選択肢を選んで1000レス目でED @ ウィキ内検索 / 「691~700」で検索した結果

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  • 691~700
    681~690 691 ①「照れてるんじゃないかな」 「そうなんだ……わかった! 僕のカッコがみんなと違うから照れちゃうんだね」 チハルはポンッと音をさせて、男子の制服姿になった。 「この姿なら、みんなと一緒だよ。これならいいかな?」 「きっと言ってくれると思うよ。ねぇ、一郎くん」 そう言いながら、私は一郎くんに目配せをした。 一郎くんも観念したのか、諦めたような溜息を吐いている。 チハルはクルクルとまわりながら、一郎くんの元へ駆け寄っていった。 「変身したよ。だから、チハルって言ってよぉ」 「…………チハル。これで、いいのか?」 「うん。やったー! 愛菜ちゃん、言ってくれたよ」 また私のところに駆け寄って、抱きついてくる。 一方の一郎くんは、どっと疲れたような顔をしていた。 キーンコーン 三時間目の予鈴が鳴った。 私たちは部...
  • 冬馬691~700
    冬馬681~690 「一郎くん、ちょっといいかな」 教室に残っていた一郎くんは文化祭の資料から目を離して私を見る。 放送委員長だから準備もあってこの時期は忙しいのだろう。 「大堂か。一体、何だ」 昨日よりも突き放した冷たい言い方をされる。 ここでめげていては何も始まらない。 「実はお願いがあるんだけど……」 一郎くんの様子を伺うと眉間のしわが先日よりさらに深い。 私が冬馬先輩側についたのが気に入らないのかもしれない。 「またアイツの話か」 (アイツって……きっと冬馬先輩の事だよね) 「うん。冬馬先輩に頼まれてね」 「アイツに何を言われた?」 「えっと、昼休み……って、今からなんだけど冬馬先輩に会ってくれないかな」 一郎くんの机には資料がいくつも置いてある。 委員会の仕事を休み時間に済ませようとして...
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    ... 681~690 691~700 701~710 711~720 721~730 731~740 741~750 751番台~1000番台
  • 冬馬701~710
    冬馬691~700 「冬馬先輩、大丈夫?」 私は土下座の格好をしたままの先輩に手をさしのべる。 「すみません。情けない姿をみせてしまいました」 手を取った冬馬先輩の指先が震えている。 膝も少し笑っているようだった。 「ううん。情けなくなんか無かったよ」 「まだ震えてますね。僕は人……特に相手が高圧的に出られるとこうなってしまうんです。 幼い頃は恐怖を攻撃性に変えて手がつけられなかった時期もあるようでした」 獣のような僕と冬馬先輩は言っていた。 だけど今は誰も傷つけられてはいない。 支えるようにしながら、冬馬先輩を座らせる。 私もその隣に腰掛けた。 「冬馬先輩のおでこ、少し血がついてる。ちょっと待ってて」 きっとコンクリートに額をつけた時だろう。 私はポケットからハンカチを取り出す。 「ハンカチが血...
  • 冬馬681~690
    ...。 次へ冬馬691~700
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    ストーリーを読む 共通・トゥルールート 1番台~250番台 1~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~90 91~100 101~110 111~120 121~130 131~140 141~150 151~160 161~170 170~180 181~190 191~200 201~210 211~220 221~230 231~240 241~250 251番台~500番台へ
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    751番台~1000番 501番台~750番台 751~760 761~770 771~780 781~790 791~800 801~810 811~820 821~830 831~840 841~850 851~860 861~870 871~880 881~890 891~900 901~910 911~920 921~930 931~940 941~950 951~960 961~970 971~980 981~990 991~1000
  • 61~70
    51~60 61 2.ぼーっと窓の外を眺める 私は窓際のベッドに腰掛けたままなんとなく外を眺めた。 校庭では体育の授業が行われている。 どれくらいボーっとしていたのか、ふと時計を見るともうそろそろ授業が終わる時間だった。 「あ、もうこんな時間だ、…先生帰ってこないな」 そのとき、ふと視線を感じて、窓の外を見る。 校庭の隅、少しはなれたところから、私を見ている人がいる。 それは… 1.隆 2.御門くん 3.水野先生 62 2.御門くん さっき、保健室までつれてきてくれた男の子だった。 (確か、御門くんっていったっけ……) その男の子……御門君は、制服姿のままそこに佇んでいる。 私が見ていることに気がついていないのか。 それとも……気がついていて、なおそうしているのか。 御門くんは私を...
  • 701~710
    691~700 701 ③十種の神宝について思い出す (十種の神宝か……) 私は十種の神宝について、詳しく思い出してみることにした。 澳津鏡(おきつのかがみ)、辺津鏡(へつのかがみ)、八握剣(やつかのつるぎ)、 生玉(いくたま)、足玉(たるたま)、道返玉(ちがえしのたま)、死返玉(まかるがえしのたま) 、 蛇比礼(おろちのひれ)、蜂比礼(はちのひれ)、品物比礼(くさぐさのもののひれ) が、十種の神宝と呼ばれていた。 それぞれの神宝にはすべて意味があり、その意味に沿った強い鬼の力を宿していた。 大和の民は出雲の持つ神宝の力を、黄泉の祟りとして恐れを抱いている者も多かった。 出雲は根の国と呼ばれ、死者の世界に通じている恐ろしい場所だと思われていたためだ。 死者甦生という禁忌も行える神宝が、死者の世界に通じているという誤解を生んでいたようだっ...
