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浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) - (2020/01/24 (金) 22:30:41) の編集履歴(バックアップ)




「オオオオォォォオオオオ!!!」

雄たけびとともにシュトロハイムがカーズへと躍りかかる。

フン、と鼻を鳴らし、カーズは右腕から生えた刃―――『輝彩滑刀の流法(モード)』を振るう。
それに対し、シュトロハイムは、組み合わず、身をかがめ地面を転がった。

その先には、激痛に蹲る勝次。
シュトロハイムは勝次を抱きかかえ体勢を立て直す。彼の狙いは勝次の救出だったのだ。

「ほう。組み合わず躱すとは...おれのこの『輝彩滑刀の流法』の恐ろしさは理解しているらしい」
「この身を以ての経験を無下にするほど俺は愚か者ではない。...悔しいが、ジョジョがいない今!俺たちは圧倒的に不利な状況にいる!!
しかしどうやって!カーズ、貴様はどうやってこの船に乗り込んだのだ!!」

シュトロハイムは出航後も不審なボートや小舟が追ってきていないか見ていたが、そんな影は微塵もなかった。
如何に柱の男といえども、素潜りでは船ほどのスピードでは泳げない。
ならばなぜここにいる。

「シュトロハイムよ。貴様のくれた手向け、中々イイ代物じゃあないか」

カーズの左掌に乗せられるのは、シュトロハイムが彼に撃ち込んだまどキャンサー。
その後部から伸びるロープを見て、シュトロハイムは彼がこの船に乗り込めた理由を知った!

「き、貴様カーズっ!ロープを繋いだまどキャンサーを船に打ち込み、そのロープを辿ってきたというわけか!道理で追手の船が見当たらぬはずだ!!」

常人ならば、それでも追いつけはしないだろう。だが、柱の男の身体能力があればそれが可能!!

「...どうやら逃げ場はないようじゃな」
「龍ノ介、迂闊に『輝彩滑刀の流法』を受けようなどと思うなよ。カーズがその気になればお前のハンマーも容易く切られてしまうだろう」
「おっちゃん、師匠、俺...」
「小僧、這ってでもいい。なるべく壁に背を預けておけ」


シュトロハイムは勝次を下ろし、龍ノ介はハンマーを構えながらじり、じり、とカーズとの距離を詰めていく。

「「オオオオオォォォォォ―――!!!」」

二人の雄たけびが重なり、同時にカーズへと殴り掛かる。
龍ノ介のハンマーが、シュトロハイムの機械仕掛けの剛腕がカーズへと振るわれるが、しかしカーズは寸でのところで回避、返す刀で両者への反撃。
二人もまた、必死に身を捩りどうにか躱す。

カーズも二人も、互いの攻撃が芯を捉えることがないまま1分程度が経過するが、わずかその間だけで彼らの"差"が顕著になり始める。

未だ傷一つついておらぬうえ、息も乱さぬカーズ。

徐々にかすり傷が増え、微量ながらも出血し始め、呼吸も荒くなる龍ノ介とシュトロハイム。

どちらが有利かは火を見るよりも明らかだ。

そして、均衡はあっさりと崩れ去った。


ドスリ。

再び、龍ノ介の腹部にカーズの足から生えた刃が刺さる。

「がふっ」
「このまま」
「させぬぞォォォ!」

両断させまいと、シュトロハイムは龍ノ介の腹部より貫通した刃を掴もうとするが、しかしカーズは龍ノ介を斬るのではなくそのまま足で持ち上げた。

「なっ」
「フンッ!」

まるでプロサッカー選手のように足を振るえば、龍ノ介の身体がシュトロハイムへと勢いよく飛んでいく。
回避の間に合わぬシュトロハイムは、正面から龍ノ介の全体重と衝突し、後方へと吹き飛ばされた。

その衝撃で吐血し、臀部を地に着ける二人。
改めて思い知らされる。いま戦い続ければ間違いなく敗けると。

「お、おのれ~~...こうなれば...」

シュトロハイムはこそこそと龍ノ介へと耳打ちをする。
それを見たカーズはフン、と鼻を鳴らしせせら笑った。

「なにをこそこそしている。どちらが先に死ぬか相談でもしていたか?」
「カーズ...この俺に完全勝利を収めたと思うなよ。我がナチスの科学は世界一ィィィィィ!!!」

ウィンウィンと作動音が鳴り、シュトロハイムの機械仕掛けの右目が蠢き開く。

「紫外線照射装置作動ォォォ!!」

そこから放たれるは光。柱の男が唯一苦手とする紫外線!
紫外線はカーズが咄嗟に翳した手を貫き通した!さすがのカーズもこれには動揺した!!

