かなり真面目にFFをノベライズしてみる@ まとめウィキ内検索 / 「四節 Eternal Melody2」で検索した結果

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  • FF4 五章
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  • 四節 Eternal Melody2
    鍛え抜かれたモンク僧の感覚が、音もなく忍び寄る敵の気配を捉える。 「くっ!」 身をひねりざま腕を上げ、ヤンは喉元をかばった。そこへ巨大な影が躍りかかり、赤い血が散る。 無意識のうちに、セシルの手が腰に伸びる。しかし、抜き放とうとした刃はそこにない。 背後から飛び掛った獣は、そのままセシルたちの前方に着地し、豹に似た全身をあらわした。小柄な馬ほどのもある身を低くかがめ、唸り声を上げている。 トパーズ色の地に斑点をちりばめた毛皮には、ヤンの爪による三本の掻き傷があった。あの一瞬で、急所をかばうと同時に反撃までしていたのだ。 「ワシにまかせい!」 出遅れたセシルに代わり、シドが木槌を振り上げた。もとは純粋な工具だが、その強度や重量を熟知したシドの手にかかれば、心強い武器にもなる。 雄叫びをあげてケット・シーに突進する技師を横目に、セシルはケアルの詠唱を開始した。 ...
  • 四節 Eternal Melody20
    呆然と、ギルバートは切れた琴糸を手に取った。 ガラクタも同然の姿に成り果てていた”夢の竪琴”。 磨きなおされ、まっさらに生まれ変わったように見えた彼の楽器には、見えない罠が潜んでいた。 波と潮風でひどく傷みながらも、辛うじて切れずにいた、数本の弦。 名も知らぬ修復者は、多分、できるだけ以前の面影を留めるよう気を使ってくれたのだろう。 旋律を追うことだけに気を取られ、物言わぬ相棒への配慮を忘れた報いが、最も重要な場面で現れたのだ。 『クリスタルを!』 ヒソヒ草の向こうで、ヤンが叫んでいる。 ギルバートは手早く切れ端を本体から外し、視線を巡らせた。 水差しを載せたテーブル、いくつもの小瓶を収めた作り付けの棚、色とりどりの衣服でいっぱいのクローゼット、どこにも求める品はない。 隅で忘れられた鏡台の上を漁り、引き出しの中身を掻き出す。 ひととおり室内を荒...
  • 四節 Eternal Melody23
    鈴のような声があった。割れ鐘のような声があった。中にはひどく、調子外れのものまであった。 賑わう酒場の一角で。夕風の吹き渡る岸辺で。あるいは河に浮かべた小舟の上で、幼い弟妹の手を握り。 セシルが知らない、おそらくはこの先も、出会うことのない人々。彼らのほうでもセシルのことを何一つ知らないまま、ひとつに声を合わせている。 光の粒子を舞い散らせ、クリスタルもまた、共に歌っていた。 そして。 高らかに歌う結晶をセシルが手にした瞬間、黄金の光が膨れ上がった。 輝きが津波のごとく周囲を満たし、影という影、闇という闇を遠く追い払う。 光の波に浚われ、セシルの視界から一切の輪郭線が消えた。燃え盛る炎のように熱く、それでいて心地よい感触。 これまで振ったどの剣よりも、握った誰のてのひらよりも、クリスタルはセシルの手に馴染んだ。 このまま一体となって、光の中で溶け合わさる...
  • 四節 Eternal Melody26
    風に頬を撫でられ、ギルバートは闇の世界から帰還した。 「お目覚めになられましたか」 微笑んで語りかけてきたのは大神官だ。汗の浮いた彼の額を、手ずから拭ってくれていたようだ。 「僕は……いや、セシルたちは!?  ダークエ……くっ、ごほっ」 気が急くあまり咳き込んだ青年の目を覗き込み、大神官は再び微笑んだ。 「ご心配は無用です。  お立ちになれますか?」 不思議と、気分はあまり悪くない。ギルバートは大神官に手を取られ、寝かせられていた籐の長椅子から降りた。 そのままバルコニーの縁へと導かれる。 これまで、周囲の音に耳を傾ける余裕はなかった。だからはじめギルバートは、木の葉がざわめいているのかと思った。 大勢の人間が、思い思いに歌っている。 それは大神官が妹に許しを与えたときよりも、いっそう強く、また豊かなものになっていた。 「これは……いった...