  • 冬馬781~790
    冬馬771~780 身体全体がゆっくり光に向かって登っていく。 と、途中、グッと誰かに足を引っ張られる。 足首に目を向けると人の形をした黒い霧が私の足を両手でつかんでいた。 二つの穴が目のようにぽっかり開いている。 黒い霧はしばらく動かず、空洞の目で私を静かに見続けた。 (な、何これ………) 「ワレヲ……」 「!?」 「ワレヲ……コノバカラ……解放……」 「………!」 「フウイン……解ク……」 かすかに女の人のような声が聞こえる。 しゃがれ声で聞き取りにくいけど、確か誰かがしゃべっている。 とても息苦しそうに呻いているから、こっちまで胸の辺りが苦しくなってくる。 「……あ、あの」 「アカメノウ…マガタマヲ……」 いつのまにか私の手には緋色の勾玉が握られていた。 「これはあなたの?」 黒い...
  • 冬馬761~770
    冬馬751~760 ここはどこだろう。 日差しのまぶしさに顔をしかめながら、あたりを見渡した。 (ここは近所の児童公園だ) 「愛菜ちゃん!」 名前を呼ばれて振り向くと、小さい女の子が駆けてくる。 「まきちゃん」 駆けてきた女の子はお友達の事をまきちゃんと呼ぶ。 息を切らしているその女の子には見覚えがある。 (写真で何度も見たことがある。あの子は私だ) どうやら私の名前を呼んだ方が『まきちゃん』、駆けてきたのが小さな頃の私みたいだ。 まきちゃんという女の子と私は砂遊びを始める。 このお友達は確か保育園で一緒だった子だ。 (この子が勾玉かな?) 「おーい。愛菜ちゃんたち一緒にあそぼ」 もう一人、今度は男の子が駆け寄ってくる。 「隆くん! 今ね砂のお城をつくっているんだ」 「じゃあオレは車つ...
  • 冬馬751~760
    冬馬741~750 「じゃあそこのベッド借りるか。愛菜ちゃんそこに横になってみようか」 「はい」 言われるまま、ベッドに仰向けに寝る。 周防さんは私の額にそっと手を置いた。 (このマクラ冬馬先輩の匂い。ダメだ、ギュッとされたの思い出す。これから退行催眠だから緊張しちゃいけない。平常心平常心) 私は必死で自分に言い聞かせる。 「えっと、なんだ……あいつはトウヘンボクのオタンコナスだから。とっとと忘れるのが一番かもな」 周防さんが私だけに耳打ちした。 私も周防さんにだけ聞こえる様に話す。 「それって冬馬先輩のことですか?」 「ついでにデクノボウの大バカだ」 口は悪いけど、周防さんなりの励ま方なのかもしれない。 さっき冬馬先輩の心を読んですべて把握したのだから、振られたのだって知ってるはずだ。 「私の心、やっぱり...
  • 冬馬771~780
    冬馬761~770 「ちょっと人が多すぎるわね。こっち来て」 小さな私と隆は、先を行く女の子に黙ってついていく。 「ここにあらかじめ結界を張っておいたの」 「ケッカイ?」 「秘密基地みたいなものよ。さ、入って」 公園の一角、木々が茂った死角がある。 そこは木漏れ日が芝生に影を落としていた。 「……その、あなたは私の味方なんだよね」 「そうよ」 「こんな所に連れてきて、私と隆くんをどうするの?」 小さな私はオドオドと隆に隠れながら言った。 「お前、まさか愛菜ちゃんをいじめるんじゃないだろうな」 「違うわよ」 「もしかしてあのドロドロの仲間か」 「まさか」 「じゃあ、大人に言われたのか」 「細かい事はいいでしょ。それより私、ランドセル買ってもらったの。一体何色だと思う?」 女の子は突然質問を投げかけてくる。 ...
  • 冬馬711~720
    冬馬701~710 「落ち着きましたか?」 ずっと胸を貸してくれていた先輩が尋ねてくる。 持っていたハンカチは涙でぐしゃぐしゃだ。 「大分落ち着いたよ。もう大丈夫だから」 そう言いながら先輩から身を離して、なんとか笑顔をつくってみせる。 かなり長い間泣いていた。 屋上とはいえ授業中。 声を上げて泣いてしまいそうになるたび、冬馬先輩が苦しくなるほどギュッと抱きしめてくれていた。 泣き声は学校中に響かなかったけど、ブレザーに大きな涙のシミを作ってしまった。 「冬馬先輩の制服、涙で濡れちゃってるね」 「はい」 「鼻水もついちゃったかも」 「構いません」 「でも……」 「僕がいいのだから、愛菜が気にすることないです」 「やっぱりクリーニングに……」 言いかけた私を制すように冬馬先輩は首を横に振った。 「愛菜は僕の...
