かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「三節 光を求めて34」で検索した結果

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  • 三節 光を求めて34
    その途端、アントリオンが殴られでもしたかのように悶え始める。 魔物はそのまま逃れるようにその場から逃れる。その拍子に彼らを見つけたが、 わき目もふらずに竪琴の音色から少しでも遠くへと移動して行く。 巣の反対側まで来てようやく落ちついたのか、立ち止まって憎々しげにこちらを睨むが、決して近づいてこない。 「一体何をしたんだ?」 訝しげに、まだ竪琴を奏で続けるギルバートを見やる。 「この竪琴は特殊でね。人間には普通に聞こえても、  モンスターが聞くと驚くぐらいに嫌がるんだ。あんな風にね」 答えながら、近づこうか近づくまいか迷うような素振りをする魔物を見やる。 「それよりセシル、倒すなら今だ!」 「わかってる!」 怒鳴り返し、剣を手に一気にセシルが走り寄る。 動きが鈍い鋏の迎撃をかわして顔まで到り、一気に鎧のような甲殻に守られていない眼に...
  • FF4 一章
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  • 三節 光を求めて3
     以後、朝からずっと町中を引きずり回されているわけだ。砂漠の焼きつけるような陽射しに 長時間晒されっぱなしで、セシルの意識は朦朧としていた。しかし鎧を脱ぐわけにはいかなかった。 当分追っ手はないと思うが、それでも念のためと言うことがある。用心にこしたことはない。 横を見るとリディアは踊子の服を着ている。サイズがまるで合ってないのだが、気にしていないらしい。 「わたしにもお水ちょうだい」 生温くなった水を流し込み、セシルはリディアに水筒を渡した。にっこりと笑うと、 彼女はそれをさもおいしそうに飲み干した。  リディアは不自然なくらい明るかった。実際、不自然だった。もちろんその半分ぐらいは、 彼女の素なのだろうが。自分のために無理をして明るく振舞う、その幼さに不釣り合いな優しさに、 セシルはつくづく感謝していた。 「ね、そろそろいこうよ。荷物わたしも持つ...
  • 三節 光を求めて32
    「ええい!」 セシルは剣を抜き、あの独特の構えに入る。数瞬後に、その刃を闇色の光が包み、そして放たれた。 一発。顔を狙ったが、硬い皮膚に弾かれてダメージは与えられない。 二発。頭は効かないと見て腕を狙うも、やはり効果は無い。 三発。今度は少し離れた所からリディアが魔法で援護してくれ、 そちらに気を取られている隙に左腕を付け根から斬り落とした。 その痛みに怒声を上げ、体を苦しげによじるアントリオン。 だが、魔物の痛みはすぐに怒りに変わり、残った右腕を一閃して鎧を着たセシルを軽々と弾き飛ばす。 「セシル!」 宙を舞うセシルをギルバートが受け止めるような格好になり、二人はもんどりうって砂の大地に倒れる。 「だ、大丈夫?」リディアが駆け寄り、ケアルで応急処置を施す。 「ああ、なんとか…」頭を押さえ、セシル。 そこへアントリオンがザクザクと不気味に足音...
  • 三節 光を求めて35
    「おかしい」 竪琴を背負いなおし、アントリオンの死骸を見下ろしながら、ギルバート。 「おれほど大人しい生き物の筈のアントリオンがなぜ…」 「最近、魔物の数が以上に増えている」 訝る彼に、セシルが言う。 「これまで大人しかった者達まで襲いかかってくる…」 そこで一旦、かぶりをふる。 「やはり、何かが起ころうとしている前触れ…」 そう続けると、3人を厭な予感めいた物が襲った。 何かとてつもなく不吉で、不穏な何か… バロン王の豹変、戦争の拡大、魔物の増加に生き物の狂暴化… 一体、何が起きている? いくら考えてもわかりそうにない。 「ね」 沈黙を破ったのはリディアだった。 「早くローザさんの所へ!」 「ああ、行こう!」 懐から”砂漠の光”を取りだし、セシルはホバー船に走った。 カイポに戻った時には、日は既に西に沈みかけて...