  • 四節 Eternal Melody24
    あまりにもあっけないダークエルフの最期に、どこか腑に落ちないものを感じ、セシルは周囲を見渡した。 透き通った壁や床がクリスタルの輝きを反射して、あたりはさながら光の海だ。 ずっと昔、夕映えの中を飛んだときのことをセシルは思い出した。 山吹色の雲の塊が空いっぱいに広がり、それが次第に茜色へと微妙に色合いを変えていく。乗組員総出で見とれたものだ。 けれど、まだどこかにあるはずだ。この光で、消し去ってしまわなければならない闇が。 それはじきに見つかった。腹から血を流し、祭壇の手前でうずくまっている。 誰よりも良く見知った姿。血塗られた闇。 暗黒騎士セシル。 『あなたはこれからも、僕と一緒に常に歩き続ける』 かつて、セシルは確かにそう言った。 試練の山の山頂で。己の過去であり半身たる暗黒騎士に向かって。 けれど今ならば。このクリスタルの力があれば、完全な...
  • 四節 Eternal Melody25
    「セシル!  おい、セシル! 返事をせんか!」 呼びかけと同時に、強く体をゆすぶられる。衝撃で、セシルの手からクリスタルがこぼれ落ちた。 そのとたん光が弱まり、世界に輪郭が戻ってくる。 「……シド」 「どうしとったんじゃお前さん、ボーっとして!」 「どう、って……」 まるで眠りから覚めた直後のように、何かが突然、切り替わったように感じる。 セシルは大きく頭を振り、意識をはっきりさせた。 「僕は何をした?  ダークエルフを倒してから」 「特に、何も」 あらかた傷の癒えたヤンが、簡潔にまとめた。違和感が残るのか、しきりに治りたての手足を動かしている。 「そうか……  なら、いいんだ」 クリスタルをシドが拾い上げ、セシルに突き出す。ややためらった後、セシルは手を伸ばした。 受け取っても、恐れていたようなことは起きない。琥珀色の結晶の...
  • 四節 Eternal Melody21
    突然の異音を最後に、ダークエルフを縛り付ける竪琴の音が止まった。 「クリスタルを!」 仲間の指示が飛び、セシルは台座へと走った。クリスタルに手を触れると同時に、巨大な丸太のような何かが、彼を弾き飛ばす。 壁際まで吹き飛ばされたセシルが、まず目にしたのは、巨大な蛇だった。 「ヨクモ……ヨクモ、ヨクモ!」 いや、竜か。 部屋を一周するほどの巨大な体と、不釣合いな短い手足。それらを覆う鋼色の鱗。 濁った両目に殺意をたぎらせ、魚類を思わせる口から吐き出される声は、紛れもなくあのダークエルフのもの。 新たな名を与えるなら、ダークドラゴンとでもするか。 「モハヤヨウシャハシナイ!  オマエタチ、コロス!」 長い尾がうねり、鋭く尖った鰭の先を刃のように閃かせて、ダークドラゴンはセシルへと踊りかかった。 「下がれ!」 「ええい、当たる相手が違うだろうが!...
  • 四節 Eternal Melody22
    「ムダナコト  ショセン バンゾクニ ソレハ アツカエヌ」 回復に追われるセシルたちへ、ダークドラゴンは嘲笑を浴びせた。 実際、盗みだされたクリスタルは、ダークエルフの魔力を著しく増大させていた。 しかし、今それを手にしているセシルたちには、何の恩恵ももたらそうとしない。 「ココデシネ!」 かっと開いたダークドラゴンの喉の奥から、またしても闇があふれ出した。 肉体に目に見える損傷はなく、しかし、確実に生命を削り取る黒。まるで、森の悪意を極限まで濃縮したかのようだ。 ねじくれた木々と毒を持つ花。腐った葉と屍骸の溶けて混ざり合った泥が、活力を根こそぎ吸い取っていく。 「……ケアル!」 次の攻撃が来る前に、とテラが自分を治療する。シドが腰のポーチから、ポーションの瓶を取り出した。 ただひとり、攻撃に回る余力を残していたモンク僧が、身を低くして床を蹴る。...
