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唯「むっふっふ…平畑唯三郎だよ!」 3 - (2015/03/19 (木) 07:43:27) のソース

 
 
【部室】

唯「ムギちゃん!」ガチャッ

紬「あ、ちょうどよかった二人とも」

紬「どうしよう、エリザベス…弦が張ってないままなんだけど、このままケースに入れちゃってもいいのかなぁ?」

紬「私、弦楽器のことはよくわからなくて…」

梓「澪先輩あとで部室に戻って来るって言ってましたから、そのままで大丈夫だと思いますよ」

紬「あら、そうだったの。だったら荷物は持って行かなくてもよかったのね」

唯「そんなことより、ムギちゃんにちょっと確認したいことがあるんだけどね」

紬「なぁに?」

唯「倉庫から部室に入ったとき、ここに何か落ちてなかった?」

紬「え?」


唯「なんでもいいんだ。見慣れないもの」

紬「いや…別になにも…」

唯「ほんとに?」

梓「平畑さん、どうしたんですか?」

唯「大事なことなんだよ!」

紬「…大事なこと?」

唯「うん!」

紬「…うーん」

紬「内緒にしておくつもりだったんだけど」ガサッ

紬「実はこれが床に…」ピラッ

梓「えっ…これって…?」

唯「…むっふっふ」

唯「ちょっと出てくるよ」

唯「ムギちゃん!これ借りていくね!」

紬「え、ええ」

ガチャッパタン

梓「…どうしたんでしょう、平畑さん」

紬「さぁ…」


【保健室】

ガラガラ

唯「ピカ泉くん!澪ちゃんは?」

律「澪ならまだ横になってるけど、どうしたんだ?」

唯「ちょっと話があるんだ」

律「話ぃ?」

シャッ

唯「澪ちゃん!」

澪「ど、どうしたんだよ、大きな声出して…」

唯「ごめんごめん。実はちょっと確かめたいことがあってさ~」

唯「えっと、どこにいれたっけな~」ゴソゴソ

澪「…?」

唯「あ~、これこれ!これ、澪ちゃんのだよね?」ピラッ

澪「っ!!?」

律「なんだよそれ…作文?」


唯「澪ちゃん、どうなの?」

澪「…それは、その」カァ…

律「ちょっと見せてみろって」ヒョイ

律「なになに…?ぶっ!」

律「こ、これって…!ぶはっ!」

澪「~!」カアァ~!

