選択肢を選んで1000レス目でED @ ウィキ内検索 / 「161~170」で検索した結果

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  • 161~170
    151~160 161 ①一郎君と修二君に家に入ってもらう 「こんなところで立ち話もなんだし、家に入ろう?」 私と春樹ははだしのままだ。 誰かに見られたら不審に思われてしまう。 「そうだな」 一郎君が周りを見回す。 「近くに異常はない。もう大丈夫だろう」 リビングに戻り、ソファに4人で座る。 「ファントムは知性を持ってるわけじゃない。簡単な命令を実行するだけだ」 一郎君はさっきの影をそう説明する。 「生気を吸われた人間は弱る。そしてファントムは力をつける。力をつけたファントムは、その人間を操れる」 「つまり、目標物に取り付かせて、ある程度弱らせて、目的の場所につれてくる。とかいう使い方ができるんだな」 「多少時間はかかるが、簡単に誘拐ができる」 「なにぶん、自分の足で歩いていっちゃうからね~」 ...
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  • 171~180
    161~170 171 2.なんで私と契約するのか聞く。 「何で、私なの?」 そもそもの疑問を御門君にぶつける。 私の質問に御門君はすぐには答えなかった。 胸元に手を当て、じっと考えるようなそぶりを見せる。 「託されたからです」 やがて、御門君は静かに答えた。 「誰に?」 私の再度の問いに御門君は沈黙する。 胸元に当てた手は、今度は軽く握られて。 御門君は視線をそこまで下げてじっとそれを見つめてから、顔を上げた。 「僕とも、あなたとも縁の深い人です」 私から視線をそらさずに、御門君が答えた。 「え?それってどういう……」 そこまで言ったとき、不意に景色が変わっていくのに気がついた。 「あれ?」 見回せば、だんだん辺りが白み始めている。 「……夢の終わりが訪れたようです。あなたの意識が目覚め始めて...
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    751番台~1000番 501番台~750番台 751~760 761~770 771~780 781~790 791~800 801~810 811~820 821~830 831~840 841~850 851~860 861~870 871~880 881~890 891~900 901~910 911~920 921~930 931~940 941~950 951~960 961~970 971~980 981~990 991~1000
  • 61~70
    51~60 61 2.ぼーっと窓の外を眺める 私は窓際のベッドに腰掛けたままなんとなく外を眺めた。 校庭では体育の授業が行われている。 どれくらいボーっとしていたのか、ふと時計を見るともうそろそろ授業が終わる時間だった。 「あ、もうこんな時間だ、…先生帰ってこないな」 そのとき、ふと視線を感じて、窓の外を見る。 校庭の隅、少しはなれたところから、私を見ている人がいる。 それは… 1.隆 2.御門くん 3.水野先生 62 2.御門くん さっき、保健室までつれてきてくれた男の子だった。 (確か、御門くんっていったっけ……) その男の子……御門君は、制服姿のままそこに佇んでいる。 私が見ていることに気がついていないのか。 それとも……気がついていて、なおそうしているのか。 御門くんは私を...
  • 151~160
    141~150 151 ③「どうしてみんな、こんな力に注目してるのかな?」 もし、これが力だとすると本当に何故、狙われることになるのかわからない。 春樹はしばらく考え込んで口を開いた。 「そうだね、でももし、もしだよ?」 春樹が「もし」を強調して言う。 「姉さんの見ている予知夢、それが最初から姉さんの記憶とか、脳とかに刻み込まれたようなもので、もう一人記憶を読めるような力をもつ人が居たとしたら?」 「それはどういう……?」 「姉さんは力に自覚がなくても、もう一人の力の持ち主には大きな意味があるってこと。もし、の話だけどね」 春樹の言葉を考えて、私は笑った。 「春樹、でもそれじゃあ意味がないよ?私がみる夢は私に関する予知夢だけだもん」 「覚えてないのに、どうしてそう言い切れるの?」 「あ……」 呆れたようにため...
  • 261~270
    251~260 261 ③御門くんに好みの色を聞いてみる。 (一応本人にも聞いておいたほうがいいかな?) いろいろな色のシャツを見ながら、私はそんなことを思った。 「私、ちょっと御門君に聞いてきますね」 「おう」 周防さんに見送られながら、私は試着室の前へと歩いてくる。 「御門君?ちょっといいかな?」 ノックをしながら呼びかける。 「はい」 中からはすぐに御門君の返事が聞こえてきた。 そして、ほぼ同時に試着室のドアノブが内側から回される。 それを見て、ふと脳裏に浮かんだのはさっきの光景。 何故か嫌な予感が頭をよぎる。 「あ、いいの!いいから、開けないで!そのまま聞いてっ」 慌てて言うと、ピタリとドアノブの動きが止まった。 ……どうやらすんでのところで止まってくれたらしい。 (ま、間...
  • 561~570
    551~560 561 ①隆にも一緒に家に入ってもらう 「いまお義母さんから電話が来て、春樹が連れて行かれたっていうから慌てて帰ってきたところなの」 「春樹が?」 「そしたらチハルは泣いてるし……とりあえずチハル、ぬいぐるみにもどってね」 「……うん」 いつものように軽い音を立てて、チハルはぬいぐるみに戻る。 チハルをいったん隆のスポーツバックに入れてもらって、玄関をあける。 「それでお義母さんすごく取り乱してるの……、とりあえず入っ……」 「愛ちゃん!春樹が!あの人に連れて行かれてっ」 玄関の扉を開けた途端、お義母さんがものすごい勢いで走ってきた。 サンダルも履かずに玄関から出てくる。 お義母さんはもう泣いては居なかったが、その目は真っ赤だ。 「お、お義母さん落ち着いて」 「おばさん、こんばんは」 「あ……、隆くん、こんばんは」 ...
