竜の騎士団 14

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竜の騎士団 14 - (2007/12/13 (木) 01:12:20) のソース

 騎士達はうち震えていた。 
 ある者は胸に手を当て、ある者は槍を掲げ、またある者は感服の涙を流していた。 
 彼らは同じ竜と生きるものとして、幼いカインに対する畏敬の念を隠せなかった。 
 そしてこの日、副長の提案と共に、バロン竜騎士団全員の賛をもってある決定が下された。 

『バロン竜騎士団団長は不在とする! 
 カイン=ハイウィンドが竜騎士となるその時まで!』 


 当然ながら前例のないのことであったが、騎士団全員のたっての願いともあり、王もこれを 
認めた。彼もまた王である前にひとりの騎士だった。 
 また、もちろんこの決定はカインに知らされることはなかった。慢心かあるいは重圧か、その 
どちらにしてもカインに与える理由はなかったし、カインならば必ず自ずから相応しい騎士に 
なるだろうと誰もが確信していた。 
 そのカインだが、このことがあってから彼は少しばかり無口になり、昔ほど感情を外に出さない 
ようになった。もっとも彼と親しい人間からしてみれば、中身はちっとも変わってなどいないと 
いうことらしかったが。 
 それからハイウィンド家はそのまま残された。副長はカインに後見の旨を告げ、自分の邸宅に 
移住することもできると話したが、カインは家に残りたいと言った。副長もその方がいいと思った 
らしく、カインはまた空っぽの家に帰る日々を送った。それでも彼らはたびたびお互いの邸宅を 
行き来したし、カインはすっかり彼を父親として受け入れていた。傍目にも、二人は本当の親子の 
ように見えた。 
 副長は事実上の団長という地位にありながら、長きにわたって補佐という名目を守り続けた。 
彼はことあるごとに団長と言う言葉を口にし、常に自分の上に指揮官がいるように振るまった。 
はじめそれはひどく奇妙に見えたが、いつのまにか団員達も見えない指揮官を信頼するように 
なっていった。騎士団は不思議な結束で力強く保たれていた。 
 そしてカインが竜騎士となったその日、架空の指揮官は現実となったのだ。 
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