俺たちを乗せた車は、間もなくバラムシティに到着した。 バラムシティ。バラム島南岸にある港町。 優美な曲線で構成された家々、青と白で統一された街並み、眼前に広がる海。 全てが見事に調和した美しい風景に憧れ、近隣から訪れる観光客は後を絶たない。 しかしそんな景観を楽しむ余裕もなく、俺たちは港への道を急いだ。 「あっ、ゼル兄ちゃん!」 「よう、ゼルじゃねぇか、おめかししてどこいくんだ?」 「また何かやらかしたのかい、ゼル」 ゼルの姿を目にした町の人々が、次々に話しかけてきた。 彼等とすれ違うたびに、ゼルは手を挙げて応じている。 「そういえば、ゼルはこの街の生まれだったわね」 「おう、そうだぜ」 「いい街だ。チキン野郎にゃもったいねぇ」 「うるせぇよ!」 やがて俺たちは港にたどり着いた。すでに高速上陸艇はスタンバイしている。 「おそいぞB班、駆け足!」 俺たちの到着に気づいた試験官が、大声を張り上げた。 叱声背中を押されるようにして、俺たちは急いで上陸艇に乗り込んだ