唯「澪ちゃんのなの?」

澪「…ん///」カァ…

唯「澪ちゃんが書いたんだね?」

澪「そ、そうだよ!///」カアァ…

唯「ありがとう」ニッコリ

澪「う~ん…」プシュ~…パタリ

律「くくっ…!あっ!澪!」

唯「澪ちゃんありがとう、助かったよ!」トタトタ

澪「」

律「しっかりしろ、澪!澪~!」


【三年三組教室】

さわ子「戸締まりの確認はOK…っと」

さわ子「さて、職員室に戻ろうかしら」

唯「さーわちゃん」ヒョコッ

さわ子「どわぁ!」ビクッ

さわ子「あ、あなた、神出鬼没すぎるわよ!」ドキドキ

唯「えへへ、ごめんごめん」


唯「実はさわちゃんに確かめておきたいことがあってさぁ」

さわ子「なによ?」

唯「今日の放課後、さわちゃんはなにしてたの?」

さわ子「…ちょっと待って、それってまさか」

さわ子「私のアリバイがあるかどうか、確認しに来たわけ?」

唯「いやいや~、こんなの形だけだってばぁ」

さわ子「…ホームルームが終わったら、校舎内の見回りをして、そのあとは吹奏楽部の練習を見に第二音楽室まで行ったわ」

さわ子「それで職員室まで戻ったときに、澪ちゃんが保健室に運ばれたって話を聞いたのよ」


唯「第二音楽室に行ったのは何時頃かわかる?」

さわ子「四時過ぎ頃…かな?見回りは二十分ぐらいだったし」

唯「ふむふむ。ちなみに校舎を見回ってるときは一人だった?」

さわ子「見回りなんてペアでやらないわよ。今だってそうでしょ?」

唯「なるほど~、そりゃそうだ」

さわ子「…やっぱり疑ってるわね私のこと」

唯「どうしてお茶するより先に吹奏楽部の練習を見に行ったの?さわちゃんらしくないよね?」

さわ子「失礼ね!吹奏楽部の大会が近いから、先に向こうに顔を出しに行ったのよ」

唯「そんな怒んないでよ~」


唯「それよりちょっと気になってたことがあるんだけどさぁ」

唯「どうして職員室からまっすぐ部室に来たの?」

さわ子「どういうこと?」

唯「だからさぁ、澪ちゃんが倒れたって聞いて、どうして部室に来たのかなぁって」

さわ子「どうしてって…澪ちゃんが倒れたって聞いたら、そりゃあ心配になるでしょ。おかしいことかしら?」

唯「でも保健室に運ばれたってこと知ってたんだよね?部室より保健室の方が近いよ?」

唯「心配だったんなら、どうして先に保健室に行かなかったのかなぁって気になってね~」

さわ子「…私が澪ちゃんがなぜ倒れたのか知ってたから、保健室に行かなかったんじゃないかって疑ってるのね」

唯「そんなぁ、誤解だよさわちゃん!わたしはただどうしてかなぁって思っただけで…」


さわ子「いいわ。私が澪ちゃんを気絶させた犯人だとしましょ?」

唯「ちょっと待ってよわたしそんなこと一言も…」

さわ子「まぁいいから聞きなさいよ」

さわ子「でも私が犯人だとしたら、どうやってあの密室から抜け出したのかしら?」

さわ子「確か合唱部の子たちは、ラジカセの音に驚いて飛び出してきたのよね?」

唯「うん」

さわ子「あのラジカセは私の先輩よりさらに前の代から使っていたものらしいから、当然タイマーなんて付いてないわよ」

唯「そうだよねぇ」

さわ子「それに入っていたのも私たちが録音したテープなんだから、当然そっちにも細工はないはず」

唯「うんうん」

さわ子「ほかにラジカセのスイッチを押せそうな細工の痕跡はあったの?」

唯「それがまだ見つかってなくて…」


さわ子「だったらあのラジカセのスイッチは、誰かが直接押したってことよね」

唯「今のところはそうなるよね」

さわ子「普通なら澪ちゃん自身がスイッチを押して、流れたわたしたちの演奏に驚いて気絶したって考えるのが一番現実的だけど」

さわ子「誰かが密室のラジカセのスイッチを押したって言うのなら、その方法はなんなのかしら?」

さわ子「犯人が直接押したって言うのなら、いったいどうやってそこから抜け出したって言うの?」

唯「うーん…それがまだわかんなくて…てへへ」

さわ子「その方法がわからないんなら、お話にならないわね」

唯「でも、逆に言えばその方法さえわかれば事件は解決すると思うよ」

さわ子「…言うじゃない。まぁ頑張りなさい」

唯「どこ行くのさわちゃん?」

さわ子「職員室よ。まだいくつか仕事が残ってるの」

さわ子「ま、下校時間までにトリックを解くことね」

唯「えへへ、解けたら真っ先に知らせに行くね!」


【部室】

唯「む~…」

梓「…平畑さん、まだ悩んでるんですか?」

唯「な~んか方法があるはずなんだけどなぁ」

紬「ほんとに探偵さんみたいね~」

唯「えへへ、そうかなぁ」

紬「はい、お茶でございます名探偵」キリッ

唯「うむ、いただこう」キリッ

唯「う~ん、密室のトリックさえ解ければなぁ…」

梓「倉庫をどれだけ探しても、トリックに使えそうなものや仕掛けはなかったじゃないですか」

梓「そうやって何でもかんでも事件にしたがるのはよくないと思いますよ」


唯「う~ん…」

ゴクゴク

唯「ん~うまいっ!」

梓(聞いてない…)

