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  • 五節 忠誠と野心52
    「セシル殿……」 立ち尽くしたセシルの肩にヤンが手を添える。 「よく――」 労いの言葉を書けようとした時―― 「僕はパラディンになったのに……やはりこういう事でしか出来ないのか?」 別段、口にした疑問はヤンに問いかけたものではなかったのであろう。 「僕は時々、自分が何をしてるんだろうか? そういった疑問に駆られる事があるんだ」 ただ、己の悩みを一人呟く。答えなど求めてはいないのかもしれない。 「私には……この者はあなたに殺して欲しかったのだと思います……」 しかし、ヤンは何故か答えてしまう。 「え……」 意外な答えだったのか、答えが返ってきた事に驚いたのか、セシルはヤンを見つめる。 「それがこの男の最低限、人間として残ったものでしたのでしょう……」 確かに、ベイガンは自らに止めを刺せと最後に言った。 「でも……これでは前と変わらないんじゃないかな……」 既に、...
  • 五節 忠誠と野心5
    「ですが、行くのなら……」 ヤンは何かを言おうとする。 突然、足音が聞こえた。 そしてその音はだんだんと大きくなっていく。 「誰か来る……」 そう判断し、身を隠そうと辺りを見回すが、咄嗟の出来事であった為、 その間にも足音はこちらへと近づいてくる。 (まずい……) 身を隠すには時間が無いと悟ったセシルは剣を抜こうとした。 「!」 曲がり角からやってくるその影には見覚えがあった。 「ベイガン……」 意外な人物の登場にセシルは立ちつくした。
  • 五節 忠誠と野心51
    「見事だな……セシル……」 「ベイガン」 その賛辞は再会時の虚偽な言葉とは違う、真意に満ちていた。 もはや、その口調は途切れ途切れであり、もう長くはない事を無意識に悟らされる。 「思えば……私が忠誠をゴルベーザ様に誓ったのは……貴様を倒したかったのだ。いつも貴様やカインが いるせいで……私は日陰の存在になったのだ!」 「そんな事は!」 「ないと言えるのか! 貴様が!」 その言葉に声がつまった。 「王の寵愛を受けていたのは貴様だ……例え、貴様の地位が実力であったとしても、貴様のせいで。 犠牲になったものはいなくなないんだ!」 「…………」 「王のお前にかけた情熱は並々ならぬものだったたろうな!」 ベイガンの言葉はまだ続く。 「それにカインとて、貴様の陰に隠れた存在だっただろう……」 「何!」 その言葉は今まで、放たれたベイガンのどの言葉よりも衝撃があった。 ...
  • 五節 忠誠と野心50
    そんなやりとりの中、セシルだけはまだ息を抜いてはいなかった。 彼には、まだベイガンが生きているのではないか? その考えが抜けきっていなかったからだ。 「!」 僅かながら、瓦礫の動く音。空耳ではないだろう。 一歩ずつ、その音の方向へと、セシルは近づく。 そこには…… 「ベイガン! やはり……」 「ははは……まだ終わってはいないぞ……」 それが明らかに虚勢に変わりつつあるのが、セシルには分かった。もはや彼には戦う力は微塵も 残ってはいない事も。 「もうよせ! ベイガン」 そんな相手を倒す気もセシルには無かった。 「だが、私はゴルベーザ様に誓いをたてたもの……今更、貴様の考えに屈する気はない。それにこの 姿……否、例えどんな事があろうとも私は、ゴルベーザ様に……」 残った片腕の振りかざし、全力でセシルへと飛びかかる。 その勢いは既に無く、倒す事は容易に等しい。 (...
  • 五節 忠誠と野心6
    「セシル殿……」 ベイガンは意外と冷静な声で呟いた。 「くっ……見つかってしまったのか……」 テラの声が聞こえる。 「いや、彼は……」 激突する事を覚悟し、呪文の詠唱に入ろうとしたテラをセシルが制した。 見知った人物だ。説得してみる。 そう小声でテラに話すと、セシルはベイガンに向かう。 「ベイガン、今は引き下がってくれないか? 君も今のバロンがどうなってるか分かっている はずだ」 言いながらもセシルに不穏な可能性がよぎった。 ベイガンはバロンの軍団の中でもかなりの重要な役所を占める存在である。 王がゴルベーザを重用しているのだ。レッシィの話だと王に対抗する者は次々と何らかの処罰が下され ているとの事。 今の閑散とした城もその為であろう。 しかし、ベイガンが此処にいるという事は彼が王に忠誠を誓ったという事だ。 「君もゴルベーザに……」 カインの様に操られてい...
  • 五節 忠誠と野心3
    「牢屋の方は此処から近いね。上手くいけば簡単にシドを見つけられるかもしれない」 しばらく感傷に浸った後、セシルはすぐに頭を切り換えた。 「どうするのだ……」 テラが訪ねる。 前もって、この城に潜入するという事は決めていた。そして、その目標も。 テラが聞きたいのは今から具体的にどう行動するかなのであろう。 目標の一つであるシドの救出にしても、彼が捕らわれている場所は未だに明らかになっていない。 かといって、城のなかをくまなく探すというのは、あまりに骨が折れるし、リスクが大きすぎる。 当然、セシルもただ潜入すればシドを助ける事ができるとは思っていない。きちんと次の行動を決めていた。 「おそらく、捕虜にされたのならば牢屋に入れられているはずだ。まずは其処を当たるべきだと思う」 テラの質問があらかじめ予測していたかのように的確に答える。 「それにこの場所から牢屋は近い。上手く...