  • 三節 光を求めて33
    突然姿を暗ました敵に訝り、アントリオンが滅茶苦茶に腕を振りまわす。 が、砂以外の何にも触れない。獲物を完全に見失ってしまっている。 実は、3人はアントリオンのすぐ近く、足下の辺りに隠れていた。 攻撃を受けようというその瞬間に、ギルバートがセシルとリディアを脇に懐に飛びこんだのだ。 これが意外な盲点でまさに灯台下暗し、それまで前方にばかり注意を払っていた巨獣は彼らを見つけられずにいる。 「驚いたな…咄嗟にここまで上手い隠れ場所を見つけるなんて」 「僕、逃げたり隠れたりするのは昔から得意でね」 声を殺していうセシルに、ギルバートは自嘲気味に笑う。 「それより、ここ熱い…」 リディアが、体の砂を払いながら呟く。 確かに、彼らは砂漠の日ざしによって焼石のように熱された砂に、半ば埋もれるようにしている。 仮にこのままアントリオンをやり過ごせても、 それ...
  • 三節 光を求めて30
    ダムシアンに来た時は東にあった太陽が、いまでは真上に上りつつある。 セシルとリディア、それにホバー船を操縦するギルバートは小さくなって行く城を背後に、 一路アントリオンが棲むとされる辺りを目指していた。 「なかなか乗り心地いいね。これ」 後ろへ流れていく風景を眺めながら、リディア。 「ああ。低空しか飛べないし武装も何もないけど、この子の機動力は飛空艇並みだよ」 速度を少し上げながら、ギルバートが答える。 「襲撃された時も、生き残った人達はこのホバー船に乗って領内の集落に逃げたんだ。無事だといいのだけれど…」 「大丈夫、きっと無事さ」 顔を曇らす彼を、セシルが軽く励ます。 そんな話を暫く続けていると、砂の地面が一旦途切れ、少し先に浅い海が広がった。 3人を乗せたホバー船はその海を強引に突っ切り、数キロ先の対岸を目指して一直線に走って行く。 ...
  • 三節 光を求めて31
    停止したホバー船から降り、アリ地獄をそのまま大きくしたような巣の中央へと歩いていく。 中央へたどり着いた時、ギルバートはその場に座り込み、砂の大地の中に手を突っ込んだ。 「えーっと、確かこの辺りに…あった!」 そう叫ぶと、地中をまさぐっていた右手を引きぬく。 その手には、美しい輝きを放つ紅い宝石が握られていた。 「これが”砂漠の光”?」 ギルバートから宝石を受け取りながら、セシル。 「そうだよセシル。さあ、日の暮れない内にカイポへ…」 その時、ギルバートの背後に巨大な鋏が、地面を突き破りつつ真下から現れた。 「アントリオン!」 突然の出現にセシルは鋭く叫びながら交代し、リディアは「キャー!」と叫んで巣の上のほうまで駆け戻る始末だ。 ギルバートだけは落ち着き払った様子で、その場に立ったまま鋏の形をした腕を見据えている。 「大丈夫。凶悪な外見の割...
  • 三節 光を求めて9
    早朝、セシルはカイポの町外れにある家の戸を叩いていた。 「すいません、誰かいませんか」 セシルはドアに向かっていう。だが返事は返ってこない。 「どうかしたんですか?」 セシルは後ろから声に気付き振り返る。そこには初老の女性が立っていた。 「あっ、はいこの家にテラさんという賢者が住んでいるって聞きまして」 砂漠の光を捜すと言っても何か手がかりが必要だ、そんな時セシルは宿の主人からこの町に賢者テラがんでいるという噂を聞いたのだ。 賢者と呼ばれるテラなら砂漠の光についても何か分かるのではないかと思ったのだが…… 「でも誰も居なくて、留守なんだろうか?」 「…………」 その女性は何故か険しい表情をしていた。 「どうかしたんですか?」 「あっいえ何でもありません。テラさんは少し前にダムシアンまで行かれましたよ」 「じゃあもうこの家には居ないんですか...
  • 三節 光を求めて7
    「明日にはもう出発するの?」 その夜リディアはなかなか寝付けずベットの中から思わずセシルに声をかけた、出発の準備をしてるようだ。 「ああ、早くしなければローザは……」 そう言って再び出発の準備に戻る。 「ねえ……ローザって人はセシルとどういう関係なの?」 しばらく間をおいてリディアは昼から気になっていた事を思い切って訪ねてみた。 オモイビト……老人はそう言っていたが? 「ローザは僕の大切な人、それだけだよ」 セシルはそう言った、だがリディアはその答えがどうも腑に落ちなかった。 「本当にそれだけ?」 リディアはもう一度訪ねる。 「そう……僕はローザを……けど……」 その声はしだいに小さくなっていった。 「…………」 リディアはもうなにも言わなかった、だがセシルにとって自分以上に大切な存在があることだけは理解できた。 「分かった……じ...