「WONUUUUUU!!」
「そしてェェェェェくらえまどキャノン!!」

発射される砲弾はまたしてもカーズを爆発に飲み込み、その火は船上に燃え移った。

189: 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:12:17 ID:u7AC/3320
「いまだお前たち!この船から脱出するぞ!」

シュトロハイムが指さす場所は、海面。
ここから飛び降りる。そう告げているのを、二人は理解した。

チャンスはカーズの視界が塞がれているこの瞬間しかない。
龍ノ介は勝次を抱き抱え走った。

「飛べェェェェェェェェェェ!!」

甲板を蹴り、海へと飛び出す二人。
そう。二人―――シュトロハイムと勝次。

二人は共に「えっ」と声を漏らす。

「勝次よ。お前は生きろ。生きて、明と会え」

龍ノ介は、勝次を放り投げ船に留まっていた。

「シュトロハイム!勝次を頼んだぞ!!」
「キッ、貴様、龍ノ介!!...その覚悟、受け取ったぞ!!」

龍ノ介の行動に面を食らったシュトロハイムだが、その意図を汲み、勝次を引き寄せ、可能な限り勝次への衝撃を減らすように抱き抱えながら着水する。
水面から顔を出し、ぷはぁと息を大きく吐く二人は即座に次の行動に移した。
シュトロハイムは陸地へと向かうよう方角を確かめ、勝次は龍ノ介のもとへ行こうと船の方へ。

「テメェクソ坊主!!言ったじゃねェかよ!!あんたも明と会わなきゃ駄目だって!!」

叫ぶ勝次。その勝次の襟を掴み、シュトロハイムは抱き寄せ陸地へと泳ぎ始める。

「離せクソ軍人!!俺ァ師匠を見捨てねェぞ!!」
「甘ったれるな小僧ォ!戻ったところで今の貴様になにができる?腹を刺された奴以下の戦力の、片手落ちの貴様がカーズの相手が務まるとでも?
奴の覚悟を無駄にしたいのかァ!?」

シュトロハイムの言っていることは勝次でも解る。あの目くらましは一時的なもので、三人纏めて泳いで逃げるよりは、一人が残り時間を稼いだ方が誰かが生存する確率が高いと。
それでも納得できなかった。納得するには、勝次はまだ幼かった。

「いやだ!いやだ師匠ォォォォォォ!!」

シュトロハイムに引っ張られ、徐々に船から遠ざかっていく。
勝次の叫びに返ってくるのは、燃え盛り崩れていく船の音だけだった。



ハァ ハァ ハァ

「よもや一人で残るとはな...」

龍ノ介のハンマーを持つ手に力が籠る。
眼前に立つその姿は、爆撃を受けても尚も健在。そして美的。
カーズは、先ほどまでと変わらぬ姿で立っていた。

「ひょっとして、一人で充分な時間が稼げると...本気で思っていたのか?」

龍ノ介を意にも介さないかのように、すたすた、とカーズは歩を進める。

「うおおおおおお!!」

吠える。吠える。傷ついた己の身体を鼓舞するように。
カーズはそれを冷ややかな目で眺めている。
無駄だ。どれだけ頑張ろうと結果は変わらんと。

龍ノ介がハンマーを振り下ろす。
寸前に迫ってもカーズはソレから目を逸らさない。寸でのところで躱し、最小限の動きで龍ノ介の懐に入り込む。

―――シャッ

右腕の刃による二振り。
一撃目は、龍ノ介の腹部を真横に裂き、上半身と下半身を両断。
二撃目は、彼の仮面を割りその素顔を晒した。

戦いは、余りにも静かに決してしまった。



「ただの人間ではないと思ってはいたが...そうか貴様は吸血鬼だったか」

露わになった龍ノ介の素顔を見て、カーズは小さく鼻を鳴らした。

「我らの餌の中ではそこそこの使い手だったが所詮餌は餌。このカーズに立ち向かうなどおこがましいわ」

ギラリ、と眼光と共にカーズの右腕の刃が光る。
龍ノ介の首を刎ねるため、カーズは刃を振り下ろした。

「ッ!」

刃が龍ノ介へと届く寸前、ビタッとカーズの腕が止まる。
その原因は、カーズの腕を掴む腕。
上半身だけになった龍ノ介が、残された両腕でカーズの腕を掴み止めたのだ。

「貴様...どこにそんな力が...」

振り切れない。柱の男の身体能力を以てしても龍ノ介の両腕は剥がれない。
死の淵に瀕した火事場のバカ力とでも言うのか。

「無駄な抵抗をする...大人しくしていれば早々に楽になれたものを」

カーズの左腕から刃が生える。
龍ノ介が腕を離すのを待つ間もなく、切断するつもりだ。

もはや動けぬ龍ノ介に打つ手はない。このまま達磨にされ、首を斬られて死ぬのを待つだけだ。

(...いや、まだ終われん!!)