  • 五節 忠誠と野心1
    シドの図案は完璧であった。 的確に罠を張った場所を示したそれを頼りにすれば、地下水脈を超える事も 困難ではなかった。 地下水脈の終着点。小さな部屋に出る。 手にした明かりを頼りに、扉を探す。程なくして見つけ、それを開ける。 城の一角、空は朝の様相から昼に移ろうとしていた。 見る限り、一番懸念していた近衛兵達はいない。 万一なら、迎え撃ち退ける事も可能であるが、できるだけ兵との激突は避けたかった。 目的を果たす前に消耗を押さえておきたかったという理由もあるが、何よりも パロムとポロムの二人の事があったからだ。 視線を後ろから着いてくる二人に向ける。初めて見るであろう、城に驚きつつ眺めている。 この町に最初に訪れた様に騒ぎ立てたりはしてないが。 一夜明け、目を覚ました二人は元の二人の様に元気を取り戻していた。 その様子は、休養を取った事は正解であったと思うと同時に、空...
  • 五節 忠誠と野心9
    「ベイガン、今城にはどのくらいの兵がいる?」 セシル達は技師の詰め所に集まっていた。 詳しい情報をベイガンに聞くためには、あの場所は得策ではないであろう。 落ち着いた場所に一旦、腰を下ろし、其処で話そうと思いセシルはこの場所を思い立った。 何故この場所を選んだのか。 先程の場所から近かったというのもあるが、見知った人物と最後に話したこの場所という理由も あったのだろう。 いつもは技師達で賑わうこの場所もやはり、がらんどうとしていた。 未だ、技師達は残ってはいるのだろうが、意気消沈しているのは想像に容易かった。 この場所を一番賑やかしていた人物が、現在は牢にいるのだ。 当然、この場所もかつての賑わいを保つ事は出来ないのだろう。 「既に以前の軍団達は大幅に規模を縮小され、その中の殆どが行動できない状況です。今現在城の警備を 担当しているのは私共の近衛兵と後は……」 そ...
  • 五節 忠誠と野心7
    「ベ……ベイガン……」 あまりにも突発的なその行為にセシルは先程までの緊張が一気に解け、脱力した。 「大丈夫ですよ……私は正常です」 それがセシルが一人呟いた疑問への回答であったのだろう。 「じゃあ……」 「ええ……何か疑われているようですが、私はあなたの良く知るベイガンですよ。安心してください」 「ふう……」 思わずセシルは胸をなで下ろした。 「すまない、ベイガン。疑ったりして……」 「いや、いいんですよ分かってもらえれば。それにしても、ご無事でしたんですね……本当に 良かったです……よ。本当にね……」 一人、嬉しみに浸るベイガンを見て、セシルは新たな疑問が湧き出る。 (じゃあ……何故こんな所に?) そう、ゴルベーザに操られもしていないし、自分を捕らえもしないという事は王に協力的ではないという事 だが、そうなればベイガンとて無事ではないはずだ。 「私と...
  • 五節 忠誠と野心8
    力強く言い放ったベイガンは更に続けた。 「王への忠誠は決して曲げないつもりでいました……ですが! 今のこの国を見て私はこうも思ったんです。 今のバロンは何処かがおかしいっ! このままでは良くないと! だから今まで王へ何とか従っていましたが もう限界です!」 セシルは今までこのベイガンの事を過小評価していたと思った。 以前のベイガンはどちらかというと部下には無駄に厳しく、王への態度はやけに謙虚であったのだ。 人によって態度を変えるというやつだろうか。 正直ベイガンのその態度をセシルはあまり快く思わず、王がおかしくなり始めた以降も態度を変えぬ時には、 嫌悪すら覚えるようになった。 だが、今の彼からは今までとは何処か違うものを感じられた。 何かを成す為に行動している。そう映った。 「それでまずは牢に捕まっている人々を助けようとした所、少し気配を感じまして……そしたらセシル殿...
  • 五節 忠誠と野心2
    「おいっ! セシル」 黙りを決め込み考え込んでいるセシルにテラが話しかける。 「此処は何処なのだ?」 先程と同じ趣旨の内容の疑問をセシルに問いかける。 「あっ……ええっと!」 その声に反応し慌てて視線を巡らす。だが、そんな必要も無かったであろう。 ぱっと一目見るだけで城の何処にいるのか分かった。 そこまでセシルはこの城に精通していたのだ。自分でも驚くくらいに。 「城の西側辺りだね……」 丁度、出国前日、部下達が追いかけてきてくれた所だ。 そう思うと、自然と彼らの顔が脳裏に蘇ってくる。 自分を慕い、国の為に自分を磨いた者達。皆、自分の大切な部下達だ。 別れ際にも、全員が敬意を持って送り出してくれた。 今は何処にいるのだろうか? 無事であればいいのだが……
  • 五節 忠誠と野心4
    「本気かセシル?」 テラが訪ねる。 当然、彼とて王との激突は避けられないと踏んでいたのだが。 だが折角穏便にシド救出が進みそうなのだ。無理して、王の元へ行かず、一旦引き返すのが 得策だ。そう言いたいのかもしれない。 「でも僕は確かめたいんだ……何故陛下がこんな事をするのかを」 国を追われ、再び戻ってくるまでずっと疑問に思っていた事。 此処で問わねば二度と分からぬのではないか。そしてこの国の為に、今の状態を終わらせなければ ならない。 「分かりました」 答えは意外な所から返ってきた。 「ヤン……」 「私も国に仕える者……国を離れた今でもファブールの民であるという誇りは捨てていない。例え、自らの肉体を 他人に操られ、利用されようとも……」 その声は無意識にか力がこもっている。 「ファブールの民はクリスタルを奪われ、多くの者が犠牲となった。そのせいで数多くの者が心を...
