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紬「Dendrite」 3 - (2012/10/13 (土) 21:57:34) の1つ前との変更点
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早く目を覚まして?
目は覚めてるのだけど、目蓋がすごく重い 。
体も動かないし、何も見えない、声も出せないんじゃここが何処なのか特定できないし、私の身になにが起こったのかも知ることも出来ない。
唯「覚えてるムギちゃん、みんなで始めてライブをした時」
唯「あの時凄く楽しかったね」
唯「ムギちゃん聞こえてる?」
唯「私の名前を呼んで?一緒に家に帰ろ?ねぇ?」
唯「ムギちゃん……」
唯ちゃんの柔らかな手の感触。
湿った声が私を悲しい気持ちにさせる。
私の身に何が起こったのか分からないけど、きっととんでもない事が起きたのだろう。
唯「ねぇ……ムギちゃんってば……」
ごめんなさい唯ちゃん。
声が出ないの。
唯「ムギちゃん言ってたよね。ずっと一緒だって……」
唯「ずっと一緒だって約束したよね」
私は唯ちゃんをあまり悲しませたく無い。
だから、もうこの未来は私にとっての嫌な未来だ。
心の中で強く祈った。
こんな未来は嫌だと……私は望んでいないと。
今まで言葉に出して未来を否定してきたから、あの木の前に戻れるか不安だったけど、気が付くと私はあの木の前にいた。
体は動く、目も見えるようになった。
紬「声も出せる」
なんで、なんで私が見る未来は嫌な未来ばっかりなのか……。
私が望んでる未来とは全く逆の未来ばかり……神は私を嫌ってるの?
また木に触れる。
未来へタイムスリップする。
未来を否定する。
また木に触れる。
未来へタイムスリップする。
未来を否定する。
ある未来では梓ちゃんが通り魔に殺された。
ある未来では唯ちゃんがトラックに轢かれて死んだ。
ある未来では私のお父様とお母様が死んだ。
ある未来では菫は……ある未来では澪ちゃんとりっちゃんが……ある未来ではある未来ではある未来ではある未来ではある未来では……。
一つ未来を否定するとさらに嫌な未来が私を待っている。
思えば、最初に見た未来。
あれが、人生の中で一番の自然な未来なのかもしれない。
私はそれを否定してしまったから、良いな未来は訪れずに、嫌な未来ばかりが訪れる。
私は見上げた。
この不自然な大きな木。
この木は未来を見る事の出来る不思議な木。
樹枝のように広がった未来は今はたった一つだけ、そしてこの未来も私が否定すれば結晶のように固まった未来もすぐに折れる。
今度こそ私に楽しい未来を、私が望んだ未来をみんなが幸せな未来をお願い。
紬「お願い……」
両手を木に強く押し当てた。
しかし、木に触っても何も起きない。
紬「な、なんでなの?」
もう私は未来を見る事が出来ないの?
手の平を強く木に押し付けた。
木が大きく揺れる。
唯「わぁームギちゃんすごーい」
紬「……唯ちゃん?」
梓「あんな大きな木を揺らすなんてドンだけ力持ちなんですか」
紬「梓ちゃんも!」
律「私と澪もいるぞー」
澪「ごめんな。ちょっと遅くなって」
紬「りっちゃんと澪ちゃん!」
唯「じゃあさっそくピクニックしよっかー」
紬「ピクニック?」
律「もー忘れたのか~みんなで20歳のお祝いにピクニックしようって言ったじゃん」
紬「20歳?」
すぐにハッとした。
私はもうタイムスリップしていた。
場所が変わらないからタイムスリップしていないと思い込んでたけど、もうしていたんだ。
紬「そ、そうだったわね。ね、早くピクニックしよ?ね?」
・・・・・・・・
澪「このサンドウィッチうまいなー誰が作ったんだ?」
律「わったしー!」
澪「なんだ律が作ったのか」
律「なんだとはなんだー!」
紬「うふふ、澪ちゃんとりっちゃん仲良しね~」
澪&律「どこが!」
唯「あはは息ピッタリー!」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
紬「たい焼き美味しい?」
梓「ひぁい!モグモグモグモグモグモグ」
律「それより、本当にこの木はでっかいよなー」
紬「えぇ、そうね~」
唯「でも枝が一本しかないよ?」
澪「ちょっと淋しいな……」
