瞼を開けると、日が射して黄金色に輝く砂が目に入った。 セシルは顔を上げた。頬には涙の伝った跡が残っていたが、その瞳から弱さは消えていた。 ────僕はまだ生きている。そして、ローザも。 なすべきことがあった。こんなところで踞っていることなど許されない。 いや、誰よりも彼自身が許せはしない。 セシルは立ち上がり、辺りを見回した。落ち着きを取り戻した頭で、昨日最初に唱えた疑問を もう一度吟味した。 「ここはどこだ?」 残念ながら目に見える範囲ではめぼしいものは見当たらない。西方には半島がのびており、 反対には陸が続いていた。幸いにか進む方向は一つしか無いようだ。 「・・待っていてくれ、ローザ」 最後に、惜しむように海を一瞥すると、彼は決意して歩を踏み出した。踏みしめる重い砂の 感触が、孤独の重量を感じさせたが、セシルは立ち止まらず、迷いのない歩調で進み続けた。 やがて、セシルの目に街の外塀らしきものが映った。それを得て彼は歩調を強めたが、 しばらくして今度は不意に驚いたように足を止めた。 だが、すぐに彼は再び歩み始める。 徐々に明らかになってくるその姿に、ひそかに胸の鼓動を早めながら。