三節 Two of us37

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「・・本当によかったのかい、ヤン?」  会見を終えて、セシルはヤンに尋ねた。また自分に無関係だった人間を巻き込んで しまったことを気にかけているのだ。不安そうな彼に、ヤンは顔をしかめて答えた。 「ご迷惑だったかな?」 「まさか! そんな、大歓迎だよ・・ただ・・!」  慌てて首を振るセシルに顔を緩ませ、ヤンが力強く彼の手を握りしめた。 「セシル殿。無用な気遣いなどいらぬ、これは私の決めたこと。私はそなたの内に秘め られた何かにかけてみたいのだ。不肖だがこの命、そなたに預けさせてくれぬか・・!」 「・・ヤン、・・・・ありがとう」 「よろしく頼むよ、ヤン!」 「これからもよろしくね!」  ギルバートとリディアも横から手を加えた。彼らはお互いの結束を確かめ合うように、 重ね合わせた手とそれぞれの顔を見渡しながら笑った。 「船の準備に半日ほどかかろう。出発は明朝だ。  今日はゆっくりと、この国での最後の日を過ごしてくれ」  そういうと、ヤンは急にそわそわとした様子で手を引く。 「えー、それでは、なんだ・・その、うむ。私はちょっと、ヤボ用があるので・・  それではまた、明朝に・・うむ」  言うが早いが脱兎のごとく、ヤンは回廊を走り去っていってしまった。 「どんな奥さんなのかしら」  そういいながらクスクスと笑うリディアに、残りの二人も苦笑してあわれな恐妻家の 背中を見送った。

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