  • 四節 Eternal Melody7
    「しかし、テラ殿の魔力も、まだ完全では……」 「ふん!  だらだらと無駄話をしているよりはよほど良いわ!」 とは言うものの、テラの顔色は良くない。 ただでさえ、魔力の回復は体力のそれよりも時間がかかる。一行の中で最も休養を必要としているのは、間違いなくこの老いた賢者だ。 「ここからが本番なんだ。ちゃんと休んだほうがいい」 やはり休息を勧めたセシルに向かって、テラは盛大に鼻を鳴らした。 「なにを呑気なことを!  そもそも、捕らわれているのはおぬしの恋人ではないのか。  ここでモタモタしている間に、何かあったらどうする!?」 「それは……」 「私はもう御免じゃ。オクトマンモスの時の様なことはの」 虚空を睨み付けたテラの言葉が、セシルの気持ちを動かした。 「分かった。行こう」 「良いのですか?」 「言い出したら聞かないよ」 尋ねるヤ...
  • 四節 Eternal Melody8
    「オマエタチ ヨクココマデ コレタ!  ダガ タドリツクコトハ デキテモ  ツチノ クリスタルハ オマエタチノ テニハ モドラナイ」 片言でダークエルフは宣告し、いやに大きな右手を振りあげる。 「タチサレ!」 突然足元から吹き上がった炎が、セシルたちを飲み込んだ。 不意を突かれたが、魔法によって生み出された火は、長くは続かない。 「でぇぇぇぇい!」 炎を振り切ってシドが突撃する。体重の乗った一撃が、まさに振り下ろされようとした瞬間、ダークエルフの姿が歪んだ。 火が燃え移った木槌は標的を外れ、床に打ちつけられて砕け散った。 「おのれ、生意気な!」 お返しとばかりに、テラがファイラの呪文を放つ。だが鈎爪の伸びた手が振られると、賢者が喚んだ炎は一瞬で掻き消えてしまった。 ヤンは静かに気を高めている。 セシルは彼らの治療のために、ケアルラの詠唱を...
  • 四節 Eternal Melody4
    洞窟を下るにつれて、あたりの空気は急激に冷えていった。 闇の底からかすかに水音がする。次第に濃くなる、水棲のモンスター特有の生臭さ。 「上だ!」 警告と同時に闇が剥がれ落ち、天井から逆さ吊りにこちらを見下ろす、女性型モンスターの存在をあらわにする。 赤紫の髪、薄暮の色の翼、縊死体の紫に染まった肌。赤く輝く目と唇から除く牙が、彼女の持つ吸血の習性をセシルたちに教えた。 しなやかな指がセシルたちを示す。虚空から四匹の蝙蝠が湧き出し、主の命令に従って獲物めがけて飛び掛った。 「サンダラ!」 「どりゃぁっ!」 テラが杖を振りれかざし、魔法を放つ。数条の雷が敵を打ち据え、横ざまに振り抜かれたシドの木槌が、体勢を崩した獣を豪快に吹き飛ばした。 「はっ!」 同時にヤンが床を蹴り、目にも留まらぬ速さで足技を繰り出す。残る蝙蝠も塵となって四散し、伸び上がる爪先は、高み...
  • 四節 Eternal Melody1
    地底から巨大な城が生えている。磁力の洞窟に踏み込んだセシルは、そんな印象を受けた。 入り口こそ狭いものの、その先に続く空間は恐ろしく広く、そして深い。 生ぬるく湿った空気をたたえた底知れぬ深遠から、無数の岩の柱が突き出して、平らな柱頭を足場として提供している。 そしてそれらは、何本もの橋によって結ばれていた。 「変わった組み方じゃの。  しかし頑丈なのは間違いないな」 目の前の橋を拳骨で叩き、シドは感心したように顎を撫でる。 彼の言うとおり、しっかりと組まれた木材は表面こそ朽ちているが、技師の荒っぽい試験にも立派に耐えていた。 せいぜいが数人規模の探索者が、ありあわせの材料で作ったものには見えない。 きちんと測量し、正確な図面を引き、しかるべき処置を施した建材で造られたものだ。 そのつもりで周囲を観察すると、青みがかった灰色の岩肌に細い窪みが並んでい...
  • 四節 Eternal Melody9
    傷ついた体を引きずり、セシルたちは魔法陣の部屋まで退却した。 幸いにして、テラもシドも息はあった。またダークエルフの追撃もなかった。ヤンによれば、ただ傲然と敗走する一行を見下ろしていたという。 「とにかく、今は体力を回復させることだ」 頑強なモンク僧も今は精根尽き果てたか、寝袋に身を横たえ、憔悴した顔を天井へ向けている。 ありったけのポーションと魔法で、傷は何とか塞がった。必要なのは、疲労を追い出す時間だ。 そしてその間に、ダークエルフの魔力を打ち破る手段を見つけなければならない。 あまり猶予はなかった。ここで時間をとりすぎると、黒チョコボのところに残してきた、魔除けの効果が切れてしまう。 地上まで戻る道のりも考えて、テラの魔力の回復が、ぎりぎり間に合うかどうかだった。 「忌々しいが、魔法は効果が薄いようじゃ」 「近づくことさえ出来れば、この爪で喉を掻き...