  • 五節 忠誠と野心15
    「さっきの話って、それより……」 そう言って、パロムは目前の女性を怪しげに見る。 「あんた誰だ?」 ここが今は訳ありの場所だというのは、二人も気づいている。 そんな中に、登場の人物だ。誰もが疑ってかかるだろう。 「あっ……私は! この城の者です。ですけど……あの、いわゆる あなた達の思っている悪い人ではないんです!」 当然、彼女も怪しまれないと思って此方に話しかけてきた訳ではない。 あらかじめ、用意していた言葉でなんとか自分の立場を明らかにし、自らへの疑惑を 取り除こうとする。 「悪い人って……何ですの?」 「あ……えと……」 口ごもる。あんな会話をしていたのだから当然、この二人も此処の異変に気づいていたのでは?
  • 五節 忠誠と野心23
    「この牢獄に入れられた時、私たちは、バロンの者に大きな憎しみを抱いたのです……おそらくは 残された民も同じ心境でしたでしょう……」 その推論は正解であった。この魔導士の知るところではないが、セシルが再来した時に住民は大きく迫害 する事となった。 「そして、バロンの者達が私たちと一緒に投獄された時、私たちは酷く嫌悪しました。傷つけられたもの も中にはいました。その者が獄中で苦しみ、中には異を唱え、そのまま処刑されてしまう者もいました。 そんな者達を見ていく内に私たちは、彼とて苦しんでいると……そう思ったのです。だから、者達を治癒し ていきました。彼らとて、同じ人でした……」 一旦言葉を切る。そして、隣の黒魔導士が続ける。 「思えば、俺たちは最初、相手と話す事すらしなかった。ただ、憎しみが増大するだけ……ですが、 それではいけなかったのです、例えどんな相手であろうと必ず、何...
  • 五節 忠誠と野心20
    倒れ込んだ看守を通路の脇に寝かせた後、しばらく進むと、鉄格子が見えてきた。 「あれか……」 そう言って、懐から先程、看守から奪った、牢の鍵を取り出す。 「誰だ!」 急に声がする。 捕まった者達も此方にってくる影を察したのだろう。 「俺たちに何をするつもりだ!」 えらく、攻撃的な色を秘めている。長時間、閉塞とした場所に閉じこめられていたのだ。 自然と心は荒んでいったのだろう。むしろ、この者のように、まだ誰かと会話できる程の精力が 残っている者はまれに思える。 「私たちはあなた方を助けに来たのだ」 「何だと……」 ヤンの声に反応し、とらわれの者の一人から声が上がる。 「本当か……?」 「嘘ではないのか?」 「信じられん」 それに続くかのように明らかに疑いかかっている声がつぎつぎとあがる。 「でも……此処にいてもずっとこのままだわ。少なくとも今よりはましになるは...
  • 五節 忠誠と野心16
    「その素振りだと……」 しばらく間をおいて、パロム――彼女はまだ判別をつけていないが、言った。 「どうやらあいつはとは違うみたいだな……」 試されたのか。あいつはとはベイガンの事であろうから、自分が何ものなのかを。 「信じてもらえた……のよね。ならっ!」 子供にからかわれたのにちょと悔しさを感じ、やや強気な口調で言った。 「大した事ありませんわ……あの人が魔物だって思っただけですわ……むしろ……」 まじまじと見つめてくる。 「何故あなたはそんな事を知ってるのですか?」 「見る限り、あいつとは違う……普通の人間だ。なら、何故あおのベイガンって奴が 魔物だって思ったんだ?」 少なくとも、何かを勘づいている事は間違いなかっら。それなら何故そう思ったか? 疑問に思うのも無理はないだろう。 彼女とて、偶然――半心半擬ながらも予感はあったが、でなければ、城にそんな事が 起こ...
  • 五節 忠誠と野心12
    「やはり、お主も感じておったか……」 セシルをベイガンを見送った後、テラが言った。 「私の思い違いという事ではないという事だったのか?」 それだけでヤンにはこの賢者が自分と同じ認識を同じ人物に抱いていた事を理解する。 そして、疑問は確信へと変わる。 「あのベイガンという者ですか……」 「そうだ」 あの立ち振る舞い、何か打算的なもので行動しているような素振り。 怪しいのは自分だけかと思っていたが、テラも同感だったようだ。 「では……どうしますか?」 例え、あの男が何かを隠している事が事実でも、その事を本人が簡単に露呈するとは思えない。 「早急に捕まっとる者を救出し、セシルに追いつくべきだろうな……」 少なくとも、自分たちがいればセシルに及ぶ危険は、減るだろう。そして今はそれしか策を 思いつかなかった。 「やはりそうするしか……」 「早く行くぞっ!」 促す口調は...
