選択肢を選んで1000レス目でED @ ウィキ内検索 / 「321~330」で検索した結果

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  • 321~330
    311~320 321 2.私たちをここから出しなさい! 私は大声で啖呵を切ってみせる。 「おっ! いいね愛菜ちゃん、やれやれ~」 「私はまだ死にたくないのよ!」 「出してよ! まだやりたい事がたくさんあるんだから!」 声の限り思い切り叫ぶ。 (立場は逆転したけど、効果はこっちの方があるはず……よね) 「ふざけるなぁ!なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ!」 「元の生活を返せーー!!」 「あ、……愛菜ちゃん?」 周防さんが引きぎみだけど構わず叫び続ける。 「夢とか力とか組織とか全部ムカつく!」 「私の都合も考えてよーー!!出せーー!!」 「愛菜ちゃん? 盛り上がってる所、申し訳ないんだけど……」 「な ん で す か !」 血走った目を向け、私は答える。 「あのね…...
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  • 331~340
    321~330 331 ②呆然とその場に立ち尽くす 「は、るき……」 頭の中が真っ白で何も考えられない。 たださっきの春樹の言葉が何度も私の中で繰り返し繰り返し響くだけ。 『もうこれ以上の厄介事は、ご免なんだ!』 私に笑顔を向けていてくれたときも。 私を気遣ってくれたときも。 私を守ろうとしてくれていたときでさえ。 (春樹は、ずっとそんな風に思って……でも、我慢してきたの?) 負担になっているのかもしれない……どこかそんな予感はしていた。 けれど、それは春樹の優しさと春樹への甘えで確実な答えに変わることは無かったけれど。 だけど今、はっきりと分かった。 (私は春樹にとって迷惑な存在で……私は、春樹の負担になってたんだ) 垣間見えた、春樹の本当の気持ち。 それを知って私は…...
  • 311~320
    301~310 311 ①「どうして、御門くんにはあそこまで欠けているんですか?」 その問いに、ふと周防さんの顔が翳る。 「あいつはなぁ。いろいろあるんだ」 「いろいろ?」 「普通じゃない……っていえばいいのかな」 「どう普通じゃないんですか?」 「うーん。身体的にも精神的にも特異かもしれない」 周防さんにしては言葉の歯切れが悪い。 (もしかして、言いづらいのかな……) 「御門君は御門君でいい所がたくさんありますもんねっ」 私はあえて話を打ち切るように明るく振舞う。 (聞くなら、本人が居るときに直接聞いた方がいいかもしれない) 「そうだ。あいつはボーっとしていて何を考えているか分からないし、 無表情のくせに意外と毒舌家だがいいヤツだ」 「す、周防さん。それは褒めてませんよ」 私は苦笑し...
  • 301~310
    291~300 301 ②何か見えないかともっと目をこらす。 私は二人の視線の先へさらに目をこらす。 だけど、やっぱりいつもの賑やかな公園にしか見えない。 「何か見えたんですか?」 「ちょっと、厄介事がね。あっ、いや――大丈夫だよ。 愛菜ちゃんは何も心配しなくていいから」 そう答えてくれるものの、周防さんの表情は更に険しくなっている。 「愛菜ちゃんは少しここで待っていてくれないか?もし俺がここに戻らなければ、冬馬の指示で動いて欲しい」 「は、はい……」 周防さんの緊張した様子に私はただ頷くしか出来ない。 「冬馬はここで待機。最優先事項は愛菜ちゃんの安全確保。有事の際には一般人に被害が出ない様、穏便に対応してくれ」 周防さんは事務的に言い終えると、すぐに人ごみを縫うようにして走り去ってしまう。 ...
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    ストーリーを読む 共通・トゥルールート 1番台~250番台 1~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~90 91~100 101~110 111~120 121~130 131~140 141~150 151~160 161~170 170~180 181~190 191~200 201~210 211~220 221~230 231~240 241~250 251番台~500番台へ
  • 121~130
    111~120 121 3、帰ってもらう。 「修二君。悪いんだけど、もう帰ってもらっていいかな」 学校を休んでいるのに、修二君を家に入れているのはまずい。 先生も来るのだし、春樹だって何て思うか分からない。 「どうして? 俺、今来たばっかりだよ」 「だって……学校を休んでいるのに、二人で会っていることが知られるのは良くないよ」 「何で? 俺と一緒にいるのが嫌なの?」 「嫌って訳じゃないけど。ただ、春樹の担任の先生も来るし、体裁が良くないって言うか……」 その先に続く言葉が続かなくてごにょごにょと、言葉を濁す。 「なるほど……、わかった! 愛菜ちゃんは、家の留守中に男を連れ込んでエロい事をしているって思われたくないんだ」 修二君はやけに納得げだ。 「なっ…」 確かに、そうだけど。 そうだけど、そんな風に露骨に言わ...
  • 221~230
    211~220 221 ③香織ちゃんの名前 「もしもし、愛菜?」 通話ボタンを押すと聞きなれた香織ちゃんの声が耳に飛び込んできた。 知らぬ間に身構えていたのか、肩の力がぬけていくのを感じる。 「香織ちゃん! どうしたの、休みの日に電話なんて」 「どうしたの、はこっちのセリフ! 昨日学校休んだでしょ? そんなに怪我の具合悪いの? 大丈夫?」 電話の向こうで眉間に皺を寄せる香織ちゃんの顔が目に浮かぶようだ。 「…それでわざわざ電話くれたの?」 「悪い?」 「ううん。怪我は大したことないんだけど、大事をとってお休みしたの。 メールしとけばよかったね、心配かけてごめん」 反省して素直に謝ると、香織ちゃんは諦めたように笑った。 「まったくもう……。あ、そういえば。昨日愛菜の弟さんも早退したんだって? 脳震盪起こ...
