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紬「ケンカのあとは」澪 3 - (2016/07/04 (月) 18:52:04) のソース

 
 
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二学期! 

律「おいーっす」 

澪「…おはよ」 

律「ん? どした、元気なくない?」 

澪「そんなことないよ」 

律「ひっさしぶりだなぁ学校。起きれてよかったよ」 

澪「わたしがモーニングコールしたおかげだろ」ポカ 

律「いて。わかってますアリガトウゴザイマス」 

澪「わかってるならよろしい」 

律「そーいやさ。どうだった? 夏休み」 

澪「どうだった、って…まぁボチボチ」 

律「ボチボチ、ってなんなんだよー。ほら、なにかあるだろ? あったんだろぉ~?」 

澪「夏期講習行ってた」 

律「それは知ってる。それ以外にもあるだろ、ほらぁ~」 

澪「んー、本読んだり、ベース弾いたり、詩を書いたり…」 

律「またまた~、も~言っちゃえってば!」 

澪「しつこいな…ムギのこと聞きたいならはっきりそう言えよ」 

律「だって…怒るじゃん」 

澪「今更怒んないよ」 

律「……そか。で。どうだったんだ? どっか行ったりしたか?」 

澪「どうもこうもないよ。会ってないし、連絡もとってない」 

律「………は? なーに隠してんだよ? 照れてんのか?」 

澪「隠してないってば」 

澪「あの日からずっと、ふたりきりで会ってないし、メールも電話も一切してない」 

律「はぁ~~~~!???!!!?」 

律「マジか…マジなのか……」 

澪「嘘なんかつかないよ」 

澪「あっ、思い出した。そういえばお盆に中古レコード屋巡りしたよ」 

律「なんだよ…デートしてるじゃんかよ…」ホッ 

澪「ひとりで」 

律「ダメじゃねーか!」 

律「なんだよそれ…部室でみんな一緒にいるときは全然普通だったじゃん! 普通にお茶してたし、練習もしてたじゃん!」 

澪「そうだよ」 

律「合宿だって行ったじゃん! 盛り上がったじゃん!」 

澪「そりゃ…まぁ…」 

律「あのさ…もしかして“別れた”んじゃないよな……?」 

澪「さぁ……」 

律「さぁ……ってなんだよ!」 

律「わたし達ちょ~責任感じてめちゃくちゃ心配してたんだぞ!」 

律「でも次の日、二人とも全然普通だったし、あーよかった仲直りしたんだーって安心してたのに…」 

律「なにしてんだよ!」 

澪「なにしてんだ、って言われても……」 

澪「なにもしてないし」 

律「それがダメだって言ってんの!!」 

律「あっそうだ! 誕生日どうしたんだよ、ムギの誕生日!」 

澪「えっ、みんなでお祝いしただろ」 

律「そんなん知ってるわ! ふたりでお祝いしなかったのか、ってことだよ!」 

澪「いや…とくに…なにも……」 

律「………おい」 

澪「だってムギからは特に連絡もなかったし」 

律「そりゃ自分で自分の誕生日祝ってほしい、なんて澪に直接言えるわけないだろ」 

澪「…もうわたしのこと好きじゃないんだろ。祝ってほしいなんて思ってなかったんじゃないか」 

律「……みお」 

澪「な、なんだよ…」 

律「ほんっとうにそう思ってるのか?」 

澪「………」 

律「……ムギな。めっっっっっっちゃくちゃたのしみにしてたんだぞ、誕生日」 

律「夏休みもな。澪とアレしたいコレしたい、どこに行きたい、ってそんな話ばっかしててさ」 

律「…………ムギの気持ち、考えたことあるか?」 

澪「………」 

律「今日、ムギとちゃんとふたりで話しろよ」 

澪「話すってなにを……」 

律「澪。お前はムギのことどう思ってるんだ? 好きなのか? 好きじゃないのか?」 

澪「わたし………」 

律「どうするかはふたりのことだけどさ。ちゃんと決着、つけてやれよ」 

澪「りつ…」 

律「なんだ?」 

澪「ムギ……わたしのことなにか言ってたのか?」 

律「なにも言ってないよ。あの日以来ムギはなにも言ってこない。ムギはムギなりに約束を破ったことを悪いと思ってるよ、きっと」 

律「確かにムギも悪いとこあったと思うよ。でもさ、もうちょっと寄り添ってやれよ」 

律「それがつきあう、ってことなんじゃねーの」 

澪「…」 

律「かっこつけねーで思ってることをそのまま言えばいいんだよ。それしかできないだろ」 

澪「……」コクン 

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昇降口! 