  • 三節 光を求めて5
    「ローザはいったいどうなってしまったんですか!」 セシルは慌てた様子で老人に問いただす。 「そ、それがじゃな……」 セシルのいきなりの問い詰めに老人は困った顔をした。 「セシル、そんなに慌てて問いつめると答えれるものも答えられないわよ」 リディアはつい二人の間に割って入ってしまった。 昨日はあれほどまでに必死に自分を守ってくれたセシルがこんなにも取り乱してしまうのはリディアにとって面白い事ではなかった。 「わかっているよリディア……けど!」 そう言ってセシルは近くの椅子に腰掛けた、その様子はひどく焦っているようだ。 「じつはな……」 老人は再び口を開いた。 「彼女は数日前にこの街の近くでたおれておってのう、その時には既に砂漠の高熱病にやられておってな可哀想だがこのままでは……」 「!」 セシルはその老人の言葉を聞くと驚愕した、そしてはやる...
  • 三節 光を求めて2
     昨夜のこと。 リディアを抱き締めながら、セシルはなんとか彼女を元気づける手段を考えていた。 しかし、どんな慰めの言葉があると言うのだ。考えれば考えるほど、彼女の境遇はあまりにも不憫だった。 「大丈夫?」 「………うん」 「もう寝た方がいい。僕が見張っているから安心して」 「………うん」 彼女はまだなにか言いたげだった。だが、彼はそれを聞くのがなぜだか怖かった。 そっと体を離すと、リディアに向って微笑んだ。 「さっきもいったけど、君のために、僕にできる限りの事をさせてほしい」 「………うん」 リディアの背中を撫でていると、ふと、ミストでの騒動や砂漠を歩いてきたせいだろうか、 彼女の服のあちこちが擦り切れているのに気付いた。 「とりあえず、まずは君に服をプレゼントする」 「………うん」 「おやすみ」 オヤスミ、と聞き取れないよう...
  • 三節 光を求めて6
    「光……それは何なんですか?」 セシルは訪ねる。 「高熱病を治すと言われてるものじゃ砂漠の光とも言われておる、だがそれがどんな物かも分からんし本当に存在するのかも定かではない」 「砂漠の光……それがあればローザは」 「まさか探しにいくというのか、無理じゃやめておけ!」 「だが、このまま何もしないよりは!」 そう言ってセシルは立ち上がりローザの手を握り小さな声で囁いた。 「待っていてくれローザ、すぐに助けてあげるからね」 セシルは老人に一礼した後急いで部屋を出て行った。 「ちょっと待ってよセシル!」 部屋に残されそうになったリディアは慌てて部屋を出ようとする。 「ありがとう、おじいさん」 振り返って老人に礼を言う、その時一瞬だけローザの方に眼をやる。 「…………」 とても綺麗な人──そして一途な人──それがリディアの第一印象であった。
  • 三節 光を求めて8
    セシルはカイポから北東の暗い地下水脈にいた。 「なんで此処にきたの?」 リディアが訪ねる、昨日眠れなかったのだろうか眠たそうな眼をしてる。 「人を探すんだよ」 「誰を?」 リディアは疑問に思った事を口にした。こんな所を人が通るとは到底思えない。 「賢者テラだよ」 「賢者?」 リディアにとってそれは初めて聞く名前だった。 「そう……賢者テラ」 セシルは今朝の事を思い出す。
  • 三節 光を求めて4
    「ローザ!ローザ、僕だよローザ。ローザ……」 セシルは先程の女性に寄り添い、何度も何度も名前を呼びかけている。 家の主の老人は突然の来訪者に戸惑い、どうしたものかと困りこんでいた。 「セシル……?」 リディアは恐る恐る呼びかけたが、彼女の声は全く届いていないようだった。 セシルは一心に女性に話しかけている。 「どうやら、彼女は彼の想い人らしいのう」 「…オモイビト?」 「おや、お嬢ちゃんにはちょいとわからんかのう」老人は髭をかきながら、穏やかに笑った。 オモイビト、という言葉の意味がリディアには分からなかったが、 大切そうに女性の顔に手を添えるセシルに、なぜだか無性に腹が立っていた。
  • 三節 光を求めて1
    「ほらほら、セシル早く!」 「ま、まってくれよリディア……」 「まてないー、遅いよっ!」  エメラルドグリーンの美しい髪をたなびかせながら、無邪気に駆け回るリディアが先を急かす。 その爛漫な姿はまるで、砂上に輝くオアシスの妖精のようであったが、後ろに控えている暗黒騎士は、 それはみじめな有り様だった。自慢の鎧は吹き付ける砂によってその鮮やかな漆黒を汚され、全身を包む その黒色がたっぷりと日光を吸収して、中の男ーーセシルは蒸し風呂のような責め苦を味わっていた。 おまけに、彼の背中には巨大な買い物袋が累々と積み上げられていた。 「セシルが言い出したんだからねー」 「わかってるよ……でも、ちょっと休ませて」 耐えきれなくなったセシルはドカドカと荷物を下ろすと、日陰に腰を下ろした。 暑いのには変わりないが、日なたとは偉い違いである。全く、信じられな...