  • 冬馬731~740
    冬馬721~730 冬馬先輩の筋トレ講座も一息ついて、私はテーブルで少しずつ水を飲んでいた。 時計の秒針が聞こえそうなほど静かに時間が過ぎる。 (そうだ。冬馬先輩に聞こうとしていたことがあったんだ) 「冬馬先輩」 テーブルの対面に座っていた先輩に声を掛ける。 「どうしました?」 「あの……聞きにくいんだけど……修二くんって本当にクローンなの?」 昼休みには聞けなかったけど、ずっと気になっていた。 でもクローンという言葉自体は以前聞いた事がある。 数日前、隆の中に眠るもう一つの人格と少しだけ話した。 その子は隆が事故で大怪我したときに隆の一部になったと言っていた。 そして僕は隆のクローンだったと話してくれた。 「そうです。彼はクローンです」 「でも……どうやって……」 「この町には一つしか産婦人科の病院がありませ...
  • 冬馬741~750
    冬馬731~740 「悪い。少し遅れちまった」 玄関扉を開けた冬馬先輩の横を通って、周防さんが部屋に入ってくる。 「周防さん。こんにちは」 顔を合わせて、開口一番あいさつをする。 こんにちはとこんばんはの間くらいの時間になっている。 一瞬迷って、こんにちはを選んだ。 「愛菜ちゃん待たせちゃってごめんな。時間も無いしさっそく始めるかな」 (始める?) 「あの……周防さんが私に用があったんですよね」 「違うって。愛菜ちゃんから頼まれたって冬馬が言ってたぞ」 頭の中に?が飛び交う。 私、周防さんに何か頼み事なんてしていただろうか。 「冬馬。まさか愛菜ちゃんに説明せずに連れてきたんじゃないだろうな」 冬馬先輩の横に座った周防さんがジロッと睨む。 「あの、私に説明って何でしょうか」 意味が分から...
  • 冬馬791~800
    冬馬781~790 『悪天候のため飛行機が欠航で今日は帰れなくなりました。愛ちゃん、よろしくお願いします』 お義母さんからのメールに気付いたのは家の前だった。 「お義母さん、今日帰ってこられないって連絡来てたよ」 「そうですか」 「あの……」 「何でしょうか」 「あのね、あの……」 (少しでも先輩と一緒に居たい) この先、どれだけ時間を共有できるか分からない。 もしかしたら、春樹が無事に戻って来たら姿を消してしまうかもしれない。 私のそばに居てくれたとしてもたった5年しか無い。 どちらにしろ、あまりに短過ぎる。 (離れたくないな) 「えっと……」 「……」 「その……」 (でも振られてるし、言い出すのが難しいよ) 「もしかして、心細いですか?」 先輩が尋ねてくる。 私は「うん」と首を大きく...
  • 761~770
    751~760 761 ①さらに続きを見る 「私は……あなたは……」 壱与は混乱している。 なぜ帝がこんなことを言っているのか分かっていない。 (壱与……帝はあなたを畏れていないのよ。ただあなたを求めてるだけなの) 「私は、あなたに……あの姿を知られたくなかった……知ったらすべてが壊れてしまう」 「なぜ?」 「私は鬼だから……人ではないから……」 「鬼でも人でも魔でも壱与は壱与だ、関係ない。いったい何が壊れるというんだ」 「……私が、怖くないの?」 「壱与が? なぜ僕が壱与を怖がるんだ?」 帝は心底分からないというように、首をかしげ壱与を覗き込む。 「僕が壱与を怖がることはない。こんなに愛しいのに」 そういって帝はさらに強く壱与を抱きしめる。 それを聞いた壱与の頬を新たな涙が伝う。 「本当に?」 「今まで君にはたくさん...
  • ストーリーを読む 2ページ目
    251番~500番台 1番台~250番台 251~260 261~270 271~280 281~290 291~300 301~310 311~320 321~330 331~340 341~350 351~360 361~370 371~380 381~390 391~400 401~410 411~420 421~430 431~440 441~450 451~460 461~470 471~480 481~490 491~500 501番台~750番台
  • 冬馬721~730
    冬馬711~720 冬馬先輩の後ろを黙って歩く。 会話の糸口を見つけたいのに、どう話せばいいか分からない。 駅前を抜け、築5.6年ほどの単身向けアパートの前で止まった。 「ここの二階に住んでいます。こちらです」 冬馬先輩はいつも通りの淡々とした口調で言った。 気まずいとか話しづらいという風でもない。 それはそれで気が楽だけど、私はその程度にしか思われていなかったのだと改めて凹んでしまう。 でも今は春樹を助けるため、出来る限りの事をしていくしかない。 「どうぞ」 冬馬先輩は鍵を開け、私を中に入れる。 「おじゃまします」 「まだ周防は来ていません。しばらく待っていてください」 玄関を入るとすぐワンルームがあった。 その奥がお風呂とトイレ。 第一印象は寂しい殺風景な部屋。 シングルのパイプベッドと勉強用の小さな平机。 ...