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    501番~750番台 251番台~500番台 501~510 511~520 521~530 531~540 541~550 551~560 561~570 571~580 581~590 591~600 601~610 611~620 621~630 631~640 641~650 651~660 661~670 671~680 681~690 691~700 701~710 711~720 721~730 731~740 741~750 751番台~1000番台
  • 761~770
    751~760 761 ①さらに続きを見る 「私は……あなたは……」 壱与は混乱している。 なぜ帝がこんなことを言っているのか分かっていない。 (壱与……帝はあなたを畏れていないのよ。ただあなたを求めてるだけなの) 「私は、あなたに……あの姿を知られたくなかった……知ったらすべてが壊れてしまう」 「なぜ?」 「私は鬼だから……人ではないから……」 「鬼でも人でも魔でも壱与は壱与だ、関係ない。いったい何が壊れるというんだ」 「……私が、怖くないの?」 「壱与が? なぜ僕が壱与を怖がるんだ?」 帝は心底分からないというように、首をかしげ壱与を覗き込む。 「僕が壱与を怖がることはない。こんなに愛しいのに」 そういって帝はさらに強く壱与を抱きしめる。 それを聞いた壱与の頬を新たな涙が伝う。 「本当に?」 「今まで君にはたくさん...
  • 461~470
    451~460 461 ①一郎くんのいいところを言う 肩越しに、一郎君くんの息遣いまで聞こえてくる。 これほどの至近距離なのに、なぜかとても冷静な自分がいることに気付く。 「臆病の何が悪いの? 人の痛みを知っているから、臆病になってしまうんだよ。 一郎くんは人の話を真剣に聞いて、ちゃんと汲み取ってくれる優しさがあるじゃない。 あまり感情を表に出さないから誤解されてしまう事もあるけど、一郎くんの優しさをわかっている人だってちゃんといるよ。 それは、決して弱さなんかじゃないよ」 私の言葉を聞いて、一郎くんがゆっくり顔を上げる。 その瞳はまるで迷子のように寂しそうだった。 「大堂……」 「実は私もね、最初は一郎くんが完璧すぎて少し怖かったんだ。 でも放送委員で一緒にやっていく内に、一郎くんのさりげない気遣いや思いやりに気付けたんだよ。 私...
  • 961~970
    951~960 961 ④このまま巫女として一生を終える内容 壱与の悲痛な叫び声で、女官や近衛府たちが一斉に舞台上に出てくる。 死を迎えた帝を取り囲むようにして、臣下の皆がその死を悼んだ。 壱与は帝の亡骸にそっと触れると、自分の首にかけていた緋色の勾玉を枕元に置いて呟く。 「私は帝から多く喜びや苦しみを頂きました。この勾玉からも、たくさんの勇気や元気をもらいました。 黄泉路で迷われぬよう、壱与だと思ってこの勾玉をお持ちください」 壱与役の香織ちゃんの演技もあって、場内からすすり泣く声さえ聞こえてきた。 場内全体が静まり返る中、泣いていた壱与は涙を拭いてスッと立ち上がる。 その姿に、すでに亡骸になった帝を取り囲む臣下達が注目した。 「悲しい事ですが、帝が御隠れになられました」 その言葉で、臣下たちは下を向く。 「...
  • 861~870
    851~860 861 ①続きを思い出す 初日とは何かが変わった春樹だったけど、どう変化したと聞かれたら私は困ってしまう。 だけど、父との会話から春樹は私達を頭から否定しなくなったのは確かだ。 春樹に色々聞きたいと頭では思うのだけど、上手く言葉にならなかった。 「……ネコ、来ないね」 自分の吐く息が白い。 寒空の下、薄気味悪い場所で二十分近く待っていたけれど猫が現れる気配は無かった。 春樹はため息をつきながら、持ってきた容器のフタを閉じようとしていた。 「せっかく来たのに、意味無かったみたいだ」 「それ……美味しそうだよね。中身、ちょっと見せて?」 思わず、返事も待たずに春樹の手から容器を奪い取っていた。 実はものすごくお腹がすいていて、いい匂いをさせている中身が気になって仕方なかったのだ。 「わぁ……美味しそうな匂い。...
  • 661~670
    651~660 661 ③考える それにしても、ほんとにこの人が春樹の本当のお父さんなのだろうか? 春樹が思っているように、過去と現在ではまったく違う人のようだ。 (それに、この人がチハルがあんなに恐れていた人なの?) チハルの怯え方は普通ではなかった。 いま、目の前にしているこの人のどこにチハルは怯えたのだろう。 巧妙に力を隠しているのか、それとも春樹を前にして父の顔になっているのか。 (春樹はこの人を平凡な男だっておもってるけど……) ほんとうにそうなのだろうか? 考えれば考えるほど、春樹のお父さんの姿がはっきりとしなくなる。 過去にお義母さんに暴力を振るった人。 高村の有力者でチハルが怯える能力者。 いま目の前で不思議と穏やかな表情で春樹と話している人。 そのすべてが春樹のお父さんという一人の評価だというのが腑に落ちない。 ...