  • 五節 忠誠と野心26
    しばらく聞いた事の無かった鉄格子の開く音。 「誰じゃ……」 もうこの場所に閉じこめられ、いくらの時間が過ぎただろうか。 外部との接触を完全に隔離され、小窓一つついていないこの場所からは 今が昼なのか、夜なのかも分からない。 ましてや日付の感覚などはとうの昔に消えている。 この場所――監獄の中でもひときわ重罪な罪を犯したものだけがいれられ る特殊な牢。 最初はシド自身王に乱暴な進言をした時にはここまでの重罪とはみなされ てはいなかった。 処刑される者も多かった中、彼に下された王の罰は軽いといってもいいくらいで あった。 だが、そんな状況で彼は一つ、王を激怒させる事態をおこした。 まずは脱走。通常の格子ではこの怪力な技師を囲んでおくにはあまりにも もろかったのだ。 そしてその力さえあれば、兵の目をかいくぐって城から抜け出すのも 容易であっただろう。
  • 五節 忠誠と野心17
    「その……魔物になっているのを直接この目で見ましたから……」 嘘はつけないだろう。それにつく理由が全くない。彼女にとってこの二人は長らくの 不安を打ち消すために現れた救世主のようにすら見えたからだ。 「よし、そうと分かったなら急ごうか!」 「ええ、早くしませんとセシルさんが……」 「え! ちょっと!?」 またもや、新たな疑問がわく。 「セシルさんって……今此処に来ているんですか?」 「え……あんちゃんの事しってのか!」 その事にパロムは驚いたようであった。 「それならば私も連れて行ってもらえますか……」 合ってどうするのだ? 彼は自分の事など知らない。そういう間柄のはずなのに…… 「どうする?」 「訳ありのようですわね……一緒にいきましょう」 そして答えが了承であった。 「はい!」 だが、今此処にセシルがいるなら猛烈に合いたい。そう思った。それだけであった。
  • 五節 忠誠と野心39
    「セ……シル……殿!」 揺さぶられ、声をかけられる。 そして、やっと自分が今どこにいるのか、何をしているのかはっきりと認知できる程に、意識が 鮮明とする。 「ベイガン……」 今にも消え入りそうな声で一声の返答。 見渡せば、あちこちに穿たれた、床や壁の破片、魔物の亡骸に、流れる血。 激戦を物語るような物証が目に入ってくる。 「助けられたのか……?」 普段の自分ならこんな失態は起こさないのに。単純な自責の念。そして、命の恩人に 対する感謝。 「ええ……此処で死なれたら私が困りますからね。私が拘りたいのは、あくまで私の手による目的の 達成。その為にはいかなる邪魔が入ることも許さない……」 剣を鞘から抜き出す。 「だが、過程はどうでもいいのですよ……大切なのはそれをやり遂げる事。本来ならもっと手の込んだ やり方もあるとは思いましたがね……」 最前までの感謝がだんだん...
  • 五節 忠誠と野心43
    ベイガン自身の腕先。先程セシルが切り落とした為、切り取られた断面が残っているだけだ。 そこから、何かが盛り上がっていく。それと同時に伺った、ベイガンの顔には追いつめられたという危機感も 無く、余裕の表情すら感じさせる。 盛り上がった腕先は更なる大きさを増し、赤色であったものに薄紫色が被さるようにその面積を増していく。 最後に、先端が裂け、牙を除かせる。そうすると見覚えのあるものになっている。 「再生したのか……」 見間違いでは無く、確かに切り落としたはずの腕が綺麗さっぱりと、元通りになっている。 「驚いたか……」 ベイガンが、焦燥しているセシルを笑う。両腕の表情も、表現できる限りに嘲弄し、けたましい笑い声を 上げている。 「そういう事だ。まずはこの腕を無くそう。悪い作戦ではなかったと思うぞ……しかし、相手が悪かったな」 言い終わらぬ内に、その腕を振るう。怒濤の勢いで右...
  • 五節 忠誠と野心30
    「あなたの噂はセシル殿より伺っております」 今まで口を閉じていたヤン言う。 「セシルだと! ということは!」 「ええ……此処に来ています……」 「何処だ!」 慌ただしく、ヤンの後ろへ目を這わすシド。 「今は城の別の所にいます……」 「本当なのだろうな!」 「はい……証明することはできませんが……」 シドは目前の男をまじまじと観察した。その後。頭の中で少し考えこう言った。 「分かったよ。お前さん達を信じるよ。なかなか礼儀はわきまえとるようだからな」 それだけで断定するには早計かもしれないが、シドにはこの二人が自分を悪いように扱うようには 思えなかった。 セシルが当てにする理由も何となくだが、分かった。 「それと儂以外にも、牢に捕まっとるものが沢山いる。そいつらも助けてやってくれんか?」 「はい……そちらの方は既に終わっています」 「ほう……なかなかの手際の良さ...
  • 五節 忠誠と野心21
    「ええい……簡単に信じてはもらえんとはな!」 テラが少し、苛立ち混じりに声を発する。 「その声は。テラ様!」 急にそんな声が上がった。 「本当です……何で!」 続く声も同じく、広く造られた牢屋内部の、後方から聞こえた。 だが、その声は、反対派の勢いを押し返す力があった。 「皆さん……その方達は信頼に値する人物だと私は思います!」 中でも一際際だった声。凛とし、透き通る声がテラ達の潔白を証明しようと立ち上がり言った。 すぐさま、沈黙はざわめきに変わった。 「導師さんがいうのなら……私は信じるぞ」 一人の老人が声を上げた。それが決め手になった。 先程躊躇っていた者は勿論、信頼しなかったものまでが、老人の――魔導士の意見に同調し始めた。 まだ、意を唱えようとする者も残ってはいたようであるが、既に少数派である。 勢いを失ったその者達は黙り込んでしまった。
  • 五節 忠誠と野心44
    「今助けるぜ!」 だんだんと体力を奪われていく最中、後方で声が上がった。 威勢良く答えたのは、当然ながらパロムだ。見てはいられなかったのだろう。 後ろを向ける状況ではないので詳しく確認をとる事はできぬが、どうやら魔法の詠唱に入ったようだ。 すまない…… そう心で感謝しつつ、セシルは一つの疑問に駆られた。 ベイガンは気づいていないのか? あれだけ助けると代々的に宣言したのに、それを聞いていなかったのだろうか? パロムも反撃覚悟での攻撃のはずであろうし。 此方の攻撃に専念するあまりに自我を失いかけているのか。 そんなに都合良くは、第一周到なベイガンに限り…… 散在した思考を打ち砕くかのように、魔法の完成を告げたかのような轟音が鳴る。 完成を見た、ファイアの魔法はその火球状になり指定したもの目がけて飛ぶ。 やはり避けない。 何故か、すぐそこまで迫っているのに。その魔法...