梓「はい、私達色々この木にお世話になりましたからねー」
紬「えっ?」
唯「ほんとだよー」
澪「ムギから聞いた時、最初は半信半疑だったけどな。未来が見れる木なんて」
紬「澪ちゃんどうしてその事知ってるの?」
澪「とうしてってさっきも言ったじゃないか、ムギから教えて貰ったって」
紬「私から?」
律「なんだームギまた忘れたのかー?」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
唯「もうあずにゃん私のたい焼きも残しといてねー」
律「しっかしーみんな殆ど同じ未来だったよなー」
唯「一つ目の未来は私達がみんな自然と会わなくなるって未来だったよねぇー」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
澪「まぁ一番マシな未来だし、一番自然な未来だよな」
律「二番目の未来は私達がアイドルになった未来だったよな。一番花があるけど実は……って奴」
紬「ちょっと待ってちょっと待って、ほんとに私が見た未来と同じ未来。なんで知ってるの?」
澪「だから言ったじゃないか、みんな殆ど同じ未来を見てたって」
紬「みんな同じ未来を見ていた?……じゃあ三番目の未来は?」
律「私はムギと一緒に海に行く未来」
紬「一緒だ……でも他のみんなは?確か死んだって……」
唯「うん、私や澪ちゃんあずにゃんは五人で海に行こうって約束するけど病気で死んじゃう未来だよ」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
澪「みんな病気だなんてビックリしたよな」
紬「じゃあ次の未来は?」
梓「ごくんっ、それちょっと複雑なんですよねー」
紬「複雑?」
律「ムギが人を殺すけどその殺した人が澪を殺した人なんだ」
梓「復讐って奴です」
唯「私達は証拠隠滅を手伝うけど、結局は警察にバレて違う刑務所にそれぞれ入れられるんだぁ」
紬「そ、そう……じゃあ次の夢は……」
澪「ムギが植物人間になっちゃうんだ……」
律「そのムギをみんなで看病するって未来だよ」
紬「みんな……みんな同じ未来。いや、澪ちゃんりっちゃん梓ちゃん唯ちゃん、私達が見た未来はどこかでみんなと繋がっている……」
澪「いや、一つだけ繋がってない未来があるぞ」
紬「一つだけ……あ!」
梓「最初の未来です。最初の未来だけ、みんな繋がってない」
唯「きっとあの未来を見た後、みんな同じ事を強く願ったんだよ」
紬「ずっとみんなと仲良くいたい……」
梓「そう、みんなが強くそう思ってしまったから私達が見続けた未来はどこかでみんなと繋がっている未来になったと……私はそう考えてます」
今までみた未来は私の私だけの未来じゃない……。
最初の未来除いて全て私達五人の未来。
私にとっては、今も未来だけど……。
この未来はきっと、私がみんなにこの不思議な木を教えてみんなタイムスリップを経験しちゃった未来。
20歳になってもみんなでピクニックするぐらい仲良しな未来。
きっと、これから先もみんなと一緒にいるだろう。
何故だか分からないけど、それだけは確信が持てた。
紬「みんなもう時間も時間だし帰りましょっか!」
・・・・・・・・
私達はバスに揺られている。
みんな楽しそうにお喋りをしている。
私はこの未来を大切にして行こうと思う。
これからもずっとみんなと仲良く出来れば私は何も望まない。
未来は樹枝のように広がり結晶のように固まり結して折れる事がない。
今まで私は様々な未来を折って来たけど、この未来だけはこの未来だけは結して折ってはいけない。
これからもみんなと楽しい未来を築いて行こう。
そう、ずっとみんなと……一緒。
私の意識はどこかに行った。
大きな衝撃。
私や唯ちゃん達はガラスの破片を被った。
そのガラスの破片は梓ちゃんの喉を引き裂き辺りに鮮血が飛び散る。
私の目は、はっきりとそれを捕らえた。
また衝撃。
今度はバスが大きく回転する。
ぐるりぐるりと回転し止まる。
唯ちゃんや澪ちゃんは頭から血を流して倒れている。
りっちゃんは窓から外へ投げ出されバスの下敷きになっている。
嘘だ……。
さっきまで、楽しくお喋りをしていたのに、やっと悲惨な未来から開放されたのにこんなのあんまりだ。
みんなが……みんなが死んでしまった。
紬「嘘よ……こんなの嘘よ!!!」
叫んだ。