  • 冬馬961~970
    冬馬951~960 お互いの剣の技量を計るかのように距離を取った斬り合いが続く。 先に大きく振りかぶったのは春樹だった。 上手く遠心力を使い、重い一撃を冬馬先輩に浴びせる。 鈍い金属の爆ぜる音が響く。 と、大きな赤い剣を細身の青い剣で受けとめ、ジリジリと力で弾き返した。 低くなった体勢のまま冬馬先輩が大きく前に出て懐に入ろうとする。 それを察した春樹は、紙一重で後ろへ飛び退いた。 「俺が火で先輩は水。やっかいな相剋だな」 「厄介という割には余裕がありそうですが」 「御門先輩、やっぱり強いね」 「春樹さんの隙のない滑らかな動き。剣を扱い尽くした相当な手練れです」 「それはそうさ。大和で一番の戦士だったんだ」 「守屋の剣士としての能力をトレースできるようですね」 「まぁね。だけど身体は俺のままだから使いすぎると次の日は動けなくなるんだけど」 ...
  • 冬馬861~870
    冬馬851~860。 「これで私は人でなくなったの?」 全員と契約を済ます。 両手の甲と手のひらにあざが浮かび上がっている。 私の身体に四つの証が刻まれたていた。 「馴染むのに時間がかかる。すぐ大堂の身体に変化が現れる訳じゃない」 「そうなんだ」 「それに大堂は能力を使い慣れていない。強い力を手に入れたというだけで、相応に使いこなすには訓練も必要だろう」 「今は神宝より先に神託の巫女になれた事が大切だから。後は利用されないようにしなくちゃね」 不思議な感覚だ。 何が変わったと言われれば答えられないけど、私の中心の部分が懐かしいと訴えている。 「愛菜ちゃんは契約しても愛菜ちゃんのままだったね。ホント、よかった」 「そうよね。今回ばかりは剣に感謝しなくちゃ」 冬馬先輩が私の身体に棲む鬼に交渉してくれたおかげだ。 「ありがと...
  • 冬馬661~670
    冬馬651~660 お風呂を済ませると、リビングにもう冬馬先輩の姿は無かった。 休むといっていたし、もう寝てしまったのかもしれない。 客間に行って確認するのも憚られるので大人しく階段を上る。 そして自室に入って扉を閉めた。 「私も寝ようかな」 部屋の電気を消そうとして、干してある制服のスカートが目に入る。 脱いだときはかなり濡れてしまっていたけれど、もうほとんど乾いているようだった。 (そういえば……ポケットに番号札が入りっぱなしだったっけ) 私はポケットに手を入れて、札を取り出す。 プラスチックのプレートに703と印刷されている。 水野先生はこれが一郎くん達と冬馬先輩の確執の原因だと言っていた。 (サイコメトリーって言っていたけど、私にも出来ないかな) ベッドに腰掛けて、番号札を両手で握り締める。 静かに目を閉じ、物に...
  • 冬馬761~770
    冬馬751~760 ここはどこだろう。 日差しのまぶしさに顔をしかめながら、あたりを見渡した。 (ここは近所の児童公園だ) 「愛菜ちゃん!」 名前を呼ばれて振り向くと、小さい女の子が駆けてくる。 「まきちゃん」 駆けてきた女の子はお友達の事をまきちゃんと呼ぶ。 息を切らしているその女の子には見覚えがある。 (写真で何度も見たことがある。あの子は私だ) どうやら私の名前を呼んだ方が『まきちゃん』、駆けてきたのが小さな頃の私みたいだ。 まきちゃんという女の子と私は砂遊びを始める。 このお友達は確か保育園で一緒だった子だ。 (この子が勾玉かな?) 「おーい。愛菜ちゃんたち一緒にあそぼ」 もう一人、今度は男の子が駆け寄ってくる。 「隆くん! 今ね砂のお城をつくっているんだ」 「じゃあオレは車つ...
  • 春樹961~970
    春樹951~960 携帯で連絡を取り合い、集合場所の文化祭と装飾されたアーチ前までやって来た。 「あれ? お父さんは?」 待っていたのはお母さんとチハルだけ。 一緒に来るはずだったのにお父さんの姿が無い。 「時差ボケですって。すごく眠そうだったからお留守番頼んできたわ」 「パパさん、グーグー寝てた」 「海外出張だったし仕方ないね。ところで春樹も一緒にお昼ご飯食べるのかな」 春樹とは昼食の約束まではしていない。 できれば一緒に食べたいのだけど。 「さっき連絡してみたら春樹も無理ですって」 「え? そうなの?」 「クラスが喫茶店らしくて……一番忙しい時に行ける訳ないだろって怒られちゃったわ」 「そっか。残念」 「あと混み合ってるから千春を連れては入れないだろうとも言ってたわね」 (行ってみたかったのにな) 少しガッ...
  • ストーリーを読む 2ページ目
    251番~500番台 1番台~250番台 251~260 261~270 271~280 281~290 291~300 301~310 311~320 321~330 331~340 341~350 351~360 361~370 371~380 381~390 391~400 401~410 411~420 421~430 431~440 441~450 451~460 461~470 471~480 481~490 491~500 501番台~750番台
  • 101~110
    91~100 101 2.春樹と一緒に帰る 一瞬追いかけるように足が動いたが、追いかけてどうするつもりなのかと冷静な自分が問いかけてきてすぐに止まった。 「…春樹、帰ろう」 全身を覆う脱力感。 「うん」 春樹が私を支える。足も相変わらず痛かったが、それ以上に胸が痛い。 階段を下りながら、もしも、のことを考えてしまう。 もしも、私の力のことが予知夢だったとして、きちんと内容を覚えていたらこんなことにはならなかった? (分からない) もし夢を覚えていたら、今日のような事態になることを避けるために私は隆に音楽室で会うことをしなかっただろう。 でも、そうすると予知夢は予知夢ではなくなる。 実現しないただの夢だ。 それなら、覚えていないほうがいいのだろうか? でもそうなると、やはり意味のない力になる。 で...