  • 五節 忠誠と野心13
    そんな牢に向かう、二人を追いかけるように着いていたパロムが道中、突如立ち止まる。 「どう思う?」 前方、少しだけ先を歩くポロムを呼び止める。 「どうっていわれましても……」 「やっぱりなあ……」 「明らかに……」 ミシディアの子供達は先に出発した二人が抱いた者と同じ違和感を感じ取っていた。 そして彼以上に的確且つ、具体的にそれを理解していた。 「どうする?」 「後を追いたいところですけれど……」 「何か問題があるのか?」 「私たちが思っている事は、おそらくそう見て間違いないと思いますわ。 でも万一それが本当だとしたら?」 「なら?」 「私たちに対処できるかしら? ヤン様、テラ様と合流し皆が揃ったなら確実だと思いますが……」 「そうかあ……」 それも一理あると頷きつつも、何処か腑に落ちない素振りを見せる。
  • 五節 忠誠と野心37
    漠然としていたもの。忘れようとして忘れた。今はそう断言できた。 なのに今になって何故? 夢で見た場所。 其処が近いのだろう。そうとしか考えられない。 確かに、鮮明になりつつあるそれ――迫る白壁はバロン城のそれと似ていた。 だからと言って、そう結論づけるのは早計なのでは。 だが、急に明確になりつある理由はどう説明する。
  • 五節 忠誠と野心47
    「テラ、ヤン」 「気づいていたか」 そう言って、物陰からテラとヤンが姿を現した。 「いいや、今気づいたんだ。でも、もう少しだけ早く出てきてくれると嬉しかったかな……」 「本来ならばすぐさま助太刀にまいりたかったのですが……」 「いいんだよ、それより……この魔法は?」 謝るヤンにそう言うと、テラの方に向き直る。 「ああ……プロテスの魔法だ」 プロテス。対象者の身に付けた防具に特殊な加工を一時的に施し、相手の攻撃に対抗する魔法。 防具を強化するという性質上、戦前で重装備する者程、効果が増す訳である。 まさしくセシルにうってつけの魔法である。 「お前が攻撃を受ける直前にだな……遠距離だった上に、急な出来事であったから間一髪であったが」 自らの腕がまだ衰えてはいない事が嬉しかったのか、少しばかり、自賛に満ちた声であった。 「またもや数が増えたか……」 話し込む三人の後方...
  • 五節 忠誠と野心19
    「誰だ!」 急に聞こえた足音に看守の男は久方振りかと言った感じで叫んだ。 現に、この場所は当分の間、誰一人として、近づいていない。 彼もしばらくの間は他の人間と会った事も話した事もなかった。 獄中の人間とも最低限の会話しか交わさない。いや、話せなかった。 彼らは、既に生気を失い、虚ろになっていたものが殆どであったからだ。 「ほう……お前さんは魔物ではないのか……ならば」 やがて現れた二つの影……その片方、小柄な男が言う。 「悪い事はいわん……今すぐそこを通してくれんかのお……」 「何をするつもりだ……」 「そこに捕らわれたものを解放するのです……」 もう一人、大柄な男の方が今度は言う。 「何を言っている……捕虜を逃がしたなんて言ったら……私の身に何があるのやら…… 彼が恐れるのも無理はない。少し前に脱獄した者がいた。そして、その時の看守はその失態を 王に問われる...
  • 五節 忠誠と野心35
    「こうしてはおれん! 一刻も速くセシルに追いつかねばなら……ん――」 そこまで言って、辺りを見回す。 「そう言えば、あの二人を見てはおらぬか?」 あの二人というのは勿論、パロムとポロムの事であろう。 言われてからヤンも気づいた。てっきり付いてきてるものかと思ったのだが。 「此処に来る前には見たような気がしたのですが……」 「では、お前はあの爺と一緒に先にセシルの元へ急いでくれ。私は……」 子供達を探さねば。そう言おうとした時―― 「待て、それなら私が探そう」 シドが口を挟む。 「しかし……」 「なあに! どうせ他にもやることがあったのだ! お前さん達は早く、あいつを助けに行ってやれ」 威勢良い言葉には初対面である二人の信頼を勝ち取るには充分過ぎたのか。 「よし……なら頼んだぞ!」 あっさりとその場を任せると二人は急いで駆け出した。
  • 五節 忠誠と野心46
    「さて、お喋りはここまでだ!」 一時的に止まった戦いを、始める合図。見計らったかのような、ベイガンの怒声が辺りをうった。 「まずは……その二人から始末させてもらおうかな……」 怒声の次の声は、冷徹であった。 対象を変更した、両腕はパロムとポロムへと迫ろうとする。 「やめろ!」 叫び、その間にセシルは割って入る。 「がっ……」 どちらともつかぬベイガンの腕が、大蛇状のそれの牙がセシルの脇腹へと食い込む。 鋭いその牙は鎧をも食いちぎろうとする。 「なんと……庇うのか。ならば良い。お前から……」 そう言って、更にもう片方の腕をもセシルへと向かわす。 途端、セシルに痛みが、今以上の痛みが襲おうとしていた。 「う……ん」 セシルは拍子抜けする羽目となった。 予期した痛みがこない。確かに、新たに向けられた、牙の攻撃の感触はある。 だが、その痛みが大して堪えない。 「こ...
  • 五節 忠誠と野心49
    試しに、ポロムが突如消えた、緑状の障壁の所存を確かめようとすると、振動音だけを残して、腕が空を切った。 実際には、この手は、障壁を突き抜け、その前方にまで伸びているのだ。 「何を……?」 パロムもポロムと同じく疑問を口にする。 二人が疑問に思ったのは、リフレクを使って何をするのかだ。 「まあ、見ておけ……」 返答もそこそこに魔法の詠唱に入るテラ。 その様子に二人も実際に、何が起こるかまで黙っておくことにした。 「ポロム、少しパロムと距離をとっておけ、危ないぞ」 というような指示に、素直に従った。 もはや疑問を尋ねる事すら忘れ、これから起こる出来事に二人は集中しきっている。 「では……いくぞ!」 そう言って、魔法が放たれる。 それも時間のかかる高位クラスのもの。急遽、巻き起こった巨大な火球から、察するに、 炎魔法の最上級のファイガの魔法であろうか。 完成をみたフ...