  • 四節 Eternal Melody5
    初めて目にする異国の男は、エリスには、狂っているとしか思えなかった。 寝台の上に上体を起こし、手にした骨細工のようなものに向かって、一人でつぶやいている。 俯いた横顔を髪が隠しているので、顔はよくわからない。ただ、大きな傷跡のようなものは見えた。 今にも命が危ういような、差し迫った気配はない。 「セシル……ヤン……  返事を……」 声をかけるべきか、誰かに報告すべきか、素知らぬ顔で立ち去るか。迷いながら物陰で中を窺ううち、男の様子に変化が現れた。 「セシル……聞こえるか!?  気づいてくれ、僕だ、ギルバートだ!」 呼びかける言葉に確信が宿る。耳を澄まして返事を待つ。応答はない。人の声では。 代わりに聞こえてきたのは、恐ろしげな唸り声。硬い物が打ち合う響き。柔らかく重たい何かが、どさり、と地面に落ちる音。 それらは全て、客人──ギルバートが手にした...
  • 四節 Eternal Melody6
    進むにつれて気温はさらに下がり、氷室さながらの鋭い冷気が、吐く息を白く染める。 磁力の洞窟と呼ばれる場所が、かつて、何者かの暮らす都市であったことは間違いない。先へ進めば進むほど、痕跡は増えていった。 平らな床。鹿角を模した石造りの蜀台。木製の櫃に入った古い貨幣。つる草のレリーフを施した扉。 魔物を寄せ付けない結界が張られた部屋も、いくつか残されている。 そのうちのひとつで、セシルたちは休息を取っていた。 魔法陣の上にテントを張り、楽な姿勢で干し肉や木の実を齧る。くつろいだ輪の中心に、ヒソヒ草が置かれていた。 「さっきは驚いたよ。幽霊かと思った」 『すまないね、説明しそびれてしまって。  でも勝手に殺さないでくれよ』 ヒソヒ草の向こうで、苦笑している気配がする。 ギルバートの体調が、確実に良いほうへと向かっていることは、その声の調子からも窺えた。 ...
  • 四節 Eternal Melody3
    エリスが城に仕えて、もう二年になる。 主な仕事は場内の清掃と食材の仕入れ、最近は庭園で飼われている鳥の世話も言いつけられることがある。 今日任されたのは、南西のテラスの掃除だった。 飛んでくる木の葉や埃を一所に掃き集め、ある程度溜まったところで籠にすくい上げる。 何度か繰り返すうちに、汗が噴き出して来た。一休みして柵に寄りかかる。折りよく吹き付けた湖からの風が、エリスの労をねぎらった。 『……応えてくれ……』 その風の合間を縫って、声が聞こえることにしばらくしてエリスは気づいた。 『聞こえるかい……セシル……  テラ……ヤン……  返事をしてくれ……』 驚いてあたりを見渡し、南からの日を浴びて白く輝く壁の一角に目を留める。 閉め忘れたのか、外の空気を入れたいのか。いつもなら、磨き上げられた樫の扉が嵌っているはずの場所に、今日は薄い緞帳が風に揺らめ...
  • 四節 Eternal Melody11
    覚悟はしていた。 「大変心苦しいのですが」 恨みに思う筋合いではない。 「ご期待には添えません」 それでも、磁力の洞窟で今の言葉を聞いているセシルたちのことを思うと、ギルバートは尋ねずにいられなかった。 「……何故ですか?」 そのために、彼の秘密が暴かれたとしても。 「理由は、あなたもよくご存知のはずです。  飛空挺での攻撃は、地上からでは防げない。  どこか安全な場所にクリスタルを移したほうがいい──  そう仰っておいででしたね」 「……僕の、せいですか……?」 「決断したのは私たちです」 うなだれたギルバートの手からヒソヒ草を受け取ると、大神官はセシルたちへ語りかけた。 「お聞きになられましたね?  申し訳ありませんが、手をお貸しすることは出来ません」 『なんでじゃ!  あんたら、クリスタルが盗まれて困っておるんでは…...