  • 181~190
    171~180 181 ②5年前 私が小学6年生、春樹が小学5年生。 あの頃はまだ、私と春樹の身長は同じくらいだった。 私は中学に上がってすぐに身長が伸びなくなって春樹に追い越されたのだ。 (そういえば、春樹は最初再婚に反対してたんだっけ…) 当時のことを思い出す。 春樹に最初に会って言われたのは、『お前らなんか必要ない!』という言葉だった。 そのときはショックで、私は泣いてしまったのだ。 後から知ったことだけれど、義母は前の夫の暴力が原因で離婚していて、そんな義母を見て育った春樹は父親という存在を疎ましく思っていたらしい。 当時のことを春樹は汚点だというけど、義母を守るための言葉だったって父も私もわかっている。 それに、そんなすれ違いも1週間もすれば消えていた。 春樹の心にどんな変化があったのかわからない。 一...
  • 131~140
    121~130 131 ③御門君の名前を伏せて説明する 私はしばらく考えて話すことに決めた。 このままじゃいつまでたっても前に進めない。 (御門くんのことは、知らない男の子ってことにしておけば問題ないよね…) 「関係あるかわからないけど…」 そう前置きして私は夢での出来事を話した。 「大堂、そいつは君を主と呼んだんだな?」 「う、うん……」 「なんだよー、俺には話してくれなかったのに兄貴なら話すの~?」 「だ、だって、普通に夢だとおもうじゃない……」 修二君がぷーっとふくれる。 「いいんだいいんだ、俺なんて……」 わざとらしくいじける修二君を無視して、考え込む一郎君。 「おもいだした。時々学校で感じる残滓……あれと同じ感じだ」 一郎君は私をじっと見たままつぶやいた。 「ん?残滓?……...
  • 121~130
    111~120 121 3、帰ってもらう。 「修二君。悪いんだけど、もう帰ってもらっていいかな」 学校を休んでいるのに、修二君を家に入れているのはまずい。 先生も来るのだし、春樹だって何て思うか分からない。 「どうして? 俺、今来たばっかりだよ」 「だって……学校を休んでいるのに、二人で会っていることが知られるのは良くないよ」 「何で? 俺と一緒にいるのが嫌なの?」 「嫌って訳じゃないけど。ただ、春樹の担任の先生も来るし、体裁が良くないって言うか……」 その先に続く言葉が続かなくてごにょごにょと、言葉を濁す。 「なるほど……、わかった! 愛菜ちゃんは、家の留守中に男を連れ込んでエロい事をしているって思われたくないんだ」 修二君はやけに納得げだ。 「なっ…」 確かに、そうだけど。 そうだけど、そんな風に露骨に言わ...
  • 141~150
    131~140 141 ③なにもいわない 「……」 私は何も言わずに、三人の様子をどこか遠くのもののように見ていた。 理解を深めていく春樹とは対照的に、私は置いてきぼりになったような―――そんな気になる。 もちろん、全然そうじゃないのはわかっていた。 (みんな、私のため……なんだろうけど) でもどこかが納得しない。 あまりにも非現実的なことが、目の前で当たり前の現実のようにに扱われているせいなのだろうか。 (さっきまで、春樹だって同じだったはずなのに…………どうして?) 力を見たゆえに信じ受け入れた春樹と、曖昧な力と確信ゆえに未だ完全に受け入れられない私。 なぜか、私と春樹……そして、私と三人の間に決定的な溝があるような感じがしてならなかった。 「姉さん?どうしたの?」 春樹が心配そうに覗き込んでくる。 ...
  • 91~100
    81~90 91 ①逃げ出した きびすを返し足を引きずりながら音楽室を離れる。 怒りと悲しみと絶望とぐるぐると胸の奥で感情が渦巻く。 (どうして?) それだけが頭の中でぐるぐると回っている。 頬を涙が伝うがそれをぬぐおうとすら思わなかった。 早くここから離れたい、そう思うのに思うように足が動かない。 数歩あるいて思わずよろける。 転びそうになった私の腕を誰かが掴んで支えてくれる。 あわてて振り替えるとそこには… 1、春樹 2、一郎 3、近藤先生 92 2、一郎 そこには、私を支えてくれいてる一郎くんの姿があった。 「一郎……くん……」 「泣いているのか。可哀想に……」 ポケットからハンカチを取り出すと、一郎君は私に差し出してくれた。 いろんな感情が渦巻いていて、ただ涙がこぼれる...
  • 991~1000
    981~990 991 ②どうして大切なのか聞く 「どうして大切なの? お姉さんは春樹が苦しむ所は見たくないとおもうよ?」 「そうだね……でも、俺は『姉さん』を覚えていたいんだ。一生懸命俺を守ってくれようとした『姉さん』をさ」 「あなたは、お姉さんが好きなんですね」 いままで黙って聞いていた大和先輩が言う。 春樹は少しだけ迷うように視線をさまよわせて、けれどしっかり頷いた。 「一番大切な人だったよ。何に変えても護りたいと思った人。 結局は最後までちゃんと護れなくて……最後まで守ってもらってたけど」 「なんか、それって大和先輩の夢に似てますね」 「そうですね」 「大和先輩の夢ってどんな夢なんですか?」 そういえば大和先輩の夢に関しては詳しく話していなかった。 説明すると、春樹は納得したように頷く。 「やっぱり俺はこの記憶があったままのほう...