  • 五節 忠誠と野心36
    最初に異変に気づいたのは、ヤンだった。かすかな地響き。 その音と振動は徐々に大きくなっていく。不安に駆られる一同。 「見ろ、壁が、壁が迫ってくる!」 シドが叫んだ。地響きの正体、それは迫りくる壁の仕掛けの作動音だったのだ。 「いかん、退け、退くのじゃ!」 一同は通路を引き返した。迫りくる壁のせいで、道幅はどんどん狭くなっていき、 通路の入り口に到着した時には、大人の肩幅程にまでなっていた。 「開かない。まずいぞ!」 入り口の扉をこじ開けようとしたヤンが、切迫した調子で言った。 セシルもシドもヤンに加勢したかったのだが、道幅がそれを許さない。 セシルの脳裏に「万事休す」という言葉が浮かびあがって来た。 その時、セシルは自分の足元を小さな影がすり抜けていくのを感じた。 パロムとポロムだ。二人は互いに背中合わせになって、壁を押す構えをとった。 ...
  • 五節 忠誠と野心33
    「すまなかった! と言う資格は私にはあるのだろうか……」 シドは問う。 「もう……その話はいい。あの一撃で充分だ……私とて自分への責任がある。いつまでもこうではいかん」 それっきりテラは黙り込んでしまった。 「あいつに言うとおりなのかもしれんな……」 最後に一言そう言って…… 「では……行きましょうか……今の状態なら上手く城を脱出できるはずです」 この緊迫した状況をい一変させるようにヤンは言う。 「待ってくれ、セシルは何処にいるのだ?」 歩き出そうとした時、シドが言う。 「あいつとはしばらく会ってはいないし。顔を見てみたいのだがな……」 多少の無理強いだと分かっても敢えてシドは提案する。 「王に会いに行きました。我々は先に脱出してくれえと言って」 「大丈夫なのか? この城の中は私も良くは知らないが、既に多くの魔物達が徘徊しているのだが……」 シドもその件は知って...
  • 五節 忠誠と野心45
    直後の光景をセシルはすぐさまは信じられなかった。 確かに、魔法は完全なもので、ベイガンへと向かっていた。 もちこの場に人がいたのなら全員がセシルと同じ考えを示すだろう。 しかし、魔法の対象者であったベイガンはおかしく笑っている。 その姿には、傷一つついていない。 「な……」 「何故だと聞きたいのだろう。だが、お連れの二人は知っているようだぜ!」 疑問を先読みし、促すように視線を這わすベイガン。釣られるかのようにセシルも同じ方向を向く。 そこには魔法の直撃を受けたパロム。 それを気遣うかのように側にいるポロム。 咄嗟の出来事にはやや戸惑い気味であった。ややで済んだのは、二人がこの原因を理解していたからである。 「教えてくれるか……」 何故……確かにベイガン目がけて放たれた魔法が唱えた本人であるパロムに……跳ね返ってでも こない限りあり得ないのでは。 「白魔法リフレ...
  • 五節 忠誠と野心29
    「誰だ……」 もう一度シドは呟く。 「お前さんがシドか……飛空挺をつくったという」 牢を開けてきたのは老人と明かりを一つ手に持った、屈強な体躯の男であった。 「何故、私の名を知っている。それに……」 城の兵士と思うには無理のある人選であった。さらにここは牢の中でも最も厳重に警備がいきわたっている。 「私たちはお前を助けにきたのだ」 「何!」 それはありがたい事だ。シドはいい加減この窮屈な場所から脱出したいと思っていた。 しかし、前の牢と違ってここは身動きを取るのがやっとであり、脱走を試みる事などは到底不可能であった。 「だが、お前さん達はだれなのだ?」 シドはこの二人を知らなかった。それなのにこの二人は自分を知っている、少なくとも、自分の肩書きくらいは どのようなものか分かっているようである。
  • 五節 忠誠と野心31
    「はは……良いのだ! だが、気が向いたらいつでも声をかけてくれ。それにしてもお前さんはファブールの ものだったのか」 その国の名は大空を駆ける翼の創始者であるシドが知らぬはずはなかった。 シドの頭には常に世界中の地理が咄嗟に引き出せるほどの知識があるのだ。 「そう言えばまだ名前を言っていませんでしたね。私はヤンファンライデン。ヤンと呼んでもらって結構です」 「そうか。よろしくな」 差し出された手をがっしりと掴むシド。 元来シドはこのようなタイプ。セシルに似ているような人間は非常に好みであった。 「そちらの老人も紹介しておきましょうか……」 程よい握手を交わした後、ヤンがテラの方へ向く。 「こちらは……」 直後、シドが数瞬の間だけ宙を舞う。そして、近くの壁にたたきつけられた。 何が起こったのかは最初分からなかった。 だが、テラの方を見ると、その答えがあった。 「テ...
  • 五節 忠誠と野心25
    「では!」 そこから先に発せられる言葉に、嫌な予感を感じ取ってか、声色には自然と力が入る。 「いえ……処分はされていないんですよ」 自分よりも一回りは大きいであろうヤンに迫られ、青年は少しおどけつつ、彼の抱く懸念を否定した。 「この先、少し行った先に……閉じこめられています」 「そうか、では……」 歩き始めようとしたヤンに、未だに立ちつくしているテラが、目に入った。 「行きましょう……」 その様子にそれ以上の促しは困難であった。 「ああ……」 そう言って、僅かに後ろにいる魔導士達を見ると、静かに歩き出した。 「あの!」 その一人が呼び止める。 「いくら、変わろうともテラ様はテラ様です……私達はあなたにどんな事情があろうと、 あなたを信じます。それが、自分達が間違えていても……」 「…………」 テラは無言であった。 それは彼らにしてみれば精一杯の励ましではあ...