  • 791~800
    781~790 791 ①守屋さん。はやく元気になってください 祈りながら、少しずつ鬼の力も送る。 すると、熱に反応したのか鬼の力に反応したのか守屋さんは身じろぎすると、私をぎゅっと抱きしめてきた。 守屋さんの冷たい身体に私の体温が奪われ、思わず身震いする。 その目は堅く閉ざされたままだ。 (無意識、なのかな?) きっと本能がそうさせたんだろう。  自分で熱を生むことが出来ない身体が、近くにある熱を欲するのは自然のことだ。 私は守屋さんの顔を見る。こころもちさっきより顔色がいいように見えた。 (この場所のおかげでもあるかな?) さっきまで眉間に刻まれていた皺も、いまは無く呼吸も少し穏やかになっている。 と、守屋さんの瞼がピクリと動いた。 それからゆっくりと目が開いて、守屋さんを見ていた私と視線が合う。 守屋さんは、どこかぼんやりした感じ...
  • 91~100
    81~90 91 ①逃げ出した きびすを返し足を引きずりながら音楽室を離れる。 怒りと悲しみと絶望とぐるぐると胸の奥で感情が渦巻く。 (どうして?) それだけが頭の中でぐるぐると回っている。 頬を涙が伝うがそれをぬぐおうとすら思わなかった。 早くここから離れたい、そう思うのに思うように足が動かない。 数歩あるいて思わずよろける。 転びそうになった私の腕を誰かが掴んで支えてくれる。 あわてて振り替えるとそこには… 1、春樹 2、一郎 3、近藤先生 92 2、一郎 そこには、私を支えてくれいてる一郎くんの姿があった。 「一郎……くん……」 「泣いているのか。可哀想に……」 ポケットからハンカチを取り出すと、一郎君は私に差し出してくれた。 いろんな感情が渦巻いていて、ただ涙がこぼれる...
  • 771~780
    761~770 771 ①私からもう一度頼んでみる (私から修二くんにもう一度頼んで見るよ。だから明日学校が終わってから家に来てくれるように伝えてくれない?) チハルが私の言葉を春樹たちに伝える。 「分かりました、何が何でも連れてきます」 「任せとけ、ちゃんと連れてきてやるよ」 (二人とも、無理やりはダメだからね……) 二人とも修二くんが嫌がったら、気絶させてでも連れてきそうな勢いだ。 (そういえば、明日は周防さんが来てくれるって言ってたよね?) 「明日スオウがくる?」 「ああ、そうそう。お前の寝てる原因が分からなかったから、とりあえず呼んでおいた。原因が分かったから断っておくか?」 (ううん、聞きたい事があるから) さっき見た夢が気になる。きっとあれは普通の夢じゃない。 「愛菜ちゃん、スオウに聞きたい事があるって」 「聞きたいこ...
  • 781~790
    771~780 781 ①実際に過去に来ている (壱与から抜け出して、過去に来てるのかな……) よくわからない。 でも、今までの夢から現実での謎が解けてきている。 だったら、今回もこの夢に意味があるのかもしれない。 「くっ……ここは…」 どうやら守屋さんが目覚めたみたいだ。 私は守屋さんの傍まで、急いで駆け寄る。 「…一体…どこ…なん…だ…」 「ここは……えっと光輝。ここはどこ?」 光輝は「はぁ?」という顔をして、仕方なさそうに口を開く。 「ここは穴虫峠の外れだ」 「……そうか、俺は……君らに助けられたのか……」 「怪我をしていたので、治療しておきました」 「……すま…ない」 そして、守屋さんはまた目を閉じてしまった。 ジッと睨みつけるように見ていた光輝に、私は顔を向ける。 「どうしたの怖い顔して?...
  • 711~720
    701~710 711 ②逃げない 一緒に戦うために、力を手に入れた。 だから…… 「周防さん。私、逃げたくありません。一緒に戦い――」 「駄目だ!!」 周防さんの大声で、私はビクッと動きを止めた。 「ごめんな、驚かせて。だけど駄目なんだ、愛菜ちゃん」 「どうして……」 「力の解放はさせるべきじゃなかった。だって、愛菜ちゃんが力を使ったら……」 せっかく力を手にしたのに、使っては駄目だってどういう事だろう。 私はただ呆然と立ちすくむことしか出来なかった。 そんな私の姿を見て、熊谷さんが痺れを切らしたように口を開いた。 「しっかし、この前といい興を削ぐのが好きな小娘だな。 力を使ってみたけれりゃ、使ってみるといいぜ。ただ、無事に済みゃいいがな」 (無事では済まないということ?) 「熊谷の言うとおり、...
  • 751~760
    741~750 751 ③「どうしようもなくなったら呼ぶよ」 私は気恥ずかしくて、春樹の顔がまっすぐ見られなかった。 (弟なのに……私、意識してるんだ……) 「わかった。もし何かあったらすぐに呼ぶんだよ」 春樹からバスタオルを受け取り、私はうなずく。 春樹はもう一度念を押すと、廊下から去っていった。 私はゆっくりした動作で、ブレザーを脱ぎ、リボンを解く。 (あっ、下着まで濡れてる。……はぁ、仕方がない) 「春樹……」 「どうしたの? 姉さん」 呼ぶと、着替えを終えている春樹が現れた。 春樹はまだ着替え終わっていない私を見て、驚いている。 「まだ着替え終わってないの? だから、俺がやるって……」 「下着を……持ってきて欲しいの。私の部屋、チェストの二段目……」 「あ、うん。わかった」 下着という言葉で春樹...