  • 冬馬751~760
    冬馬741~750 「じゃあそこのベッド借りるか。愛菜ちゃんそこに横になってみようか」 「はい」 言われるまま、ベッドに仰向けに寝る。 周防さんは私の額にそっと手を置いた。 (このマクラ冬馬先輩の匂い。ダメだ、ギュッとされたの思い出す。これから退行催眠だから緊張しちゃいけない。平常心平常心) 私は必死で自分に言い聞かせる。 「えっと、なんだ……あいつはトウヘンボクのオタンコナスだから。とっとと忘れるのが一番かもな」 周防さんが私だけに耳打ちした。 私も周防さんにだけ聞こえる様に話す。 「それって冬馬先輩のことですか?」 「ついでにデクノボウの大バカだ」 口は悪いけど、周防さんなりの励ま方なのかもしれない。 さっき冬馬先輩の心を読んですべて把握したのだから、振られたのだって知ってるはずだ。 「私の心、やっぱり...
  • 冬馬771~780
    冬馬761~770 「ちょっと人が多すぎるわね。こっち来て」 小さな私と隆は、先を行く女の子に黙ってついていく。 「ここにあらかじめ結界を張っておいたの」 「ケッカイ?」 「秘密基地みたいなものよ。さ、入って」 公園の一角、木々が茂った死角がある。 そこは木漏れ日が芝生に影を落としていた。 「……その、あなたは私の味方なんだよね」 「そうよ」 「こんな所に連れてきて、私と隆くんをどうするの?」 小さな私はオドオドと隆に隠れながら言った。 「お前、まさか愛菜ちゃんをいじめるんじゃないだろうな」 「違うわよ」 「もしかしてあのドロドロの仲間か」 「まさか」 「じゃあ、大人に言われたのか」 「細かい事はいいでしょ。それより私、ランドセル買ってもらったの。一体何色だと思う?」 女の子は突然質問を投げかけてくる。 ...
  • 冬馬991~1000
    冬馬981~990 お互い仕事が忙しくて会うのは夕方近くになってからだった。 私達は模擬店やクラスの出し物をぐるっと見て周り、中庭のベンチに腰を下ろした。 「さっきのチョコバナナ、美味しかったなー」 「また買って来ましょうか?」 「お腹いっぱい。さすがに食べられないよ」 満腹になったお腹を左右にさする。 スカートがきついから明日からダイエットだ。 「どれも美味しかったけど、一番は修二くんのクラスの焼きそばかな。目玉焼きまで乗ってたよね」 「確かに、とても美味しかったです」 「折角修二くんの姿を見に行ったのに。居なくて残念だったな」 「彼が大人しく模擬店の店番をするとは思えません」 「それもそうだね」 女の子に声をかけながら校内で遊び歩いているのだろう。 ジッとできないのが修二くんらしい。 香織ちゃんと隆はまだクラスのお化け屋敷で...
  • 冬馬951~960
    冬馬941~950 「愛菜、落ち着いてください」 「でも春樹が!」 もう少しで春樹を救える。 怪我はないか。 ちゃんと家に帰って来るのか。 どうして黙って出て行ってしまったのか。 話たい。今すぐに。 だけど先輩に手首を強くにぎられてしまって動けない。 「痛い……離し……離して!」 手を振り解こうと全力でもがく。 だけど冬馬先輩はその右手を解いてくれなかった。 「愛菜はここにいてください」 「でも!」 「手荒な真似は避けたかったですが仕方ない」 「何を……!」 「少し大人しくしていてください」 身体にひんやりとしたものがまとわりつく。 気がつくと、水の膜で周囲を覆われてしまっていた。 それはシャボン玉のようだったけれど、弾力があって私の力では割れそうにない。 『冬馬先輩!』 『これを今すぐ解いて』 『駄目で...
  • 611~620
    601~610 611 ①隆をたたき起こす 「隆! 起きて遅刻するよ!」 部屋には入らず大きな声で叫んでみるが、隆はうるさそうに寝返りを打って向こうを向いてしまった。 起きる様子は無い。 隆の寝起きは良いほうだから、これで起きないのは珍しい。 「まったく……」 私はため息をついて隆の側まで歩いていって揺さぶる。 「隆、起きてってば!」 「……ん~」 返事はするもののそれだけだ。 今度は軽く叩いてみる。 「返事だけじゃダメなんだって! 遅刻するって言ってる……わっ」 唐突に隆の手が伸びてきて私の手を掴んだ。 次の瞬間には力いっぱい引っ張られ、私はバランスを崩して隆の上に倒れ込む。 とっさに手をついて隆に全体重をかけてしまうのは阻止したが、多少衝撃があったはずなのに隆が目覚める様子は無い。 「愛菜ちゃん!」 「あー、チハル...