  • 三節 光を求めて16
    「さて、そろそろ私も眠るとするか」 しばらくの沈黙の後テラがそう言って眠ろうとする。 「何故僕にあんな話をしたんですか?」 セシルはテントに入ろうとするテラに訪ねる。 「お前にはいやな話をさせたからな、それのお返しじゃ」 「そうですか……」 セシルはこの老人の事が少しだけ分かったような気がした。 「それと洞窟の魔物とは一体?」 「巨大な八つの足を持つ恐ろしい奴じゃアンナとお主の大切な人のためにも まず奴を倒さねばそれにダムシアンには……」 テラの表情に陰りが見える。 「どうしました?」 「いや、何でもない」 そう言ってテラはテントに入っていく。 そしてセシルも焚き火の火を消してテントに入って行った。
  • 三節 光を求めて10
    「それでそのテラって人を捜しに来たわけ?」 「そうだよ、カイポからダムシアンへ行くには此処を通るしかないからね」 セシルはリディアの問いに答える。 「それよりも昨日は眠れなかったの?」 「別に……」 リディアはそう答えたが本当はろくに眠れていなかった、ローザの事を考えていたのだ。 あのセシルがあんなにも大切に思っているなんてどんな人だろう、そんな事ばかりをずっと考えていた。 きみを守らせてくれないか……バロンの兵を退けた時セシルはそう言った。 今でもセシルはあの約束を覚えているのだろうか?ひょっとするともう忘れてしまったのではないか、そんな不安が頭をよぎった。 だが今はセシルと一緒にいれるだけで良かった、それにリディアもローザを放っておくのは納得できなかった。 「リディア、後ろ!」 そんな事を考えているとセシルが自分を呼ぶ声が聞こえた。 何事...
  • 三節 光を求めて12
    「知っているんですか!」 セシルは驚いて聞き返す。 「ああ、あらゆる病を治療する幻の宝石と言われておるが詳しい場所は私にも分からん」 「そうですか……」 セシルは落胆する。 「そうがっかりするな詳しい場所は分からなくとも砂漠の光の伝説はダムシアンから生まれたと言われとる ダムシアンに行けば何か情報が得られるかもしれん」 「本当でしょうか?」 「おそらくはな、なので少し手を借してくれないか」 「何をですか?」 「この先の地下の湖にいる巨大な魔物がいる、とてつもない力を持った奴じゃ。 私の魔法だけでは太刀打ちできん、みればお主暗黒騎士の様じゃなお主の暗黒剣とならば」 テラはそう言って協力を申し出てくる、どうも上手く利用されているような気はしたが今は ダムシアンに行くのが一番最良の方法にも思えた。 「分かりました、協力しましょう」 この...
  • 三節 光を求めて17
    地下水脈の最深部──ダムシアンに続く闇と静粛に支配されたこの場所に響くのは中央に流れる滝の音だけであった。 「奴はいつもここで獲物を取ろうと待ちかまえている」 テラはそう言って滝の下にできている湖を指す。 「お前は奴を引きつけろ、私が魔法で援護する」 「分かりました」 セシルは剣を抜き近くの足場に飛び移った。 「あとこの娘にも手伝ってもらおうか」 そう言って後ろにいるリディアの方を見る。 「黒魔法は使えるか?」 「…………」 無言のまま首を横にふる。 「そうか……分かった」 その声はどこか腑に落ちない物であった。 セシルはその声に疑問を感じつつも周りの様子に意識を集中する。 辺り一帯は静かであった、本当に此処に魔物がいるのだろうか? 「セシル後ろに!」 そんな事を考えているとリディアの叫びが聞こえ後ろを振り返る、だが振り向く前...
  • 三節 光を求めて11
    「大丈夫かお嬢ちゃん」 リディアの疑問はその声に打ち砕かれた。リディアの前に老人が現れた。 「うん……ありがとう」 リディアは礼を言いその老人を見た、眼鏡をかけた頑固そうだがどこか優しそうな雰囲気を持った老人であった。 「助かりました」 剣を収めたセシルがそう言ってこちらにやって来る。 「不意打ちには気をつけろ常に警戒するようにな」 「分かりました、あなたは何故こんな所に?」 セシルは訪ねる、このような所を老人一人で歩いているのはセシルたちと同じく何か特別な事情があるように思えたからだ。 「私は元々カイポに住んでいたのだが娘のアンナが吟遊詩人に騙されダムシアンにいってしまったのじゃ 私はそれを追ってな……」 老人はそう呟く、どこか悲しい眼をしていた。 「……ではあなたが賢者テラ?」 何故そう訪ねたのか分からない、だがセシルにはこの老人こそ...