  • 741~750
    731~740 741 ①放つ (お願い!) 私はそう願いながら、光り輝くチハルの矢を放った。 光の矢は雨粒を切り裂きながら、真っ直ぐにとんでいく。 そして、秋人さんの肩の付け根ぎりぎりのところでく、見えない壁に阻まれて減速した。 (届いて……) 矢先はより強い光を帯びていく。 そして、秋人さんの肩を見事に射抜き、その光を失った。 「私の矢が……当たった……」 「……ぐっ!」 秋人さんの顔が苦痛で歪む。 「障壁は無くなった。今だ!」 一郎くんの声で、弾かれるように春樹が動く。 両手で剣を握り、春樹は秋人さんの首にめがけて剣を突き立てた。 (春樹……!) ふたりは揉みあうように、同時に倒れこむ。 春樹は射抜かれた秋人さんの肩を掴むと、馬乗りに押さえ込んだ。 炎にも似た八握剣が、秋人さんの喉もとでピタリと止った。 ...
  • 721~730
    711~720 721 ②一郎くんを呼んで行く 「修二くん。一郎くんがどこか教えてくれないかな? 香織ちゃんが勾玉だって教えてあげなきゃいけないし、神器が揃っていた方がいいと思うんだ」 「……兄貴はひと足先に愛菜ちゃんの家に向ったよ」 「一郎くんも……。じゃあ、急がなきゃ」 「そうね。行くわよ、愛菜、宗像くん」 香織ちゃんは一足先に私の家に向って走り出した。 「ま、待ってよ。香織ちゃん!」 数歩走ったところで、修二くんが全く動いていない事に気づいて足を止めた。 私は再び修二くんの傍まで駆け寄る。 「早く行こう。みんなが心配だよ」 「……………ど」 修二くんは私から視線を落しながら、小さく何かを言っていた。 「どうしたの? 修二くん」 「さっきの答え、まだ教えてもらってないんだけど」 「さっきの答え?」 「付き合ってもらえるか...
  • 731~740
    721~730 731 ③様子をみる 「だけど……秋人さんはとても強いよ。春樹の力では勝てない……」 「力では圧倒的に負けてるのは分かってる。けど、兄さんに持っていないものを俺達は持ってるんだ。 だから、大丈夫だよ」 春樹の目に、失望の色は無い。 (春樹を信じよう) 「もう一度言う。壱与の器を渡してもらおうか」 「できません」 「それは……私に逆らうということだな」 秋人さんの言葉には、静かな怒りが含まれていた。 「兄さんに従うつもりはありません」 「馬鹿な弟を持ったものだ。お前の力で私に勝てると思っているのか」 「多分、勝てないと思います。けど、負けるつもりもありません」 春樹は一歩踏み出し、私の前に立った。 「祖父や父、そして兄さんがしようとしている事も全部知りました。多くの人たちを不幸にさせ、命を弄...
  • 191~200
    181~190 191 ③考える 隆には会いたい。 でも、春樹から離れるわけにも行かない。 春樹だって狙われる可能性があるのには、かわりないんだから。 「………やっぱり、駄目か?」 考え込んでしまって、返事をしない私に隆の暗い声が聞こえてくる。 「あ、そうじゃなくて…春樹が……」 「春樹?」 隆にはどうしてそこで春樹の名前が出てくるのか不思議らしい。 私は隆に水野先生が私を狙っていること、水野先生のバックには何かの組織があること、そしてだんだん手段を選ばなくなってきていることをかいつまんで説明した。 「私と同じく春樹も危険なの……私には見えるけど春樹には見えないし」 「そうか……」 隆も納得したらしい。 「それじゃあ、俺がそっちに行くよ。それならいいか?」 それならいいかも…でも、ちょっと不安が...
  • 491~500
    481~490 491 ②気にしないことにする (うん。筒抜けじゃないと思い込もう) そう思うものの、一度気になりだしたら見られているような気になってしまう。 髪や体を洗う時、つい周りを確認してしまった。 (駄目だ…。気になってしょうがないよ) こんな状態ではトイレひとつ入るのにも緊張してしまうだろう。 やっぱり、一度冬馬先輩に確認するしかなさそうだ。 (でも、どうやって確認しようか…) 呼べば来てくれるのだろうけど、緊急の事態ではないし気が引ける。 以前冬馬先輩が話していたように、チューニングが合えば私から話を出来るかもしれない。 だけど、このままでは自分から裸を晒しに行くようなものだ。 私は急いでお風呂を出ると、パジャマに着替え、髪を乾かして脱衣所を出た。 「お風呂でたよ…って、あれ?」 リビングには春樹と隆の姿は...