ザーザー 

澪(…………) 

澪(……夕立かぁ) 

唯「あれ? 澪ちゃん今帰り?」 

和「もしかして傘、持ってないの?」 

澪「唯、和………うん。まさかこんなに降ると思わなくって」 

和「澪にしては珍しいわね。わたしの傘貸そうか?」 

唯「わたし達は相合傘で帰るから♪」ムフフ 

澪「ううん。大丈夫。きっともうすぐやむから」 

唯「そーかなー? 降り出したとこだよ?」 

澪「うん。大丈夫」 

和「……」ピーン 

和「ほら、唯帰りましょ」 

唯「えー澪ちゃんホントに大丈夫なの?」 

和「大丈夫でしょ。本人がそう言ってるんだから」 

唯「えぇぇー…澪ちゃんに傘貸してかえろーよーそしたら相合傘できるしぃ」 

和「はいはい。じゃあわたしは自分の傘使わないから。これでいいでしょ」 

唯「あ、そっか。さっすが和ちゃん」エヘヘ 

和「じゃあね、澪(がんばって!)」グッ 

澪(……和!) 

唯「じゃーねーみおちゃーん」ブンブン 

澪「ああ、気をつけて」 



ザーザー 


澪(全然降り止まない) 

澪(その方が都合いいけど) 

紬「……澪ちゃん?」 

澪「……ムギ」 

紬「どうしたの? もしかして傘、持ってないの?」 

澪「う、うん……うっかり忘れちゃって。ム、ムギは…?」 

紬「わたしも」 

澪「…そっか」 



ザーザー 


澪(作戦失敗したなぁ) 

紬「やまないね」 

澪「そうだな」 

紬「先生にお願いして学校の傘借りよっか?」 

澪「あ、いやその…ちょっと待って!」 

紬「??」 

澪「ああー! こんなところにかさがー かばんにいれてたのわすれてたー(棒)」 

紬「……」 

澪「……」 

紬「……」 

澪「………」 

澪「はは……ごめん。持ってきてたことわすれてた」 

澪「………よかったら、一緒に帰らないか?」 

紬「………」コクン 



シトシト 


澪「……」 

紬「……」 

澪「……」 

紬「……」 

澪(か、かいわかいわ~…) 

澪「あ、あのさっ」 

紬「……?」 

澪「日本の気候は楽器にやさしくないよなっ」 

紬「梓ちゃんも同じこと言ってたね」 

澪「へ? そうだっけ?」 

紬「うん」 

澪「そ、そっかぁ~…」 

澪「……」 

紬「……」 



パラパラ 


澪(ダメだ…気の利いた話題を思いつかない…) 

澪(バカッ! わたしの大バカッ!!) 

澪(うう…わたし、なにがしたいんだ…) 

澪(あぁ…結局交差点まで来てしまった) 

紬「じゃあ澪ちゃん、ここまでで大丈夫だから」 

澪「いやっ、でもっ…そうだ雨! 傘! 傘がないと濡れちゃうから駅まで送るよ!」 

紬「ありがと。でももう小ぶりだし」 

澪「ダメだっ! 小ぶりでも濡れちゃうからダメだ! 風邪引いたら大変だから!」 

紬「そ、そう…? じゃあ甘えちゃおう…かな」 

駅! 


紬「あー…電車遅れてるみたい」 

澪(やったぁ! 夕立ありがとう!)ウルウル 

紬「じゃあ駅まで来たからもう大丈夫。わざわざありがとう」 

澪「う、うん……」 

澪「せ、せっかくだから……電車が来るまで……」 

紬「でも……悪いわ。けっこう遅れてるみたいだし」 

澪「わ、わたし…最近電車にハマってて! だから走ってるとこ見たくて!」 

紬「……そう?」 

澪(よし………よし………自然だった…今のは自然だった…) 

紬「……」 

澪「……」 

紬「……」 

澪(なにをやってるんだ……今こそ…今こそ…) 

紬「こうしてふたりきりになるの、久しぶりだね」 

澪「…ふぇっ?! あ、そ、そうだなっ」 

紬「なぁに、澪ちゃん、変な声だして」クス 

澪「ハハ…なんか鼻がつまっちゃって」 

澪「……ほんと。久しぶりだな」 

紬「……そうだね」 

紬「澪ちゃん、夏休み中なにしてた?」 

澪「うーん、夏期講習とか。あとはベース弾いたり、本読んだり、詩を書いたり。ムギは?」 

紬「家のことがアレコレあって…ちょっとの間だけフィンランド行ってたよ」 

澪「へー、いいなぁ海外かあ」 

紬「そうだ、これお土産」ハイ 

澪「………飴?」 

紬「うん。有名なお土産。澪ちゃんにどうしても食べてほしくって」 

澪「…そっか。ありがと」 

澪「ごめん。わたしもどっか旅行にでも行ってたらお土産渡すんだけど」 

紬「ううん。気にしないで」 

澪(夏休み、ふたりでどこか遊びに行きたかったな…) 

澪(わたしが変な意地張ったりしなければ楽しい夏の思い出作れたのかな) 

澪(…………でも元はと言えばムギが悪いんだし) 

澪(…………なんでわたしが謝らないといけないんだ) 

澪(そうだよ! わたしは悪くない!) 

紬「……どうしたの? 怖い顔して」 

澪「なんでもない!」ブンブン 

澪(ダメだ。意地を張るのはやめようって決めたんだ!) 