  • 三節 光を求めて25
    気がつけば、テラは両手に握った杖でギルバートに殴りかかっていた。  殴る。  殴る。  殴る。  アンナを奪ったことへの怒りをわめき散らしながら、テラは殴った。堰を切った流れは止まらない。  男の弁解など聞けない。弁解しようとする男の態度も気に入らない。この五体満足なままでいる男に、アンナの痛みを――――  ――――やめてっ!!  背後から、声がした。聞き間違えるはずのない、愛娘の声。  テラもギルバートもアンナを振り返り、セシルとリディアもアンナへと駆け寄った。  アンナの瞳に、自分を覗き込むセシルとリディアの姿が映った。その表情は悲痛。  他人から見て、自分がどれだけ血を流しているか知らないけれど、目の前で自分のせいでそんな顔をされるのは堪えるものだ。だからせめてふたりを安堵させようとアンナは微笑む。  その微笑みをみて、リ...
  • 三節 光を求めて23
    「アンナは!アンナは何処におる!」 そう叫ぶテラの顔は、普段のものとはまるで違った。その様子に、セシルとリディアは顔を見合わせる。 恐らく、この攻撃の激しさでは生きてはいない… セシルは勿論、子供のリディアにもそれは分かっていたが、取り乱した老人相手にそんなことを言える筈も無い。 そうしている内にテラは「アンナを助けねば!」と叫び、城の中に走って行く。 「ま、待ってください!」とセシルが慌てて彼の肩を掴むが、彼は「うるさい!」と怒鳴って老人とは思えぬ力でその腕を振りほどき、 これまた老人とは思えぬ力で瓦礫の山と化した城を走り抜けて行く。 「アンナ!わしじゃ!テラじゃ!いたら返事をせい!」 そんなことを叫びながら、テラは血の匂いが漂う城内をくまなく探して行く。 「待ってくださいテラ!貴方の娘さんは恐らく、もう…」 セシルもリディアを背負って後に続...
  • 三節 光を求めて15
    「それであのお嬢ちゃんは?」 テラがテントの方に眼をやる、リディアの事を言っているのだろう。 「それは……」 ミストの事を話すべきだろうか?だがなかなか言い出せなかった。 「さん……お母さん……」 セシルがそんな事を悩んでいるとテントから声が聞こえてきた。 「リディア……」 やはり明るく振る舞っていてもミストの事がまだ…… 「ミストの召喚士です、そしてこの娘の母は僕が…………」 セシルはそれだけ言い後は何も言わなかった。 「そうかやはりミストは……悪いことを聞いてしまったようじゃな」 そうセシルに言った後テラは厳しそうな顔でリディアを見て呟く。 「しかし召喚士とはなそれにかなりの資質を秘めておる」 そして今度は顔を緩めてこう続ける。 「しかし可愛い寝顔じゃ……幼い頃のアンナのようじゃ」 そう呟くテラにはセシルは出会った時に感じた寂...
  • 三節 光を求めて13
    地下水脈をしばらく進んだ所に開けた場所があった。 「よしここで休んでいこう」 テラはそこで急きょそんな提案をした。 「急ぐんじゃなかったんですか?それに魔物にでも襲われたら」 セシルは率直な意見を言う、どうもさっきから このテラという人に上手く使われているような気がした。 「まあ待て、焦りは禁物じゃここで休んでおいた方が身の為じゃそうは思わんか? それにこの部屋には結界が張っておりモンスターはまず近づけんよ」 「…………」 セシルは何も言い返せなかった。 「決まりじゃな、ではテントでも張るかのう」 そう言ってテラは用意していたテントを張り始めた」 「ほんとに元気なおじいさんね」 セシルの側に来たリディアがくすくすと笑う。 確かにセシルはそう思わざるを得なかった、 何処か悲しそうな雰囲気に見えたのは自分の気のせいだったのだろうか? ...
