*** 「ナルシェは、俺達ガードが守る!!」 ガード達が言い放った声が遠くに聞こえた。魔導アーマーが通りの中央で立ち止まり、 横合いから飛び出してきた獣との戦闘に入る。 魔導アーマーに立ち向かった生物は、死以外の道を選べない。 しかし魔導アーマーの搭乗者には、与える死の方法を選ぶ事ができた。 いつかファイアビームを好んで使う相棒に、その理由を尋ねたところ「操作がいちばん 簡単だから」と返事が返ってきたのを思い出した。現に今も、彼はそれを使って敵を撃退 していた。 実際のところ操作に特別な違いはない。ただ、パネルの並び順が違うだけだ。手元の レバーに一番近いのがファイアビームというだけで、彼はそれを好んで使うのだ。相棒の 横着ぶりにはさすがに呆れて物も言えない。 そんなことを考えていた彼は、ふとあることを思いついた。 男達ふたりの搭乗する魔導アーマーと、“少女”が搭乗する魔導アーマーの性能には 大きな差があった。彼は好奇心から“少女”にその能力を発揮させる事を命じたのだった。 そのひとつが『魔導ミサイル』。帝国空軍機などに搭載されているものとほぼ同型の ミサイルで、発射には膨大な魔導エネルギーが必要とされるはずだ。事実、そのエネルギー 補填用の装置だけでも、魔導アーマーの何倍もの大きさになる。 それをここに――人ひとりがようやく搭乗できるほどの魔導アーマーに組み込めたのは、 やはり搭乗者自身から魔導エネルギーを補充する事が可能だからなのだろうか。生きる 兵器……この娘だからこそ、と言うわけか。しかし残念ながら魔導アーマーの構造は 軍部の最高機密であり、彼らがその真相を知ることは一生ない。 無表情のまま手元を動かし、“少女”は命じられた通りの行動を起こした。ミサイル発射の 轟音と直後の閃光とともに、戦闘はあまりにも早すぎる決着を迎えた。残されたガード ふたりの足が僅かに怯む様子を見せた。しかし、それでも突撃をやめることはなかった。