  • 冬馬691~700
    冬馬681~690 「一郎くん、ちょっといいかな」 教室に残っていた一郎くんは文化祭の資料から目を離して私を見る。 放送委員長だから準備もあってこの時期は忙しいのだろう。 「大堂か。一体、何だ」 昨日よりも突き放した冷たい言い方をされる。 ここでめげていては何も始まらない。 「実はお願いがあるんだけど……」 一郎くんの様子を伺うと眉間のしわが先日よりさらに深い。 私が冬馬先輩側についたのが気に入らないのかもしれない。 「またアイツの話か」 (アイツって……きっと冬馬先輩の事だよね) 「うん。冬馬先輩に頼まれてね」 「アイツに何を言われた?」 「えっと、昼休み……って、今からなんだけど冬馬先輩に会ってくれないかな」 一郎くんの机には資料がいくつも置いてある。 委員会の仕事を休み時間に済ませようとして...
  • 冬馬851~860
    冬馬841~850 「これで全員揃ったのかしら」 香織ちゃんが全員を見まわしながら言った。 「「「「「…………」」」」」 空き教室になんともいえない沈黙が降りる。 「あのね、みんな。それぞれ抱えた事情や複雑な感情はあるかもしれない。だけど今はそういうの抜きにしてこれからの事を考えて欲しいんだ」 半人前だけど巫女としてみんなをまとめなくちゃいけない。 まず私から全員に伝える。 「ねぇ、愛菜ちゃん。まず君が一番何かしたいか教えてよ。これからの事を考えるなら、そこ超重要だし」 そう言うと、修二くんは教室の後ろにある木でできた背面ロッカーにひょいと座る。 「修二、そこは椅子じゃないぞ」 「いいじゃん。それより愛菜ちゃん、教えてよ」 (私のしたい事……) 「まずは弟の春樹に家に戻って欲しいかな。心配なんだ、...
  • 冬馬701~710
    冬馬691~700 「冬馬先輩、大丈夫?」 私は土下座の格好をしたままの先輩に手をさしのべる。 「すみません。情けない姿をみせてしまいました」 手を取った冬馬先輩の指先が震えている。 膝も少し笑っているようだった。 「ううん。情けなくなんか無かったよ」 「まだ震えてますね。僕は人……特に相手が高圧的に出られるとこうなってしまうんです。 幼い頃は恐怖を攻撃性に変えて手がつけられなかった時期もあるようでした」 獣のような僕と冬馬先輩は言っていた。 だけど今は誰も傷つけられてはいない。 支えるようにしながら、冬馬先輩を座らせる。 私もその隣に腰掛けた。 「冬馬先輩のおでこ、少し血がついてる。ちょっと待ってて」 きっとコンクリートに額をつけた時だろう。 私はポケットからハンカチを取り出す。 「ハンカチが血...
  • 冬馬671~680
    冬馬661~670 私はゆっくりまぶたを開く。 目を覚ますと、そこはまだ薄暗い自室だった。 「今のは……夢……」 しばらく呆然自失で動けなかった。 動悸がひどく、びっしょりと汗もかいている。 少しずつ目が冴えていくと今の夢が何だったのか考えられるようになってきた。 (さっきの夢、あれはサイコメトリーだったのかな) (だったら修二くんは……) 私はガバッと飛び起きる。 そして机においてある携帯を掴んだ。 「あれが過去に起こっていたことなら修二くんが!」 夢とはいえ、人が目の前で亡くなるのをはじめて見た。 それもむごい死に方だった。 (修二くんが無事か確認しなくちゃ) 携帯の時計は午前三時過ぎだった。 (失礼かも知れないけど、一刻も早く無事か知りたい) 携帯のメモリーから修二くんの番号を探す。 ...
  • 冬馬611~620
    冬馬601~610 611 ③「じゃあ冬馬先輩の先天的な力は具体的に何ですか?」 「僕は『水』を操る力を持っています」 「水。そういえばさっき……」 「僕は剣。ですから蛇の眷属である水龍の力を得ています」 さっき春樹の居場所を突き止めたといった時、水の力を使ったと言っていた。 という事は、水を操る力が冬馬先輩の先天的な能力で間違いないだろう。 でもスイリュウって何のことだろう。 まさか架空の生き物の龍のことを言っているのだろうか。 まだ剣とか鏡とか、一体何を指しているのかも曖昧でよく分らない。 さっき冬馬先輩は『神の力』と言っていたけど。 確かに先輩の力を見ていると神がかり的と言えなくもない。 とはいっても、あれだけの説明ではやっぱり根本的な所が理解できないままだ。 「……愛菜」 「……は、はい!!」 考え込んでいたのに突然話し...
  • 701~710
    691~700 701 ③十種の神宝について思い出す (十種の神宝か……) 私は十種の神宝について、詳しく思い出してみることにした。 澳津鏡(おきつのかがみ)、辺津鏡(へつのかがみ)、八握剣(やつかのつるぎ)、 生玉(いくたま)、足玉(たるたま)、道返玉(ちがえしのたま)、死返玉(まかるがえしのたま) 、 蛇比礼(おろちのひれ)、蜂比礼(はちのひれ)、品物比礼(くさぐさのもののひれ) が、十種の神宝と呼ばれていた。 それぞれの神宝にはすべて意味があり、その意味に沿った強い鬼の力を宿していた。 大和の民は出雲の持つ神宝の力を、黄泉の祟りとして恐れを抱いている者も多かった。 出雲は根の国と呼ばれ、死者の世界に通じている恐ろしい場所だと思われていたためだ。 死者甦生という禁忌も行える神宝が、死者の世界に通じているという誤解を生んでいたようだっ...