  • 四節 Eternal Melody18
    歌は広がっていく。少し浮かれた気分と共に、水に溶かしたインクのように、トロイアの町を染めていく。 その現象を、誰が意図したわけでもなかった。 「なりませんよ、ラグトーリン」 大神官の私室に続くバルコニー、紅茶と風を味わいながら、トロイアを統べる貴婦人は妹を諭した。 「言いたいことは分かります。  ですがそなたとて、この国の政を担う身。決定には従いなさい」 「……これが最後かもしれないのです」 久方ぶりに本名で呼ばれた七の姫も、そう簡単には引き下がらず、十ちかく離れた姉を相手に嘆願を続ける。 「吟遊詩人としても名を馳せた代々のダムシアン王族の中でも、1・2を争うとまでいわれた方。  一度で良いから直に聞いてみたいと……出来れば、共に奏でてみたいと、ずっと思っていました」 姉妹の視線が合わさり、風が止まった。大神官の指が白磁のカップの縁を撫ぜ、花を透かし...
  • 四節 Eternal Melody13
    『……すまない』 「君が悪いんじゃないさ」 気落ちしていない、と言えば嘘になる。それを気取られないよう、セシルは努めて前へ進む方法を見出そうとした。 しかし、仲間たちが彼を諌める。 「もう眠れ、セシル」 「テラ殿の言うとおりだ。  今後どう動くにしても、体調は万全にしなければ」 「考え事なら、この天才シドに任せておけ!」 口々に言われ、セシルはしぶしぶ寝袋に潜り込んだ。いい夢は見られそうにない。 確実に生きて戻るなら、ひとつだけ手がある。諦めるのだ。ローザのことも、カインのことも。何もかも。 ……そんなこと出来るはずがない。 パロムやポロム、これまで出会った人々から寄せられた厚意にも、まだなにひとつとして、満足に応えていない。 なにより。 ”ローザは……カインのところにいます” バロン城で、ローザの母アイリスに娘の行方を問い質されて。...
  • 四節 Eternal Melody17
    右手奥、特別室への扉越しに、いやに景気の良さそうな声が聞こえる。すぐ横のテーブルで頬杖をつく少年は、父親が出てくるのを待ってでもいるのだろうか。 今度は黒チョコボを捕まえる、などと突拍子もないことを言い出した外国人の手伝いを終え、戻ってきたいつもの店のいつものテーブル。 だらしなく椅子の上でひざを組み。ロドニーはため息を吐き出した。 「どうした大将、やけに萎れてるじゃないか」 肩を叩いた顔馴染みの青年に、くたびれた中年は返事をせず、淀んだ視線をむけた。 「生簀が壊されちまったんだってさ!  まったく、それぐらいで食い詰めるような稼ぎじゃないだろうに」 代わって事情を明かしたのは、この店を取り仕切る女主人だ。 最近は倉庫を改造し、『特別室』と称した施設をでっちあげ、戦火を逃れてやってきた外国人からたんまりと巻き上げているらしい。 そうしたやり手の一面とまる...
  • 四節 Eternal Melody16
    ジョグは酒場を追い出され、河岸で石を投げて時間をつぶしていた。 彼はトロイアの住人ではない。かつては両親と共に、バロンの城下町で暮らしていた。 しかしジョグの父は、いち早く不穏な空気を嗅ぎ取り、店を畳み国を出た。赤い翼の、ミシディアへの出兵が発表されたころの話である。 やや遅れて、同じように国を捨ててきた者が何人か流れてきた。 彼らが語るバロンの情勢は、酷くなる一方だった。聞くたびに父は、真っ先に逃げ出した自分の勘の鋭さと、避難先にこの国を選んだ判断力を自慢した. ──まあそれはいい。ジョグが許せないのは、叔母のお産の手伝いに里帰りしていた母親を、父が待とうとしなかったことだ。 店を売った金を酒場女にばら撒いて、妻を置き去りにしてきたと得意げに話すあの男は、たぶん自棄を起こしている。 最近ジョグは、父親の顔を見るのも嫌になっていた。相手もそれは同じらしく、ここ数...
  • 四節 Eternal Melody12
    「待って下さい!」 風変わりな謁見を終えようとした大神官に、ギルバートは食い下がった。 「彼らは……僕の友人なんです!  見捨てないでください!」 情に訴える亡国の王子を、大神官は無言で見下ろしていた。その両目に初めて、痛ましげな光が宿る。 「クリスタルは自然の力の象徴。その恩恵は、全ての生命に等しく注がれます。  私たちのものでなければ、トロイアという国の持ち物ですらありません。  ただ預かっているに過ぎないのです。遠い先祖から、はるか先世の子孫へ向けて」 「……分かっています。  ですが……」 「あなたは良い方です。ギルバート殿下。  ご友人方も、良い人たちなのでしょう。  それでもあれは、個人の情を理由に扱って良いものではありません。  火のダムシアンの王統を受け継いでいる方ならば、骨身に染みておりましょう」 穏やかに諭され、も...
