでもあるだけぜんぶ食べる。 (ぜんぜんたりない) いちばんのごちそうの匂い。 でもあれをたべたくないと私はいう。 たべたいわたしとたべたくない私。 どっちもどっちでせめぎあってる。 眩しいおひるは私の時間。 暗いよるはわたし...
  • 冬馬901~910
    冬馬891~900 すべて上手くいっている。 あの時はそう思っていた。 規格外の能力を持つ雨の日の冬馬先輩に敵はいないはずだった。 なのに…… (冬馬先輩……) もう涙も枯れ果てた。 最後に冬馬先輩を見た時、虫の息だった。 それからが思い出せない。 亡骸に縋り付いた所で私の記憶が完全に途絶えてしまっている。 ガタッと音がして、外界との唯一の接点である小さな扉からトレーに乗せられた食事が出てくる。 「これで3回目」 日の光を取り入れる窓がないせいで、昼か夜かもわからない。 定期的に出てくる食事の3回目に印をつける。 これが毎日の日課になっていた。 (もう正って字を何度書いただろう) 20畳ほどの部屋に閉じ込められて、ノートには正が30個溜まった。 日々の日数を数えるのも、少し気持ちが落ち着いてから始めた事だ。 ...
  • 冬馬821~830
    冬馬811~820 ピピピピピピピピ 布団から腕を伸ばして目覚まし時計を叩く。 (もう朝か) カーテンを開けて、大きく背伸びをする。 今日も天気が良くなりそうだ。 (なにも夢をみないの久しぶりだな)  制服に着替えながらしみじみ思う。 ここ最近は色んな夢をみて自然と眠りが浅くなっていた。 (きっと疲れていたのかも) 今日はよく眠れた気がする。 体調も良いかもしれない。 階段を下りて、顔を洗う。 髪をセットしていると、いい香りがキッチンから漂ってくる。 (コーヒーの匂いだ。冬馬先輩だね) 顔をのぞかせると、キッチンに冬馬先輩が立っていた。 きっちり制服も着ている。 「おはよう冬馬先輩、起きるのはやいね」 「おはようございます、愛菜。目が覚めてしまったので、勝手にキッチン使わせてもらいま...
  • 981~990
    971~980 981 ④大和先輩 「良く会いますね」 先輩は私を見ると、こちらに歩いてきた。 「そうですね……。先輩はもう食堂終わったんですか?」 「はい」 「そうなんですか」 それで会話は途切れてしまったが、不思議と居心地は悪くない。 二人でぼんやりと夕焼けを見る。 と、唐突に強い風が吹きぬけていった。 「あっ」 慌てて、スカートを押える。 「大丈夫ですか?愛菜さん」 「は、はい……え?」 乱れてしまった髪をなでつけながら返事を返して、違和感に首をかしげる。 (私、名乗ってないよね?) 私の疑問に思い当たったのか、大和先輩は少しだけ微笑んで「テーブルでの会話が聞こえましたから」と答えた。 「そうなんですね。あ、でも、改めまして……私、二年の大堂愛菜です」 「僕は三年の三上大和です」 なんとなく今更な感じが...
  • 冬馬741~750
    冬馬731~740 「悪い。少し遅れちまった」 玄関扉を開けた冬馬先輩の横を通って、周防さんが部屋に入ってくる。 「周防さん。こんにちは」 顔を合わせて、開口一番あいさつをする。 こんにちはとこんばんはの間くらいの時間になっている。 一瞬迷って、こんにちはを選んだ。 「愛菜ちゃん待たせちゃってごめんな。時間も無いしさっそく始めるかな」 (始める?) 「あの……周防さんが私に用があったんですよね」 「違うって。愛菜ちゃんから頼まれたって冬馬が言ってたぞ」 頭の中に?が飛び交う。 私、周防さんに何か頼み事なんてしていただろうか。 「冬馬。まさか愛菜ちゃんに説明せずに連れてきたんじゃないだろうな」 冬馬先輩の横に座った周防さんがジロッと睨む。 「あの、私に説明って何でしょうか」 意味が分から...
  • 641~650
    631~640 641 ①許す 『いいよ。もう済んだことだもん』 私の書いた文字を見て、武くんは嬉しそうに顔を崩した。 「それじゃ、隆とまた付き合って頂けるんですね。よかった……。僕が破局させてしまったんではないかと、悔やんでいたんです」 『元鞘に戻るわけじゃないよ』 「えっ!? なぜですか」 武くんは納得できないのか、身を乗り出してきた。 『付き合ったときは嬉しかったし、楽しかったけど……。もう少し、真剣に考えてみようかと思ったの。 今回の事で付き合うって、楽しいだけじゃなく、辛い事もあるってわかったから』 「でも……」 『別に嫌になったわけじゃないんだよ。もっと自分自身がしっかりしなきゃいけないと思っただけなんだ』 春樹が出て行ったのも、声が出なくなったのも、私自身の弱さのせいだ。 それが分かっているからこそ、今は誰...