いま死ねば間違いなくカーズは勝次たちに追いついてしまう。
カーズが彼らを見失うまで、なにがなんでも止めなければならない。

(なにか手段はないか。なにか―――)

カーズの刃が振り下ろされる。瞬間、龍ノ介の思考は彼方に吹き飛んだ。
それは本能か意地か。彼は無意識下に口を大きく開き、カーズの右腕に噛みついた。

そして。

シャッ

光の線が走り、龍ノ介の頭部と身体が切断された。

192: 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:17:59 ID:u7AC/3320

「最後の最後までしつこい餌だ」

カーズは未だ腕に食らいつく龍ノ介の頭部をはがそうと手をかける。

―――ガクリ。

カーズの視界がブレる。足場が揺れたのか?違う。彼の足が笑い膝をついたのだ。

「な...なんだコレは...?」

突然だった。
未だかつてない寒気と脱力感、痺れが身体に一気に押し寄せてくる。

それだけではない。

「ムゥッ!?」

―――プシュー ドボドボドボ

カーズの褌を突き破らん勢いで股間より小便が放出される。

「KUAAAAA...こ、こんな...!!」

ふらふらと覚束ない足取りで尻餅を着くカーズ。
それを見た龍ノ介は心中で嗤った。

(まさか貴様の血で助けられるとはな、雅)

龍ノ介は吸血鬼の混合種(アマルガム)。
その生命力は並の吸血鬼を遥かに凌駕し、また、雅同様、普通の吸血鬼としての力も有している。
彼の吸血は、カーズにすら例外なく効果を齎したのだ。

(勝次...ワシのことは気にするな。ワシは所詮過去の亡霊よ。未来を紡ぐべきはワシではない。お前たちじゃ)

龍ノ介の瞼が重くなっていくにつれ、生命の灯が消えていくのも実感する。
彼の並外れた生命力でも、首を断たれてはもはやどうしようもなかった。

(明...篤...雅を倒してくれ...勝次...どうか...我が愛弟子たちの心を救ってやってくれ...お前たちが...ワシらの希望...)

『龍ノ介殿』
『お頭』


沈んでいく意識の中、思い浮かぶは仇敵ではなく彼岸島で散っていった住民たち。

『お父さん』
『師匠』

そして、家族と家族のように慕ってくれた者たちの笑顔。
かつて過ごした幸せだったあの日々に微睡むように、龍ノ介の瞼はそっと閉じられた。


【青山龍ノ介(師匠)@彼岸島 G-8、海上にて散る】
※師匠の参戦時期は少なくとも明が弟子入りした後でした。
※師匠の支給武器であるピピンのハンマー@ベルセルクは海に沈みました。




地図にしてG-7に位置する港。
シュトロハイムは、10分以上泳ぎ続けようやくここまで辿り着いた。

「ゼェ――ゼェ――ッ、つ、着いたぞ小僧」

上陸したシュトロハイムが己の背に縛り付けた勝次に声をかけるが、返事はない。
慌てて勝次を下ろし、呼吸を確認する。
異常はない。が、失血による疲労は顔にも表れている。
ある程度の応急手当を施し、まどキャンサーを装着させることで止血は済ませた為、失血死はないだろうが、落ち着き適切な処置を行える場所を探すのが先決だろう。

「輸血のことを考えれば病院へ向かうべきか。しかし殺し合いに輸血パックが置いてあるとも限らんし、殺し合いに乗った参加者が待ち伏せしている可能性もある...ここはやはりJOJOを探し波紋を頼むか?しかし奴がジョースター邸の近くにいるかもわからん...ええい、どうすればよいのだっ!!」