紬「こんな未来嘘よ!!!嫌だみんな……嘘よこんな未来嫌だ!!!」
気が付くと私はあの木があった場所に立っていた。
紬「はぁはぁはぁ……」
額からは脂汗。
背中も汗でグッショリと濡れている。
まるで悪い夢を見ていたみたいだ。
しかし、これは夢なんかじゃない。
私の……いや、私達の未来。
あの大きな木はいつの間にか無くなっており、私は未来を知る術を失ってしまった。
私は恐ろしい考えが浮かんだ。
浮かんでしまった。
この木は私に未来を知らせてくれる。
そう未来を知らせてくれる。
その未来を知らせてくれる木が無くなった。
私は自ら自分の未来を消してしまった。
最後の枝を折ってしまった。
私には未来が無くなった。
つまり……もう私には未来が無い。
未来を失う。
それはつまり……死ぬ。
私は自分で自分を殺していた。
徐々に殺していたんだ。
様々な可能性を自分から潰していたんだ。
未来を否定するたびに私は自分で自分の首を絞めていた。
ゆっくりと力を込めながら……。
それから、私は逃げた。
一刻も早くこの場から逃げたしたかった。
死神が未来が無い私を殺そうと追いかけてる。
そんな気がしてならなかった。
助けて、誰か……助けて。
願いは虚しく最後に聞こえたのは車のクラクションの音だった。
・・・・・・・・
律「なぁ……聞こえてるかムギ」
唯「きっと聞こえてる筈だよ」
梓「これお供え物のたい焼きです。良かったらどうぞ」
澪「今まで楽しかったよなムギ。お前がいない放課後ティータイムはティーの部分が抜けて放課後タイムになってるよ」
律「あぁ、ずっと時が止まったままだよ」
澪「…………私達五人ずっと仲良しだったよな」
唯「うん!思えばムギちゃんがいたからずっと仲良しだったんだと思う」
梓「ですね……」
澪「そっちは楽しいか?元気にやってるか?私達ももうすぐ逝くかもな」
律「だってもう60歳になるもんな……」
唯「でもムギちゃんやみんなと一緒に入れて楽しい人生だった。未だにムギちゃんが死んで一年目経つなんて信じられないよ……」
梓「私、たまにムギ先輩が紅茶持って来そうな気がしてワクワクします」
律「そう言えばムギ?お前が言っていた未来が見える木だっけっか?今年は綺麗な桜を咲かせてるぞ」
澪「あぁ、みんなでお花見もしたよ。ほらここからでも見えるだろ。ムギ」
唯「そう言えばあの時、ムギちゃんは言ってたよね。自分で自分の未来を消してしまったって、だからもうすぐ死ぬかも知れないって」
梓「あぁ……車に轢かれた時ですか随分と懐かしい話しますね」
律「でもムギの家の人達は異常だったよなーかすり傷で入院させるだなんて」
澪「そんぐらい心配だったんだろ」
唯「ムギちゃんが車に轢かれた時ぐらいだっけ、あそこの木が急激に成長し始めたのって」
律「最初はあっこ何にも無かったのになーいきなり木が生えてくるんだもん。ビックリしたよ」
唯「ムギちゃんその木を見た時、凄く喜んでたよね。私の未来はまだ終わっていなかったって、これから私自信で幸せな未来を作っていくんだって」
律「あ、あぁ……そー言えばそんな事言ってたなぁ」
澪「それから、大学卒業して就活で……みんなが忙しくてもムギだけは何とか私達に知らせてくれたよな。梓が浪人したから励ましに行こうとか」
梓「そんなこともありましたねぇー」
律「今思えば、私達が40年間こうしてずっと仲良くいれるのもムギのおかげだよ」
梓「ムギ先輩ありがとうございます!」
唯「ありがとうムギちゃん」
澪「ありがとなムギ」
唯「それじゃ私達そろそろ行くね。また来るよ」
澪「うん、じゃあなムギ」
梓「さよならです」
律「じゃーなームギ!」
あの大きな木には不思議な力があった。
人に未来を見せ人に未来を選択させる力があった。
私はその木の力を使ったけど、未来を選ぶ事は出来なかった。
あの日、木が無くなったと思ったらまた生えて来た時、私は新しい未来への可能性を見た。
未来は選択するんじゃなくて作る物。
未来は樹枝のように広がり様々な可能性を秘めている。
その未来は結晶のように固まり結して折れない。
もう終わってしまったけど私のこの人生は誰にも折れることができない素晴らしい人生だった。
END
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早く目を覚まして?