  • 591~600
    581~590 591 ③「そういう隆の料理の腕はどうなのよ?」 隆の言う事は正しいのかもしれないけれど。 なんとなく釈然としないものを感じてそう問い掛けると、隆はふふんと笑った。 「人並み程度には。まあ、お前よりはまっとうな料理作れるぜ」 「まっとうなって……さっきから随分な言い様じゃない」 「だから言ってるだろ。料理が上手くなりたいんならマズイものを作ったらマズイって気付かなきゃ駄目だ。お前のとこの春樹やおばさんみたいに黙ってちゃ愛菜はわからないだろ」 散々な言われように言いたい事もあったはずなのに、隆の言葉に私は思わず口をつぐんでしまった。 (春樹も、お義母さんも……私に気を使って何も言わなかったのかな?) 「そう、だね。……我慢してマズイもの食べさせるなんて、可哀想だよね」 「愛菜?……やれやれ」 押し黙ってしまった私の前で、隆は困っ...
  • 991~1000
    981~990 991 ②どうして大切なのか聞く 「どうして大切なの? お姉さんは春樹が苦しむ所は見たくないとおもうよ?」 「そうだね……でも、俺は『姉さん』を覚えていたいんだ。一生懸命俺を守ってくれようとした『姉さん』をさ」 「あなたは、お姉さんが好きなんですね」 いままで黙って聞いていた大和先輩が言う。 春樹は少しだけ迷うように視線をさまよわせて、けれどしっかり頷いた。 「一番大切な人だったよ。何に変えても護りたいと思った人。 結局は最後までちゃんと護れなくて……最後まで守ってもらってたけど」 「なんか、それって大和先輩の夢に似てますね」 「そうですね」 「大和先輩の夢ってどんな夢なんですか?」 そういえば大和先輩の夢に関しては詳しく話していなかった。 説明すると、春樹は納得したように頷く。 「やっぱり俺はこの記憶があったままのほう...
  • 891~900
    881~890 891 ③修二君に話しかける 「あの、あのね修二くん!」 私は何か言わなくちゃいけない気がして声を掛けた。 大きな声で呼ばれた修二くんは、困った顔のままで向き直る。 「あのね修二くん! 私にとって修二くんも同じだよ。代替なんてできない!」 「愛菜ちゃん?」 「修二くんは修二くんだから。一郎くんとも冬馬先輩とも違う。 さっきは怖いことされたからつい大嫌いって言ったけど、意地悪だって思ったけど、 それでもやっぱり私の大切な友達だもん!」 まくしたてる様な早口になる。 強引にキスしたりした事は許せないけど、かといって嫌いになれない。 「だからね、修二くんの代わりは誰にも出来ない。逆に一郎くんの……」 「二度振るだけじゃ足りず、わざわざ友達宣言まで。愛菜ちゃんは手厳しいなぁ」 私の言葉に被せるように、修二くんは...
  • 冬馬891~900
    冬馬881~890 夕食も済んで、私の部屋に冬馬先輩を誘った。 一緒に暮らす話を、まだお義母さんには内緒にしておきたかったからだった。 小さな折りたたみの机に不動産屋さんでもらった物件のコピーを並べてみる。 「花沢さん、とっても親身になってくれたね」 「少しも良くないです。今度会ったらキツく言っておきます」 「いいよ。私は気にしてないし」 冬馬先輩に案内されたのは駅前の昔からありそうな『花沢不動産』だった。 気の良さそうな恰幅のいいおじさんが出迎えてくれた。 冬馬先輩に対して、その人はすごく丁寧な話し方をした。 「神器って、すごいんだね。それだけで待遇が良いんだもん。家賃が要らないって言われた時にはびっくりしたよ」 「僕は愛菜が口を滑らさないか、ずっとハラハラしていました」 「私が巫女である事は黙っておくようにって言われた時は、なんで...
  • 冬馬591~600
    581~590 591 ③「そういう隆の料理の腕はどうなのよ?」 隆の言う事は正しいのかもしれないけれど。 なんとなく釈然としないものを感じてそう問い掛けると、隆はふふんと笑った。 「人並み程度には。まあ、お前よりはまっとうな料理作れるぜ」 「まっとうなって……さっきから随分な言い様じゃない」 「だから言ってるだろ。料理が上手くなりたいんならマズイものを作ったらマズイって気付かなきゃ駄目だ。お前のとこの春樹やおばさんみたいに黙ってちゃ愛菜はわからないだろ」 散々な言われように言いたい事もあったはずなのに、隆の言葉に私は思わず口をつぐんでしまった。 (春樹も、お義母さんも……私に気を使って何も言わなかったのかな?) 「そう、だね。……我慢してマズイもの食べさせるなんて、可哀想だよね」 「愛菜?……やれやれ」 押し黙ってしま...