澪「な、なぁ…ムギ」 

紬「なぁに?」 

澪「こ、今度の日曜、ふたりでどっか出かけないかっ?」 

澪(やった! 言えた!) 

紬「……いいの?」 

澪「へ? いいの?って……そりゃあ…」 

澪(え? え?? いまの反応なに?? どゆこと??) 

澪(ムギ……わたしと遊びにいきたくない?) 

澪(わたしたち…つきあってるんじゃなかった?) 

澪(ひょっとしてもう終わってた??) 

澪(わたしがひどいこと言ったから…夏休みの間ぜんぜん連絡取らなかったから…) 

澪(おわり?? ほんとうにおわりなのか??) 

澪「…………」 

紬「…………?」 

澪「…………ヤダ」 

紬「…みおちゃん?」 

澪「うぇぇぇ………」ポロポロ 

紬「ど、どうしたの急に泣き出したりして…」 

澪「だって……だって……ムギぃ…」 

紬「もぅ…泣いてちゃなに言ってるかわかんないよ?」 

澪「ムギ……わ、わたしの…こと………キライ? キライになった??」 

紬「……澪ちゃん」 

澪「キライ……なんだろ? わたしのこと…」 

澪「わ゙たしが……ヒック……ヒドイこと…した…から…」 

澪「ムギに……ヒック…つめたく………したから」 

澪「ごめん…………ごめん…………」 

澪「あやまるから…………だからおねがい…」 

澪「キライに………ヒック…ならないで……ヒック」 

紬「澪ちゃん………」 

澪「ムギ……ムギ……」 

紬「澪ちゃん」 

澪「…………」 

紬「わたしが澪ちゃんのこと、キライになるわけないわ」 

澪「…………」 

紬「…そんなこと、ゼッタイにないから」 

澪「…………ホント?」 

紬「本当よ。むしろわたしの方が澪ちゃんに嫌われちゃったと思ってた」 

澪「………」 

紬「ごめんね。約束破って」 

澪「………グズ」 

紬「わたし、自分のことばっかり考えてて、澪ちゃんのこと傷つけちゃって…ごめんなさい」 

紬「澪ちゃんと一緒にいるとね、もっと一緒にいたくなっちゃうの。いっぱいさわりたくなっちゃうし、さわってほしくなっちゃうの」 

紬「でもそうしたらきっと澪ちゃんのこと傷つけちゃう。だからね、距離を置こうと思ったの」 

紬「落ち着いて澪ちゃんと向き合えるようになるまでガマンしよう、って」 

紬「それができるようになったらもう一度澪ちゃんとおつきあいしたいな、って思ってたの」 

澪「………」 

澪「わたしの方こそごめん。ごめん……」 

紬「澪ちゃんはなんにも悪くないよ」 

澪「だって…誕生日プレゼントも…なにもあげてない」 

紬「いいよ。澪ちゃんが隣にいてくれたらなんにもいらない」 

澪「わたし……キスとか…その先のこととか…こわくて…でも」 

澪「ムギが遠くに行っちゃう、って考えたら…たまらなくさみしくて…」 

澪「…だからそばにいてほしい」 

紬「………澪ちゃん」 

紬「わたし、離れてる間もずっと澪ちゃんのことばっかり考えてたの。ずっとよ。もうずーーーーっと!」 

紬「いっつも澪ちゃんのこと考えてるの! もう自分でもどうかと思うくらい!」 

紬「…こんなわたしだからきっとまた先走って澪ちゃんのこと傷つけちゃうかもしれないけど」 

紬「好きなの。澪ちゃんのこと、大好きなの。だからね、改めてお願い」 









紬「また、わたしとおつきあいしてください」 









澪「……うん」 

紬「…………」ヘナヘナヘナ 

澪「ムギ!? ど、どうしたんだ?!」 

紬「だって…だって…仲直りできなかったらどうしようって…このまま別れちゃったらどうしようって…そればっかり考えて……」 

澪「ムギ…………」 

紬「みおちゃん……みおちゃん………みおちゃぁぁぁん……うぇぇぇぇぇん!!!」 

澪「……ごめん」 

紬「みおちゃん……みおちゃん……」 

紬「……ヒック」 

澪「落ち着いた?」 

紬「……うん。ごめんね」 

澪「いいよ。お互いさまだろ」 

紬「エヘヘ…そだね」 

澪「アハハ」 

紬「ねぇ澪ちゃん…手、握ってもいい?」 

澪「……うん」 

ギュ 

紬「………あったかいね」 

澪「………ムギの手だって」 

澪「電車、まだ来ないな」 

紬「うん……でもそのほうが一緒にいられるからうれしい」 

澪「…そうだな」 

紬「ごめんね、帰るの遅くなっちゃう」 

澪「平気。まだ日も長いし」 

紬「雨、すっかりあがったね」 

澪「うん…アレみて。夕日」 

紬「わぁ……」 


チュ 




紬「……えっ」 

澪「………」 


紬「澪ちゃん、アレ!」 

澪「え?」 


チュ 




紬「……しかえし」 


おしまい! 


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