直後の光景をセシルはすぐさまは信じられなかった。 確かに、魔法は完全なもので、ベイガンへと向かっていた。 もちこの場に人がいたのなら全員がセシルと同じ考えを示すだろう。 しかし、魔法の対象者であったベイガンはおかしく笑っている。 その姿には、傷一つついていない。 「な……」 「何故だと聞きたいのだろう。だが、お連れの二人は知っているようだぜ!」 疑問を先読みし、促すように視線を這わすベイガン。釣られるかのようにセシルも同じ方向を向く。 そこには魔法の直撃を受けたパロム。 それを気遣うかのように側にいるポロム。 咄嗟の出来事にはやや戸惑い気味であった。ややで済んだのは、二人がこの原因を理解していたからである。 「教えてくれるか……」 何故……確かにベイガン目がけて放たれた魔法が唱えた本人であるパロムに……跳ね返ってでも こない限りあり得ないのでは。 「白魔法リフレク。向けられた魔法を対象者の元にはじき返してしまう魔法です」 ポロムの答えは、セシルの予想通りであった。その為、よりいっそう衝撃が増す。 「そんな魔法があったのか……」 頷くポロム。そして更に言う。 「バリアと言っても、シェルやプロテス等の防御魔法と違い、何でも跳ね返すこの魔法は……時には 詠唱者に大きな負担を招いてしまいますので……通常時に用いられる事はあまりないのですが……」 今回の場合。自らの体を守るかのように存在する復元可能な両手。これにリフレクの魔法がついたら…… 「死角なし……」 そんな訳はない。否定しつつも、段々と暗い気持ちが強くなる。 「しかも跳ね返された魔法は加速がましてるからさ……威力も速度も最初よりも増してるんだ……おいらも、 唱えたのが威嚇用に威力を落としていなければ、今頃どうなっていたことか……」 「パロム!」 弟を叱責するポロムの言葉には通常とは違った。 手負いの体なのだから喋るなと言ってるのか、それとも弱気な思考を否定しているのか、その両方なのか。