この夜、セシル達はローザを看病してくれた老夫婦の所へ泊まる事へした。 宿をとっても良かったのだが、ローザの様態を気にした事もあり夫婦の厚意に甘えさせてもらうことにした。 「セシル」 リディアは扉を開きセシルの名を呼ぶ。 「リディア」 セシルは指を口に当てながら小さく言った。 「何? あっ……」 セシルが何を言おうとしたのか直ぐには分からなかった。だが部屋を見渡し理解する。 ローザが寝ているから静かにしろと言うことか。 「さっきまでは起きてたんだけどね」 眠っているローザを見るセシルの顔は、今までリディアが見たことも無いような笑顔をしていた。 「ねえ、ローザの看病は私がするよ。セシルはゆっくり休んで」 「いいよ、僕が見ておくから。リディアこそ休んだらどうだい」 「だめ。夕方から付きっきりじゃない。少し休まないと明日に響くわよ」 実際に夕食の時以外、セシルはずっとローザの近くにいて看病していた。 「でも……」。 「いいから、ほら!」 何か言おうとするセシルを遮って、半ば強引に部屋から追い出す。 「ふう……」 少しの後、リディアはため息を漏らした。 「ちょっと強引だったかな?」 ちょっとばかり悪びれる。自分でも何故あんな事を言ったのか分からなかった。 ただ、あんな笑顔のセシルをここにいたせたくなかった。