*** 薄暗い炭鉱内の細い道。出会うべくして両者は出会い、鉾をまみえる。 口汚く少女の事を罵りながら、ガードの連中は剣先を向けて来た。 きっと彼らにも、理由があるのだろうとは思う。武器を持って戦う理由、相手の 命を奪うことも厭わない、その理由が。 ――もちろん、それは俺にだって言えることだ。 ロックは手に持った短剣をためらい無く振り下ろした。彼は、彼の目的のために 武器を取り、戦いの場へと自らの意志で身を投じている。その理由を日頃から、 あるいは戦場で敵として向き合った者に教える必要性はない。 勝つか負けるか、戦いの結末はその二択でしかない。そして、自分に求められて いるのは「勝つ」という結果のみである。この場では逃走という選択肢も敗北を 意味している。どうあっても引き下がるわけには行かなかった。 シルバリオの攻撃が自分の身に命中した時に、隣のモーグリがポーションを投げて 寄越してくれた。それに続き、武器を振り上げてくれた別のモーグリの姿がこれほど までに頼もしく見えた事はない。彼らにも、武器を取って戦う理由があるのだろうか? 「リターナーに加わらないか?」 言葉が通じないという事を忘れて、ロックはそう声をかけてみる。 「クポ?」 「クポー」 「クポポ」 彼らは思い思いに飛び跳ねながら、一応こちらの質問に答えてくれているようだった。 「……ダメだよな、やっぱり」 そう言って今さらながら肩を落とすロックの耳に、凄まじい轟音が届いた。おそらくこの 洞窟内のどこかで、落盤が起きているのだととっさに身構えたが、それにしては伝わって 来る振動が小さい。まさかそれがモーグリの持つ特殊能力であると言うことは、このときの ロックが知る由もなく、またモーグリのリーダーによって、ガードリーダーが倒された事を 知るのは、もう少し道を進んで全員が合流してからのことだった。