  • 181~190
    171~180 181 ②5年前 私が小学6年生、春樹が小学5年生。 あの頃はまだ、私と春樹の身長は同じくらいだった。 私は中学に上がってすぐに身長が伸びなくなって春樹に追い越されたのだ。 (そういえば、春樹は最初再婚に反対してたんだっけ…) 当時のことを思い出す。 春樹に最初に会って言われたのは、『お前らなんか必要ない!』という言葉だった。 そのときはショックで、私は泣いてしまったのだ。 後から知ったことだけれど、義母は前の夫の暴力が原因で離婚していて、そんな義母を見て育った春樹は父親という存在を疎ましく思っていたらしい。 当時のことを春樹は汚点だというけど、義母を守るための言葉だったって父も私もわかっている。 それに、そんなすれ違いも1週間もすれば消えていた。 春樹の心にどんな変化があったのかわからない。 一...
  • 冬馬711~720
    冬馬701~710 「落ち着きましたか?」 ずっと胸を貸してくれていた先輩が尋ねてくる。 持っていたハンカチは涙でぐしゃぐしゃだ。 「大分落ち着いたよ。もう大丈夫だから」 そう言いながら先輩から身を離して、なんとか笑顔をつくってみせる。 かなり長い間泣いていた。 屋上とはいえ授業中。 声を上げて泣いてしまいそうになるたび、冬馬先輩が苦しくなるほどギュッと抱きしめてくれていた。 泣き声は学校中に響かなかったけど、ブレザーに大きな涙のシミを作ってしまった。 「冬馬先輩の制服、涙で濡れちゃってるね」 「はい」 「鼻水もついちゃったかも」 「構いません」 「でも……」 「僕がいいのだから、愛菜が気にすることないです」 「やっぱりクリーニングに……」 言いかけた私を制すように冬馬先輩は首を横に振った。 「愛菜は僕の...
  • 381~390
    371~380 381 ③ハンドライト (古典的な方法だけど……みんな怖がってくれるのかな) 下からライトを当てて顔だけ浮き上がらせる――なんて小学生でも失笑するような方法で大丈夫なのだろうか。 不安に思いながらも、とりあえず私は自室にあるはずの災害用ハンドライトを探す。 (確か、この辺に置いておいたはずだけど) 「見つけた」 引き出しの中からハンドライトを取り出した。 電池がまだあるか確認するために、スイッチを入れる。 「あれ?……ライト点いてるのかな?」 電池の残りが少ないのか、点いているのかよくわからない。 私は自室の明かりを消して、再度ハンドライトのスイッチを入れた。 「うん。大丈夫みたい」 その時、ドアをノックする音が聞こえた。 「姉さん、俺だけど」 「春樹?」 ...
  • 781~790
    771~780 781 ①実際に過去に来ている (壱与から抜け出して、過去に来てるのかな……) よくわからない。 でも、今までの夢から現実での謎が解けてきている。 だったら、今回もこの夢に意味があるのかもしれない。 「くっ……ここは…」 どうやら守屋さんが目覚めたみたいだ。 私は守屋さんの傍まで、急いで駆け寄る。 「…一体…どこ…なん…だ…」 「ここは……えっと光輝。ここはどこ?」 光輝は「はぁ?」という顔をして、仕方なさそうに口を開く。 「ここは穴虫峠の外れだ」 「……そうか、俺は……君らに助けられたのか……」 「怪我をしていたので、治療しておきました」 「……すま…ない」 そして、守屋さんはまた目を閉じてしまった。 ジッと睨みつけるように見ていた光輝に、私は顔を向ける。 「どうしたの怖い顔して?...
  • 冬馬951~960
    冬馬941~950 「愛菜、落ち着いてください」 「でも春樹が!」 もう少しで春樹を救える。 怪我はないか。 ちゃんと家に帰って来るのか。 どうして黙って出て行ってしまったのか。 話たい。今すぐに。 だけど先輩に手首を強くにぎられてしまって動けない。 「痛い……離し……離して!」 手を振り解こうと全力でもがく。 だけど冬馬先輩はその右手を解いてくれなかった。 「愛菜はここにいてください」 「でも!」 「手荒な真似は避けたかったですが仕方ない」 「何を……!」 「少し大人しくしていてください」 身体にひんやりとしたものがまとわりつく。 気がつくと、水の膜で周囲を覆われてしまっていた。 それはシャボン玉のようだったけれど、弾力があって私の力では割れそうにない。 『冬馬先輩!』 『これを今すぐ解いて』 『駄目で...
  • 冬馬751~760
    冬馬741~750 「じゃあそこのベッド借りるか。愛菜ちゃんそこに横になってみようか」 「はい」 言われるまま、ベッドに仰向けに寝る。 周防さんは私の額にそっと手を置いた。 (このマクラ冬馬先輩の匂い。ダメだ、ギュッとされたの思い出す。これから退行催眠だから緊張しちゃいけない。平常心平常心) 私は必死で自分に言い聞かせる。 「えっと、なんだ……あいつはトウヘンボクのオタンコナスだから。とっとと忘れるのが一番かもな」 周防さんが私だけに耳打ちした。 私も周防さんにだけ聞こえる様に話す。 「それって冬馬先輩のことですか?」 「ついでにデクノボウの大バカだ」 口は悪いけど、周防さんなりの励ま方なのかもしれない。 さっき冬馬先輩の心を読んですべて把握したのだから、振られたのだって知ってるはずだ。 「私の心、やっぱり...
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