紬「まぁ、ありがとう♪」

唯「わたしのバリケードな脳細胞を活性化させるのはムギちゃんの入れた紅茶だけだよぉ」

梓「それを言うならデリケートですよ…」

唯「あれぇ、そうだっけ~」

梓「どっちにしても平畑さんの脳細胞はデリケートとはかけ離れてると思いますけどね」

唯「はぅっ!あずにゃん寺くんしどい…」バタッ

唯「あぁあ~、犯人の目星はついたんだけどなぁ」ポツリ

梓「ええっ?まさかそんな…冗談ですよね?」

紬「誰なの?」

唯「密室の謎が解けてないからね~。迂闊なことは言えないよぉ」


ガチャッ

律「うう…」ポタポタ

梓「わっ!どうしたんですか律先輩!」

紬「ずぶ濡れ…大丈夫?」

律「大丈夫大じょ…いっきし!」

律「…じゃないかも」

唯「どうしたのさぁピカ泉くん」

律「ズズッ…いや、それが渡り廊下から雨の様子見てたらさ、雨どいからいきなり雨水が溢れてきちゃって…ふぁ…」

律「ハックション!」

紬「いけない、風邪引いちゃうわ」


梓「着替え持ってないんですか?」

律「着替えって言っても、今日も体育ないし…」ブルブル

紬「あっ!そうだわ」

紬「倉庫の中に、制服に似た衣装があったはずよ」

唯「あ~、それわたしも一昨日見た気がする」

梓「どうしてそんなものが倉庫にあるんですか?」

紬「前に先生が衣装を持ち込んだときにね、桜高の制服に似せた衣装も持ってきてたのよ。制服をアレンジした衣装も作ってみたのって言って」

梓「なに考えてるんですか…」

紬「帰りに着て帰るぐらいなら大丈夫じゃないかなぁ」

律「なんでもいいや、持ってきてよ」ブルブル

紬「ちょっと待っててね、探してくるから」

梓「私も手伝います」


紬「あれー、おかしいなぁ」ガサガサ

梓「見当たりませんね…」ゴソゴソ

律「ないのー?」

紬「一昨日唯ちゃんの着替えを取りに入ったときには確かにあったのに…」

梓「そういえばこの前は平畑さんがずぶ濡れになったんですよね」

梓「…って、少しはまともな着替えがあったんならどうしてメイド服なんて着せたんですか…」

紬「唯ちゃんが『メイド服がいい』って聞かなくてね~」

梓「はは…」


紬「昨日も倉庫に入ったときにはここにかかってたはずなのよ。おかしいなぁ…」

律「あーもうなんでもいいからさ、ほかに着て帰れそうなやつ持ってきてよ」ブルブル

紬「じゃあ…これは?バニーガールとか」

梓「こっちはどうですか?チャイナドレス」

律「まともなのないんかい…」

唯「あはは、だってしょうがないじゃん。探してた衣装がないんだし…」

唯「…!」


律「だーっ!もっとほかの衣装持ってきて!」

梓「えっと…、それじゃ、前にムギ先輩が着てたナース服とか?」

紬「あっ、さわ子先生の昔の衣装なんてどう?」

律「もうこのまま帰ろっかな…」

唯「…むっふっふ」

律「あん?唯~、なにがおかしいんだよ~」

唯「平畑さんだってばぁ。そんなことよりピカ泉君、お手柄だよ」

律「はぁ…?」


パチッ

梓「なんでいきなり電気消すんですか」

唯「あずにゃん寺くん、これでちょっとわたしを照らしてくれる?」

梓「はぁ…」

カチッ

紬「懐中電灯…?」

唯「えー、これで密室の謎は解けました!」フンス

律「え…ちょっと、唯さーん?」

唯「ヒントはズバリ、消えた衣装」

梓「ムギ先輩…この人はいったいどこに向かってしゃべってるんですか?」

唯「むっふっふ~、察しのいい皆さんならもうおわかりですよね?」

紬「さぁ…どうしちゃったのかしら…」

唯「ふふふ、やっぱりわたしって名探偵かもぉ」

律「なに一人で照れてんだよ」

唯「下校時刻が近いのでこの辺で。平畑唯三郎でした!」


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[[4>唯「むっふっふ…平畑唯三郎だよ!」 4]]