「見たかよ――! ルビカンテ。これが怒りが呼ぶ力だ!」 「ぐぅう……!」 今までで一番大きな傷を負ったルビカンテ。そこから黒い血ともとれる波動が噴き出す。 「私の負けだ……」 はっきりとそう告げた。四天王で最も強く、誰よりも力を誇示し、それを求めた者からその言葉が出たのだ。 「その手があったのか、一人ひとりの力は小さくても――弱い者でも、お互いの力を併せるという手が」 「へっ今更負け惜しみかよ!」 「エッジよ――怒りにまかせたお前の力は見事であった……この私の判断を狂わしたのは間違いなくお前の力だ。 時に危険を招くその力を上手く使うのだな」 「おっ……お前の指示なんかうけねえよ!」 エッジは単純に驚いているようだ。戦いに負けた者の身からそうような言葉が出ることに。 「そしてセシル達か……ゴルベーザ様やバルバリシア、カイナツォにスカルミリョーネ……みなが手をやかれたわけは ある。皆、それぞれ性質は違うが立派な戦士達だ」 「ゴルベーザが!? 手を……」 その言葉に驚いたのはセシルであった。自分達は常に負ける。後手に回っていたと思ったからだ。 「我々とて一枚岩でない。四天王の誰もが己の目的で動いているし、あのルゲイエも独自の目的を持っていたように思える。 それにゴルベーザはお前に何か特別な感情を持っているようにもな」 「僕に!? どういう事だ!」 「最後のはあくまで私の個人的分析だ。だが、お前たちの存在が戦いを動かしているのは確かだ……」 「…………」 「では私は……既にこの身体は長くは持たない。しかし、いつの日か必ず蘇る。それがいつになるかは分からぬがな…… 最後に面白い戦いが出きた。さらばだ……」 黒い波動を噴出すると共に、ルビカンテの身体は崩れ落ち、やがてはその姿は辺り一体から完全に消えてしまった。 しばらくの間、誰も何も言わなかった。 それは強敵との戦いに勝利した安息感と達成感からなのか、新たな戦いへの緊張感と徒労感なのかは誰にも分からなかった。 -[[絆15]]