「それでもやっぱり、心配でね。なかなか寝付けなかったりするの。もし眠れたとしてもね こうやってすぐに目が覚めちゃったりして……」 そこまで言って、彼女はあっと声を潜めた。 「なんだか、愚痴みたいになっちゃたわ……ごめんなさいね」 「いや、むしろ安心したよ。相変わらずみたいでさ。此処に通してももらったばかりの時は 正直、お父さんがいなくなって消沈してんじゃないかと思って……」 「はは、私がそんな性格じゃないってのはあなたも良く知ってるでしょ」 そうなのだ。 彼女――レッシィ・ポレンディーナはシドとその妻から生まれた子供であった。 女性ながらも父親ゆずりの性格は昔ながらのものであり、年下であるセシルも過去、学校時代周囲から 浮き出したセシル自身をとても親身になって接してくれた数少ない人物であった。 彼がここまで気を許している相手はカインとローザに続くであろうか。 そして、シドの妻、つまりは彼女の母親が早くに亡くなってからは、一人でこの家を守ってきた。 「そういえばセシル。あなたはなんでこんなに朝早くに起きてきたの?」 「何か奇妙な夢をみてね……」 その問いにセシルは素直に答えた。自分でも驚くらいにだ。 比較的親しい関係であったシャーロットですら無下に扱ったのだ。 それなのにこの体たらく、そもそもこの家に訪れたのも、彼女を無意識の内に信頼していたのかもしれない。 「どんな夢だったの?」 「ん……えーと……」 問いに返答しようとして気づいた。 自分がその夢の内容をさっぱり忘れてしまっている事に。