ゾット内はあちこちが破損し、迷路のような道であれも整頓された道の面影は無く、瓦礫の点在する道は 移動の労力は以前に比べると格段に掛かるようになっていた。 それに加え、常に薄黒い煙が周囲を覆い尽くし視界を遮り、足元だけでなく、前の見通しも立たぬほどで あった。 それに加え気絶したカインを抱えた状態なのだ。少し移動するのですらひどく骨の折れることであった。 「!」 どれほどまで歩いた時だろうか。セシルの視界に<それ>が入ってきたのは…… 漆黒の鎧に身をまとったその姿――声は何度も聞いたが直接会うのはファブール以来であろうか。 「ゴルベーザ!」 セシルは思わず声を荒げた。バロンからこの道まですべてはこの男が原因でもあるのだ。 「ぐっ……セシルか」 どうやら傷ついているようだ、苦しそうな声を上げている。 「まさかお前たちの仲間にメテオを行使できるものがいたとはな? だがクリスタルは手に入れた…… 「!」 やはりこの状況はテラが……予想していたとはいえ、驚かぬことはできなかった。 「ほう……カインの奴も一緒なのか? その様子だと<術>の方はとけているのだろう」 「何!」 こちらの言葉は予想外であった。 「やはりカインは……お前が操っていたのか!」 「ふん……所詮はきっかけにしかすぎぬ、私の術は。そもそもの原因はその男にあるのだ。お前を薄々勘付いていたのだろう――試練を 乗り越えた者、パラディンよ?」 「だからって」 こんな事許せるわけはない。 「ローザは!?」 ありったけ疑問をぶつけるつもりでいた。 「無事なんだろうな!」 「ふん……始末はするつもりだったが、この有様だどうやら後回しになったらしい」 どうでもいいといった感じに話す。 「あの女にもう用はないな。好きに持っていくがいい。最も……もう仕掛けの方が作動しているかもしれんが それに、この爆発だ既に巻き込まれている可能性もあるぞ」 <貴様!!> 怒りの言葉を上げようとするが何とかとどめる。 これが奴のやりくちなのだろう。一方的な言葉責めで相手の憎しみを煽り出す……付き合った方の負けだ。 「だが……このまま逃がしはしない」 言葉による怒りをなんとか抑えたものの、完全なまでに抑える事はできない。 元凶たる漆黒の男――打ち倒すなら今しかない。 元凶の討伐。妥当ではあるが、怒りの発散の為の強引な理由づけでもあるのかもしれない……