目は覚めてるのだけど、目蓋がすごく重い 。
体も動かないし、何も見えない、声も出せないんじゃここが何処なのか特定できないし、私の身になにが起こったのかも知ることも出来ない。
唯「覚えてるムギちゃん、みんなで始めてライブをした時」
唯「あの時凄く楽しかったね」
唯「ムギちゃん聞こえてる?」
唯「私の名前を呼んで?一緒に家に帰ろ?ねぇ?」
唯「ムギちゃん……」
唯ちゃんの柔らかな手の感触。
湿った声が私を悲しい気持ちにさせる。
私の身に何が起こったのか分からないけど、きっととんでもない事が起きたのだろう。
唯「ねぇ……ムギちゃんってば……」
ごめんなさい唯ちゃん。
声が出ないの。
唯「ムギちゃん言ってたよね。ずっと一緒だって……」
唯「ずっと一緒だって約束したよね」
私は唯ちゃんをあまり悲しませたく無い。
だから、もうこの未来は私にとっての嫌な未来だ。
心の中で強く祈った。
こんな未来は嫌だと……私は望んでいないと。
今まで言葉に出して未来を否定してきたから、あの木の前に戻れるか不安だったけど、気が付くと私はあの木の前にいた。
体は動く、目も見えるようになった。
紬「声も出せる」
なんで、なんで私が見る未来は嫌な未来ばっかりなのか……。
私が望んでる未来とは全く逆の未来ばかり……神は私を嫌ってるの?
また木に触れる。
未来へタイムスリップする。
未来を否定する。
また木に触れる。
未来へタイムスリップする。
未来を否定する。
ある未来では梓ちゃんが通り魔に殺された。
ある未来では唯ちゃんがトラックに轢かれて死んだ。
ある未来では私のお父様とお母様が死んだ。
ある未来では菫は……ある未来では澪ちゃんとりっちゃんが……ある未来ではある未来ではある未来ではある未来ではある未来では……。
一つ未来を否定するとさらに嫌な未来が私を待っている。
思えば、最初に見た未来。
あれが、人生の中で一番の自然な未来なのかもしれない。
私はそれを否定してしまったから、良いな未来は訪れずに、嫌な未来ばかりが訪れる。
私は見上げた。
この不自然な大きな木。
この木は未来を見る事の出来る不思議な木。
樹枝のように広がった未来は今はたった一つだけ、そしてこの未来も私が否定すれば結晶のように固まった未来もすぐに折れる。
今度こそ私に楽しい未来を、私が望んだ未来をみんなが幸せな未来をお願い。
紬「お願い……」
両手を木に強く押し当てた。
しかし、木に触っても何も起きない。
紬「な、なんでなの?」
もう私は未来を見る事が出来ないの?
手の平を強く木に押し付けた。
木が大きく揺れる。
唯「わぁームギちゃんすごーい」
紬「……唯ちゃん?」
梓「あんな大きな木を揺らすなんてドンだけ力持ちなんですか」
紬「梓ちゃんも!」
律「私と澪もいるぞー」
澪「ごめんな。ちょっと遅くなって」
紬「りっちゃんと澪ちゃん!」
唯「じゃあさっそくピクニックしよっかー」
紬「ピクニック?」
律「もー忘れたのか~みんなで20歳のお祝いにピクニックしようって言ったじゃん」
紬「20歳?」
すぐにハッとした。
私はもうタイムスリップしていた。
場所が変わらないからタイムスリップしていないと思い込んでたけど、もうしていたんだ。
紬「そ、そうだったわね。ね、早くピクニックしよ?ね?」
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澪「このサンドウィッチうまいなー誰が作ったんだ?」
律「わったしー!」
澪「なんだ律が作ったのか」
律「なんだとはなんだー!」
紬「うふふ、澪ちゃんとりっちゃん仲良しね~」
澪&律「どこが!」
唯「あはは息ピッタリー!」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
紬「たい焼き美味しい?」
梓「ひぁい!モグモグモグモグモグモグ」
律「それより、本当にこの木はでっかいよなー」
紬「えぇ、そうね~」
唯「でも枝が一本しかないよ?」
澪「ちょっと淋しいな……」
梓「はい、私達色々この木にお世話になりましたからねー」
紬「えっ?」
唯「ほんとだよー」
澪「ムギから聞いた時、最初は半信半疑だったけどな。未来が見れる木なんて」
