「それで何か御用でしょうか?」 「お荷物が届いています」 一通りの挨拶を終え、用件を尋ねると女官は部屋の前に置かれた一つの包みを指さす。 「これは?」 「武具屋の店主さんから餞別だそうです。重いのでご注意ください」 ここまで持ってくるのも相当な苦労でしたと苦笑する。 セシルもその荷物を持ち上げようとする。それは確かに見た目以上の重さを有していた。 何とか部屋まで運び込み、女官に礼を言って扉を閉める。 持ち込むのも困難であったが、梱包されたその荷物を紐解くのも結構な労力を使用した。 「これは……」 開いた荷物から覗いたものは鎧であった。 それだけでなく、篭手を始めとした防具一式が詰め込まれていた。 そのどれもが渾身を込めた出来であり、丁寧に鍛えられたものであった。 「パラディンの……」 試練の山へ向かう前準備として、武具屋に行った時があった。 その時、店の一番目立つ所に安置されていた、鎧を思い出す。 ――これはパラディン用の装備さ! あんたみたいな暗黒騎士には使えるわけがねえ―― 店主の皮肉めいた苦笑が思い出される。 「あの時の鎧か? でも何故……」 信じられない気持ちでその鎧を眺めていると、荷物が入っていた箱の奥底に何かが残っている事に 気づく。 拾い上げてみるとそれは小さな紙切れであった。 じっくりと眼を凝らしてみると、文字が刻まれていた。 ――頑張れよ―― 大雑把な文字でそう書かれていた。 「…………」 ぎゅっと紙切れを握りしめ、懐にしまう。