  • 三節 光を求めて18
    オクトマンモスは自慢の足であらゆる方向から攻撃をしかけてきた。その攻撃はセシルといえども苦戦する相手であった。 「サンダー」 テラの雷魔法がオクトマンモスの足に電流を走らす。そのスキを突いてセシルは足の一つを切り落とす。 「ありがとう、テラ」 「礼には及ばん。さすがは暗黒剣の使い手じゃな」 それだけ行って再び魔法の詠唱に戻る。 オクトマンモスは残った足で執拗にセシルに襲いかかってくる。 七つになったとはいえやはりその攻撃は激しくなかなか反撃をするスキがない。 だがやはり本能赴くままに行動するだけの魔物。その攻撃は単調な攻撃であり見切るのは難しいことではなかった。 魔物は足を失うごとにだんだんと攻撃の勢いをなくしていった。そしてついにテラの援護もあり最後の足を切り落とす。 「これで奴も終わりだな」 安堵の息をもらし剣を納めようとする。 「まだだ...
  • 三節 光を求めて24
    ダムシアン王位継承第1王子、ギルバート・クリス・フォン・ミューアは、争いごとを好まない青年であった。  悲哀に満ちた美しい容姿を持ち、その容姿のように優しい性格を持っていた。  身分や金銭といった俗世を嫌い、剣の代わりに竪琴を愛し、呪文の代わりに詩を口ずさむ、そのような青年だった。  いま、彼の周りには、焼け焦げた破片となった城壁がそこら中にあって、もの言わぬ死体となったヒトの姿がそこら中にある。  その空間の中ただひとり、ただひとりだけ、ギルバートは立って、居た。  自身を愛し、守ってくれた家族。自身を慕い、守ってくれた国民。血溜まりの中のすべてを前にして、その表情に感情の色はなかった。  ただ立ちつくすだけ。  なぜこんなことになったのか。こんなことになって、自分はこれからどうすればいいのか。そもそもどのような思考をすればいいのか。  絶望すること...
  • 三節 光を求めて14
    その夜セシルは眠ろうとした時テラに呼び止められた。 「一体何です?」 セシルは聞き返す。 「少し話をせんか」 「話ですか……」 セシルは疲れていたので早いとこ眠ってしまいたかった。 「ああ少しだけでいいんじゃ」 「……分かりました少しだけなら」 セシルはしぶしぶ了承する。 「そうか、ありがとな」 そう言ってテラは焚き火の近くに座りセシルもその近くに座った。 「それで何を話すんですか?」 セシルは訪ねる、元々人と積極的に話すのは得意ではなかった。 「お主はバロンから来たのか?」 「やはり知っていましたか」
  • 三節 光を求めて28
    リディアの手の中には、確かなぬくもりがあった。  哀しくて哀しくて仕方なかった自分のために、アンナが最後の最後に残してくれた、微かな、されど確かな感触。  あの優しいひとは、ギルバートを愛して、ギルバートのために死んだのだから。  ギルバートは、ちゃんとあのひとために、あのひとの愛に応えなきゃならないはずだとリディアは思う。 「そうさ……君の言うとおり、僕は弱虫さ! だからずっとこうしてアンナのそばにいるんだ!」  しかし幼い少女にすらこう言われたことがさらにギルバートを自棄にしてしまったのか、もう何もかもどうでもいいんだと彼は訴える。 「な……、あたしだって……!!」  怒りに言葉を詰まらせながら、それでも反論しようとするリディア。しかしそれよりも先に、ふたりのやりとりを聞いていたセシルがギルバートの頬を殴りつけていた。  リディアが目を丸くしてセシルをみ...
  • 三節 光を求めて19
    「ありがとうテラ、今の魔法は一体?」 テラの元へ駆け寄りそう訪ねる。 「なあーに少しばかりの賭けじゃよ」 「賭け?」 「そう忘れていた魔法を使えるかどうか試してみたんじゃ」 「忘れていたとは?」 セシルは訪ねる。昨日からこの老人には質問してばかりだ。 「年のせいか物忘れが激しくてな、昔は使えたはずの魔法が思うように使えなくなってしまったんじゃ」 テラは笑いながらそう言った。 「そうですか」 そんな事ができるとは全く持ってすごい人だ。セシルは少しばかり感心する。 「私もまさかここまで上手くいくとは思わなかったわ」 そう言って大きな声で笑う。 「よし出発じゃ、もう少しでダムシアンだぞ!」 そう言ってテラは立ち上がって湖の向こうに見える出口へ駆けていく。 「本当に元気ね」 リディアが笑いながら言う。 「ああ」 セシルは半ば呆...
