「…それで、そのジェノバの肉片っていうのはどこに?」 ヴィンセントは首をふり、「…そこまでは聞き出せなかった」とだけ言った。 そのまま彼は黙り込んでしまい、その場に沈黙が訪れる。幻光虫がクラウドの目の前をよぎった。 「カダージュたちの目的はなんなんだ?」 しばらくして、クラウドが口を開いた。 「…ジェノバの思念が人に入り込んだ結果が星痕なら、奴らはその思念の塊のようなもの。 お前もさっき戦って感じただろう。あの3人は人間じゃない」 クラウドの左腕がまたチクチクと痛み出した。 常任離れした身体能力をもったヤズー。およそ人間ではありえない動きを見せたロッズ。そして、目を合わせただけで星痕が痛み出したカダージュ。 たしかに、そう考えれば辻褄は合う。 『この人はねぇ!僕たちの兄さんだ』クラウドの体内にもジェノバ細胞が生きている。考えようによっては、クラウドは彼らの兄ということになる。そして、彼らからすればクラウドは、 『…裏切り者なんだよ』…母親を滅ぼした裏切りものというわけか。 意味不明と思われたカダージュの言動に、だんだんと筋が通ってきた。 だが、そんなことよりももっと大きい問題がある。 彼らがジェノバの思念によって創られた生命だとすれば、何をするつもりなのかはわかりきっている。 「リユニオン、か」 声に出して言ってみる。ジェノバはたとえその体が破壊されても、体の断片が集まり、リユニオン(再結合)することで復活する能力を持っているのだ。 ヴィンセントも同じ考えのようだった。 「そう。奴らの最終的な狙いはそれだろう。神羅が持っているジェノバの断片を執拗に狙っているのもそのせいだ…ただ…」 意味ありげに言葉を区切って、ヴィンセントはオレンジの瞳をまっすぐクラウドに向けた。 「問題は、それだけで終わるのかというところだ」 クラウドはヴィンセントのこの一言の意味するところをもう理解していた。 さっきヴィンセントは、星痕は人の体内にジェノバの思念が侵入した結果だと話した。つまり―― 「星痕に罹っている人間も、リユニオンの対象にされる…?」 クラウドの導き出した結論に、ヴィンセントは静かに頷いた。