  • 春樹891~900
    春樹889~890 891 ③修二君に話しかける 「あの、あのね修二くん」 私は何か言わなくちゃいけない気がして声を掛けた。 大きな声で呼ばれた修二くんは、困った顔のままで向き直る。 「私にとって修二くんも同じ。代わりなんていないよ」 「愛菜ちゃん?」 「修二くんは修二くんだから。一郎くんとも冬馬先輩とも違う。 さっきは怖いことされたからつい大嫌いって言ったけど、意地悪だって思ったけど、 それでもやっぱり私の大切な友達だもん」 まくしたてる様な早口になる。 強引にされた事は許せないけど、かといって嫌いになれない。 「だからね、修二くんの代わりは誰にも出来ない。いくら一郎くんの……」 「二度振るだけじゃ足りず、わざわざ友達宣言まで。愛菜ちゃんは手厳しいなぁ」 私の言葉に被せるように、修二くんは言った。 ...
  • 冬馬991~1000
    冬馬981~990 お互い仕事が忙しくて会うのは夕方近くになってからだった。 私達は模擬店やクラスの出し物をぐるっと見て周り、中庭のベンチに腰を下ろした。 「さっきのチョコバナナ、美味しかったなー」 「また買って来ましょうか?」 「お腹いっぱい。さすがに食べられないよ」 満腹になったお腹を左右にさする。 スカートがきついから明日からダイエットだ。 「どれも美味しかったけど、一番は修二くんのクラスの焼きそばかな。目玉焼きまで乗ってたよね」 「確かに、とても美味しかったです」 「折角修二くんの姿を見に行ったのに。居なくて残念だったな」 「彼が大人しく模擬店の店番をするとは思えません」 「それもそうだね」 女の子に声をかけながら校内で遊び歩いているのだろう。 ジッとできないのが修二くんらしい。 香織ちゃんと隆はまだクラスのお化け屋敷で...
  • ストーリーを読む 春樹
    ストーリーを読む 共通・トゥルールート889の選択肢より分岐 春樹889~890 春樹891~900 春樹901~910 春樹911~920
  • ストーリーを読む 冬馬
    ストーリーを読む 共通・トゥルールート591の選択肢より分岐 冬馬591~600
  • 春樹891~990
    春樹視点の真相ルートを書きました ずっと放置ぎみの高村の因縁を題材にしています 高村家の胡散臭さは最後まで消えませんがご容赦ください まずエロいです グロいです 書いてる側も混乱する複雑さです 冬馬ルート基準で話が進むのでヒロインが愛菜ではありません 春樹もやさぐれて黒春樹になっています そういうキャラ崩壊も許せる方はご覧ください なるべく伏線も回収していったつもりです よろしくお願いします 8歳4月某日
  • 71~80
    61~70 71 3.3人で一緒に帰る さっき修二くんが言った言葉は気になるけれど……。 仮に修二くんの言葉が本当であったとしても、今いきなり態度を変えたりしたら怪しまれてしまうかもしれない。 ……それに、何より私の中にまだ隆を信じたいって気持ちがある。 だからと言って、完全に信じられるかといえば……酷い話だけど、そういうわけじゃない。 今はまだ、何もわからなすぎる。 私は今だ握り締めたままの春樹の制服をじっと見つめる。 「……」 何かに気がついたのか……春樹はこちらに視線を向けた。 そして僅かに頷く。 (ごめんね、頼りないお姉ちゃんで……) 都合のいいときにだけ春樹を頼ってしまう自分を恨めしく思う。 内心で春樹に謝りながら、私はそっと頷き返した。 「じゃ、じゃあ、3人で帰ろうよ。ね?」 ...
  • 共通・トゥルールート ストーリー
    ストーリーを読む 共通・トゥルールート 591までが共通ルートです。 592の選択肢でトゥルールートへ。 ストーリーを読む 1ページ目(1~250番) ストーリーを読む 2ページ目(251~500番) ストーリーを読む 3ページ目(501番~750番) ストーリーを読む 4ページ目(751番~1000番)
  • 冬馬801~810
    冬馬791~800 お風呂から上がり、部屋着に着替えて水を飲む。 すると居間のソファーに冬馬先輩が座っていた。 昨日のTシャツを用意しておいたから、先にお風呂に入っている先輩も用意した服に着替えていた。 「先輩、客間に布団を敷いておいたからね」 「ありがとうございます」 「少し時間がはやいね。まだ寝ない?」 「はい」 「私もまだ眠くないかも。少しお話ししてもいいかな」 「僕も愛菜と話したいです」 「よかった。何か飲み物持ってこようか?」 「大丈夫です」 「そっか。私も今はいいかな」 私は冬馬先輩と少し距離を置いて隣りに腰掛ける。 「私……今日ずっと考えてたんだ」 「何をですか?」 「私の能力って以前教えてもらったけど、強く願えば未来を思うように実現できるんだよね」 「封印を解けば可能だと言われています」 「冬馬先輩の時みたいに、...
  • 話の流れまとめ 冬馬
    冬馬ルートの流れ 冬馬ルートは共通トゥルールート591の選択肢より分岐 経過日数 該当レス 登場人物 主な出来事 8日目(火曜日) 591~603 愛菜、隆、冬馬 愛菜の携帯電話がなる。着信は電話ボックスから。 愛菜が動揺しすぎていてチューニングが出来ない。落ち着くように言われる。 内容を聞く前に電話がきれる 外に人影、冬馬先輩かもしれないと外に出ようとするが隆に止められあきらめる チューニングをして冬馬と通信。水野が操作された事で主流派が動き出した事を知る。 上記、春樹が出て言った事に関係するかもしれないと思う。 春樹の父博信と、異母兄秋人の事を聞く。 組織の目的は愛菜の力だといわれるが、それも時と共に変わると言われる。 愛菜の力について冬馬が話せないのは、愛菜の母との約束があるからだと知る。 子供の頃の自分と母の夢を見る。夢を見た事を忘れるのは母との約束があったから...