  • 三節 光を求めて27
    城門へ向かって廊下を歩くテラの胸には、後悔だけ。  アンナとギルバートのことを認めなかったこと、激情のままギルバートを殴打したこと、自分を案じるセシルへと怒鳴り返してしまったこと。  賢者の名にとてもふさわしくない、感情のまま行った愚行。それは後悔となって胸の中に沈殿する。  しかし、いまさら引き返すことなどできるはずもない。  いまはただ、最愛の娘を失ったこの哀しみも後悔もすべて復讐の怨念へ変えて、ゴルベーザへと向けることしか考えられなかった。  テラが去った後には、未だ哀しみの色濃い気まずい静寂。  その中、眠るアンナを前にして、涙をこぼし続けるギルバート。からっぽだった彼の心が色づいていく。  ―――それは哀しみの色。  ―――それは悲しみの色。  ―――それは、絶望の色。  家族が、国家が、そして恋人が永久に失われてしまった。  ...
  • 三節 光を求めて26
     テラたちと同じようにアンナを見つめていたセシルが顔を上げる。ゴルベーザ。それが、いまの隊長の名前か。 「ゴルベーザとはいったい何者なんだ?」 「わかりません……黒い甲冑に身を包んでいて……、人とは思えぬ強さで……」 「赤い翼はやはりクリスタルを!?」 「……はい。やつらはクリスタルを奪おうと火を放ち……、父も母もやられ……アンナも……、僕をかばって弓に……」 「そんなにまで、こ奴のことを……」  ギルバートを庇った。その言葉に、テラの胸が痛む。アンナはギルバートのために自身の生命と投げ出したというのだから。  そしてアンナは、自身の終わりを自覚する。テラとギルバートに、自分の死という不幸をもたらしてしまうことだけが最後の心残りだった。 「ごめんね、お父さん、私を許して。ギルバートを許してあげて……」 「アンナッ!!」  死にゆくアンナを呼び止...
  • 三節 光を求めて22
    「間に合わなかったか!」 セシルがチョコボから下りると同時に叫ぶ。 「ひどい…」 リディアも、目の前の無残な城の姿にそれだけ呟く。 しかし、自分の知る「紅い翼」は、ここまで残虐だったか? ふと、セシルの頭の中でそんな考えが首をもたげる。 あのミシディアの急襲でも、ここまではしなかった。 勿論それは自分の命令もあっただろうが、隊員達も皆途中で出会う魔導師達は出来るだけ無視してクリスタルのある宮殿へと向かった。 もっとも、徹底的な抵抗を見せる者達は仕方なく殺すか、捕虜にするかで対処したが。 それに比べて、この惨状はなんだ? 無抵抗だったと思われる人々も徹底的に殺され、辺りに散る死体は目を逸らしたくなるようなものばかりだ。 セシルはそれらに、何か厭な予感を感じた。 確かに、バロン王は近頃人が変わったようだ。 しかしそれでも、シドや自分を初...
  • 三節 光を求めて20
    「…さ、流石に熱いな…」 日の光も届かない闇の洞穴をやっとのことで抜けたかと思うと、 今度は砂漠を照らす灼けるような昼の日差しが彼らを襲った。 おまけに丸一、ニ日も松明だけを頼りにしていたせいで、目が痛いほどに眩しい。 「年寄りには答えるわい。早くダムシアンへ急がねばな」 ローブで体を隠して日差しを避けながら、テラ。 「しかしここからは」 セシルが老人をふりかえる。 「ダムシアンまでかなりの距離があります。徒歩では少なくとも一日はかかるでしょう」 「ふむ…」 確かに、手元の地図によると、この地下水脈とダムシアンの都は随分離れている。 カイポへと辿りついた時のように運良くキャラバンなどに遭遇出来ればそれにこした事は無いが、そんな偶然に何度も遭遇できるとは思えない。 「砂漠のど真ん中での野宿は覚悟したほうが良いかも「多分それはしなくていいと思うよ...
  • 三節 光を求めて29
    みんなが救ってくれたこの身に、まだ生命が残っている。まだ意志が残っている。  ならば、立ち上がらなければ。 「愛する人を、失ってはいけない」  セシルを真っ直ぐに見つめてギルバートは言った。 「僕はギルバート。ギルバート・クリス・フォン・ミューア。君は?」 「僕はセシル。そして彼女は……」 「あたしはリディア。よろしくね、ギルバート」 「よろしく、セシル、リディア。……リディア、さっきはすまなかったね」 「え、ううん……いいの。かなしい気持ちは、あたしたちにもわかるから……」  先ほどまで罵倒に近いことを言った相手とはいえ、大の大人に人に面と向かってこうして謝られることにリディアは戸惑った。  しどろもどろに答えるリディアにギルバートは、優しいんだねと微笑む。 「ありがとうリディア。……セシル。砂漠の光は東の洞窟に住むアントリオンの、産卵の時に出...