紬「澪ちゃんどうしてその事知ってるの?」
澪「とうしてってさっきも言ったじゃないか、ムギから教えて貰ったって」
紬「私から?」
律「なんだームギまた忘れたのかー?」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
唯「もうあずにゃん私のたい焼きも残しといてねー」
律「しっかしーみんな殆ど同じ未来だったよなー」
唯「一つ目の未来は私達がみんな自然と会わなくなるって未来だったよねぇー」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
澪「まぁ一番マシな未来だし、一番自然な未来だよな」
律「二番目の未来は私達がアイドルになった未来だったよな。一番花があるけど実は……って奴」
紬「ちょっと待ってちょっと待って、ほんとに私が見た未来と同じ未来。なんで知ってるの?」
澪「だから言ったじゃないか、みんな殆ど同じ未来を見てたって」
紬「みんな同じ未来を見ていた?……じゃあ三番目の未来は?」
律「私はムギと一緒に海に行く未来」
紬「一緒だ……でも他のみんなは?確か死んだって……」
唯「うん、私や澪ちゃんあずにゃんは五人で海に行こうって約束するけど病気で死んじゃう未来だよ」
梓「モグモグモグモグモグモグ」
澪「みんな病気だなんてビックリしたよな」
紬「じゃあ次の未来は?」
梓「ごくんっ、それちょっと複雑なんですよねー」
紬「複雑?」
律「ムギが人を殺すけどその殺した人が澪を殺した人なんだ」
梓「復讐って奴です」
唯「私達は証拠隠滅を手伝うけど、結局は警察にバレて違う刑務所にそれぞれ入れられるんだぁ」
紬「そ、そう……じゃあ次の夢は……」
澪「ムギが植物人間になっちゃうんだ……」
律「そのムギをみんなで看病するって未来だよ」
紬「みんな……みんな同じ未来。いや、澪ちゃんりっちゃん梓ちゃん唯ちゃん、私達が見た未来はどこかでみんなと繋がっている……」
澪「いや、一つだけ繋がってない未来があるぞ」
紬「一つだけ……あ!」
梓「最初の未来です。最初の未来だけ、みんな繋がってない」
唯「きっとあの未来を見た後、みんな同じ事を強く願ったんだよ」
紬「ずっとみんなと仲良くいたい……」
梓「そう、みんなが強くそう思ってしまったから私達が見続けた未来はどこかでみんなと繋がっている未来になったと……私はそう考えてます」
今までみた未来は私の私だけの未来じゃない……。
最初の未来除いて全て私達五人の未来。
私にとっては、今も未来だけど……。
この未来はきっと、私がみんなにこの不思議な木を教えてみんなタイムスリップを経験しちゃった未来。
20歳になってもみんなでピクニックするぐらい仲良しな未来。
きっと、これから先もみんなと一緒にいるだろう。
何故だか分からないけど、それだけは確信が持てた。
紬「みんなもう時間も時間だし帰りましょっか!」
|・・・・・・・・ |
私達はバスに揺られている。
みんな楽しそうにお喋りをしている。
私はこの未来を大切にして行こうと思う。
これからもずっとみんなと仲良く出来れば私は何も望まない。
未来は樹枝のように広がり結晶のように固まり結して折れる事がない。
今まで私は様々な未来を折って来たけど、この未来だけはこの未来だけは結して折ってはいけない。
これからもみんなと楽しい未来を築いて行こう。
そう、ずっとみんなと……一緒。
私の意識はどこかに行った。
大きな衝撃。
私や唯ちゃん達はガラスの破片を被った。
そのガラスの破片は梓ちゃんの喉を引き裂き辺りに鮮血が飛び散る。
私の目は、はっきりとそれを捕らえた。
また衝撃。
今度はバスが大きく回転する。
ぐるりぐるりと回転し止まる。
唯ちゃんや澪ちゃんは頭から血を流して倒れている。
りっちゃんは窓から外へ投げ出されバスの下敷きになっている。
嘘だ……。
さっきまで、楽しくお喋りをしていたのに、やっと悲惨な未来から開放されたのにこんなのあんまりだ。
みんなが……みんなが死んでしまった。
紬「嘘よ……こんなの嘘よ!!!」
叫んだ。
紬「こんな未来嘘よ!!!嫌だみんな……嘘よこんな未来嫌だ!!!」
気が付くと私はあの木があった場所に立っていた。