  • 冬馬901~910
    冬馬891~900 すべて上手くいっている。 あの時はそう思っていた。 規格外の能力を持つ雨の日の冬馬先輩に敵はいないはずだった。 なのに…… (冬馬先輩……) もう涙も枯れ果てた。 最後に冬馬先輩を見た時、虫の息だった。 それからが思い出せない。 亡骸に縋り付いた所で私の記憶が完全に途絶えてしまっている。 ガタッと音がして、外界との唯一の接点である小さな扉からトレーに乗せられた食事が出てくる。 「これで3回目」 日の光を取り入れる窓がないせいで、昼か夜かもわからない。 定期的に出てくる食事の3回目に印をつける。 これが毎日の日課になっていた。 (もう正って字を何度書いただろう) 20畳ほどの部屋に閉じ込められて、ノートには正が30個溜まった。 日々の日数を数えるのも、少し気持ちが落ち着いてから始めた事だ。 ...
  • 901~910
    891~900 901 ③家を出る 急いで朝ごはんを食べ、足早に玄関を出る。 すると珍しい顔を見かけた。 ゴミ出しに出てきていた隆のおばさんに、私は声をかけた。 「おばさん、お久しぶりです」 「あら、おはよう愛菜ちゃん。土曜なのに学校?」 「明日はいよいよ文化祭なんです。その準備をしようと思って」 「文化祭? それは楽しみね」 (あっ、そうだ) 「あの、おばさん。明日は一般の人も学校に入れるんです。もしよければ来てください」 「そうなの? じゃあ、隆にも出かけられるか聞いてみようかしら」 「え!? 隆って、もしかして退院したんですか?」 私は驚いて身を乗り出す。 おばさんは嬉しそうに笑いながら、話を続けた。 「お陰様でおとといね。もし体調が良かったら愛菜ちゃんに会いに行くかもしれないわ」 「ぜひ来てください。私も久...
  • 911~920
    901~910 911 ①引き止める この人が私にとって困った不審者であることには変わりない。 しつこいし、訳の分らない事ばかり問い詰めてくるし、本当に迷惑だ。 だけど冷静になって考えると、怪我をしている人をこのままに放って置くわけにもいかない。 「待って!」 私はめげることなく、不審者の男の子の腕を掴んで引き止める。 ようやく不審者の男の子は歩みを止めてくれた。 「…………」 「ちょっと待って。すぐに手当てしなくちゃ」 「手当て……?」 「そうだよ。ほら、手にも顔にも怪我してるんだから」 私は男の子の手を掴んで、痛々しい患部を見せる。 ぼんやりと他人事のように、男の子はその傷ついた拳を見ていた。 「痛いでしょ? 家で手当てしてあげるよ」 「…………」 「さっき寝られなかったって言ってたよね。何か悩みでもあるの?」...
  • 春樹901~910
    春樹891~900 901 ③望みが見つかったらまた考える 「今は現状維持で望みが見つかったらまた考えるって事でもいいのかな」 「それで構わないと思います」 「そうだよね。こんな大切な事しっかり考えた方がいいと思うし」 私は心の中でホッと胸をなでおろす。 課せられた責任が少しだけましになった気がした。 「愛菜は私に最も近い存在というだけで、巫女の使命を背負っている訳ではありません」 「でも神器と契約したよ」 「それはあくまで神宝を阻止するため。あなたの本意ではないのですよね?」 「……そうだね」 「では使命に囚われず己の幸せを考えてもいいのかもしれません」 「私の幸せ?」 さっきまで修二くんと話をしていたからだろうか。一瞬だけ春樹の顔が浮かんだ。 そんな考えが一番身勝手な気がして、私は自分の頬をつねった。 「いた……くない?」 ...
  • 春樹911~920
    春樹901~910 911 ①恥ずかしくなる 抱き合っている状況とはいえ、不意を突かれてまた顔が熱くなる。 恥ずかしさの限界なんてとうに超えている。 思わず私はぐっと腕を伸ばして、春樹から距離を置く。 「はっ、春樹はずるい!」 「何が?」 「私は火が出るほど恥ずかしいのに、春樹ってば余裕なんだもん」 「……余裕なんかあるもんか」 「す、好きとか真顔で言う余裕、私には無いから……」 「……まったく逆だよ、姉さん」 「な、なにが?」 「俺に少しも余裕が無いから言うんだ」 春樹は小さくため息を吐く。 そして観念したように口を開いた。 「義父さんや母さん、それに隆さんや長谷川先輩。一郎先輩や修二先輩、御門先輩や周防さんたち。 みんな姉さんを大事にしていると思うよ」 「……うん」 「姉さんも支えてくれた人達を大切だと思っているだろ?さっき...
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