「さて……」 怯えたように去るメイドを見送ったベイガンは一人呟く。 「生きていたんだな。セシル……」 それに報告にきた近衛兵のある言葉が引っかかっていた。 「白き鎧を纏っていたか……」 ベイガンの知る限り、セシルは暗黒騎士として、バロンで名をはせていた。 そして纏う鎧も血に染まった漆黒の色であった。 「何かが、奴にあったようだな」 だが、そんな事はすでにベイガンにとって重要な事ではなかった。 「早く来るがいい……いや、来てもらわなければ困る……」 おそらく心配しなくてもいいであろう。 セシルは王に会いたがっている。どんな手段を使ってでもこの城にまでやってくるであろう。 「この力さえあれば」 後ろに振り返り、先程の自分の所業を見つめ、不敵に笑う。 その顔には部下を手にかけてしまった後悔というものは感じられない。 「ゴルベーザ様より預かったこの力さえあれば……貴様をこの手で倒せる……」 そう思うと気持ちは、否応がにも高鳴る。 「もうすぐそれがかなうんだな……」 口元が微かに歪む。 「ふふふふ……ははははははははーーー!!」 しんと静まりかえった廊下には不気味な笑いは良く響いた。