  • 冬馬921~930
    冬馬911~920 「あれが春樹くんのいる研究所ね」 「うん。そうだよ」 車窓から香織ちゃんが指さした研究所は山間に隠れるように建てられた3階建のビルだった。 小雨の降る夜のせいで霞の中に唐突にくり抜かれた四角い影の様に見える。 夜目がきく私には外観までよくわかる。蔦が絡まったすすけた外壁が研究所というよりも山の一部になった廃屋のようにも見えた。 最初に見たときは小さくて意外に思ったけど、今回は二回目のせいでやっとここまで来たという気持ちしかない。 美波さんが車を止めて私達に振り向く。 「車はここまでしか進めません。これからは徒歩で向かって下さい」 「あの、美波さんはどうしますか?」 (美波さんは私と同じ治癒だから戦闘向きの能力じゃないよね) 「私が行っても足手まといになるので、結界の張られたこの車に残ります。もし怪我をしたらここに戻っ...
  • 821~830
    811~820 821 ③守屋さんと話をする 宴の準備を黙って見ていた守屋さんの横顔を、そっと覗き込む。 血を浴び、戦場で敵の命を絶っていた人と同一人物とは思えなかった。 「私、守屋さんってもっと怖い人かと思ってました」 「そうなのか?」 「この陣の雰囲気と一緒で、見た目に騙されてたのかもしれません」 「君には、この陣はどう映ったのかな」 「気のせいかもしれませんけど、守屋さんも兵士の人も……少しだけ楽しそうに見えちゃうんですよね」 守屋さんがすごく怖い人なら、この陣の中がもっと殺伐としているはずだ。 顔をあわせる兵士はみんなは守屋さんに敬意を払っている。 怪我人を診ている時にも、強い絆みたいなものを感じていた事だった。 「楽しそうか。確かに、ここの者達は私についてくる変人ばかりだからな」 「変人ですか?」 「ああ。過酷だった東国...
  • 521~530
    511~520 521 ①黙って頷く 「ちょっとまった、いま高村って言わなかったか!?」 私が頷くのと同時に、修二くんが春樹に聞く。 「…ええ、それが?」 「それがって……」 「修二落ち着け。高村なんて珍しい苗字でもないだろう。それより、このままだと遅刻だ」 「そうだな、さすがに二日続けて遅刻ってのは勘弁。歩きながら話そうぜ」 春樹の言葉に修二くんがなんと言っていいかわからない顔をし、一郎くんがそんな修二くんをたしなめ、隆が一郎くんに同意する。 言われて廻りを見ると、すっかり人通りがなくなっている。 「チハル、またストラップになって春樹と一緒にいてくれる?」 「うん!」 春樹にしがみついたままだったチハルは、ポンと軽い音を立てて春樹の手に納まる。春樹はチハルを胸ポケットに入れた。 それを確認して、私たちは歩き出す。 (一郎くんは私...
  • 421~430
    411~420 421 ③「チハルは私のぬいぐるみなの」 私が説明をしようとすると、チハルは一郎君と修二君の前に出た。 そして二人を指差しながら、驚いたように目を見開く。 「おんなじ顔がふたつ! ねえ、ねえ見てよ。ヘンだよ愛菜ちゃん」 「チハル、そんなこと言っちゃ駄目よ。あはは、ご、ごめんね……」 「………」 「俺の方がイケてるって!」 一郎君と修二君はそれぞれ別の反応をみせる。 チハルの登場で、その場の張り詰めた緊張感はどこかへいってしまったようだ。 (とりあえずチハルのおかげで場が和んだみたい。……助かったよ) 隆は物珍しそうに、チハルを上から下まで眺めている。 「ていうか、なんで人の姿になってんだ? あの熊のぬいぐるみなんだろ? お前」 「お話できるし、こっちの方がいいでしょ」 チハルはその場でクルクルまわりながら答えた。 ...
  • 621~630
    611~620 621 ①「熊谷……さん?」 私は香織ちゃんに向って、半信半疑のまま話しかけた。 「よく判ったなぁ。でも、実際は俺じゃねぇんだ。操っているだけだからよ」 (操るって……まさか) 「ファントム……まさか、香織ちゃんにファントムを……」 「おっ、知ってるなら話は早いぜ」 香織ちゃんはフンと鼻を鳴らして私を見る。 「こんな汚ねぇ手は好きじゃないが、命令だからなぁ」 (で、でも……前に隆に聞いたときは、すぐに操れないって言ってたけど) もしかしたら、嘘を言っているかもしれない。黒い靄は見ていないし、話を鵜呑みにするのは危険すぎる。 「黒い靄を見ていないけど、どういう事ですか?」。 「さっき近づいたときに、仕込んだんだよ。無防備すぎて、拍子抜けだったけどな」 「ファントムは、操るのに一週間はかかるはずですよ」 「はぁ?...