  • 三節 光を求めて21
    それから3人は、一羽のチョコボに乗ってダムシアンを目指した。 いくらなんでも一度には一羽しか召喚できないので、仕方なく3人で乗ることにしたのだ。 流石に重過ぎるのか、チョコボは時々危なっかしくよろめき、いかにも辛そうだったが、 しかしそれでも随分速い。出発して2時間といったところだが、もうダムシアンまでの距離の半分は走破していた。 「日暮れ前に到着できそうだね。それにしても速い!」 「でしょ~?ね、ところで、ダムシアンってどんな所?」 「ああ、とっても平和な所さ、リディア。  住んでいる人々もみんな温厚で優しくてね。特に王子のギルバ…」 セシルとリディアがそんな話をしていたその時、彼らの乗るチョコボよりも遥かに速い何かが頭上をよぎった。 セシルは思わず、上空を見上げた。 この音。かつて嫌と言うほど耳に飛び込んできた、この音。 それは紛れもな...
  • 三節 山間34
    橋も終わりにさしかかった頃、前方にははっきりと浮かぶ影が一つ見渡せた。 「ようやく到着か……」 その進むごとにその影ははっきりとその形を露わにしていく。 「!」 その建物まで後少しと言ったところでセシルは一つの気配を感じ、後ろを振り返る。 「何だ! あんちゃん。そんなに構えて?」 だが、後ろには驚いた様子のパロム達が居るだけであった。 「いや、ちょっと悪い気配がしたような気がしてさ……」 「そうか? おいらは何も感じなかったな。ポロムは――」 ポロムが首を立てに振ろうとしたその時、橋がぐらりと左右に大きく揺れる。 「な……なんだよ」 パロムは振り落とされそうになり慌てて身を屈める。 フシュルッルーーー 揺れに合わせるかの様にまた山頂に向かうまでに聞こえたあの声が聞こえてきた。 「どうやら、奴はまだ生きていたようだな」 その声を聞い...
  • FF4 四章
    ...試練36 299 三節 山間1 297 三節 山間2 297 三節 山間3 297 三節 山間4 297 三節 山間5 297 三節 山間6 297 三節 山間7 297 三節 山間8 297 三節 山間9 299 三節 山間10 299 三節 山間11 299 三節 山間12 299 三節 山間13 299 三節 山間14 299 三節 山間15 299 三節 山間16 299 三節 山間17 299 三節 山間18 299 三節 山間19 299 三節 山間20 299 三節 山間21 299 三節 山間22 299 三節 山間23 297 三節 山間24 297 三節 山間25 297 三節 山間26 299 三節 山間27 299 三節 山間28 299 三節 山間29 299 三節 山間30 299 三節 山間31 299 三節 山間32 299 三節 山間33 299...
  • FF4 三章
    ...王国23 297 三節 Two of us1 ◆HHOM0Pr/qI 三節 Two of us2 ◆HHOM0Pr/qI 三節 Two of us3 297 三節 Two of us4 297 三節 Two of us5 297 三節 Two of us6 297 三節 Two of us7 297 三節 Two of us8 297 三節 Two of us9 297 三節 Two of us10 297 三節 Two of us11 297 三節 Two of us12 297 三節 Two of us13 297 三節 Two of us14 297 三節 Two of us15 297 三節 Two of us16 297 三節 Two of us17 297 三節 Two of us18 297 三節 Two of us19 297 三節 Two of us20 297 ...
  • 三節 Two of us34
     セシルはまじまじと剣を眺めながら、胸の内で動揺を隠せなかった。  暗黒騎士のつかう剣は、技者がその力を用いる度に徐々にその刃自身にも闇を蓄え、 やがて黒みを帯びだしたそれは、まさしく暗黒剣と呼ばれる魔剣になる。  だがこれほどまでに深々とその身を黒に染めている剣など、未だ嘗て見たことが無い。 「いったいこれは・・」 「かつて、この国を訪れた暗黒騎士がもっていたものだ。  ・・恐ろしいほどの強さを秘めた男だった。何処から現れたのか、その素性も目的も 知れなかったが、ただ彼の騎士が去った後にこの剣が残されておった。  どうせ我々には縁のないもの、セシル殿の旅に役立てていただきたい」  セシルはそっと柄を握った。たちまち剣から暗黒の霧が腕に流れ込み、全身が粟立つ ような錯覚を覚える。 (こんな剣を使いこなす騎士・・・いったい誰が?) 「・・...
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