紬「はぁはぁはぁ……」
額からは脂汗。
背中も汗でグッショリと濡れている。
まるで悪い夢を見ていたみたいだ。
しかし、これは夢なんかじゃない。
私の……いや、私達の未来。
あの大きな木はいつの間にか無くなっており、私は未来を知る術を失ってしまった。
私は恐ろしい考えが浮かんだ。
浮かんでしまった。
この木は私に未来を知らせてくれる。
そう未来を知らせてくれる。
その未来を知らせてくれる木が無くなった。
私は自ら自分の未来を消してしまった。
最後の枝を折ってしまった。
私には未来が無くなった。
つまり……もう私には未来が無い。
未来を失う。
それはつまり……死ぬ。
私は自分で自分を殺していた。
徐々に殺していたんだ。
様々な可能性を自分から潰していたんだ。
未来を否定するたびに私は自分で自分の首を絞めていた。
ゆっくりと力を込めながら……。
それから、私は逃げた。
一刻も早くこの場から逃げたしたかった。
死神が未来が無い私を殺そうと追いかけてる。
そんな気がしてならなかった。
助けて、誰か……助けて。
願いは虚しく最後に聞こえたのは車のクラクションの音だった。
|・・・・・・・・ |
律「なぁ……聞こえてるかムギ」
唯「きっと聞こえてる筈だよ」
梓「これお供え物のたい焼きです。良かったらどうぞ」
澪「今まで楽しかったよなムギ。お前がいない放課後ティータイムはティーの部分が抜けて放課後タイムになってるよ」
律「あぁ、ずっと時が止まったままだよ」
澪「…………私達五人ずっと仲良しだったよな」
唯「うん!思えばムギちゃんがいたからずっと仲良しだったんだと思う」
梓「ですね……」
澪「そっちは楽しいか?元気にやってるか?私達ももうすぐ逝くかもな」
律「だってもう60歳になるもんな……」
唯「でもムギちゃんやみんなと一緒に入れて楽しい人生だった。未だにムギちゃんが死んで一年目経つなんて信じられないよ……」
梓「私、たまにムギ先輩が紅茶持って来そうな気がしてワクワクします」
律「そう言えばムギ?お前が言っていた未来が見える木だっけっか?今年は綺麗な桜を咲かせてるぞ」
澪「あぁ、みんなでお花見もしたよ。ほらここからでも見えるだろ。ムギ」
唯「そう言えばあの時、ムギちゃんは言ってたよね。自分で自分の未来を消してしまったって、だからもうすぐ死ぬかも知れないって」
梓「あぁ……車に轢かれた時ですか随分と懐かしい話しますね」
律「でもムギの家の人達は異常だったよなーかすり傷で入院させるだなんて」
澪「そんぐらい心配だったんだろ」
唯「ムギちゃんが車に轢かれた時ぐらいだっけ、あそこの木が急激に成長し始めたのって」
律「最初はあっこ何にも無かったのになーいきなり木が生えてくるんだもん。ビックリしたよ」
唯「ムギちゃんその木を見た時、凄く喜んでたよね。私の未来はまだ終わっていなかったって、これから私自信で幸せな未来を作っていくんだって」
律「あ、あぁ……そー言えばそんな事言ってたなぁ」
澪「それから、大学卒業して就活で……みんなが忙しくてもムギだけは何とか私達に知らせてくれたよな。梓が浪人したから励ましに行こうとか」
梓「そんなこともありましたねぇー」
律「今思えば、私達が40年間こうしてずっと仲良くいれるのもムギのおかげだよ」
梓「ムギ先輩ありがとうございます!」
唯「ありがとうムギちゃん」
澪「ありがとなムギ」
唯「それじゃ私達そろそろ行くね。また来るよ」
澪「うん、じゃあなムギ」
梓「さよならです」
律「じゃーなームギ!」
あの大きな木には不思議な力があった。
人に未来を見せ人に未来を選択させる力があった。
私はその木の力を使ったけど、未来を選ぶ事は出来なかった。
あの日、木が無くなったと思ったらまた生えて来た時、私は新しい未来への可能性を見た。
未来は選択するんじゃなくて作る物。
未来は樹枝のように広がり様々な可能性を秘めている。
その未来は結晶のように固まり結して折れない。
もう終わってしまったけど私のこの人生は誰にも折れることができない素晴らしい人生だった。
END
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