「はい、お見事」 キスティスが小さな拍手え俺を出迎える。 「でも、あなたらしくないわね……」 「…………」 「油断はしない。それがあなたのモットーではなかったの?」 まるで全てを見透かしたかの様なキスティスの問いかけだ。 いつもの俺なら、むっとして皮肉めいた返し言葉をおくったのであろう。 「…………」 しかし、俺は無言を貫いていた。今の俺にはさっきの女性の言葉に対する疑問で頭が一杯であった。 「ちょっと……どうしたの?」 今はもうその肩書きを失ったとはいえ、キスティスは優秀な教官であった。 いつもと違うぞといったノリである俺に違和感を感じたのであろう。 <別に……> <なんでもない> <放っておいてくれ> はぐらかそうと思ったが彼女の事だ……すぐにでも見透かされて俺の手のうちを読まれるだろう。 「こちらにいましたか」 俺とキスティスの微妙な沈黙は外部からやってきた声によって打ち切られた。 助かった。誰かは知らぬ来訪者に感謝したい気持ちだ。 「全く……人騒がせな人だ」 無感情というよりは無機質な声と共に男が二人入ってきた。 前言撤回しようか。新たにやってきた男たちも俺の心を決して安らがせてはくれないだろう。 根拠の無い推測じみた台詞はどちらかというと好きでない方だが、直感的にそう感じた。 二人とも小奇麗な白い軍隊服――ちょうど俺達SEEDの制服に近いような服装に身を包んでいる。 男達は奇麗な足取りで、俺の悩ませていた少女に近寄った。 「ここは危険です。さっ……速く」 そう言って男の内の一人が、真新しい白い手袋に包まれた片手を差し出す。 「わかったわ……」 少女の方は、少し悩んだ後にその手をつかんだ。どうもその表情は釈然としないようだが…… かってに時間外にこんな場所に来たことがばれたのが恥ずかしいのか? それとも見つかったことにより罰を科せられるのだろうか? それなら自業自得だ。せいぜい反省するんだな。だが、いきなり現れたこの男達は誰なのだろう? 制服教論達ではない。 そもそも彼らならこんな違反行為を見つけたのならいきなり声を大にして怒り出すのだろう。 まあ何にせよ、彼女にとって今のこの状況は不本意なものであるらしい。