シュトロハイムは考える。
どちらへ進むべきか。勝次を、青山龍ノ介に託された命を救える場所はどちらなのかを。

振り返り、先ほどまで乗っていた船が燃え盛り崩れ落ちていくのを見つめる。
右手を掲げ、敬礼と共に勇敢なる戦士への賛美と勝利への誓いを立てる。

「迷っていたところで仕方あるまい...こちらに進むとしよう」

くるりと振り返り、方針を定め、歩き出すシュトロハイム。
その背で眠る勝次の目から、スゥ、と一筋の涙が流れ落ちた。




【G-7/1日目/黎明/港】


【山本勝次@彼岸島】
[状態]身体にダメージ(中)、師匠を喪った悲しみ、左腕切断(止血済み)、疲労による睡眠。
[装備]14話で堂島正が殺したヤクザが撃った銃@血と灰の女王、まどキャンサー@魔法少女まどか☆マギカシリーズ×1(左腕の止血用)、切断された左腕
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[行動方針]
基本方針:オババをぶっ倒す。
0:......
1:シュトロハイムと行動する。
2:明、鮫島との合流。師匠の知り合いの宮本篤、西山も探す。
3:金剛、カーズへの絶対的な敵対心。

※参戦時期は母ちゃんが死んだ後。

【ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(大)、全身にダメージ(中)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~1、、まどキャノン@魔法少女まどか☆マギカシリーズ
[行動方針]
基本方針:このくだらんゲームを止め、主催共を粛正する。
0:病院かジョースター邸か...
1:同志を集める。
2:ジョセフ・ジョースター及びロバート・E・O・スピードワゴンと合流する。
3:柱の男及び吸血鬼(いるのなら)を倒す

※参戦時期はカーズに身体を両断された直後。
※腹部に仕込まれている機関銃は没収されました。代わりにまどキャノンが装着されています。


※支給品解説

【まどキャンサー@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
マギアレコード紹介漫画、マギア☆レポートに登場するまどか先輩の武装のひとつ。
因果を断ち切るVサイン、もとい蟹の手の形をしている。
こう見えて斬撃も衝撃も与えられる万能武器。
手先は案外起用で犬のフンをつまんだ後におにぎりを握ったこともあるほど。



【まどキャノン@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
同上。
最大の火力を持つキャノン砲に加え、ミサイル、レーダーを装備し、長時間の作戦行動では膝にも爆弾を抱える重装備。
砲撃時には自前の双眼鏡で照準を合わせるよ。



ザバァ。
シュトロハイム達とは対岸側の港。
船の崩落と共に海に沈み、波にさらわれたカーズは近場の陸に上陸していた。

「おのれ神子柴とやらめ...この身体の異変も貴様の仕業か」

地に背を預けながら、カーズは空を忌々し気に睨みつける。
異変に気が付いたのは戦いの最中だった。

全力で動こうとすれば、なにかに抑えられるような違和感と共に動きは想定よりも鈍くなり。
輝彩滑刀の威力は明らかに落ち。
柱の男の普遍的な能力のひとつである吸収も、自動で吸収できるのではなく、意識して使わなければ発動せず、流法との併用も気軽にはできない。
もちろん吸収速度も落ちている。

その所為で、龍ノ介の最期の抵抗に不覚をとる羽目になったのだ。

「エシディシ...」

休憩のため身を隠しつつ、ここに連れてこられている男の名前をつぶやく。

彼は死んだ。波紋戦士であるジョセフ・ジョースターとの闘いで死んだ筈だった。
その彼が名簿に載っている。死んだふりをして身を潜めていたのか?あの見せしめで殺され蘇らせられた男のように生き返らせられたのか?

なんだっていい。生きているのならば合流するしかあるまい。
生きて、共にワムウのもとへと帰還する。必ずだ。

そしてジョセフ・ジョースター。
あの男は始末する。
奴との再戦を心待ちにしているワムウには悪く思うが、エシディシを倒した男を放っておくわけにはいかない。

(神子柴...貴様の目的がなにかは知らん。だが勝利するのは我らだ。我ら二人が貴様ごときに頭を垂れると思うな!!)




【F-1/1日目/黎明/港】

【カーズ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(中)、失禁
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2、頑丈なロープ@現実、青山龍ノ介の首輪×1、まどキャンサー×1@魔法少女まどか☆マギカシリーズ(シュトロハイムの支給品)
[行動方針]
基本方針:エシディシと共に生き残る。
0:少し休憩をとる。
1:首輪のサンプルを集め、解析する。
2:ジョセフ・ジョースター及びシュトロハイムは始末しておきたい。


※参戦時期はエシディシ死亡以降。
※吸収能力は制限されています。自分で使おうと意識しなければ使えず、流法との併用はかなり体力を消耗します。


※港間を渡る豪華客船が燃え尽きました。第一回放送までに新しい船が主催側より配置されます。