  • 五節 忠誠と野心41
    「覚えていてくれたんですね……」 辿々しい、足取りで彼女はセシルに近づく。 「それに戻ってきてくれたんですね……ずうずうしいかもしれませんが私はあなたは絶対に返ってくると…… 絶対にこの国を変えてくれると思っていました」 「君こそ……早く、離れるんだ」 その指示に彼女は黙って従った。 「さて、どういう事だ? ベイガン」 その姿を見送った後、セシルはまたもや厳しい口調で問いつめる。 「全て、その二人の思った通りだ。私は人間ではない……」 「君もゴルベーザに……」 「ゴルベーザと……我が主をそのような呼び方で呼ぶのは、あの方は私に素晴らしい力を与えてくださったのですよ。 こんなにもね!」 手が、ベイガンの両腕がゆっくりと異形の形へと変化していく。その手には目と口がある。 そして……ベイガン自身もその顔を魔物のものへと変えていく。 「では……ここからが本番だぁ!」 ...
  • 五節 忠誠と野心10
    「はい、この西側こそ閑散としていますが、城の中央部分は既に幾ばくかの魔物が見張っています。 それも王の間付近は特に警備が厚く、王への面会する事はほぼ不可能となっています。かくいう私も 王と直接あったのはかなり前の出来事で……」 「そうか……」 思ったよりも警備が固い。そう思い、次の言葉を出す。 「ベイガン……」 「何でしょう?」 「案内してもらえるか? 君が一緒なら心強い」 いくら前々からベイガンの事を苦手に思っていても、彼の剣の実力は黙認できるものではなかった。 「はっ! 誠に嬉しい誘いですが……技師殿を救出しなければいけません……」 「そちらはヤン達に任せる」 それはベイガンに再会する前から決めていた事だ。 本来なら、王の元へは自分、一人で行くつもりであった。 だが、城の現状を聞く限り、誰かの助けを借りる必要があるだろう。 ヤンの助けも借りたいところだが、魔...
  • 五節 忠誠と野心22
    「すいません。テラ様……」 牢内部の人並みを掻き分けて、魔導士達がテラのところまでやってきた。 「いや、いいのだ……それよりも」 「はい……我々はミシディアの民。クリスタルの奪還の際にこの国まで連れてこられて……」 何故か。それはおそらく彼ら自身がまだ、処分されていないと言うことから、セシルが予想したとおり、 ミシディアの魔力を、バロンのものにしようとしての事だろう。 「まさか、再び会えるとは思ってませんでした……我々は誰もあなたの事を恨んではいなかったのに……」 「その話か……」 ミシディアでの魔法事故。 原因にテラが関与した事であり、ミシディアから彼が去ることになった切っ掛け。 「すいません。嫌でしたか?」 「まあな……」 「そうでしたか。ですがこれだけは言わせてください……あなたに教えられた事、それがあったからこそ 私たちは此処で大切な事を知ることがで...
  • 五節 忠誠と野心34
    「ベイガンがいるから大丈夫だと……」 自分で言った言葉に自分で驚く事となった。 やはり自分の不安は的中したのだと。もっと強引に引き留めておくべきだったのだ。 「そのベイガンという男だ。儂を此処に閉じこめるように王に提案したのは……軽く承諾した 王も王であるが、奴はバロンの兵士達の中でも、最近の王の考えに同調していたものだ」 「では……」 テラも気づいたのか、声を潜める。 「それも恐怖心から来るものでは無い。本心から今の体制に賛同しているその姿はまるで何かに 心酔しているかのようなのだ……そんな男が王の元に易々案内するとは考えられない。それに……」 「セシル殿は一度、国を追われている。そんな人物なら尚更、ベイガンの行動に違和感が出てくると 言うわけですか……」 最後はヤンが引き継いで言う。そして更に続ける。 「しかも、セシル殿は完全にその男を信頼しきっていました……あ...
  • 五節 忠誠と野心27
    しかし、彼が脱走した理由。 娘同然に愛してきたものの消沈を打ち消し、愛する者への希望を持たせた事。 そしてその者の城からの脱出を助力した事。 ローザを逃がした後、少しでもローザの安全な時間を確保する為に、 城の兵士相手に奮闘したシドであったが、やはり数の多さに再び捕まって しまった。 通常は間違いなく処刑される待遇であったが、シドの目論見は当たっていた。 飛空挺の技術は彼が発見し発展させてきたのだ。沢山の弟子を育ててきたが、 まだまだ彼自身しか知らない知識は数知れない。 ここで自分の損失は飛空挺の発展を遅らす、いや廃れさせてしまうと言っても いい。
  • 五節 忠誠と野心38
    王――良く知り、一番知らないその人物がすわっているであろう玉座の間には近づくに連れ、 魔物の警備が強くなっていった。 そしてセシルの目的地が魔物達の守るべき場所であり、其処に向かうには激突は必須である。 ベイガンの手並みは想像以上であった。 もしかすると自分と同じ、否それ以上かもしれない。 そう思わせるほど完全な太刀筋であった。 勿論セシルとて、負けてはいなかった。続く攻防に的確に対処した二人にとって戦局は極めて 有利に働いていた…… 少し前まで、王の間へと続く、扉が魔物達の影から除いた時までは。 その扉が見てた瞬間、急遽セシルの頭にはあるものが思い出された。 今朝方、見た夢。 内容は自分でも驚くほどすぐに記憶から消え去り、さらには、此処に来て、ベイガンとの再会した 事もあり、夢を見たという事実すら失念してたのであった。 しかし、思い出すどころか、その内容までもが...