  • 721~730
    711~720 721 ②一郎くんを呼んで行く 「修二くん。一郎くんがどこか教えてくれないかな? 香織ちゃんが勾玉だって教えてあげなきゃいけないし、神器が揃っていた方がいいと思うんだ」 「……兄貴はひと足先に愛菜ちゃんの家に向ったよ」 「一郎くんも……。じゃあ、急がなきゃ」 「そうね。行くわよ、愛菜、宗像くん」 香織ちゃんは一足先に私の家に向って走り出した。 「ま、待ってよ。香織ちゃん!」 数歩走ったところで、修二くんが全く動いていない事に気づいて足を止めた。 私は再び修二くんの傍まで駆け寄る。 「早く行こう。みんなが心配だよ」 「……………ど」 修二くんは私から視線を落しながら、小さく何かを言っていた。 「どうしたの? 修二くん」 「さっきの答え、まだ教えてもらってないんだけど」 「さっきの答え?」 「付き合ってもらえるか...
  • 921~930
    911~920 921 ③隆に明日の文化祭の話をする 春樹くんは相変わらず考え込んでいて、何も言わない。 記憶の整理に時間が掛かるのだろうか。 ソファーに座っていた千春は、いつの間にか携帯ゲーム機で遊び始めている。 ミケはお母さんに食べ物をねだりに、キッチンへ行ってしまった。 なんとなく、また妙な沈黙になりそうな予感がする。 (そうだ。隆に文化祭の話をしなくちゃいけなかった) 「ねえ、隆」 「ん? どうしたんだ愛菜」 「明日、私達の学校が文化祭なんだ。おばさんには言ったんだけど、聞いてる?」 「まぁ、一応はな……」 「じゃあ、話は早いね。隆、うちの学校の文化祭見に来てよ。すっごく面白いと思うよ」 明日の為に、学校中のみんなが頑張ってきたのだ。 長期入院で高校に行けなかった隆だけど、学校の雰囲気だけでも感じて欲しい。 「文化...
  • 381~390
    371~380 381 ③ハンドライト (古典的な方法だけど……みんな怖がってくれるのかな) 下からライトを当てて顔だけ浮き上がらせる――なんて小学生でも失笑するような方法で大丈夫なのだろうか。 不安に思いながらも、とりあえず私は自室にあるはずの災害用ハンドライトを探す。 (確か、この辺に置いておいたはずだけど) 「見つけた」 引き出しの中からハンドライトを取り出した。 電池がまだあるか確認するために、スイッチを入れる。 「あれ?……ライト点いてるのかな?」 電池の残りが少ないのか、点いているのかよくわからない。 私は自室の明かりを消して、再度ハンドライトのスイッチを入れた。 「うん。大丈夫みたい」 その時、ドアをノックする音が聞こえた。 「姉さん、俺だけど」 「春樹?」 ...
  • 冬馬821~830
    冬馬811~820 ピピピピピピピピ 布団から腕を伸ばして目覚まし時計を叩く。 (もう朝か) カーテンを開けて、大きく背伸びをする。 今日も天気が良くなりそうだ。 (なにも夢をみないの久しぶりだな)  制服に着替えながらしみじみ思う。 ここ最近は色んな夢をみて自然と眠りが浅くなっていた。 (きっと疲れていたのかも) 今日はよく眠れた気がする。 体調も良いかもしれない。 階段を下りて、顔を洗う。 髪をセットしていると、いい香りがキッチンから漂ってくる。 (コーヒーの匂いだ。冬馬先輩だね) 顔をのぞかせると、キッチンに冬馬先輩が立っていた。 きっちり制服も着ている。 「おはよう冬馬先輩、起きるのはやいね」 「おはようございます、愛菜。目が覚めてしまったので、勝手にキッチン使わせてもらいま...
  • 341~350
    331~340 341 ③御門くんの何が『失敗』だったのかについて 「失敗は二つ。まず一つは僕の能力が彼の思い通りのものでなかったことです」 私の質問に、何の感情のなく淡々と答える御門君。 「彼はさまざまな調整を行い、僕が彼の望む能力を持って生まれてくるようにした。 ……そのはずでした。しかし、僕に発現した能力は全く違うものだった」 ふと自分の手のひらをじっと見つめ―――やがてそれを握り締める。 それから御門君は再び言葉を続けた。 「そしてもう一つ。それは……僕が持って生まれた能力を制御できなかったこと。 結果、僕の能力の暴走により彼の目論見は白日の下に晒されることになりました。 ……ただし、あまりにも多くの犠牲を払って、ですが」 そこで話を区切り、御門君はわずかに目を伏せる。 もしかしたら、そのときのことを思い出しているの...
  • 冬馬721~730
    冬馬711~720 冬馬先輩の後ろを黙って歩く。 会話の糸口を見つけたいのに、どう話せばいいか分からない。 駅前を抜け、築5.6年ほどの単身向けアパートの前で止まった。 「ここの二階に住んでいます。こちらです」 冬馬先輩はいつも通りの淡々とした口調で言った。 気まずいとか話しづらいという風でもない。 それはそれで気が楽だけど、私はその程度にしか思われていなかったのだと改めて凹んでしまう。 でも今は春樹を助けるため、出来る限りの事をしていくしかない。 「どうぞ」 冬馬先輩は鍵を開け、私を中に入れる。 「おじゃまします」 「まだ周防は来ていません。しばらく待っていてください」 玄関を入るとすぐワンルームがあった。 その奥がお風呂とトイレ。 第一印象は寂しい殺風景な部屋。 シングルのパイプベッドと勉強用の小さな平机。 ...