  • 冬馬971~980
    冬馬961~970 黄泉醜女。 日本神話に登場する鬼。 逃げた神様を追いかける怖い女。 顔は醜く、執念深く恐ろしい化け物。 私の中でイメージしていた容姿と目の前の可愛らしい少女とが結びつかない。 「本当に黄泉醜女さんだよね」 「はい」 「ツノ、生えてないんだ」 私は頭の上を指で差しながら呟く。 「ツノもありませんし怖くもないですよ」 「そっか。よかった」 「黄泉の国は中つ国の人達にとっては異邦人。霊力を自在に操り、怪しい術を使う得体の知れない者。ですから、伝承に尾ひれがついてしまい、ツノを持った鬼となったのでしょう」 (しこめって醜い女って意味だけど、すごく可愛らしいよね) きめの細かい肌、色白に映える頬の薄紅色。 長い髪はツヤツヤでお人形のように整っている。 それでいて受け答えや言動が大人顔負けに落ち着いている。...
  • 春樹971~980
    春樹961~970 私達のクラスの出し物はお化け屋敷だ。 お化け屋敷といっても色々あるけれど、お岩さんや落ち武者が出てくる古典的な和風もの。 別のクラスが洋風のお化け屋敷をするから消去法で和風になった。 とはいえ、着物などの小道具はなかなか揃えるのが大変だったようだ。 古い浴衣を汚してみたいり、安いウィッグを貼り合せてお化けのような乱れたカツラにしたていったらしい。 教室の中が暗く見にくいけど、妥協しないのが責任者になった香織ちゃんの流儀だそうだ。 「お待たせしました。次の方、入ってください」 午後から、私は入り口でお客さんの案内をする入場係をしている。 放送委員の仕事と兼任だったし、何より「愛菜はお客さんより恐がるに決まってる」と香織ちゃんに言われたからだ。 くやしいけどもっともな意見だ。 さすが親友、私の苦手な事もよく知っている。 入場係...
  • 361~370
    351~360 361 ①「公園にいた理由を教えて」 私は白熱灯を見上げたままの一郎君にたずねる。 「ああ、そうだったな」 一郎君は頷いてゆっくりと視線を私に向けた。 その視線に迷うような色が見える。 「一郎君、私すべてを知りたいの。それに、終わらせたい」 一郎君は、しばらく私を見つめて、私の決意が固いと見ると一度目を閉じて、ため息をついた。 次に目を開けたときには、その目から迷いがきえて、まっすぐに私を見返してくる。 「俺があそこに居たのは、異様な力場が見えたからだ」 「力場?」 「そうだ、イメージとしては竜巻を思い浮かべてくれれば近いだろう。普通の人間には見えないがな」 「竜巻…」 「その力場があの公園と、もう一箇所に急に現れた」 「え?もう一箇所?」 一郎君は頷いた。 「もう一箇所には...
  • 71~80
    61~70 71 3.3人で一緒に帰る さっき修二くんが言った言葉は気になるけれど……。 仮に修二くんの言葉が本当であったとしても、今いきなり態度を変えたりしたら怪しまれてしまうかもしれない。 ……それに、何より私の中にまだ隆を信じたいって気持ちがある。 だからと言って、完全に信じられるかといえば……酷い話だけど、そういうわけじゃない。 今はまだ、何もわからなすぎる。 私は今だ握り締めたままの春樹の制服をじっと見つめる。 「……」 何かに気がついたのか……春樹はこちらに視線を向けた。 そして僅かに頷く。 (ごめんね、頼りないお姉ちゃんで……) 都合のいいときにだけ春樹を頼ってしまう自分を恨めしく思う。 内心で春樹に謝りながら、私はそっと頷き返した。 「じゃ、じゃあ、3人で帰ろうよ。ね?」 ...
  • 601~610
    591~600 601 ①「……春樹の話してくれた昔話、男の人が幸せになる結末だったらいいな」 「そう思う?」 「うん、今までの努力が報われるといいなって思う」 「……うん」 春樹に向かって笑いかけたとき、ふと身体が引っ張られるような感覚がした。 遠くで名前を呼ばれている感じがする。 (あ、そろそろ起きる時間かな) 「姉さん?」 「春樹、そろそろ起きる時間だよ。いい? くれぐれも無茶しないでね?」 「わかってるよ。まったく……なんで夢でまでなんでこんなに………」 春樹の呟きが徐々に遠くなり、ふっと景色が変わる。 どこまでも続く草原。 (あれ?) 相変わらず遠くでは私を呼ぶ声が聞こえているが、どういうわけかその方向へ向かおうとしても何かに邪魔をされているような、妙な抵抗感がある。 廻りを見渡しても見えるものは何も無く、見たことのない場所...
  • 691~700
    681~690 691 ①「照れてるんじゃないかな」 「そうなんだ……わかった! 僕のカッコがみんなと違うから照れちゃうんだね」 チハルはポンッと音をさせて、男子の制服姿になった。 「この姿なら、みんなと一緒だよ。これならいいかな?」 「きっと言ってくれると思うよ。ねぇ、一郎くん」 そう言いながら、私は一郎くんに目配せをした。 一郎くんも観念したのか、諦めたような溜息を吐いている。 チハルはクルクルとまわりながら、一郎くんの元へ駆け寄っていった。 「変身したよ。だから、チハルって言ってよぉ」 「…………チハル。これで、いいのか?」 「うん。やったー! 愛菜ちゃん、言ってくれたよ」 また私のところに駆け寄って、抱きついてくる。 一方の一郎くんは、どっと疲れたような顔をしていた。 キーンコーン 三時間目の予鈴が鳴った。 私たちは部...