  • 五節 忠誠と野心18
    地下牢は散在して壁に、備え置かれた松明の光が通路を照らしている。 それはまるで、誰かを迎え入れているようであった。 そして、看守として宛われた見張りの兵士は今では珍しくなってしまった人間の兵であった。 本来ならばこのような場所はもっと厳重にしておくに越した事はないのだが、バロン王は 反抗勢力を大多数を処分してしまっていた。 今現在、この場所に閉じこめられているのは比較的、王の逆鱗をかわなかったもの、 又は殺してしまうには惜しいと思われた者だけである。 最も、そんな者は少数派ではあった為、牢獄が満員になる事は無かった。 彼らにとって下手な脱獄は折角、処刑を免れた命を下手に捨ててしまうようなものだ。 脱獄を試みた者はいない。唯一人を除いては……
  • 五節 忠誠と野心28
    その為、彼自身の処刑は行われなかった。 しかし、脱獄者を放って事は当然されなかった。 そこで……用意されたのがこの特殊監獄であった。 通常の監獄は一つの牢を沢山の人間を閉じこめるのに使われる。しかし、この特殊牢はただ一人の人間を 閉じこめておくのに使用される。 部屋は普通の牢よりも格段に狭く、身動きをとるのがやっとといった感じであった。 造りも粗末なものであった。 「再びこの牢を使うとはな……やはり王は変わってしまった」 この牢の存在は昔から知っていた。しかし、今の王はこの牢獄を嫌い、使用する事はなかった。 おそらくは元代の王の時代、初めて使用されたのだろう。 そして、このような場所に閉じこめられていてはさすがのシドも日に日に衰弱を感じるようになっていた。
  • 五節 忠誠と野心42
    戦いは長丁場になった。 セシルとベイガンの実力のほどは、殆ど一緒と言って良かった。 例え、魔物の姿に変わろうとも、セシルを圧倒する事は出来ないからだ。 だが、戦局はベイガンに傾きつつあった。 ベイガンはその手、怪物と化したその腕の左腕を広範囲に渡り、 展開させた。 下手に動けば、その腕に体を取られる事となる。しかし、回避だけでも体力を消耗する事となってしまう。 「どうした! セシル」 ベイガンは挑発しつつ、右腕を攻撃へと当てる。 セシルは特に何の返答もせず、黙ってベイガンを見据える。反撃のスキを伺っているのだ。 大きく旋回させてくる左腕を交わしさえすれば、一気に攻勢へと打って出られる。 ジリジリと続いた睨み合いの中、そう判断した。 「怖じ気づいたのか!」 一向に無反応なセシルにしびれを切らしたのか、やや荒削りり両腕を使い攻撃してくる。 今だ! それを待っていた...
  • 五節 忠誠と野心48
    「テラ様……」 ポロムが心配そうに話してくる。 「何……心配するな。それよりも良く見ておけ。魔法にはあらゆる使い方がある……」 「ですが……」 まだ心配なのか、更に何かを言おうとしたポロムを一つの手が遮った。 「パロム! 怪我は……」 「ああ、大丈夫さ。それより、爺ちゃんには何か……あの魔法の弱点を知っているみたいだぜ……見せてもらおうじゃん」 ポロムは安静にしておけといった忠告をしたかったのだろうが、そんな事はこの弟を縛り付けるには全く持って 効果を示さない。 「楽しみだぜえ……そう思わねえか?」 目を輝かせ、此方を見るパロムに感化された訳ではないが、ポロムも確かにこの状況。魔術師を無力化してしまった 状況でどうやってテラが何をするかが気になっていた。 「そうね」 控えめにポロムは頷いた。 「パロム。少し手伝えるか?」 そう言ってテラが振り返る。 ...
  • 五節 忠誠と野心24
    「今の私には、そんな立派な格言をお前達に言うことすらできんよ……」 魔導士達を感銘させた教え。かつてはそんな事を言ったのか……既に.そんな事実はとうに失念してしまった。 そして、過去の自らの発言に驚かされることになろうとは思いもよらなかった。 それなのに……彼らだけには都合のいい事を教え込んでしまった。それに対して大層な自責を感じた。 何気ない一言が相手にどんなに多大な影響を与えるか。そして自分の発言に責任を持ち、最後までその 姿勢を貫く。困難な事だ。 そして今の自分は…… 「だが! どうしても私には!!」 何の為だ! 娘の! アンナの為に此処まで……あの力! メテオもその為に! その力を得るために自分は全てを手に入れた! 「テラ様……」 急な大声に魔導士達は揃ってたじろいだ。 「ああ……すまんな……」 「いえ……」 「あの、聞きたい事があるのだが?」 唯なら...
  • 五節 忠誠と野心11
    「じゃあ頼むよヤン」 ベイガンが駆けだし、それを追おうとする直前、セシルは言った。 「承知しています。セシル殿もお気をつけてください……」 「僕は大丈夫だ。王に会うまで決して倒れはしない。それに、ベイガンがついていてくれるから」 その事は一見してヤンよりもベイガンを評価しているとさえ感じられた。 無論、自分を信頼してないのなら、自分に牢まで行かせないだろうし、頼むよ等とは言わないだろう。 それは理解しているつもりだ。 「セシル殿……私はどうもあの男が信用できないのです……それどころかあの男、何か重大な事を企んで さえいつように思えるのです」 だが、自然と――不穏当に感じつつもヤンは敢えて口にした。 そして、セシルはそれに特に怒った様子もなく言う。 「確かに初対面では付き合いづらい相手だと思うよ。でも彼も今のバロンを変えようとしている その為に戦っていると信じているか...
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