  • 春樹921~930
    春樹911~920 921 ①「そうかな?」 春樹はなんでも出来る器用な人に思える。 「あっ! 愛ちゃん。本には大さじじゃなくて小さじって書いてあるわよ」 自分の手元を見ると塩が大さじで山盛りになっている。 このまま入れたら海水よりも塩辛くなってしまうところだった。 「ぼーっとしてた。ごめん」 「いいのよ。ゆっくりやりましょう」 「不器用っていうのは私みたいな人を言うんだよね」 次はレシピどおり小さじで塩をすくい慎重に平らにならす。 今まで単純なうっかりで何度も失敗してきたのかもしれない。 「そうかしら。愛ちゃんは案外器用だと思うんだけど」 「本当?」 「ええ。困ったときには誰かに助けを求めることができるもの」 「単に頼りないだけじゃないかな」 「違うわ。相手の懐に入るのがうまいのよ」 「よくわからないけど……」 「要...
  • 冬馬621~630
    冬馬611~620 621 ①二人を止める 「止めてよ二人共! どうして?」 二人の間に入り、首を大きく左右に振る。 「冬馬先輩も一郎くんも、研究所に居る主流派の人たちが悪いと思っているんだよね? だったら、なぜ協力しないの? ここで仲違いしている意味なんて無いよ」 目的が同じなら、手を取り合うべきなのに。 それなのに、一郎くんと修二くんは冬馬先輩に対して異常なまでに厳しい。 冬馬先輩もそんな二人に対して、歩み寄ろうとはしない。 すごく悲しくなるし、もどかしく感じてしまう。 「狙われて怖がる私を、二人とも心配してくれていたのは知ってたよ? こんな何も出来ない中途半端な私にも優しく接してくれる二人なのに、どうして? どうして協力できないの?」 冬馬先輩は何も言わず、黙って私を見ている。 一郎くんは少しだけ俯き、ため息を吐...
  • ストーリーを読む 3ページ目
    501番~750番台 251番台~500番台 501~510 511~520 521~530 531~540 541~550 551~560 561~570 571~580 581~590 591~600 601~610 611~620 621~630 631~640 641~650 651~660 661~670 671~680 681~690 691~700 701~710 711~720 721~730 731~740 741~750 751番台~1000番台
  • 31~40
    21~30 31 →隆ってカワイイ 少し前までは、ただの幼馴染だったのに いつの間にか私の中で隆はこんなに大きな存在になっていたんだ。 「…何、笑ってるんだよ?」 隆は真っ赤な顔でそっぽを向いている。 私がクスクス笑うと、隆は私にデコピンをした。 しばらく、いろいろな話をしていて 隆は急に黙り込んでしまった。 「・・・・・・なぁ、これから俺のウチに来ないか?今、誰もいないしさ。 ほ、ほら、冷えてきたしっ、なっ?」 私は… 1・普段通り、遊びに行く 2・「幼馴染」から「恋人」になったので少し迷いつつも、隆を信じて行く 3・春樹が家でご飯を作ってくれてる事を思い出し、断る 4・意識してしまい、話を無理やりそらす 32 3・春樹が家でご飯を作ってくれてる事を思い出し、断る ...
  • ストーリーを読む 4ページ目
    751番台~1000番 501番台~750番台 751~760 761~770 771~780 781~790 791~800 801~810 811~820 821~830 831~840 841~850 851~860 861~870 871~880 881~890 891~900 901~910 911~920 921~930 931~940 941~950 951~960 961~970 971~980 981~990 991~1000
  • 冬馬711~720
    冬馬701~710 「落ち着きましたか?」 ずっと胸を貸してくれていた先輩が尋ねてくる。 持っていたハンカチは涙でぐしゃぐしゃだ。 「大分落ち着いたよ。もう大丈夫だから」 そう言いながら先輩から身を離して、なんとか笑顔をつくってみせる。 かなり長い間泣いていた。 屋上とはいえ授業中。 声を上げて泣いてしまいそうになるたび、冬馬先輩が苦しくなるほどギュッと抱きしめてくれていた。 泣き声は学校中に響かなかったけど、ブレザーに大きな涙のシミを作ってしまった。 「冬馬先輩の制服、涙で濡れちゃってるね」 「はい」 「鼻水もついちゃったかも」 「構いません」 「でも……」 「僕がいいのだから、愛菜が気にすることないです」 「やっぱりクリーニングに……」 言いかけた私を制すように冬馬先輩は首を横に振った。 「愛菜は僕の...
  • 冬馬811~820
    冬馬801~810 (おなかすいた) 眼球だけうごかして周りをみる。 (よるだ。何かたべたい) とにかくおなかぺこぺこだった。 いつものつめたい箱の中にたべものがあるはず。 深い海の底のようなとても静かなよる。 わたしはおよぐように階段をおりる。 つめたい箱の扉を開けるとまぶしくて目がくらんだ。 あかりは嫌い。 目がつぶれてしまいそう。 まぶたを閉じて、匂いでたべものをさがす。 (きょうはすくない) 愛菜のははおやがかえってこなかったから食べるものがほとんどない。 それでもあるだけぜんぶ食べる。 (ぜんぜんたりない) いちばんのごちそうの匂い。 でもあれをたべたくないと私はいう。 たべたいわたしとたべたくない私。 どっちもどっちでせめぎあってる。 眩しいおひるは私の時間。 暗いよるはわたし...
