四節 Eternal Melody12

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四節 Eternal Melody12 - (2007/12/14 (金) 03:55:19) のソース

「待って下さい!」 
風変わりな謁見を終えようとした大神官に、ギルバートは食い下がった。 
「彼らは……僕の友人なんです! 
 見捨てないでください!」 
情に訴える亡国の王子を、大神官は無言で見下ろしていた。その両目に初めて、痛ましげな光が宿る。 
「クリスタルは自然の力の象徴。その恩恵は、全ての生命に等しく注がれます。 
 私たちのものでなければ、トロイアという国の持ち物ですらありません。 
 ただ預かっているに過ぎないのです。遠い先祖から、はるか先世の子孫へ向けて」 
「……分かっています。 
 ですが……」 
「あなたは良い方です。ギルバート殿下。 
 ご友人方も、良い人たちなのでしょう。 
 それでもあれは、個人の情を理由に扱って良いものではありません。 
 火のダムシアンの王統を受け継いでいる方ならば、骨身に染みておりましょう」 
穏やかに諭され、もはやギルバートに返す言葉はない。 
「お暇いたします」 
会釈を残し、大神官は去っていった。ついに一言も発することのなかった七の姫が、表情を殺したまま付き従う。 
『……ギルバート……』 
「生きているとは思わなかった……」 
窮地に陥っているのはセシルたちの方だ。だというのに、ギルバートの口から溢れ出たのは、あろうことか自己弁護の言葉だった。 
「みんな死んでしまったと思ったんだ! 
 もうバロンは止められないと、だから、だからせめて、僕にできることをしようと……」 
干上がった舌が、唇が、聞くに堪えない言葉を紡ぐ。 
これが自分の本性なのか。絶望の中で、ギルバートはせめて誰かに止めて欲しいと願った。たったそれだけのことさえ、一人では成し遂げられないから。 
けれどセシルもヤンも、シドも、情けない言い訳を遮ろうとしない。 
『言ったであろう。貴様の知恵など、はじめから当てにしとらんわ』 
冷え切った賢者の言葉が、はじめて彼の望みを叶えた。 
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