  • 冬馬651~660
    冬馬641~650 冬馬先輩と一階に下りて、ダイニングに行く。 するとお義母さんがキッチンで洗い物をしていた。 「御門くんも座ってちょうだいね。今日はすき焼きだけどよかったかしら」 コンロの上に、鉄のなべが乗っている。 その横には牛肉の薄切りと割り下、切った野菜も置いてあった。 「うん、大好き。先輩もすき焼き大丈夫だよね」 冬馬先輩は私の問いに黙ってうなずいた。 「冬馬先輩も食べれるって」 「よかったわ。御門くん、卵も用意してよかったわよね」 コップや食器を持ってお義母さんがやって来た。 「じゃあ愛ちゃん、火をつけて牛脂を入れてくれる?」 「私がやるの?」 「そうよ」 てきぱきと食器を並べているお義母さんは当たり前のように言った。 (こういう役目、いつも春樹だったからな……) 冬馬先輩が座った...
  • 271~280
    261~270 271 ①年齢をきく 「そういえば周防さんって、何歳なんですか?」 職業とか御門君との関係をきくと、ペナルティになる答えになりそうなので当たり障りのない所を聞いてみる。 「うん?何歳だと思う?」 周防さんは楽しそうに逆に聞き返してきた。 「えーっと、にじゅう……に、か、さんっ」 「おしいっ!」 「え…じゃあ、21!」 「ちがーう。はい、時間切れ正解は24でした」 「むーー」 「失礼します、ナンをお持ちしました」 「ありがとさん」 ウェイトレスがナンの入ったカゴをおいていく。 焼きたてのナンのいい香りがする。 ここのナンは絶品で、私はだいすきだ。 「ここのナンは食べ放題なんですよ」 「へぇ、そうなんだ?」 「すごくおいしいんです。ナンは家じゃつくれませんから、つい食べす...
  • 冬馬601~610
    冬馬591~600 601 ②ここに鍵になりそうなものがないか探す (忘れないために必要なものは何だろう) せっかく夢でお母さんとの約束を思い出したのに、このまま忘れてしまいたくない。 私は濃い霧の中で必死に考える。 (駄目。こんな濃い霧じゃ何も見つからないよ) 諦めかけたその時、白い霧を裂くように、ドロドロの黒い霧が地面を這いずりながら現れた。 その黒い霧は、二つの穴が目のようにぽっかり開いている。 地面を這う黒い霧はしばらく動かず、空洞の目で私を静かに見続けた。 (な、何これ……気持ち悪い……) 地面を動くドロドロの霧は、一つの小さな黒い塊を空中に吐き出した。 すると、その塊に吸い込まれるようにして急速に人型が形成されていく。 私は恐怖のあまり、その場から動けない。 「我ヲ……」 「!?」 「我ヲ……コノ場カラ…...
  • 110~120
    101~110 111 3.感覚がリアルだった気がする 手を取られた。優しく、暖かな手。 ふと自分の右手を見る。 (あれ…?) 右の中指の爪に小さな赤いアザ。 (昨日まではなかったはず…、どこかにぶつけた?) でも、ぶつけたくらいで爪にアザなんかできるだろうか? まじまじと見る。三日月型のアザだ。 『守ります』 ふっと、御門くんの姿が脳裏に浮かぶ。 (御門くん……主……夢?) フラッシュバック。 「夢じゃ、ない……?」 少なくともいつもの予知夢ではない。 「姉さん起きてる?」 そのときノックとともに春樹の声。 「あ、うん。起きてる」 「入るよ」 そう断って、春樹が入ってくる。 「足はどう?」 まだベッドの上に居る私に、春樹が心配そうに尋ねてくる。 「だいぶ...
  • 571~580
    561~570 571 ①チハルが泣き止むまで待つ 今の状態ではチハルから話を聞くことは難しい。 私はチハルを落ち着かせるために、背中を撫でる。 「そんなにこいつが怯えるって普通じゃないよな」 泣きじゃくるチハルの頭を優しく撫でながら隆が顔をしかめる。 「そうよね。そんなに怖い人なのかな……」 そんな人についていった春樹がますます心配になる。 「ほら、チハルもう怖い人は居ないんだからそんなに泣くな。男だろ?……男だよな?最初はその姿だったし」 ぽんぽんとチハルの頭をあやすように叩きながら言った隆は、自分の言葉に疑問を覚えたのか最後のほうは小さくぶつぶつと呟いている。 「……ぐすっ、うん」 最後のほうは聞こえなかったのか、隆の言葉にチハルは小さく頷くと何とか涙を止めようとごしごしと目をこする。 「あんまりこすると赤くなっちゃ...
  • 191~200
    181~190 191 ③考える 隆には会いたい。 でも、春樹から離れるわけにも行かない。 春樹だって狙われる可能性があるのには、かわりないんだから。 「………やっぱり、駄目か?」 考え込んでしまって、返事をしない私に隆の暗い声が聞こえてくる。 「あ、そうじゃなくて…春樹が……」 「春樹?」 隆にはどうしてそこで春樹の名前が出てくるのか不思議らしい。 私は隆に水野先生が私を狙っていること、水野先生のバックには何かの組織があること、そしてだんだん手段を選ばなくなってきていることをかいつまんで説明した。 「私と同じく春樹も危険なの……私には見えるけど春樹には見えないし」 「そうか……」 隆も納得したらしい。 「それじゃあ、俺がそっちに行くよ。それならいいか?」 それならいいかも…でも、ちょっと不安が...
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