  • 冬馬831~840
    冬馬821~830 学校では普段通り、慌ただしく授業が始まって、終わっていく。 気がつけば、昼食の時間になっていた。 教室の一角、香織ちゃんと向かい合わせの席でご飯を食べだした。 「今日は一緒に食べられてよかったよ。最近愛菜忙しそうだったし」 「ちょっと色々立て込んでだからね」 「またコンビニおにぎり?」 「うん……お弁当作ってくれてたの春樹だからね」 「風邪だっけ。早く良くなるといいわね」 「そうだね」 (本当は出て行ったって、伝えた方がいいのかな) 「香織ちゃん、実はね……」 「ん? どうしたの?」 「実は春樹ね、風邪じゃなくて家出してるんだ」 「えっ! あの優等生が!?」 香織ちゃんは驚きのあまり、プチトマトを箸から落としてしまっていた。 「香織ちゃん、声大きいよ」 「ゴメンゴメン。へぇ、またどうしてそんな事に...
  • 冬馬731~740
    冬馬721~730 冬馬先輩の筋トレ講座も一息ついて、私はテーブルで少しずつ水を飲んでいた。 時計の秒針が聞こえそうなほど静かに時間が過ぎる。 (そうだ。冬馬先輩に聞こうとしていたことがあったんだ) 「冬馬先輩」 テーブルの対面に座っていた先輩に声を掛ける。 「どうしました?」 「あの……聞きにくいんだけど……修二くんって本当にクローンなの?」 昼休みには聞けなかったけど、ずっと気になっていた。 でもクローンという言葉自体は以前聞いた事がある。 数日前、隆の中に眠るもう一つの人格と少しだけ話した。 その子は隆が事故で大怪我したときに隆の一部になったと言っていた。 そして僕は隆のクローンだったと話してくれた。 「そうです。彼はクローンです」 「でも……どうやって……」 「この町には一つしか産婦人科の病院がありませ...
  • 211~220
    201~210 211 ①「うん、ごめんね」 本当は終わっていないといいたかった。 今までのことは誤解だとわかったから。 でも、それじゃあ隆は私のために力を使い続ける。 そうして無理をしていたら消えてしまうかもしれない。 今もこんなに苦しそうで、不安定さを感じる。 「それじゃあ…」 苦しそうに息をつく。 「今、お前の一番近くに居るのは誰なんだ?」 「え?」 「この先お前を守るのは誰なんだ?」 (私を守るひと?) ふっと顔が思い浮かぶ。 ①春樹 ②一郎くんと修二くん ③御門くん 全員選んだら 212 ①春樹 今一番私のそばに居て守ってくれているのは、多分春樹だ。 隆や一郎君たちとは違って特別な力はない。 けれど私は守られている。精神的に。 普通じゃない出来事に何と...
  • 131~140
    121~130 131 ③御門君の名前を伏せて説明する 私はしばらく考えて話すことに決めた。 このままじゃいつまでたっても前に進めない。 (御門くんのことは、知らない男の子ってことにしておけば問題ないよね…) 「関係あるかわからないけど…」 そう前置きして私は夢での出来事を話した。 「大堂、そいつは君を主と呼んだんだな?」 「う、うん……」 「なんだよー、俺には話してくれなかったのに兄貴なら話すの~?」 「だ、だって、普通に夢だとおもうじゃない……」 修二君がぷーっとふくれる。 「いいんだいいんだ、俺なんて……」 わざとらしくいじける修二君を無視して、考え込む一郎君。 「おもいだした。時々学校で感じる残滓……あれと同じ感じだ」 一郎君は私をじっと見たままつぶやいた。 「ん?残滓?……...
  • 冬馬911~920
    冬馬901~910 美波さんの運転する大きなSUVの4駆に乗って暗い山道をひた走っている。 雨足はだいぶ弱くなってきたのか、ワイパーがゆっくり左右に振られている。 夜中には雨は上がるらしい。 皆の口数も少なく、緊張しているような重苦しい雰囲気が車内を包んでいた。 (もうそろそろ言った方がいいかな。冬馬先輩は伝えるべきだって言ってたし) 私は先輩にめくばせをする。 冬馬先輩は黙ったまま頷いた。 「あの……少しお話ししてもいいですか?」 「なんだい、愛菜ちゃん」 助手席に座っていた周防さんが振り向いて言った。 「この後、30分後くらいに敵がこの車を襲うんです。このまま乗っていると危ないので、もう少ししたら一旦車を降りて歩いて進みませんか?」 私はこれから起こる事を皆に伝える。 「大堂、それは未来予知か」 一郎くん...
  • 201~210
    191~200 201 ①「それでキスしちゃったんだ、サイテー」 ボソッと呟く。 事情があったとはいえ、今までの真剣な隆がなんだか一気に台無しになってしまった気がする。 ……ついでに言うと私の感謝の気持ちとか無駄に悩んだ時間とかも。 (流されやすいにもほどがあるよ、隆……) 私は白けた気持ちのまま、隆を見る。 「まあ……確かにキスしなくてはならないと言うならともかく、 別にそうじゃないのにキスしてしまうって言うのは……ちょっと」 春樹も呆れたように隆を見ている。 「いや、その、それは」 言い訳するつもりだったのか、隆は口を開いたけど……うまく言葉にはならなかったみたい。 「…………ごめん…………」 やがて、私に向かって大きく頭を下げた。 1、「私に謝られても困るよ」 2、「謝ってすむ問題じゃないよ」 ...