  • 四節 Eternal Melody14
    その後、エリスはしっかりこき使われた。仕事を放り出し、立ち聞きに現を抜かした罰である。 野菜の皮むき、床磨き、空き部屋の掃除に続いて彼女が押し付けられたのは、両腕いっぱいの洗濯物だった。 裏に回り、大きなたらいに水を張って灰を混ぜた中に汚れ物を浸す。凝りはじめた首や肩をもみほぐしながら、エリスは布に洗濯液がしみこむのを待った。 そこへ、さらなるシーツの山を抱えて、同僚のミオが応援に現れる。 「手伝いに来たよ~」 どさり、と投げ出された大量のリネン。エリス一人の作業量は、どう考えても増えている。 「ほらほら、天気がいいうちに済ませちゃお」 ミオはスカートの裾をたくし上げ、素足をざっと水で洗うと、洗濯物を足で踏んで揉み洗いを始めた。 エリスも彼女に倣い、たらいの中に入った。少しだけ温まった水が、酷使された足に心地いい。 「ふんふーふーふーんふふーん♪」 ...
  • 四節 Eternal Melody15
    海の底から見出され、どんなに深い眠りの淵にも、妙なる音色を響かせる。 その楽器はかつて、『夢の竪琴』と呼ばれていた。 「こうか……?  違う。  これなら……?」 幾度となく繰り返される古い呪歌のメロディーが、静寂をより引き立てる。 大神官たちが退出してから、これで何百回目になるのか。ギルバートはいまだ知られざる一節を求め、愛用の竪琴を爪繰っていた。 この国に伝わる、悪しき精霊を縛める歌。それを唯一の手がかりに、勝利をもたらす旋律を編み出す。 それがどれほど無謀な試みかは、ギルバート自身も承知していた。 彼が手にした魔法の品は、特殊な旋律を奏でることで、様々な効果をモンスターに及ぼすことができる。 だが定められた旋律はモンスターの種族によって異なり、場合によっては相手を力づけてしまう恐れもあった。 従って、未知の魔物を相手に竪琴の力を使うと...
  • 四節 Eternal Melody19
    ギルバートの歌は、目覚しい効果をあげた。 「ナンダ! コノ、フカイナオトハ!」 ダークエルフは身悶えし、せめてもの抵抗とばかりに、枯れ枝のような指で尖った耳を押さえている。 その尋常でない苦しみようは、全滅をも覚悟の上で再戦に臨んだセシルたちが、拍子抜けするほどだった。 「そうかそうか気に入ったか!  ホレホレ! たーっぷりと聞かんかい!」 小刻みに震える妖精に向けて、シドがヒソヒ草を突き出す。ダークエルフは悲鳴を上げて、台座から転げ落ちた。 「木槌の仇じゃー!  ホレホレ、ホレホレ!」 「グ……ゲゲゲ! ガゴゴ……」 あれほどセシルたちを悩ませたダークエルフが、起き上がることも出来ず、芋虫のように床の上を這いずり回る。 調子付いたシドは、軍旗のごとくヒソヒ草を振りかざし、その後を追い回した。 「技師殿も、案外根に持ちますな」 「道具は職...
  • 四節 Eternal Melody10
    「誰か……誰か居ないか!?」 トロイア城のベッドの上で、ギルバートは精一杯の声を上げた。 「はっ、はい!  な、なな、なんでございましょう?」 意外に早く、なぜか扉の影から現れた見慣れぬ顔の侍女に疑問を抱くこともなく、用を言いつける。 「大神官様……それと、楽司様に伝えてくれ!  ギルバートが、至急お目通りを願う、と!」 「はい、ただいま!」 勢い良く駆け出した侍女を見送ることもせず、ギルバートは手元に視線を向けた。 「この国の巫女たちが奏でる音楽は、悪しき妖精を鎮める力があるそうなんだ。  それが本当なら」 『この草を通して、力を借りられる?』 『そういうことか!  お手柄じゃな!』 彼の思い付きをセシルたちに説明する。ヒソヒ草の向こうからも、良い反応が返ってきた。 何かの力になれれば、と渡した品が、希望の鍵となるかもしれない。...
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