「ああ、セシル殿。ちょっとばかり見苦しいところを見せてしまったな……」 寂しげな様子でテラを見送った後、長老はセシルに切り出す。 「あいつと私は昔からの仲でな。つい本音でやり合ってしまう。仮にも国を統べるものなのに パロムとポロムもいたというのに……」 「いえ、そんな友人はとっても羨ましいです。本当に……」 もし、自分にもそれだけ他人とうち解けあえたら……カインも。 だが、もう過ぎ去ってしまった事。その日々を取り戻す為にもこの力を手に入れたのだ。 「そうか……有難う」 「何故、テラはミシディアを出て行ったんですか?」 聞いて良いのかどうか迷ったが、今聞かなければもう聞く機会はないだろう。 多少、配慮に欠ける行為だとは思ったが、セシルは思い切って質問した。 「やはり、分かるか」 「一応、テラとの付き合いは長い方ですし、さっき長老とも何処か余所余所しかったですし」 「ミシディアでは日々、魔法の研究が成されていた。過去、多くの偉人達が研究に努めてきた おかげで、現在でも多くのミシディアの民が魔法を使えるようになった。だが、発展には常に 挫折や犠牲がつきものであった」 いきなり語り始めたので、セシルは最初テラの事を話しているとは気づかなかった。 「テラもこの国の魔法の発展に一役買っていた。若い頃から非常に優秀だったあいつは幾つもの 研究で成功を成し、民からの信頼も相当なものであった。だが、その評価の絶頂の時に事件は 起こった……」