  • 431~440
    421~430 431 ①修二君を追いかける 軽くなった体で部屋の扉を開けると、廊下にはすでに誰もいなかった。 「修二君……」 (どうして胸の締め付けられるような微笑み方をしたの?) 口説き文句か軽口で冗談と本気の区別がつかない修二君が、あんな顔するなんて思いもしなかった。 私が今まで思っていた修二君とはあまりにかけ離れていた。 (私……修二君を誤解していた?) 軽薄でたくさんの女の子のファーストキスを奪っても何も思わないような人だと決め付けていた。 だから私がファーストキスだって事も、言い出せなかった。 もちろん驚いて何も言えなかったのもある。 でも、それだけじゃない。 恋愛に疎いと思われるのが恥ずかしかったし、逆に『ラッキー』と幸運がられるのも悲くなるだけだからだ。 だけど、あの微笑はもっと複雑で優しさに満ちていた。...
  • 冬馬931~940
    冬馬921~930 研究所の入り口前で私達は立ち止まる。 ガラスの自動ドアの横にはセキュリティ用のカードリーダーが設置されている。 ロビーの照明がほとんど落とされていて、中はかなり暗い。 非常口の緑の明かりがぼんやりと光っていた。 建物は古いけれど、まだ利用されている形跡はあちこちにある。 「大きい結界……」 私が軟禁されていたのと全く同じ結界が建物全体に張られている。 やはり私は半年近くこの研究所内に囚われていたのだろう。 「その結界に触んないほうがいいよ。愛菜ちゃん」 「修二くん……」 「この結界、愛菜ちゃんだけ屋内に入れるよう細工されてる。おまけに入ったら出られない。 それでも一人で乗り込んでみる?」 「遠慮しとくよ」 「てか外部からの直接攻撃はほぼ効かなそう。気が遮断されてるから中に入っても霊気の加護も受けられない。 それにして...
  • 631~640
    621~630 631 ③『近藤先生と話すのって緊張しない?』 差し出したノートを見て、隆が首を傾げる。 「何、びびってんだよ。そりゃ確かに少し恐いけど、聞けないほどじゃないだろ?」 (まぁ、そうだけど……) 近藤先生は厳しいけれど、いい先生だというのは知ってる。 昨日は茶道室まで連れてってくれたし、親切にしてもらった。 でも、なんというか威厳のある風貌に圧倒されてしまい、少し苦手なのだ。 『そうだね。明日、聞いてみようかな』 「もし不安なら、俺もついてってやるよ」 『うん、助かるよ』 「それと、チハルが起きたら一度聞いてみたほうがいいかもな。 鏡について何か思い出せそうだったし、手がかりになるかもしれないぜ」 私は、横に座らせたチハルを撫でながら頷いた。 夕食が終わり、私が片付けをしようと食器を持って立ち上がる。 すると...
  • 531~540
    521~530 531 ②「お、重い」 一回り大きい修二くんの身体が上にあって身動きが出来ない。 「し、修二くん、早くどいて」 「ったた…、うわ、愛菜ちゃんごめん、すぐ退くから!」 ガコンと音を立てて、修二くんは持ったままの蓋を床に置くとあわてて立ち上がる。 「大丈夫?愛菜ちゃん?」 「う、うん。なんとか」 修二くんが差し出してくれた手を取って、立ち上がる。 制服に付いたほこりを叩きながら足元を見ると、取れてしまった蓋が置かれている。 重そうな蓋は蝶番を止める部分が錆びて弱くなっていたのか、壊れてしまったようだ。 「壊れちゃったね、どうする?」 「まあ、仕方ないよ。かなり重いし、ただ置いておくだけで大丈夫じゃない?」 軽くいいながら、修二くんは蓋の取れた床を覗き込む。 「うーん、暗くて奥が見えないな…」 「ほんとだ…」 ...
  • 731~740
    721~730 731 ③様子をみる 「だけど……秋人さんはとても強いよ。春樹の力では勝てない……」 「力では圧倒的に負けてるのは分かってる。けど、兄さんに持っていないものを俺達は持ってるんだ。 だから、大丈夫だよ」 春樹の目に、失望の色は無い。 (春樹を信じよう) 「もう一度言う。壱与の器を渡してもらおうか」 「できません」 「それは……私に逆らうということだな」 秋人さんの言葉には、静かな怒りが含まれていた。 「兄さんに従うつもりはありません」 「馬鹿な弟を持ったものだ。お前の力で私に勝てると思っているのか」 「多分、勝てないと思います。けど、負けるつもりもありません」 春樹は一歩踏み出し、私の前に立った。 「祖父や父、そして兄さんがしようとしている事も全部知りました。多くの人たちを不幸にさせ、命を弄...
  • 931~940
    921~930 931 ③香織ちゃんに今日の通し稽古の状況を聞いてみる (そうだ。今日の通し稽古の状況はどうだったんだろう) 私は自室に戻ると、携帯電話を手に取った。 急な用事でもないし、メールの文字を素早く打っていく。 『今日は最後の稽古に参加できなくてゴメンね。 ところで、通し稽古はきちんと時間内に終われたんだよね?』 「送信っと。そうだ……今のうちにお風呂はいってこよう」 ゆっくりめのお風呂に入って、パジャマに着替える。 自室の戻って携帯を確認すると、香織ちゃんから返信が来ていた。 『落ち込んでだみたいだけど復活したみたいだね。(よかったよかった) 最後の通し稽古だけど、無事に時間内に収めることができたみたい。 私って緊張しない性質だと思っていたけど、今更になって主役の重圧感じてきたかも。 明日私がポカやらかして落...
  • 831~840
    821~830 831 ①「もう鬼にこだわる必要なんてない気がします」 「私はこだわっているのだろうか」 「とてもこだわっている様に見えます」 時々、心がひとつのことに囚われすぎて、周りが見えなくなってしまうことがある。 たとえば、家の中だけで何日も過ごしていると、その箱庭がすべてのように感じてしまう。 けれど私の家も、遠くから見渡せば街明かりの一つに過ぎない。 守屋さんも復讐に囚われすぎていて、光輝のことなんてまるで気にも留めていない。 兵士の人達にだって家族や恋人や友達だっているはずなのに。 複雑な事情がありそうだし同情はするけれど、それ以上に段々腹が立ってきた。 (身勝手ですごくムカツク……) 喉がカラカラに渇いて、私はまた葡萄のジュースを飲み干した。 今日は熱帯夜なのか、身体がすごく熱い。 空になった器を手で弄びながら、守屋...
  • 冬馬631~640
    冬馬621~630 校門に入り、私は冬馬先輩と向き合う。 「少しはしゃいじゃったかな。先輩も私も肩がぬれちゃったね」 「はい」 「先輩の下駄箱はあっちだよね」 私は三年の下駄箱のある入り口に視線を向ける。 この学校はそれぞれの学年ごとに下駄箱のある入り口が違っている。 「愛菜、傘をありがとうございました」 冬馬先輩は大荷物を左手にまとめると傘をさす。 「やっぱり荷物半分持つよ」 「いいえ、大丈夫です」 「だけど」 「あと少しですので平気です」 冬馬先輩はやっぱり私に荷物を持たせてはくれなかった。 (もうっ) 「じゃあ私、教室にタオルがあるから取ってくるよ。冬馬先輩も濡れてるし拭かなくちゃ」 「わかりました」 「先輩は荷物を持って先に戻っていてください」 「はい」 私は冬馬先輩と別れてぬかるんだ...
  • 春樹931~940
    春樹921~930 「……菜ちゃん」 「…………」 「ねぇ。愛菜ちゃん」 チハルが私を呼んでいる。 もう朝になったのだろうか。 「おはよう、チハル」 「まだ朝じゃないよ。ここは夢の中だもん」 あぁ、また夢の中に入ってしまったのか。 ボンヤリとした頭でそう思う。 「私、寝てたの?」 「ううん、ついさっきまで起きてて今寝たところだよ」 「そっか。夢の中だから現実とは反対なんだ」 「そうそう」 チハルに両手を引っ張られて上半身を起こす。 周りを見回すと薄ピンク色の靄に覆われた何もないところだった。 「ここはチハルと私、二人だけなの?」 人の気配は全くない。 「そうみたい。ボクもとつぜん飛ばされたから」 「飛ばされた?」 「ここは愛菜ちゃんのこころの中だよ」 「そうなんだ」 「うん。愛菜ちゃん、ボクに...
  • 冬馬781~790
    冬馬771~780 身体全体がゆっくり光に向かって登っていく。 と、途中、グッと誰かに足を引っ張られる。 足首に目を向けると人の形をした黒い霧が私の足を両手でつかんでいた。 二つの穴が目のようにぽっかり開いている。 黒い霧はしばらく動かず、空洞の目で私を静かに見続けた。 (な、何これ………) 「ワレヲ……」 「!?」 「ワレヲ……コノバカラ……解放……」 「………!」 「フウイン……解ク……」 かすかに女の人のような声が聞こえる。 しゃがれ声で聞き取りにくいけど、確か誰かがしゃべっている。 とても息苦しそうに呻いているから、こっちまで胸の辺りが苦しくなってくる。 「……あ、あの」 「アカメノウ…マガタマヲ……」 いつのまにか私の手には緋色の勾玉が握られていた。 「これはあなたの?」 黒い...
  • 冬馬751~760
    冬馬741~750 「じゃあそこのベッド借りるか。愛菜ちゃんそこに横になってみようか」 「はい」 言われるまま、ベッドに仰向けに寝る。 周防さんは私の額にそっと手を置いた。 (このマクラ冬馬先輩の匂い。ダメだ、ギュッとされたの思い出す。これから退行催眠だから緊張しちゃいけない。平常心平常心) 私は必死で自分に言い聞かせる。 「えっと、なんだ……あいつはトウヘンボクのオタンコナスだから。とっとと忘れるのが一番かもな」 周防さんが私だけに耳打ちした。 私も周防さんにだけ聞こえる様に話す。 「それって冬馬先輩のことですか?」 「ついでにデクノボウの大バカだ」 口は悪いけど、周防さんなりの励ま方なのかもしれない。 さっき冬馬先輩の心を読んですべて把握したのだから、振られたのだって知ってるはずだ。 「私の心、やっぱり...
  • 冬馬791~800
    冬馬781~790 『悪天候のため飛行機が欠航で今日は帰れなくなりました。愛ちゃん、よろしくお願いします』 お義母さんからのメールに気付いたのは家の前だった。 「お義母さん、今日帰ってこられないって連絡来てたよ」 「そうですか」 「あの……」 「何でしょうか」 「あのね、あの……」 (少しでも先輩と一緒に居たい) この先、どれだけ時間を共有できるか分からない。 もしかしたら、春樹が無事に戻って来たら姿を消してしまうかもしれない。 私のそばに居てくれたとしてもたった5年しか無い。 どちらにしろ、あまりに短過ぎる。 (離れたくないな) 「えっと……」 「……」 「その……」 (でも振られてるし、言い出すのが難しいよ) 「もしかして、心細いですか?」 先輩が尋ねてくる。 私は「うん」と首を大きく...
  • 冬馬771~780
    冬馬761~770 「ちょっと人が多すぎるわね。こっち来て」 小さな私と隆は、先を行く女の子に黙ってついていく。 「ここにあらかじめ結界を張っておいたの」 「ケッカイ?」 「秘密基地みたいなものよ。さ、入って」 公園の一角、木々が茂った死角がある。 そこは木漏れ日が芝生に影を落としていた。 「……その、あなたは私の味方なんだよね」 「そうよ」 「こんな所に連れてきて、私と隆くんをどうするの?」 小さな私はオドオドと隆に隠れながら言った。 「お前、まさか愛菜ちゃんをいじめるんじゃないだろうな」 「違うわよ」 「もしかしてあのドロドロの仲間か」 「まさか」 「じゃあ、大人に言われたのか」 「細かい事はいいでしょ。それより私、ランドセル買ってもらったの。一体何色だと思う?」 女の子は突然質問を投げかけてくる。 ...
  • 冬馬841~850
    冬馬831~840 「一郎くん、ちょっと時間取れる?」 放課後、机の片付けをしている一郎くんに声をかける。 「大堂、またお前か」  溜め息まじりの、あからさまに嫌な顔をされる。 「なにその態度、愛菜にひどい事を言ったただじゃおかないわよ」 冷たい態度の一郎くんに、香織ちゃんが横から怒った。 「長谷川、これから大堂と話がある。席を外してもらおう」 「嫌よ。委員長の指図なんて受けないわ」 「あのね、一郎くん。香織ちゃんは部外者じゃないんだよ。だから一緒に居てもいいよね」 「長谷川が?」 一郎くんは目の前の香織ちゃんを見据える。 「訳ありのようだな。いいだろう、ついて来い」 先に歩き出した一郎くんに、私達はついていく事にした。 (ここは空き教室か)  「少し埃っぽいが我慢してくれ」 ...
  • 冬馬801~810
    冬馬791~800 お風呂から上がり、部屋着に着替えて水を飲む。 すると居間のソファーに冬馬先輩が座っていた。 昨日のTシャツを用意しておいたから、先にお風呂に入っている先輩も用意した服に着替えていた。 「先輩、客間に布団を敷いておいたからね」 「ありがとうございます」 「少し時間がはやいね。まだ寝ない?」 「はい」 「私もまだ眠くないかも。少しお話ししてもいいかな」 「僕も愛菜と話したいです」 「よかった。何か飲み物持ってこようか?」 「大丈夫です」 「そっか。私も今はいいかな」 私は冬馬先輩と少し距離を置いて隣りに腰掛ける。 「私……今日ずっと考えてたんだ」 「何をですか?」 「私の能力って以前教えてもらったけど、強く願えば未来を思うように実現できるんだよね」 「封印を解けば可能だと言われています」 「冬馬先輩の時みたいに、...
  • 冬馬681~690
    冬馬671~680 ピピピピピピ 目覚ましのアラームを止めながらのろのろと起き上がる。 「まだ少し寝たり無いかな……」 夜中に目を覚ましたのがいけなかったのか。 カーテンを開けて青空を見ても頭がまだボンヤリする。 パジャマを脱いで制服に着替え、一階へ下りる。 顔を洗いキッチンに行くと、ダイニングテーブルに冬馬先輩が座っていた。 「冬馬先輩、おはよう」 「愛菜。おはようございます」 冬馬先輩は制服を着て、ゆっくりコーヒーを飲んでいた。 私の席にはお義母さんが作ったサンドイッチが置いてあった。 「朝食お先にいただきました。愛菜のお母様は先にお家を出て行かれました」 「昨日、地方の取材で早く家を出るって言ってたから」 「取材ですか?」 「お義母さんは雑誌の記者なんだ」 「そうですか。お忙いですね」 「まぁね。だけど...
  • 冬馬741~750
    冬馬731~740 「悪い。少し遅れちまった」 玄関扉を開けた冬馬先輩の横を通って、周防さんが部屋に入ってくる。 「周防さん。こんにちは」 顔を合わせて、開口一番あいさつをする。 こんにちはとこんばんはの間くらいの時間になっている。 一瞬迷って、こんにちはを選んだ。 「愛菜ちゃん待たせちゃってごめんな。時間も無いしさっそく始めるかな」 (始める?) 「あの……周防さんが私に用があったんですよね」 「違うって。愛菜ちゃんから頼まれたって冬馬が言ってたぞ」 頭の中に?が飛び交う。 私、周防さんに何か頼み事なんてしていただろうか。 「冬馬。まさか愛菜ちゃんに説明せずに連れてきたんじゃないだろうな」 冬馬先輩の横に座った周防さんがジロッと睨む。 「あの、私に説明って何でしょうか」 意味が分から...
  • 冬馬701~710
    冬馬691~700 「冬馬先輩、大丈夫?」 私は土下座の格好をしたままの先輩に手をさしのべる。 「すみません。情けない姿をみせてしまいました」 手を取った冬馬先輩の指先が震えている。 膝も少し笑っているようだった。 「ううん。情けなくなんか無かったよ」 「まだ震えてますね。僕は人……特に相手が高圧的に出られるとこうなってしまうんです。 幼い頃は恐怖を攻撃性に変えて手がつけられなかった時期もあるようでした」 獣のような僕と冬馬先輩は言っていた。 だけど今は誰も傷つけられてはいない。 支えるようにしながら、冬馬先輩を座らせる。 私もその隣に腰掛けた。 「冬馬先輩のおでこ、少し血がついてる。ちょっと待ってて」 きっとコンクリートに額をつけた時だろう。 私はポケットからハンカチを取り出す。 「ハンカチが血...
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